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作品情報
タイトル名 マイ・バック・ページ
製作国
上映時間141分
劇場公開日 2011-05-28
ジャンルドラマ,青春もの,小説の映画化
レビュー情報
《ネタバレ》 学生運動と60年代、70年代初頭を描くという強烈な「わかりやすさ」が物語の推進力となり、映画をエンターテイメントとして成立させている一方で、果たして彼らが目指していたものは何だったのか、あの時代はどこに向かおうとしていたのか、なぜ、そして何に対して彼は泣いたのか、というような強烈な「わかりにくさ」が映画を奥深いものにしている。沢田のキャラクターや唐谷と梅山との対比、映画のポスターや放浪生活など、脚本の妙にうならされる一方で、さまざまな技法や構図を駆使した山下監督の確かな画が、この映像を映画たらしめている。梅山をただのインチキ思想家だと非難することは簡単そうだが、沢田をインチキジャーナリスト呼ばわりする者は誰も居ないだろう。しかしそんな梅山に共感してしまった沢田自身は自分をジャーナリストとして合格だとはまったく考えていない。彼もまた自らの拳を通して語りうる思想を持ちえなかった、行動しえなかったという点において敗残者であるが、最後の一線(取材源秘匿)だけは守った。それは主体的な行動ではありえず、沢田は種類は何であれ、思想の先頭に立ち、それに殉じたかったに違いない。梅山もそれは同じで、ひとかどの人物になりたいという出世欲がうまく時代の潮流に沿わなかったのだろう。時代に合わなかった人物という点で彼らは同種の仲間である。総合的には、山下監督のエポック、ここまでの集大成としての代表作になりえている。もっと簡単にいえば、彼は「山下の映画」というだけの一種のブランドを確立したといえると思う。それだけこの映画には無数の仕掛けがあり、奥行きがあり、素晴らしく完成されている。まとまりのないまま書いてしまったが、一度観ただけではこの映画は測れそうもない。もう一度観てくることにしよう。
Balrogさん [映画館(邦画)] 9点(2011-05-30 00:28:59)(良:1票)
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投稿日付邦題コメント平均点
2014-08-18ドッペルゲンガー8レビュー5.70点
2014-07-15ラ・パロマ10レビュー10.00点
2014-01-17Seventh Code9レビュー4.85点
2013-09-29そして父になる6レビュー7.10点
2013-09-21007/スカイフォール7レビュー6.50点
2013-09-16わたしはロランス8レビュー7.42点
2013-09-16アワーミュージック7レビュー7.40点
2013-09-14許されざる者(2013)4レビュー5.48点
2013-09-10オン・ザ・ロード(2012)6レビュー6.00点
2013-09-08サイド・エフェクト7レビュー6.94点
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