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<ネタバレ>■「プライベート・ライアン」以来、戦争映画といえばあのスタイルが王道みたいな感じだけど、その流れでこの作品を理解しようとしても意味がない。これはあくまで「時空の魔法使い」クリストファー・ノーランの映画である。
■冒頭、主人公が独軍の銃撃から逃げていると、いきなり視界が開けてダンケルクの海岸についてしまった。もうこの時点で時空がねじ曲がった感が凄い。それを皮切りに、いつの間にか数日たってたり、エピソードごとの時間経過が全くバラバラだったり、と、とにかく時空を解体しまくる。
■それはつまり、「ダンケルクというブラックホール」を描く試みではないか。この地に吸い寄せられるようにさまよい出たり、なんやかんやで中々脱出できなかったり、やっと脱出できると思ったら結局また戻ってきてしまったり。ダンケルクというのはそういう(ホラー映画にでもありそうな)ヤバい場所なんだということを、時空をもてあそぶことで強調しようとしているのだと感じた。
■しかし、それらはやっぱり戦争の恐怖を伝えるための手段に過ぎない。マーク・ライランスが、「我々の世代が若者を戦場に追いやってしまった」というようなセリフを言うけど、このご時世に生きる人の親として、大変身につまされる。また、兵士たちが本土に戻って歓迎を受けるシーンでは、「よく戻ってきたなぁ」と私も一声掛けたくなった。大変技巧的な映画ではあるが、それにも拘らず、か、それが故に、か、分からないけど、ダンケルクという戦場の閉塞感が生々しく伝わってくる、骨太な戦争映画である。エンドロールでは涙が止まらなかった。[良:1票]