6.ネタバレ エヴァン・ハンセンが自分宛に認めた手紙、彼のギプスに書かれた "connor" のサイン、そしてコナーの死によって、そこから思わぬドラマが生まれていく、、という、ストーリーは面白いけど・・。 困ったことに、コナーという人がどういう人間だったのか、あれだけでは全くわかりません。まず彼のことを確りと描くべきだったと思うし、彼のこと、その苦悩や人生感に共感できるからこそ、このストーリーに感動できると思うのです。 彼の両親たち。どうやら悲しんでいるようだが、なんだか白々しくて他人事のようにしか見えない。 学生たち。彼らの行為は全て「クラウドファンディング」という金集めが目的にしか見えない。 なぜなら、この人々と生前のコナーにまつわる描写を怠ったからであり、これでは関係者たちが「自己満足」に浸っているように見えても仕方がありません。 全体的に、地盤と基礎を手抜き工事して見た目だけは豪華に装った建物のように、ハリボテの薄っぺらい映画でした。 私は同監督の「ウォールフラワー」が好きで、かなり期待したのですが、本作はダメでした。思えばあれは、エマ・ワトソンとエズラ・ミラーという最強ヴィジュアルに、デヴィッド・ボウイの名曲「Heroes」の組合せがあまりにも完璧すぎた。 【タケノコ】さん [インターネット(字幕)] 4点(2023-03-20 17:15:31) |
5.ネタバレ そもそもミュージカルは得意ではないのだけれど、予告編が面白そうで観たいと思っていた。 優しい両親と裕福な家庭。そして片思いの女の子と親しくなれるまたとないチャンス。 エヴァンが舞い上がるのも無理はないが、この嘘にどうやってけりをつけるのかが気になって観ていた。割と中盤でエヴァンが時の人となるクライマックスを思わせる展開。 でも、嘘はいつかは露見するものだし、嘘で手に入れた関係はいつかは破綻してしまうもの。 何があっても彼を愛し続ける母親のように、本当の彼を認めて愛してくれる友人や恋人に、いつか彼は出会うことができるはず。 そのスタートラインに立って映画は終わる。 でもこのSNS全盛時代に、彼が犯した過ちは完璧には消えずにくすぶり続けるような気がして心配にもなる。 |
4.ネタバレ WOWOWオンデマンドで鑑賞。精神的な不安を抱える高校生の主人公が社会における自分の居場所を全く見つけられず無力感を感じる毎日の中で、ひょんなことから追い込まれて無理やりついた嘘がきっかけで、信じられないような展開になっていくという話ですが、要所要所の場面でミュージカル調になって、高い歌唱力をベースに感動的なシーンを作り出していくという作品でした。その点はすごく良くて、それだけで評価に値すると感じられるものでした。
ただ、主人公が勇気を振り絞って行動を起こすシーンは、ことごとく「いきなり雄弁に歌いだす」という現実感のないものなので、リアルなストーリーベースでその雰囲気を感じられない形になっているのは少し残念な気もしました。それら(主人公がなんとか絞り出してうそをつくシーンとか、スピーチのシーン)もしっかり通常劇のシーンとして作ったうえで、感動的な歌唱シーンも入れ込むようにすればもっとよかった気もしました。
ミュージカル調になっていることで描き方が多少雑でも気にならないメリットもあるけど、うそをつくのは悪いこととはいえ、自殺した少年の母親の圧力や同様の悩みを抱える同級生の強引さという要因に追い込まれていた部分もあるし、見ている側からすれば主人公は精神的な苦しさを抱えながらもその時々で良かれと思って一生懸命行動しており特に悪気のある部分はなかったのに、主人公だけが悪いみたいな感じに最後なってしまったちょっと納得感はなかったですね(主人公が人として許されない行為だといった後のヒロインの反応)。まあ、「アルジャーノンに花束を」のような感じで作品としてはきれいにまとまったという感じなのでしょうかね。
評価としては、誰もが部分的には抱える弱さを投影できる話で、感動的なシーンも数多くあった点から高評価したいところですが、上記の点から手放しでとはいかず、7点評価とさせていただきます。 【たあたん】さん [インターネット(字幕)] 7点(2022-08-21 16:00:32) |
3.ネタバレ 親愛なるエヴァン・ハンセンへ。今日はきっと君にとって素晴らしい一日になる――。内向的で誰にも心を開けない孤独な高校生、エヴァン・ハンセン。精神的に不安定で抗鬱薬を手放せない彼はある日、カウンセラーに言われるまま、自分へと手紙を書いてみる。それは誰にも読まれることなく自分だけの手紙になるはずだった。ところがその手紙は、学校一の問題児として有名だったクラスメイトのコナーが偶然手に取ってしまう。薬物を濫用し、ことあるごとに暴力沙汰を起こすコナー。そんな彼に当然、エヴァンは返してもらうように言う。ところがコナーは、馬鹿にしたような態度で手紙をポケットに仕舞うと、その場を去ってしまうのだった。数日後、エヴァンは学校から衝撃的な事実を知らされることに。なんとコナーは、長らく苦しめられてきた薬物依存の後遺症から自ら命を絶ってしまったのだ。そして、彼の唯一遺された形見はポケットに仕舞われていた〝親友〟への手紙だった――。それは自分が書いたもので、彼とは親友でも何でもない。哀しみに暮れ、エヴァンのことを息子の唯一の親友だと思い込んだ両親に、彼はそんな真実を言うことが出来なかった。さらにはコナーの妹ゾーイに密かに想いを寄せていたエヴァンは、自らが書いた文章を彼からのメールだと偽って両親に見せてしまう。すぐにばれるような些細で杜撰な嘘。だが、彼の唯一の〝親友〟として追悼集会でスピーチした彼は、精神的に苦しむ人たちの共感を一気に受け、次第に時の人となってしまう……。孤独で内向的な青年がついたとある嘘を巡り、現代社会で生きづらさを抱えた人々の間に拡がってゆく波紋を瑞々しく描いた青春ミュージカル。監督は、決して特別ではない人々の人生の光と影を美しい映像の中に描き出すスティーブン・チョボスキー。いかにも彼らしい、キラキラと光り輝くような映像と観る者の心に直接訴えかけてくるような音楽の融合は素晴らしかったです!薬物依存、発達障害、家庭内暴力、そして自殺……。ともすれば非常に暗くなりがちなこれらのテーマをあくまで明るくポップにミュージカルとして描くという離れ業を、決して嫌味にならず映像化してみせたこの監督のセンスには素直に脱帽です。見事な歌唱力を披露してくれた主人公は当然のこと、脇を固めるジュリアン・ムーアやエイミー・アダムスというベテラン勢もいい仕事している。彼が思わずついてしまった嘘は確かに許されることではない。それでも自分も若ければ、まして恋焦がれる女の子の気を惹くためなら同じことをしたかもしれない。そう思わせるところも巧い。彼の嘘がいつばれるのかとひやひやしましたが、この痛々しさもまた青春あるある。若いころ、自分も同じような失敗をいっぱいしてきましたしね。最後、全てを失ってもそれでも前を向いて生きていこうとする主人公には思わず共感。人は誰しも弱い生き物で傷つくことで成長してゆくのだということを改めて教えてくれる、青春ミュージカルの佳品でありました。お薦め! 【かたゆき】さん [DVD(字幕)] 8点(2022-05-18 05:12:53) |
2.ネタバレ わかったふりをする。理解し共感した体をする。 自分を偽り、相手の望む、好まれる自分になろうとする。 でも巧くいかない。上手に出来ない。思い通りにならない。
本当の自分のことを理解して欲しい。 でも、本当の自分のことなんて、自分以外に分かってもらえるはずはない。
エヴァンがついた「嘘」が、一瞬の竜巻のように周りを巻き込んでいく。 SNSという大きなうねりになって、エヴァン本人も周囲にいる人達をも。 でも、それは偽り。共感も感動も一瞬の流行り病。 一過性のブームが終わり、今度は非難と否定に姿を変えた。
自分だけが不幸で苦しんでいたわけじゃなく、 いろんな人が自分を偽って、胸の中で泣き叫んで、助けを求めている。 どうでもいいと思っているたわけではない。否定していたわけじゃない。 上手に出来なかった。どうして良いか分からなかった。 そんな自分を責めながら生きている。 コナーの両親もエヴァンの母親も我が子を想いながら。
終盤、SNS上で好意的だった人たちの冷ややかな視線を浴びながら、 エヴァンがコナーの好きだと残していた本を読み続け、 コナーが何を思い、求め、愛していたのかを理解しようとします。
その末にたどり着いた、優しくて、ちゃんとした自分を切望するいコナーの歌声。 誰にも届かなかった、コナーの本当の想い、苦しみ、絶望。 エヴァンはSNS上の言い訳に使うことなく、 みんなの前で自分の想いを歌うコナーの姿を知って欲しいと思う人だけに伝えます。
ゾーイがエヴァンを果樹園に招待し、今のあなたとここで初めて出会いたかった、と言ったのも、 出会いのきっかけは言葉の偽りだったけれど、 誰もが抱えている痛みや悲しみを、 今のエヴァンは誰よりも理解している人だと信じたからではないでしょうか。
ベン・パレットの歌声は圧倒的でした。 押しつぶされそうな心の叫びがダイレクトに突き刺さるような、 息を呑んで聞いてしまいます。 【こっちゃん】さん [映画館(字幕)] 10点(2021-12-23 13:28:43) |
1.ネタバレ パニック障害で苦しむ主人公がセラピストに出された「自分宛の手紙」を、片想い中の彼女の不良兄貴に取られたことから大きな事件に発展するというのが大まかなあらすじ。 まず冒頭からの楽曲がとにかく素晴らしいです。真剣に物語を語ろうとするシーンでも突如歌い始めるので、ミュージカルが性に合わない人には「なにやっとるんじゃ?」というかm寺ではありますが、そうでなければ、歌詞やメロディラインともども素晴らしく、思わず一緒に歌いたくなってしまうような感じです。 内容についても、昨今の問題「誰しも問題を抱えている。だけど、誰かが手を差し伸べてくれる」という内容で刺さる人にはとにかく刺さるでしょう。 ただ、ラストに関しては、結局嘘の情報で記念果樹園ができてそれで良かったん?という感じでした。それから、せっかくエヴァンが嘘である、ということをカミングアウトしtれ、そこからコナーの演奏シーンにを探し出すくだりになるのですが、あそこをやるならせめて「なぜ、友達のフリだ」っていってギブスに名前を書いてくれたかを絡めてくれれば、彼の抱えていた問題とエヴァンの心境がシンクロして、お互い、誰かを求めていた、ということがはっきりわかるのかな、と思いました。 ただ、それを差し引いても、ラストの余韻含めてなかなか良くできた作品だと思います。 【クリムゾン・キング】さん [映画館(字幕)] 7点(2021-11-27 13:47:18) |