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<ネタバレ>今作のグレース・ケリーは「裏窓」の彼女とは正反対と言っていい。
奔放そうで脚をバキバキに折った男の面倒をみたり、愛が故に独りで乗り込むなんて事もやっちゃう「裏窓」。
対して「ダイヤルMを廻せ!」は清純そうで夫が嫉妬に狂う“原因”を作ってしまう女性を演じている。
赤いドレスで接吻なんてシーンだけでも官能的なのに、薄いナイトウェアで良いケツした若妻にうろつかれた日にゃあ襲いたくもなるわ(おいコラ)。
そりゃあ何度もキスして「愛しているわ」とやっている嫁が本当は・・・なんて事されてたら誰だって怒る。それが嫉妬によって憎悪に変わる恐ろしさ。
かつてユダがキリストを裏切る際に“接吻”をしたように、この男も女に対してその接吻で応えるのである。
女が去った後、“依頼人”は“殺し屋”に異常な依頼をする。最初数分の退屈な会話が、その異常さが露呈した瞬間に張り詰める空気。
カメラが上から部屋の様子を映し、殺し屋が徐々に依頼人の計画にのっていく様子を強める。
劇中で幾度も閉じられては開けられる扉、手袋や同窓会の写真、そして鍵。鍵への執着振りは「汚名」を思い出す。
依頼人が指紋を気にする様子に殺し屋は次第に応じるようになり、椅子に投げ込まれた“前払い”を無言で受け取り依頼は成立する。
依頼人も殺し屋のために準備を整える。
鍵を確認し、カーテンを閉め、手袋、バッグから鍵を奪う、階段にかけられる手・・・。
殺し屋も依頼人を信じて闇夜に姿を現す。
もしもグレース・ケリーが不倫だけでなくあんな事やこんな事までヤッちゃった文句なしのビッチだったならば、俺はこの二人の男たちを応援していただろう。
とにかく浮気なんて許さねえという人は問答無用で応援していた人もいただろうね。
時計が緊張を高める演出。「真昼の決闘」は戦闘まで、この映画では一瞬の決着のために!
練られた計画によって繋がる二人の男。それを“切り裂く”思わぬ得物が標的をトドメる。殺っちまった瞬間の嫌悪感・それを人の前でどうにか耐えようとする気丈さ。あるいわ図太さか。
完璧な筈の計画が音を立てて崩れていく後半の二段構え。旦那も説明できない表情になっていきます。
それでも殺し屋に手紙を“渡して”まで、法によって殺害しようとする諦めの悪さ。妻への目配せも複雑、グレース・ケリーの背景も真っ赤な血のように染まる。
「君がいなければこんな事にはならなかった」
じゃあその男を殺れやっ!ホモかテメエは。どっちにしろ嘘の上塗りも限界。一枚上手の警部にもはめられて自宅で袋小路。
警部の部下「こんにちわ」
これには依頼人も苦笑いするしかなかった。[良:1票]