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《ネタバレ》 ボイル&ガーランドは超凡作「ザ・ビーチ」のコンビだったので不安があったのですが、本作は見違えるような素晴らしい仕上がりとなっています。終末ものの映画としては、傑作に加えてもよいほど。本作はロメロによるゾンビサーガを忠実に作り直したものなのですが、そのロメロ愛は非常に深く、本家の正式リメイクである「ドーン・オブ・ザ・デッド」やロメロ自身による続編「ランド・オブ・ザ・デッド」以上にサーガに近い仕上がりとなっています。。。本作が他のゾンビ映画よりも決定的に優れていること、それは破滅後の世界を徹底的に構築したことにあります。ロメロはゾンビを通して人間社会を描こうとしていましたが、78年の「ゾンビ」以降に製作された多数のエピゴーネンは同作の強烈なスプラッターのみに注目し、ロメロが重視していた社会性は引き継がれていませんでした。しかし唯一本作だけは、「世界がメチャクチャになった後、その中に取り残された人々はどう生きるのか?」「社会という枷が外された時、人間性はどのような形で残るのか?」というテーマを中心に据えています。破滅後の世界に生きる人々の生活は理詰めで考えられていて大いに説得力があり、そうやって世界観が丹念に作られているからこそ、その上のドラマも活きてきます。下劣な軍隊と主人公達との殺し合いがはじまる後半は見ていて気持ちの良いものではないし、またこの展開については「人間同士の殺し合いになったんじゃ、ゾンビが関係なくなるじゃないか」という批判もありますが、剥き出しになった欲望の衝突こそがロメロゾンビの真髄。これをクライマックスに持ってきたダニー・ボイルは、よく分かっている男なのです。。。さらに、本作はビジュアル面でも見どころの多い作品となっています。ダニー・ボイルはロメロよりも引き出しの多い監督なので、映像的にはオリジナルよりも本作の方が勝っています。無人となったロンドンの描写は絶望感と開放感の両方を味わわせるし、ゾンビに襲われる場面での恐怖演出も見事なものです。走るゾンビは本作が初登場となりますが、監督のビジュアルセンスに支えられてこれがインパクト大。並みの監督が撮っていれば、「これのどこがゾンビなんだよ。どう見ても人間だろ」と思われたところですが、これをきちんと「かつて人間であったが、今は人間ではないもの」として描写できています。
【ザ・チャンバラ】さん [映画館(字幕)] 8点(2010-09-11 16:23:44)(良:1票)
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