タクシードライバー(1976) の yuua さんのクチコミ・感想

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タクシードライバー(1976) の yuua さんのクチコミ・感想
作品情報
タイトル名 タクシードライバー(1976)
製作国
上映時間114分
劇場公開日 1976-09-18
ジャンルドラマ,サスペンス,戦争もの,犯罪もの,実話もの
レビュー情報
社会への「毒」が注ぎ込まれた芸術であり、これぞ、R-25からのバイブルと言えよう。というのも、主人公のトラヴィスは26歳であり、あまり若年期の多感な時期に見る映画でもない。なぜなら、テーマへの共感と主人公への同化は、この映画においては安易になされるべきものではない。それは、少なくとも狂人賛美の映画ではないからである。人生の辛酸をある程度、味わってからの方が、この映画は、より楽しめる。見る人にとどまらず、おそらくは見る年代によっても、見方が変わる映画であり、それは、年を追うごとに、自分の社会に対する見方や考えが変わるように、この映画に対する評価も変わるのである。だから、見る人を選ぶ映画だとも言える。とは言え、たとえ主人公に共感しなくても、楽しめる要素は充実している。たとえば、男性理解の一助としてもこの映画は有効であろう。女性から見たトラヴィスは、お世辞にも感情移入できる対象ではないだろう。彼の内面にひそむニヒルな孤独と、ヒーロー願望的な自己顕示欲と、直情的な不器用さというものは、まぎれもなく男性的な性の側面である。多かれ少なかれ、男性にはこうした性質がある。トラヴィスはその性質がどぎついだけである。また、作品の持つ独特の雰囲気(映像美あるいは音響美)が、理屈抜きの面白さを演出している。魅惑的なミュージック・クリップとして、見る者の心を打つ作品としても、希少価値は高い。反社会的な映画を生み出すことに消極的な、現代のハリウッド系映画とは一線を画し、現実社会に潜むダークサイドなひとつのリアリティを、包み隠さず描き出そうと努力する挑戦的な姿勢が、見る者の心を、揺さぶらずにはおかない映画であることは疑いない。社会に対して悪徳、不条理を感じとって、目に余る思いをしている人にとって、実に、問いかけられるものがある。事なかれ主義に憤りを覚え、社会への不満をぶちまけたくなるフラストレーションを、この映画は代弁し、なだめ、すかしてくれる。小説で言えば、さしずめ、太宰治の『東京八景』を読んで、「自分は太宰ほど狂人でもない」と安堵する感覚である。トラヴィスの正義感は、手放しで誉められるものではないが、これが単に訳の分からぬ狂気にしか思えないとなれば、この映画はある意味、淡々とした退屈な映画として、受けとられてしまうのかもしれない。
yuuaさん [DVD(字幕)] 8点(2005-11-19 12:58:48)(良:3票)
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投稿日付邦題コメント平均点
2005-11-19タクシードライバー(1976)8レビュー7.41点
2005-03-21ウェイキング・ライフ4レビュー6.63点
2005-03-21イン・ザ・ベッドルーム4レビュー5.78点
2005-03-218 Mile6レビュー6.13点
2005-03-218人の女たち7レビュー6.47点
2005-03-21BULLY ブリー7レビュー6.70点
2005-03-21es[エス](2001)4レビュー6.78点
2005-03-21GO(2001・行定勲監督作品)1レビュー6.19点
2005-03-21JSA6レビュー7.19点
2005-03-21RETURNER リターナー7レビュー5.69点
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