君たちはどう生きるか(2023) の まいか さんの口コミ・感想

君たちはどう生きるか(2023) の まいか さんの口コミ・感想
作品情報
タイトル名 君たちはどう生きるか(2023)
製作国
上映時間124分
劇場公開日 2023-07-14
ジャンルドラマ,アドベンチャー,ファンタジー,戦争もの,アニメ,動物もの
レビュー情報
《ネタバレ》 これは戦時中の話です。主人公は転校先で同級生の悪意にさらされ、自分で自分の頭を傷つけて嘘を吐きます。一方、父親は戦闘機を作っている人で、個人の悪意に対しても国家の悪意に対しても「力で解決できる」と信じているように見える。家のなかに戦闘機の操縦席のガラスをたくさん並べるシーンがありますが、あの部品の数だけの若者が特攻で死んだのではないかと思います。そのように命が使い捨てにされる現実のなかで、主人公は地下の世界に潜り、命の神秘(生まれる前と死んだ後)の世界を体験します。ひとりの人間の生き死にには壮大な物語があるし、この世に産まれてくるのも、死なずに生き延びるのも簡単なことではない。
大叔父は悪意に満ちた世界を作り直そうとしています。父や祖父は子孫を残した人ですが、一般に「叔父」というのは子孫を残さなかった人の象徴だろうと思います。おそらく大叔父は、命の連鎖から切り離されたところで世界を作り直そうとしている(『ポニョ』でいえばフジモトの立ち位置に近い)。そして頭に同じ傷をもつ主人公も大叔父と同じ資質をもっている。しかし結果的に、主人公は大叔父の仕事を引き継ぐことなく戻ってきます。それは「悪意に満ちた世界を生きるほかない」「戦争を含む人間の文明に向き合うほかない」ということを意味します。そして、観客であるわたしたち自身もそのような世界に生きている。
映画公開時には「難解」との評判だったので身構えてましたが、すこしも難解とは感じませんでした。あきらかに宮崎アニメの過去作の延長上に作られており、共通のテーマを負ってるのも分かります。簡単にいえば『ポニョ』と『風立ちぬ』を組み合わせたような構造ですが、過去作に比べてもテーマ性はより明瞭になっている。実際、本作を観ることで『ポニョ』のテーマが理解しやすくなるはずです。残念ながら『ポニョ』はキャクター造形などから幼稚な作品と思われがちですが、じつは本作にも通じるテーマをもつ作品だったというべきです。むしろ幼稚なのは、いまだに『ラピュタ』のような冒険活劇しか評価できない観客のほうでしょう。
宮崎駿のアニメは、たんなる反戦映画でもなければ、たんに世界を肯定する映画でもなく、つねに肯定と否定の宙吊り状態のなかで「人間としてどう生きるか」を問うてくる映画です。その宙吊り状態に耐えられない観客は、より簡単な答えを求めたがるわけですね。
まいかさん [地上波(邦画)] 8点(2025-05-03 01:53:04)(良:1票) ★《更新》★
まいか さんの 最近の口コミ・感想
投稿日付邦題コメント平均点
2025-05-04ジュラシック・ワールド8レビュー6.13点
2025-05-03君たちはどう生きるか(2023)8レビュー5.90点
2025-04-26スター・ウォーズ7レビュー8.08点
2025-01-11花束みたいな恋をした8レビュー6.89点
2025-01-09セーラー服と機関銃7レビュー5.25点
2025-01-05ミステリと言う勿れ6レビュー6.85点
2024-11-16トップガン マーヴェリック9レビュー8.00点
2024-11-09トップガン6レビュー6.32点
2024-09-15記憶にございません!7レビュー5.51点
2024-09-15今日から俺は!!劇場版7レビュー5.73点
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