| 作品情報
レビュー情報
《ネタバレ》 冒頭の、弾丸の一生から映画にのめり込みました。とってもヘンなイントロなんだけど、そのアイデアには面白みと遊びがあり、映像的にも斬新で目を引き、そして武器の流れを分かりやすく説明し、その果てには少年を殺害して悪い後味を残すという、本作を象徴する絶妙な掴みです。ニコラス・ケイジ扮するユーリーがのし上がる前半は出色の面白さで、入念なリサーチに基づくと思われる脱法行為の数々には「へ~」と唸ったし、彼が成功を重ねる様はサクセスストーリーとしてのカタルシスまでが存在しています。さらに彼の商材は武器、取引相手はゲリラや独裁者であるだけに、死の危険を身近に感じながらのビジネスという緊張感もエンターテイメント作品としての面白さをサポート。捻じれたユーモアも絶好調で、このままいけば空前の傑作になるのではという勢いでした。しかし、シリアスモードに入る後半になると映画のテンションは一気に落ちてしまいます。夫のビジネスの正体を知った家族がドン引きし、夫は家族のためにビジネスから足を洗おうとするという展開は月並みで、意外性溢れる前半と比較すると見劣りします。目の前で弟を殺され、両親からは勘当され、妻も子供も失うという展開も監督が意図するほど衝撃的ではなく、こんな商売してればこんくらいのリスクは付き物だろうなぁという印象しか持てませんでした。ただし、最後の最後になってこの映画は大ドンデン返しを仕掛けてきます。飄々と商売してきたユーリーもいよいよお終いかと思いきや、最大のパートナーが突如彼を救いに現れるのです。そのパートナーとはアメリカ合衆国。アメリカ合衆国こそが世界最大の武器輸出国であり、法律上・国際世論上取引が困難な国に対してはユーリーのような民間業者に取引をさせていたことが、ラストで明かされます。このドンデン返しには驚いたし、本作の核となる事実をもっとも衝撃的なタイミングで観客に提示した構成力には唸らされました。。。と、こんな作品なのでアメリカ資本からの出資はビタ一文受けられず、60億円もの製作費をすべて海外資本から掻き集めたそうです。それを可能にしたのがニコラス・ケイジという看板ですが、ジェリー・ブラッカイマー作品で知名度を売りつつ、本作のようなリスキーな企画に名前を貸す姿勢はもっと評価されても良いと思います。安全な作品ばかりに出演するそこいらの名優よりも、よっぽど立派な俳優です。
【ザ・チャンバラ】さん [DVD(吹替)] 7点(2010-08-14 01:57:31)(良:2票)
ザ・チャンバラ さんの 最近のクチコミ・感想
|