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最初に観たときはダラけてしまったが、じっくりと腰をすえて観てみたところ、心に残る作品だと思った。最初に登場するジム・カヴィーゼルが最後まで語り部になるかと思いきや、役者としても有名でない俳優にも語らせている。一方、それまで語っていたメインどころが、妻からの手紙を手にして以降、語っていない。
それらの胸中の言葉は、どこまでも詩的で、個人の利己的な発想から湧き出る言葉ではない。神への語りかけだったり、神と自然界とのつながりに焦点を置いていたり、神の存在に背を向けながらも内なる光と孤独の両者を受け入れていたり…。美しい色彩の鳥や見慣れぬ動物、植物たちの姿が随所に散りばめられていたが、それらは、人間たちの人間以外のものとの対話がこの作品の核であることを象徴するためのものだろうと思った。 私が観た戦争映画では、過酷な状況によってさまざまな反応を見せる戦士の姿をあからさまに描くものが多かったので、それを見慣れていた私にとって、この作品のその語り部の多さにダレてしまったのだが、この作品を、戦争映画だと捉えることが間違っているような気がした。 戦争という状況に限らず、自我では生き抜いていけない立場に置かれた時、私たちは自我を超えた何者かとの対話が必要なのかもしれない。そんなものを私は持っているのだろうか…妻からの手紙を手にして以降、語らなくなった兵士は、心の底から愛し、心の底から信じていた妻のことだけを語り続けていたのだ…。 蛇足だが、この作品を観た後、「フル・メタル・ジャケット」に対する感想も変わった。それに関しては、「フル~」のコメントを書き直すことにする。 【日雀】さん 9点(2004-05-26 10:29:38)
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