1. <ネタバレ>物語としては悲恋、か。
NHKスペシャルで声を庵野に決める .. >(続きを読む)
1. <ネタバレ>物語としては悲恋、か。
NHKスペシャルで声を庵野に決めるシーン、あれは爆笑した。
パヤオ以外誰も納得してないけど、ノーとは言えないふいんきってやつで。
てなわけで庵野の声は全然悪くないです。
こういう声のやつおる。
誰かが言ってたが、一番の難点は、へたくそだから主演にしたのに映画の最後のほうは若干うまくなってることか。
物語の筋としては、やや美化され過ぎてはいても美しくもはかないいい作品だと思う。
「まんが」としてあまりにサナトリウムとかヒロインとかがきれいに描かれ過ぎてるのが難だが、
このあたりを汚く見せては主軸がぶれるってやつなので。
で、本編自体は8点あげてもいいんだけれど、
どうしようもなく、「音」が悪い、効果音が全て人の声でそれが非常に不快。
特に関東大震災のシーンの声の演技がゴミ。
控えめに言ってゴミ。
まともなSE版を出してほしいところ。
この点で2点減点。
パヤオは、大作でこういう実験をやってしまうのが痛い。
2. 過去、日本は貧しく遅れていました。みんなで一生懸命努力しま .. >(続きを読む)
2. 過去、日本は貧しく遅れていました。みんなで一生懸命努力しました。しかし、その努力の先に待っていたものは敗戦でした。きっと、少し努力の方向がずれてしまったのでしょう。明治維新で開国したころの欧米との科学技術の違いを思うときそれから70年ぐらいで国産兵器で欧米と肩を並べる処まで来たのは奇跡と言えます。黒船に腰を抜かした民族が世界最大の戦艦大和を建造しました。欧州から購入するだけだった航空機も世界レベルのものを生み出しました。戦闘機においては96艦戦、爆撃機では96陸攻がその嚆矢でしょう。
物理学を研究したその先に原爆がありその実現に向け研究を重ねてい湯川秀樹がいたように飛行機に夢をかけ戦闘機を設計した堀越二郎もいたのです。欧米へのキャッチアップに成功した96艦戦は幸福な機体ですが、負け戦の前面に立たされたゼロ戦はつらいことになりました。結果にとらわれずその努力をあの時代性の中で表現できたこの作品、9点ですかね。素晴らしい作品だと思います。
3. <ネタバレ>ふだんアニメは滅多に見ないのですが、風とか雨とか影とかの細か .. >(続きを読む)[良:1票]
3. <ネタバレ>ふだんアニメは滅多に見ないのですが、風とか雨とか影とかの細かい描写は熟練のワザにようなものを感じます。それから飛行機とタバコに強い思い入れがあることもわかりました。
しかし残念なのは、登場人物たちにまるで人間味がないこと。容姿も含めてキレイなところだけを切り取り、ひたすら品行方正で上っ面の会話をしている感じ。今どきSiriとかAlexaのようなAIのほうが、よほど味のある回答をしてくれるんじゃないでしょうか。
同時代ということで言えば、かの山本五十六は愛人との関係を部下に咎められたとき、「君たちが屁も糞もせず、女も抱かないなら話を聞こう」と一蹴したそうです。汚い例で恐縮ながら、主人公たちは屁や糞とは無縁の世界で生きている感じ。つまり人間ではなく、無機物でしかありません。
しかも、しばしば荒唐無稽な夢の世界に逃げ、奥さんもキレイな印象だけ残して去り、技術者としてがんばるほど戦争に協力することになるという主人公の苦悩や葛藤もまるで描かれていません。結局、この作品の製作者は何を伝えたかったんでしょう? 「タバコぐらい自由に吸わせろ」という現代への批判かな。
ただ、「ひこうき雲」は名曲ですね。[良:1票]
4. 今更ながらTVで視聴。
宮崎駿は「見せたい映画」から、自分 .. >(続きを読む)
4. 今更ながらTVで視聴。
宮崎駿は「見せたい映画」から、自分で「見たい映画」を作る人になってしまいました。
年をとるとみんな、自分のことを語りたくなっちゃうもんなんですね。
結婚したんだから、最後まで一緒にいてあげようよ。それが夫婦ってもんでしょ。
5. 宮崎駿監督による宮崎駿のための映画な感じでした。
もちろん .. >(続きを読む)
5. 宮崎駿監督による宮崎駿のための映画な感じでした。
もちろんそれに同調する方もいるでしょう。
私は監督の作る映画の時代背景と映像は好きです。
ストーリーは毎回ハマれず今作も、、、。
6. 金曜ロードショーにて鑑賞。元々アニメはあまり好きではないので .. >(続きを読む)
6. 金曜ロードショーにて鑑賞。元々アニメはあまり好きではないのですが、最初から大人向けを意識した雰囲気で一度見始めると止められなくなってしまいました。
最初から静かな流れと空想描写が多く、かなり意味深な雰囲気を醸し出しています。カプローニの「飛行機は美しくて残酷な夢だ」というセリフの答えを二郎自身が開発した自分の飛行機をもって、「出かけていったパイロットは誰も帰ってこなかった」という形で観客に語ります。受け手の感受性によって異なる答えが出てきそうな意味深な問いかけで深いです。また、全体的に多くを語らない作風も素晴らしくて「結核」や「山で療養」など、モノを知っている人にはより深く考察ができる作りになっている点も素晴らしかったです。少々異質に感じた主人公のセリフ周りと感情の無さも、これはこれで慣れれば”多くを語らない”という作風には合っていたように感じました。
堀達雄の「風立ちぬ」は読んでいませんが、あの時代特有の死の病(結核)を題材にした重たい小説です。彼らの悲しい生き様を宮崎アニメ風に美しい部分だけをかいつまんで見せてくれたことは評価に値するかもしれません。ただ、今の時代の女性には「旦那さんに美しい部分だけ見せて、彼の為に自分自身(菜穂子)が身を引くシーン」はほとんど理解不能かもしれません。
問題はゼロ戦の設計士、堀越二郎の物語です。堀越二郎の歴史の中に菜穂子を落とし込んだせいで、飛行機への情熱と妻への深い愛情が両立しなくなってしまったように感じました。また物語上は二郎が大きな失敗をして逃避という形で軽井沢につながっていきますが、軽井沢での流れが冗長で時間を割いた割りに菜穂子との恋愛要素がウマく流れていなかったように感じました。もう少し二人が心を通い合わせる丁寧な描写があれば良かったのですが、これを紙飛行機のやり取りでやってしまった点がイマイチでした。あと、ドイツ人カストルプとの会話もイマイチ浮いており、ほとんどカットしても良かったような状態になってしまっています。(時代背景を組んだ形でかなり深いことは言っているんですけどね・・)
最後まで静かな流れと空想描写で意味深な流れを作った割に、結局はよく判らずに終わってしまったような作品です。実際、あの時代は結核が流行った時代だし、戦争や震災など、彼らのように短い幸せを噛みしめて生きた人たちもたくさんいたハズです。随所に素晴らしい描写・表現があっただけに本当に惜しい、名作に一歩届かずといった作品でした。(ただ、もう一度落ち着いてスクリーンで見てみようとは思っています)
7. 宮崎アニメのなかで、もっとも美しい作品ではないかと思います。 .. >(続きを読む)
7. 宮崎アニメのなかで、もっとも美しい作品ではないかと思います。そこに「悪」の要因があるにせよ、その美しさを讃えずにはいられません。もっとも愛があふれた作品だろうとも思います。しかし、その愛こそが、大いなる「悪」なのでしょうね。ひたすら「善」を求める観客には拒絶されるでしょうが、そもそも美や愛は、かならずしも「善」であるわけではなく、ときとして大いなる「悪」だと言わざるをえません。宮崎本人の言葉を借りれば、この映画にあふれる美や愛こそが悪への誘惑=メフィストフェレスです。
まごうことなき「善」の映画など存在しない。それどころか、武器をもって闘ってきた宮崎アニメの過去作品のすべては、たえず「悪」を美化(あるいはエンタメ化)しつづけてきたはずです。その意味では、むしろ『風立ちぬ』こそが、その矛盾にもっとも向き合った作品だといえる。鈴木敏夫が意図したように、この矛盾にこそ、宮崎駿が描かねばならない真実があったのだといえます。
戦争技術者をあからさまなマッドサイエンティストとして描く紋切り型にくらべれば、むしろ慎ましく美しく生きた戦争技術者の生き様にこそ、真実の一端があるのかもしれない。一部のエリートが民衆の善良な生活を破滅させたとする紋切り型にくらべれば、むしろエリートの美しい技術を愚かなナショナリストたちが応用したという醜悪な実態にこそ、真実の一端があるのかもしれません。
では、科学技術者はいったいどうすればよいのか? その答えが映画のなかに用意されているわけではありません。強いていえば、その答えは、破壊し尽くされた飛行機の残骸を見つめる観客のほうに投げかけられています。
もともと久石譲の音楽は好きじゃないけれど、この映画の音楽は率直に美しく感じられました。荒井由実の曲も、死と飛行機の描写にティンパンアレーの透明なサウンドが重なり、さらには彼女のコンサバな姿勢までもが相俟って、まるであらたに意味付けされた楽曲のように生まれ変わっていました。
8. <ネタバレ>一度夫婦となったのであれば、血を吐いて死ぬところまで一緒に、 .. >(続きを読む)
8. <ネタバレ>一度夫婦となったのであれば、血を吐いて死ぬところまで一緒に、と思うのが人情。
きれいなところだけを切り取ってあえてキレイゴトにしているところに、奇妙な物悲しさを感じた。
堀辰雄を再読してみるか・・・
9. <ネタバレ>面白さでいったらぜんぜん面白くない。白昼夢のごとく冷めた口調 .. >(続きを読む)[良:1票]
9. <ネタバレ>面白さでいったらぜんぜん面白くない。白昼夢のごとく冷めた口調で語る主人公が、天才的な飛行機設計者なのは分かるけど魅力がないったらありゃしない。ジブリなのに、観ててもぜんぜんワクワクしないのだ。子供のときにこれを観てたらどう思っただろう。
作中おっと思えたのは、祝言をあげるシーン。忍ぶ川よろしく、美しい花嫁の登場シーンと仲人とのやり取り自体は素晴らしいのだが、でもこれってヒロインの独りよがりかなとかいちいち引っかかるのだ。理想の女性像を入れるのはいいけど、結核なのに一度も咳のシーンがないのも違和感があった。やたら頻繁にタバコを吸うシーンも入ってて、これもどうかしてるんじゃないか。街中いたるところで禁煙になってるのに。夢オチも多すぎる。若いころに名声を得て飛び抜けたものの、時代についていけなかった老監督の最後のやりたい放題、という感じ。
点数を4点にしたのは、それでも飛行機の描写とか迫力があったし、ヒロインの生き方にも共感できたから。
ではさようなら、宮崎駿監督。[良:1票]
10. 地上波で流れているのを見かけ、不意に三度目の視聴。
本監督 .. >(続きを読む)[良:1票]
10. 地上波で流れているのを見かけ、不意に三度目の視聴。
本監督らしいエンターテインメント映画でありながら、質も高い作品だと感心しながら見ていたが、
見ているうちにそのエンターテインメント性が何か別のものに転化していった。
本作で最も批判されているシーンが最も素晴らしいシーンであるのは皮肉である。
生きることの閉塞感、それも、閉じているというよりも、閉じていくというような、たまらなさ。
それが開放されるということもなく、本作は終わっている。
観終えた後、この作品について話そうとしたとき、不意に涙が溢れて止まらなくなった。
生きることについて、タルコフスキーの「サクリファイス」を優れた作品だと考えていたが、
本作のほうがずっと上だと今回考えを改めた。[良:1票]
11. <ネタバレ>兵器オタクと左翼的平和主義思想の監督の最終作。話は矛盾してい .. >(続きを読む)
11. <ネタバレ>兵器オタクと左翼的平和主義思想の監督の最終作。話は矛盾しているとも思うが、画面で最後までみせる。可もなく不可もなく。
12. <ネタバレ>この映画は、ぶっちゃけ映画「セッション」と同じテーマの作品と .. >(続きを読む)[良:1票]
12. <ネタバレ>この映画は、ぶっちゃけ映画「セッション」と同じテーマの作品と思うのですが、要するに美しいものを創るためにどこまでヒトデナシになれるかという話。
「セッション」では作り手がヒトデナシであるということを自覚しているので、それなりの因果応報もあって、その上で、素晴らしい芸術を生み出す事実に震撼としたりもしたのですが、この「風立ちぬ」はその辺の倫理観によるリミッターが何もなく、ただただヒトデナシ行為が粛々として続けられていき、それがヒトデナシ行為でないかのようにごまかして描かれ、最後にはあたかも美しい物語であったかのように美化されて終わるという、割とどうしようもない救いがたい自己満足作品かなあと思いました。
相変わらず映像は素晴らしいので、倫理的に誤ったヒトデナシ行為を、あたかも美しい素晴らしいものであるかのように誤認させる極めて悪質極まりない作品という認識で、だから最後に「生きねば」とか、主人公がふざけたことを言い始めますが、くそじじいはとっととしねよ、としか思えませんでした。
あと、時期的に宮崎吾朗氏の「ゲド戦記」への返歌的作品かなと思いつつも観てたのですが、作中には息子どころか子供の話すら一切出てこないありさまで(さすがにあの当時結婚して子供の話が一切出てこないのは異常でしょうと思うのですが)、何もかもすっぱりなかったことにされてて、その辺りも酷さに拍車をかけています。
現在、結局引退すると言ったくせに、また復帰しておりますが、本作のような純文学的な話を描こうとするとどうしてもヒトデナシな話になって勘弁してほしい感じなので、どうせ作るならエンタメ作品を! と思う次第です。[良:1票]
13. <ネタバレ>映画自体は主人公の半生を描いたNHKの朝ドラ的な作り。
各 .. >(続きを読む)[良:2票]
13. <ネタバレ>映画自体は主人公の半生を描いたNHKの朝ドラ的な作り。
各所にジブリ的雰囲気の良さはあるものの、病弱な女性と結婚し、彼女がいずれ死ぬであろうこと以外に盛り上がる要素もない。
主人公の飛行機づくりに対する情熱も自分にはもうひとつ伝わらなかった。
その最大の要因になっているのは起用した声優陣。
庵野秀明氏を起用しなければならなかった理由はどこにもない。
他にも俳優を多く起用しているが、これもほぼマイナスに作用している(唯一、ヒロインの瀧本だけは合格点)。
スポンサーからのお金集めなど大人の事情があり、日本のアニメ映画は話題となる俳優の起用が当たり前になっている。
宮崎監督自身もととろの糸井重里で味をしめ、ハウルでキムタクを起用して以降、率先しているように思える。
声優が存在せず俳優が声をあてるのがあたりまえの海外と日本は違う。
声優という職業は日本が誇る独特の文化であり、当然のことながらその実力はほとんどの場合で俳優を上回る。
また、あまりに外見を見すぎたため「キムタクはどう聞いてもキムタクにしか聞こえない」というビジュアル的弊害も声優の場合は少ない。
声優は見る人に安心感を与え作品に没入でき、実際裏切られる可能性も低いのだ。
日本のアニメの巨匠がそれをわからなくてどうする!?と思う。
他の監督が俳優を起用しても、宮崎氏だけには声優を使ってほしい。花形である大作アニメに「声優」を使ってほしい。
そのほうが作品がしまる可能性ははるかに高く、それが後世評価として引き継がれていく。
全部が全部とは言わないが、公開時の一時的な話題作りのために、時の人気俳優や奇をてらった起用をすることがどれだけ作品に悪影響を及ぼしているか……。
この映画の庵野秀明氏が脇役であればこういうレビューは書かなかったが、あれが主人公というのはあまりにひどいと感じたのであえて書きたくない苦言を書きました。[良:2票]
14. 庵野の声がひどーーーいです。
最初の一言を聞いた瞬間吐き気 .. >(続きを読む)[良:1票]
14. 庵野の声がひどーーーいです。
最初の一言を聞いた瞬間吐き気がしました。
監督なぜ、庵野なんだーー!
菜穂子の電車での疲れ果てて猫背になっているところで泣きました。
エンドロールを聴きながらも涙がでてきました。
庵野じゃなければ・・・・ 残念[良:1票]
15. <ネタバレ>なんとも評価に困る作品である。
戦中の日本をリアルに切り取 .. >(続きを読む)
15. <ネタバレ>なんとも評価に困る作品である。
戦中の日本をリアルに切り取る訳でもなく、ラブストーリーをたっぷりやるわけでもない。
ただ戦中で、そこで夢を志した男がいずれ来る悲しみを知りつつ恋をし、大好きな飛行機を作り、生きて行く。それだけのようにも見える。
もちろん主人公は宮崎駿自身であり、本作はまるで彼の夢である。だから自分と同じ位置に身を置く男、庵野秀明に声優を任せたのであろう。
理想の女性。好きな時代。大好きな飛行機。それをこれでもかと詰め込んだような作品だ。
にしてもやはりアニメーションは凄い。夢の中の摩訶不思議な風景に飛行機描写、それに関東大震災で逃げ惑う大勢の人々などさすがジブリと唸らせられます。
16. <ネタバレ>人生50年~と信長は舞ったわけですが、私もとうに製造から50 .. >(続きを読む)[良:2票]
16. <ネタバレ>人生50年~と信長は舞ったわけですが、私もとうに製造から50年を過ぎてしまいました。
で、そんな私が小学生の頃、リアルタイムで初めて聞き覚えた荒井由実の歌が「ひこうき雲」だったのです。荒井由実の初アルバムのタイトル曲で、この歌が話題になったのは1974年ころだったと思います。いやぁ懐かしいですね。
ちなみに一見きれいなイメージのこの歌ですが、実は投身自殺をした少年の事を歌ったものである事はあまり知られていません。
「空にあこがれて空をかけていく あの子の命はひこうきぐも」ですからね。命といっちゃってますし。空かけられませんよね人間だもの。
…と、その歌の出自を知っている自分としては、そもそもこの映画の主題歌として「ひこうき雲」が流れていた事にはかなりの違和感がありました。
「ちょおま」状態です。イメージ先行もいかがなものか、ってとこでしょうか。
さて、そもそもヤマトガンダムのリアルタイム世代でアニメ少年だった私は、昔、宮崎駿が大好きでした。
「未来少年コナン」や「ルパン三世カリオストロの城」で魅せる「職業漫画映画監督」としての力量は当時から素晴らしいものがあって本当にワクワクしたのです。
彼の作品に出てくるヒロインはどれもこれもそっくりの「うんちもおしっこもしないような可憐な美少女」で、これは当時のテレコムアニメーションフィルムの若手アニメーター座談会でも女性アニメーターが話題にあげてました。
ある日の事、「監督ってうんちもおしっこもしないような女の子しか出しませんよね」とその若手女性アニメーターが宮崎監督に言ったら「じゃぁ君は、うんちやおしっこをするような女の子が出るアニメが観たいのか」と言われた、というエピソードです。
(女性にはこのヒロイン像に抵抗がある人がそこそこ多いわけです(製作サイドの中でも)。まぁその気持ちはわかりますが)
この宮崎監督の理想とするヒロイン像は終始一貫していて、何十年もの創作活動の中、ついに最後の作品となったこの「風立ちぬ」まで貫かれています。
典型的な「男にとって理想的な都合のいい処女で女神な」この映画のヒロインが嫌いだという人も(特に女性には)いると思いますが、これは監督のまさに主義主張(そもそも昔からただのオタクなのです、この人は)なのですから、むしろぶれてない事を評価すべきでしょう。
と、まぁ宮崎駿についてはいろいろ語りたい事もあるのですが、しかし、ジブリの作家となってからの宮崎駿は個人的には結構嫌いなのです。
周囲からのなんらかの制限がある職業監督の頃と違い、映画を自由に撮れるようになった事により彼の内なる作家性が全面に出てくる事になったわけですが、その結果作られる映画は残念ながら「僕が観たいのはこういうのと違う」という方向になってしまっているからです。まぁ僕のために映画を作ってるわけじゃないから、それはしょうがない事なのですが。
で、そんな宮崎監督の最後の作品となったこの映画ですが、結論から言えば、この映画、ぶっちゃけさして面白い話ではありません。
展開も地味ですし「え、そこで終わりなの?」ってとこで終わるし、肝心の二郎(庵野)のセリフは棒読みすぎて笑ってしまうレベルです。
ズブの素人を映画の主演に使うような映画なんて企画ものでもない限り普通はありえないわけですが、なぜかジブリのアニメ映画ではそれが許されてしまうのは、よくわからない風潮ですよね。
また、世代的なものもあって、私自身子供の頃から「レシプロ戦闘機が大好き」ですし、当然、零戦の開発者である堀越二郎についてもよく知ってる人間なわけです。
で、なまじいろいろ知っている航空機マニアだからこそ、映画を観ていて「何を描きたかった」かがわかるシーンもあるし「なぜこうしたか」がわかるような気がするシーンもあるし、また一方で「なぜこうしなかったのか」と必要以上に疑問に思ったりもしてしまう、なかなか罪作りなテーマだったのも確かです。
しかも主題歌は小学生のときにリアルタイムで聞き覚えた「ひこうき雲」なんですから、個人的には自分の小学生の頃の、そして宮崎駿が好きになったころの原体験を思い出させてくれる、きわめて個人的な意味で感傷的な映画だったと言えます。
しかしそういう個人的な原体験をはずして考えれば、この映画、役者の演技はまるでダメだしストーリーも地味でさして面白くありません。とても高評価できる映画ではない、としか僕には思えないのです。[良:2票]
17. わたしは人間と人間の手足頭脳の延長としてのメカとの関係を描い .. >(続きを読む)
17. わたしは人間と人間の手足頭脳の延長としてのメカとの関係を描いた作品(例えば「アポロ13号」や「ハドソン河の奇蹟」)に高得点をつけることにしていますが、堀辰雄のセンチメンタルな私小説と同じタイトルのせいでずっとこの作品は恋愛物だとばかり思い込み、長らく鑑賞をサボっていました。あるきっかけで零戦戦闘機というメカを追求した技術者の話だと知って即レンタルしましたが、やはりタイトルに沿った恋愛の脚色が邪魔に感じられました。実際の堀越二郎は作品の中の同姓同名の人物と違って愛妻との間に多くの子宝に恵まれ、戦前には貴族にも列せられて公私ともに恵まれた人生を送ったようですが、ただ一点、心血を注いで作った零戦戦闘機が特攻隊の若者を乗せて敵の軍艦を百発百中で撃沈する道具に使われ、つまり破壊されることが目的で使用されてしまったという、実際の堀越二郎がおそらく抱いていたのに違いないやり場のない怒りや悔いを恋愛抜きでもっと掘り下げて描いてくれていれば良かったのに、と思います。
18. <ネタバレ>二郎は、一見、優しくて紳士的で真面目な好青年。でも実際には自 .. >(続きを読む)
18. <ネタバレ>二郎は、一見、優しくて紳士的で真面目な好青年。でも実際には自分の好きなことしか頭に無い、寧ろ薄情な人間だ。自分の作った飛行機が人を殺す道具として使われようと、妻が山の療養所でひっそり息を引き取ろうと、あまり意に介してない。ヒロインが凄くて、二郎が薄情な人間であることをよく分かっている。そういうところも含めて二郎を愛している。すごい恋愛映画だと思う。主人公は、宮崎駿の分身なのだろうし、庵野秀明の分身でもあるのだろうし、そして私の分身でもある。私自身も薄情で身勝手で、しかし人からは真面目で優しいなどと勘違いされているような男なので、この映画はとても響くものがあった。
19. <ネタバレ>これは、宮崎駿監督がニュー・シネマ・パラダイス(特に完全版の .. >(続きを読む)[良:1票]
19. <ネタバレ>これは、宮崎駿監督がニュー・シネマ・パラダイス(特に完全版の方)を作ったらこうなっちゃうよ、という作品でしょうかね。
向うが映画への愛なら、こちらは空への憧れ、いや、空を飛ぶ飛行機の「美しさ」への憧れ。それも、この作品の主人公たる二郎さん、トト君よりもかなりタチが悪い。トト君の場合、ベースとして幼少期以来の映画への愛があったとしても、そこにアルフレードさんとの交流があり、少女エレナとの恋愛がある。だけどこの二郎さん、基本的に飛行機のことしか頭にない。それでも女性には優しかったりして、それも別に打算がある訳じゃなく本当に優しくって、それでもやっぱり飛行機のことばかり考えている、こういうヒトが一番、罪作り。
終盤で、病の奥さんが最後に布団をかけてくれたことにも気づいていない。この場面で、奥さんが寝顔から眼鏡をはずすのが印象的でした。そういや作品自体も、子供時代の二郎さんが眠って夢を見ている場面から始まったんでしたっけ。このヒト、何かとよく寝てる。そして飛行機の夢ばかり見てる。
何よりこの二郎さん、最後にはすべてを失いながら、まるで後悔も反省もしている気配がない。ニュー・シネマ・パラダイスより、はるかにはるかに重症です。
これが宮崎駿というヒトの一面なんだろうなあ、と。ホントに怖いヒト、その怖さが、他人を感動させる。
という自覚症状に向き合い、それを描ききった、総決算のような作品、なんですかね、これは。[良:1票]
20. <ネタバレ>悪魔に魂を売るかのごとく、私生活を代償にしながら夢を形にして .. >(続きを読む)[良:1票]
20. <ネタバレ>悪魔に魂を売るかのごとく、私生活を代償にしながら夢を形にしていく二郎。
自分の命を削りつづけながらも、二郎に寄り添い続ける菜穂子。そこには、世間が考える善悪や倫理観などの物差しでは図る事ができない幸せがある。そしてあまりにも刹那的な生き方。
他の人にはわからない。けれど幸せ。それが全て。
そして二人の姿に、ルパンがポルコ・ロッソがアシタカが逃げ続け、ポニョで結実した宮崎監督が描く愛の形のその先を観た気がした。[良:1票]