<ネタバレ>原作未読。
雨の羅生門と猛暑の藪の中、そして検非違使で .. >(続きを読む)[良:1票]
<ネタバレ>原作未読。
雨の羅生門と猛暑の藪の中、そして検非違使での告白と3シーンにおける、今でいうところのシチュエーションミステリー。
特に京マチ子が顔に汗を浮かべながらの妖艶な演技が印象に残る
ある強姦事件を当事者たちが全く違う視点で供述を展開し、さて真実はいかに…という展開がユニーク。
しかもその全員が自分に都合のよい解釈(つまり都合悪い点を改変している)で告白するわけだが、恐らく最も真実に近い告白をする志村僑(事件の目撃者)ですら、自分に都合の悪いこと(短刀のこと)を隠している。
興味深いのは、結局多襄丸と武士との決闘もお互い「へっぴり腰」だったということ。
本作は戦後まもない時期の作品だが、恐らく戦争での歴史や回想というのも似たようなもので、大本営発表の例を持ち出すまでもなく、また一人ひとりの戦地での回想も自分に都合よく、そして自分に都合悪いことは語られなかったであろう。
しかし、最後はそうした人間の暗部を認めつつ、それでも人間に希望を示して終わるエンディングもよい。
本作は戦後という時代背景も踏まえ、人間存在の本質を焙り出して見せた黒沢監督の力量が光る名作。[良:1票]