ドイツはこういう話好きだね。淫婦に振り回される男もの。5年後 .. >(続きを読む)
ドイツはこういう話好きだね。淫婦に振り回される男もの。5年後の『嘆きの天使』とか。あるいは時代の流行りだったのか。谷崎の「痴人の愛」もだいたいこのころ。若干先だから映画に影響されたってことじゃなさそうだ。しかもこういう淫婦の時代の後に、ドイツも日本も、病的に健全な男の時代に突入していってしまうんだな。それにしても無声映画の雄弁さ。水道のしたたりと、赤ん坊のおもらしのしたたり。二人の女を足先まで見比べる視線。あるいは耳を澄ませているそのアップ。テーブルのいたずらがきをめぐるサスペンス。ひそひそささやきあう人たち。ブランコシーンの緊張。無声映画のあらゆるテクニックが呼び集められている。ただの三面記事にしかすぎない出来事が、それ以上の物語に変わっていく。