惑星ソラリス の よしのぶ さんのクチコミ・感想

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惑星ソラリス の よしのぶ さんのクチコミ・感想
作品情報
タイトル名 惑星ソラリス
製作国ソ連
上映時間165分
ジャンルドラマ,SF,小説の映画化
レビュー情報
《ネタバレ》 主人公クリスに魅力がないのが残念だ。中年太り、生気のない眼、もじゃもじゃ髪、心理学者らしいところがなく、現象の解析や心理分析も一切行わない。亡妻ハリーの出現に驚愕し、短慮にもロケットで抛棄したり、わけなく愛の幻影に溺れたりと、全くの素人状態。地球基地に報告も行わない。そもそも単独で調査に乗り込む設定に問題がある。バートン証言が真実ならば、行方不明のフェルネラはソラリスの島の庭園に赤ん坊と暮らしている。海を泳ぐ4mの赤ん坊は、フェルネラの未だ見ぬ新生児で、実体化されている途中。クリスも同じ運命を辿る。彼と父との関わりは不明確だが、出発前に「今生の別れ」めいた会話があったので、父は不治の病なのだろう。亡妻、亡母へのトラウマは癒されたので、父との生活を選んだのである。想像だが、ソラリスの知能の海と交信して、心が癒された者だけが島に留まり、海と共生(意識の交流)するのだろう。海が欲しているのは健やかな精神だ。他の船員は精神の傷が癒せないため、海と正常な関係が結べず、望まない者が出現したり、鬱病になったりするのだろう。海に知性があるという設定が蠱惑的だ。更に人間の潜在意識を実体化する能力があり、コピー人間は元の人間と同じ記憶、感情を持ち、人間と同様愛し、悩み、苦しむ。それなら元の人間とどう違うのか?生命の価値観、愛の価値観の見直しを迫り、意識とは何か、進化とは何か、幸福とは何か、問いかけてくる哲学的な内容。より身近に言えば「故郷地球を捨てて、復元された理想郷ソラリスに住むのは幸福か」という問題になる。
実体化した妻のあわれさ、美しさが感じられれば感情移入できる。心理学では水は無意識の象徴だ。冒頭クリスは美しく流れる川を眺め、池で手を洗い、雨に打たれて濡れる。宇宙船では母に腕を水で洗ってもらい、島の家では天井から水が瀝る。浸透する水は意識の変容を表わす。鏡も同様な意味で使われている。監督は水、鏡、カラーとモノクロの切り替え、テンポの遅さで意識と現実の境界を曖昧にし、観客の無意識に働きかける。「海」が人間にとって「魔物」なのか「救世主」なのか不明だが、自殺者を出すのだから、ローレライの魔女のようなものなのだろう。ただ癒しの力、再生力は不老不死に似ていて「神」に近い。人類がみな虜になってしまう可能性もある。尚、林檎は知恵、馬は恐れ、火は再生の象徴で、それぞれ適確に挿入されている。
よしのぶさん [DVD(字幕)] 8点(2013-09-16 06:53:25)(良:1票)
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投稿日付邦題コメント平均点
2015-02-198レビュー6.62点
2015-02-16死霊の盆踊り3レビュー0.76点
2015-02-11ゼロ・グラビティ9レビュー7.63点
2015-02-09パシフィック・リム10レビュー6.88点
2015-02-08エベレスト 若きクライマーの挑戦<TVM>5レビュー4.80点
2015-02-0717歳のカルテ7レビュー6.99点
2015-02-07噂の女7レビュー7.30点
2015-02-06華麗なる激情7レビュー6.00点
2015-02-06影の車6レビュー7.00点
2015-02-05第9地区8レビュー7.07点
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