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<ネタバレ>バルセロナの路地で、異変に気付く織田裕二のショット。その後景に、意味ありげにバイクを止めている男が映っている。続くチェイスシーンでは既に織田はオートバイを駆っている。という具合に、鮮やかな省略の妙味を随所に見せてくれる。
一方で、カットは多めに割られながらも、そのうちの1ショット内に難度の高いアクションを取り込んでインパクトを作る工夫も徹底されている。(タクシー後方からの清掃車の激突、マーケットでの三つ巴の追跡シーン)
空ショットは極力抑え、自然光を活かしながらロングショットでロケーションと人間とを同化させることで、双方の存在を見事に際立たせている。
その白眉が、緑の地平線を背景に黒木メイサが片足を引きずりつつ歩む横移動のショットだろう。
あるいは、風の感覚を伝える演出の数々も細かい。空撮の、風に乗るような感覚のみならず、ホテルや車の窓の開閉によって主人公らの顔に吹き付ける風は、独特の情感を醸し出すとともに、説話的にも無駄なくシークエンスに活かされている。
伏線としての小道具、仕草の活かし方もさらに良くなっている。