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<ネタバレ>クライマックス前の倫理委員会のシーンなどは、ともすればテレビドラマ的なダイアログ従属型の場面になりがちだが、
人物の出入りと共にさまざまな音響(手ばたき、携帯のコール音、スクリーンの開くモーター音)をフレーム外から先行させていくショットつなぎで
シーンの緊張を持続させ、その後の動的なスペクタクルへのタメとしても機能することとなる。
病院玄関口で待機する山本太郎らのショットに、救急車のサイレン音を次第に高めていく形で響かせる。
エピローグでの堺雅人と羽田美智子のツーショトに、救急ヘリの音を響かせて次の屋上ヘリポートシーンにスムーズに繋げる。
舞台が病院という閉鎖空間に限定される舞台だからこそ、発生源不明の音響を配置することによって画面外へのベクトルを創り出す。
そうした意識的な音の用法を以て観客をドラマに引き込んでいこうという細やかな芸は
随所で確認できる。コーヒー豆を挽く不協和音の活用の巧さも言うまでもない。
モブシーンでの、画面中央からフレーム外へと放射状に人物の動線をつくって空間を広げてみせる演出も同様だろう。
モノクロでのパートカラー処理によって印象づけられる、赤色灯、血、口紅の艶めかしい赤が仄かにエロティックなラブシーンとなっている。