<ネタバレ>私がこの映画を通して見ていたのは人種差別問題ではなく、
弟 .. >(続きを読む)[良:2票/笑:1票]
<ネタバレ>私がこの映画を通して見ていたのは人種差別問題ではなく、
弟が抱く兄への憧憬でした。
いつだって自分の前を歩く兄の背中を、弟は追いかける。
兄は自分の知らない世界を見ている。兄の視線の高さまで、少しでも近づきたい。
そこに善悪の判断はないかもしれない。
いや、むしろ反社会的であるほど、憧れは強くなる。
カメラはダニーの目となり、デレクの肉体を讃えるように映し出す。
憧れは時に盲目だ。疑いたくはないのに、心が追いついてこないという体験を
したことがある人は多いだろう。だから私はデレクの改心を素直に受けとめる
ことが出来た。
ダニーについても同様で、いくら追いかけても追いつけなかった兄が、
自分の視線まで降りてきて、刑務所での出来事を包み隠さず打ち明けて
くれたことは、かけがえなく大切な出来事であっただろうと思う。
人種問題に疎い日本人の私には、こういう見方しかすることができなかったが、
それでも十分に胸に迫ってきた作品でした。
この映画を観たあと、辻仁成の「旅人の木」という小説を思い出した。[良:2票/笑:1票]