<ネタバレ>老人の住む国などない。
どの時代も「昔は良かった」とか「最 .. >(続きを読む)
<ネタバレ>老人の住む国などない。
どの時代も「昔は良かった」とか「最近の若者は」と嘆いていただろう。
80年代のアメリカですら、常に理不尽な暴力で満ち溢れていた。
アントン・シガーは、まさに己のルールで遂行するアメリカの影の象徴だ。
目的のためなら道行く人ですら銃を向ける死神である以上、
殺害シーンが次第に省略されていき、ある種の諦めを受け入れさせる。
一方、大金をくすねたカウボーイは主人公のように思えるが、
終盤でいきなり死体で再登場する無情さ。
そして理屈を捏ね繰り回すも何も出来ない老保安官。
徹底的に行間で描かれる諦観と閉塞感がアメリカの病理を浮き彫りにさせる。
二度シャツを買うシーンが出てくるが、
もし少年たちが大怪我したシガーからお金を貰わなければ、
ひたすら物質主義に邁進する現在のアメリカに希望はあったのだろうか?
現代アメリカに警鐘を鳴らした本作の教訓が生かされることなく、
『血と暴力の国』は斜陽に突き進む。