シークレット・サンシャイン の なんのかんの さんのクチコミ・感想

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シークレット・サンシャイン の なんのかんの さんのクチコミ・感想
作品情報
タイトル名 シークレット・サンシャイン
製作国
上映時間142分
劇場公開日 2008-06-07
ジャンルドラマ,ロマンス,小説の映画化
レビュー情報
《ネタバレ》 周囲に構えて生きているヒロイン、母一人子一人で頑張らなくちゃならない、といつも自分に言い聞かせているようなところがあり、変な人なのよ、という陰口も彼女をさらに固める。彼女を支えているのは、何かに“当てつける”情動。そもそも死んだ夫の田舎に越してきたのだって、自分の家族への当てつけのようでもあり、また浮気をしていた夫への当てつけもあるかも知れない。外部に対してそのようにピリピリに張りつめている彼女の息子がさらわれる。誘拐犯の電話の声を聞かせない演出が、かえって臨場感を高めた。これがドラマの芯かと思っていたら事件はあっさり閉じられ、そこから本当のドラマが始まった。彼女は葬儀でも泣かない、死亡届も出し、しかしそこで心が崩折れるように、教会を訪れ号泣する、彼女が初めて鎧を脱いだように。教会の仲間とのどことなく浮わついた陽気さの描写がうまい。おそらく多くの信者は、こういう会合での仲間意識のなかで安らぎを得ていくのだろうが、彼女は仲間とは偽の陽気さで交際するだけで、神と真面目に向かい合ってしまう。だから、自分より先に犯人を許していた神に、裏切られたというショックを受ける。神を信じなくなるのではなく、神に当てつけようとする。神への復讐が始まる。かつて号泣した教会で今度は机をバンバン叩く。嫌がらせの数々、そして天に当てつけるように、手首を切る。これは死ぬのが目的なのではなく、当てつけるのが目的だったので、「助けてください」と初めて外の人に援助を求めることになるわけだ。だからこのシーンは二重に痛々しい。神への憎しみという最後の突っかい棒も失ってしまうのだから。市井の一女性を追いながら、この映画は魂の広大なオデュッセイを描いた。周囲に警戒し過ぎる彼女はただの変わり者だろうか、何かに当てつけたいという情動は甘えだろうか。私はそうは思わなかった。現代に生きる者は、多かれ少なかれ彼女と無縁ではいられないように思った。すごく厳しい張りつめた映画で、唯一ソン・ガンホの出るシーンがホッとさせ、牢獄の誘拐犯の“聖なるものに囚われた悪”と対比された“俗なるものに馴染んだ善”の優位を感じさせた。
なんのかんのさん [DVD(字幕)] 8点(2009-03-10 12:17:42)(良:2票)
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投稿日付邦題コメント平均点
2014-03-15エデンの東(1955)8レビュー7.25点
2014-03-14アゲイン/明日への誓い6レビュー5.22点
2014-03-13オリバー!7レビュー6.08点
2014-03-12世界の中心で、愛をさけぶ6レビュー5.27点
2014-03-11真珠の耳飾りの少女6レビュー6.33点
2014-03-10ゴースト/ニューヨークの幻7レビュー7.02点
2014-03-09EMMA/エマ(1988)6レビュー6.00点
2014-03-08稲村ジェーン4レビュー2.43点
2014-03-07つぐみ5レビュー4.96点
2014-03-06ボイス・オブ・ムーン6レビュー5.25点
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