回転 の Yuki2Invy さんのクチコミ・感想

Menu
 > 作品
 > カ行
 > 回転
 > Yuki2Invyさんのレビュー
回転 の Yuki2Invy さんのクチコミ・感想
作品情報
タイトル名 回転
製作国
上映時間100分
劇場公開日 1962-08-22
ジャンルホラー,サスペンス,モノクロ映画,小説の映画化,オカルト映画
レビュー情報
《ネタバレ》 大昔に観たときは、率直によー分からん映画だと思ったのですね。それは、この映画を単純に幽霊映画・ホラーだと思って観ていたからだった、と思うのですが、今回、原作を読む機会があったのでそれを機に観直してみました。

そもそも原作と言うのは、幽霊がメインの要素である以上は間違いなく怪談の類いなのですが、その中でより注力して描写されるのは主人公の心理的葛藤、すなわち、思わせぶりな態度を取り続ける子供たちが実際に「黒なのか白なのか」という部分の疑心暗鬼、或いはグロース夫人との関係性(協調または敵対)の部分に生まれる緊迫感であり、そういった主人公の不安・不穏な感情を描くものとしては確実に(心理的)サスペンスという方が適切なのです。その観点からすると、非常に控えめな幽霊自体の描写、端的なデボラ・カーのヒステリックな感情表現、豪奢ながら寂寥とした屋敷や物悲しいオルゴールの音色が形づくる全体の陰鬱な雰囲気、結局白黒がハッキリしない不可解な結末、といった部分の仕上げ方・出来映えを勘案しても、確かにこれは比較的優れている・的確な方の文芸映画だと言えるのではないかと感じるのですね。

ただ、よく言われることですが「小説(原作)か映画か」という観点で言うと、今作は原作と比較すると実は色々随分と簡略化されている、という部分に若干の残念さを覚えるのも事実です。子供たちに対する主人公の猜疑心というものは、原作では非常に地味な描写の繰り返しによって(最初から最後まで一貫して不穏な空気に包まれつつも)極めて緩慢に形成されてゆくのであり、それが彼女の最終的な狂乱状態に説得力を与えるとともに、その長きにわたる「不穏さ」を味わう、という意味でのサスペンスの醍醐味を同時に生み出しています。が、映画の方は率直にそれが全体的に結構にアッサリしたものに変わっちゃってて、小説を存分に楽しんだ身からすると少しばかり物足りない、という感じなのですよ。

その意味で言うと、映画では特にグロース夫人との関係が非常に軽い描き方になってしまっているのがだいぶ気になります。ジェスルの幽霊がフローラにもグロース夫人にも見えなくて、結果フローラとの関係性が瓦解する場面というのは、同時に唯一の味方であったグロース夫人との協調関係が反転するという点で小説ではココイチ衝撃的な場面だったと言えるのですが、映画ではそれが残念ながらそーいうものにはなっていないのです。そういった部分も含めて(前述どおりかなり上質な映画化だとは言え)やや原作の持つ「ウリ」というものが分かり難くなっている映画、だとも言えるかと思うのですね。

とは言え、全体としてはまま悪くない出来だと思います。私の本当のオススメは小説の方ですが、こちらも決して観て損も無いかと。暇なら是非。
Yuki2Invyさん [DVD(字幕)] 7点(2021-04-29 09:49:38)(良:2票)
Yuki2Invy さんの 最近のクチコミ・感想
投稿日付邦題コメント平均点
2024-04-29ゴジラ×コング 新たなる帝国6レビュー6.25点
オオカミの家8レビュー8.00点
2024-04-14aftersun/アフターサン6レビュー6.00点
2024-04-14トロイ(2004)6レビュー5.86点
2024-04-09ナイト・オブ・ザ・リビングデッド 死霊創世紀5レビュー6.67点
2024-04-06オーメン:ザ・ファースト6レビュー6.50点
2024-04-04オーメン/最後の闘争3レビュー3.71点
2024-04-03オーメン2/ダミアン5レビュー5.18点
2024-04-02オーメン(1976)8レビュー7.02点
2024-04-02愛の新世界7レビュー6.61点
回転のレビュー一覧を見る


© 1997 JTNEWS