3.ネタバレ 原題が The Quiet Girl、明らかに、同じくアイルランドを舞台にしているフォードの有名作『静かなる男 (The Quiet Man)』に因んでいるのだろうから、『静かなる少女』という邦題でいけただろう。満点の映画だが、このザンネンな邦題と、ラストシーンが事の重大な成り行きを敢えて放置していることで、一点減点。キャメラが美しく無駄なく(多い省略も有効)、俳優陣も瑕瑾なし。主演の少女のまさに抑制の効いた演技には、濱口竜介ふう演出の良きものを感じる。本当にいい映画だ、あの乱暴な『静かなる男』なんかより遥かに。比較ついでに、少女もの比較で『ミツバチと私』(2023)を参照すると、いかに『コット、はじまりの夏』の画面に快い緊張が溢れているかが感得できる。