<ネタバレ>ベネット・ミラー『マネーボール』では裏方に徹する功労者を表わ .. >(続きを読む)
<ネタバレ>ベネット・ミラー『マネーボール』では裏方に徹する功労者を表わすように、
ブラッド・ピットの像は濃い陰影が強調されていた。
イーストウッド&トム・スターンなら更にロー・キーかと思いきや、
ストーリーの明朗さとロケーションの解放感にあわせて、
ポジティヴな画調が爽やかだ。
暗闇が活かされるのは、
エイミー・アダムスからの電話をそれと知らずに悪態をついてしまう
イーストウッドを照らすランプの灯や、夜の漆黒の湖、
忌わしい過去を仄めかす短いフラッシュバック映像くらいである。
その回想の中に一瞬現れる彼の禍々しい形相はやはり
『タイトロープ』からのものだろうか。
スコープサイズを活かした横並びの対話劇。
それを捉える奇を衒わない構図と編集。その堅実な語り口に品がある。
視力の衰退した静のイーストウッドに対し、
ビリヤードにダンスに投打にと、颯爽とした動が
魅力的なエイミー・アダムスが彼の球を打ち返す。
楽しげにグラウンドを駆ける娘と、彼女を眩しそうに見る父親。
そこで緩やかに旋回するカメラと、
静かに流れる音楽によって豊かな情感が流れてくる。
そして、彼女は何の躊躇もなく携帯電話を軽やかに投げ棄てる。
その決断のアクションのシンプルさ・軽快さこそが素晴らしい。