実のところ、この作品はいつも涙なくしては見られません。
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実のところ、この作品はいつも涙なくしては見られません。
あそこまでの抑圧を受けたわけではないけれど、私自身が親の望むコースに抗えなかった一人なので、他人ごととして受けとめられないのです。
しかも、私の涙をさらにしぼるのは、監督が、泣かせよう、という作り方をしていないから。父親の描き方があざとくなくて、父のほうもいっぱいいっぱいだったのがよくわかる。
その悲劇性も心にしみます。
でも、いくら愛情から出発したことでも、個人の人生を抑圧しちゃいけない。
そちらのメッセージのほうが上回っている。
だから、その人間理解の深さ、監督が人間に寄せる愛の深さに、余計に泣けるのです。
このストーリーを、芸術家の特異な人生、と読む人も多いかもしれないし、それも間違いではないと思いますが、普遍性をも描ききれたからこその、名作だと思います。
過去を浄化する力も持っている音楽の力にも感動しますが、それ以上に、後半、運命的に出会ったパートナーと交わす、シンプルで豊かな愛情表現に心打たれました。[良:1票]