<ネタバレ>「赤い靴」やチャップリン、そしてジョン・カサヴェテスの「オー .. >(続きを読む)
<ネタバレ>「赤い靴」やチャップリン、そしてジョン・カサヴェテスの「オープニング・ナイト」すら思い出す映画だ。
処女のように清らかな“白”と、情婦のように官能的で挑発的な“黒”のニナ。
彼女の様子はルイス・ブニュエルの「欲望の曖昧な対象」にも通じるし、破滅に向って踊り狂っていく美しさは「赤い靴」の赤い靴に恋をしてしまうヒロインや「モダン・タイムス」の薬でハイになってトチ狂うチャップリンの滑稽さと恐怖を思い出す。
チャップリンも、「赤い靴」のヒロインも、この映画のニナもみんな心から踊りを愛し、何処か狂気地味た動きで魅せてくれる。その狂気が我々の心も掴んで離さないのだろう。ニナの見る幻想(妄想)は正に狂気の沙汰。ニナが文字通り白鳥になるシーンは彼女自身の願望と恐怖の現われ。
普通あれだけヤりすぎると笑いの種に変わってしまうが、それを感じさせないヒロインのニナを演じるナタリー・ポートマンの凄味!
「レオン」やウェス・アンダーソン作品の可愛らしさい彼女も好きだけど、こういう凄まじい女性をやらせても凄いのね。
俺が最初に「欲望の曖昧な対象」の名前を出したのは、あの作品はボディ・ダブルの演出でまるで一人の人間がもう一つの人格を持つような演出が上手かった。
一方、この作品のポートマンはたった独りで女優としても、ダンサーとしても演じきってしまう。「ボディ・ダブルやったんじゃないの?」と疑惑が持たれるほど彼女は観客の度肝を抜いてしまったようだ。
ストーリーでも自分の夢を果たせなかった母親が娘にかけるプレッシャー、ライバルとの競争、闘争心、嫉妬、憎悪。しかしトマも罪な男だぜ。ニナの唇盗んでおいて、ベスの誤解を生んでその誤解がニナを破滅させ…つうかニナだのトマだのベスだの何で二文字ばっかなんだよ、紛らわしい。
ラストは「新手の夢オチ」と捉える人もいるかも知れない。複雑なラストだが、アレはアレで結果的に“自分に打ち勝った”姿なんじゃないだろうか。もしくわ、あの映画そのものが幻想だったのかも知れない。
この作品が気にいらなかったという人も「レスラー」「レクイエム・フォー・ドリーム」は見て下さい。