みんなのシネマレビュー |
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ネタバレは禁止していませんので 未見の方は注意です! 【クチコミ・感想】
★7.《ネタバレ》 人間魚雷回天、個人的には回天は帝国海軍が産み出したもっとも非人道的で悪魔的な兵器だと思っています。人間を爆弾と一体化させるのが特攻だけど、航空機による特攻攻撃は天候不良や接敵失敗で生還というか基地に戻ってくることができる。ましてや航空機は飛行するのがそもそもの目的の機械だが、爆発物そのものである魚雷を人間に操縦させて敵艦に突っ込ませるというコンセプトは、タマも砲弾もまともに揃えることが出来なかった旧軍の人間をまさに“肉弾”として消費する発想は、さすがのヒトラーも自軍には決して許可しなかったことは重く受け止めなくてはならないんじゃないかな。この回天と純粋な自殺兵器である桜花の正式化を推進したのは、山本五十六が贔屓にしていた奇人参謀である黒島亀人で、この人は戦後ものうのうと生き残り自分に都合の悪い史料を勝手に破棄したろくでなしです。 「命ぜられればなんでも撮る」と言われていた職人監督・松林宗恵が、生涯でただ一作自分から企画を立てて「撮らせてくれ」と会社に談判したのが本作なんだそうです。彼自身も予備士官として海軍陸戦隊に入隊していただけあって、思い入れが強かったんだろうね。製作配給はまだ良心的だったころの新東宝で、この2年前には『戦艦大和』も製作しています。ストーリーは予備士官に志願して回天特攻隊員になった岡田英二・木村功・宇津井健たちの訓練生活から始まります。彼らは早稲田・慶応・明治など六大学出身ですが、中にひとり龍谷大学出身の僧侶の卵だった高原駿雄がいて、これは龍谷大学出で僧籍を持つ松林宗恵の分身みたいな感じですかね。彼らの出撃までの生活は死刑執行を待つ確定死刑囚みたいなもので、その生への執念というか未練はほんと観ていてつらくなります。また予備士官への兵学校出の士官の上から目線の対応も赤裸々で、これも観ててほんと腹がたちます。回天自体は実物大のプロップは使っていましたが、後半の出撃後は母艦の潜水艦も含めてチープな特撮になってしまいます。まあしょせん新東宝ですから致し方ありませんが、同時期の東宝の円谷特撮と比べてしまうと嘆息してしまいます。潜水艦内の描写もまあまあでしたが、司令所でいわゆる木製の操舵輪を使って操艦していたのには唖然としてしまいました。 ラストは木村と宇津井は空母と戦艦を撃沈して散華し岡田艇は浸水して沈んでしまうという結末ですが、史実では回天が沈めたのは駆逐艦と数隻の輸送船だけだったみたいです。出撃の朝、木村功と婚約者の津島恵子が海岸を歩き、戦後二人が結婚して江の島海岸を歩くことを夢想するシーンは、パラソルやビーチマットが並んでいるのに海岸には誰もいないというちょっとシュールな感じですが、ほんとここには泣かされました。 『世界大戦争』にも色濃く漂っていましたが、松林宗恵の作品には滅びの悲劇の中に無常観を強く感じさせられるところが独特です。 【S&S】さん [CS・衛星(邦画)] 8点(2025-07-21 23:03:57)★《更新》★ 6.《ネタバレ》 うーん。脱出装置はなく、1.5tの爆薬とともに出撃すれば、敵艦に体当たりするかそうでなければ自沈するしかない、「鉄の棺桶」とよばれた回天の絶望を考えると、本作で開陳されるエピソードはピンとこないですよ。神風(航空機)による特攻よりも狂気が深いことを考えると、前夜のデートや最後の酒宴なんて想像の範囲のセンチメンタルというか(ひとでなし)。作中、朝倉少尉の「僕達が死んで行くのは、無謀な戦いを無謀なものだと気付かせるためなんです。」というセリフはメチャクチャなんだけど、志願する兵士のメチャクチャなメンタルを多少なりとも理解できるセリフ。オレは何を見たがっていたんだろうとも思うが、大津島であったことはこんなんじゃないだろうと思っています。■回天の攻撃成功率は、2%(神風は10%程度)だったとのこと。わたしゃ、最後の出撃は、4人全員失敗してこそこの映画の価値と思っています(どんどんひとでなし)。 【なたね】さん [DVD(邦画)] 4点(2024-08-26 20:24:12) 5.《ネタバレ》 映画の前半で木村功の玉井少尉が叫ぶ、声に出して言う「死ぬのは怖くないのか?」「俺は怖い」というあの場面、戦地で亡くなった被害者の写真をバックにして本心を語る所などは人間の本音の部分、思っていることの全てをぶちまけている。誰だって戦争になんて行きたくもないし、戦争なんて無ければ良いのにと思っていても声には出して言えないのがこの当時の状況であるように感じるし、それは玉井少尉だけでなく、他の人間も皆、同じである。宇津井健の村瀬少尉が亡くなったと思われていたのに、生きて帰ってきたと知った時の仲間の姿には彼ら全員の思いが伝わったからこそ生きてこれたと思えるぐらい仲間への意識、それが戦争という中で生まれる人間としての優しさなのではないだろうか?加藤嘉と岡田英二の二人の会話の中での岡田英二の「戦争は人間が始めたものであり、終わらせるのも人間である」というような台詞がこの映画を通して松林宗恵監督が最も言いたかった部分であるように私には思えた。この岡田英二の言葉こそ時代に関係なく、世界中の人々へと聞かせてやるべきであるように思うし、また、戦争というこのあってはならない中で恋人との悲しき別れと再会のどちらも経験し、だからこそ「俺は死にたくない。戦争は怖い。」と訴える玉井少尉(木村功)の言葉の重みがひしひしと伝わってくる。この映画は戦争映画だけど、恋愛映画でもある。色んな意味で人間の本音、仲間意識、その他人生に対する悲しみもあれば喜びもあるし、だからこそ人は人として大きくなれるのだというそういう力強いメッセージを感じさせられる映画であるし、松林宗恵監督自身が戦争を経験しているからこそここまで描ける作品である。日本人ならいや、世界中の人に一度は見て欲しい映画でもある。 【青観】さん [DVD(邦画)] 9点(2010-08-12 08:44:49) 4.《ネタバレ》 『雲ながるる果てに』を観た後では、残念ながら同じ展開に少し飽きがきたのは事実。 しかし、凄まじいまでの反戦映画だ。 現代の人間はこの様な反戦映画をもっと観るべき。 どんな説教や授業なんかよりも、よほど真に迫るものがある。 戦争がいかに残酷で無用なものかを、ここまでハッキリと観る者に訴えかけてくる作品はそうにない。 こういった救いようのない話は、個人的好みには合わない。 しかし、一度は観るべき作品として、皆様に推奨したい作品である。 そういった救いようのない話の中で、唯一、純粋に心打たれたのが、木村功の海辺での最後のロマンス。 これにはまいった。 あまりに哀しすぎる。 平和な時代に生まれた有り難味を、非常に実感することができた。 愛する人を大切にしたい。 生きていることの喜びをもっと堪能したい。 明日への活力をそういった意味で得ることができた。 【にじばぶ】さん [ビデオ(邦画)] 7点(2008-04-19 19:38:02) 3.これ観るためにギャオに入会しちまいました。今月一杯配信されるみたいなんで、興味ある人にはゼヒゼヒ見て欲しいにゃあ。 オイラ的評価としては、潜水艦映画として『Uボート』とタイか、ちょい上です。イ号潜水艦の内部があんなに広々してたかっていうと少し疑問ですけど…。 『眼下の敵』で「潜水艦映画は戦争映画ではなく、スポ根モノの枠組みの中にある」と書きましたけど、本作はそれに対する揺るがぬアンチテーゼ(というかコッチが本道)でした。ここまで胸に詰まった戦争映画は初めて。閉塞感バリバリの「回天」という存在が、主人公たちの置かれた状況にマッチしているためでしょう。 兵器としての回天は、いわゆる自殺兵器ですから搭乗員のスキルが向上せず、存在意義は限りなくゼロに近いダメ兵器です。ドイツの自殺ミサイル・ナッテルも、まさにその理由で実戦では使われなかったし(ナチスの方がまだ理性を残してたって事か…)。ところが昨今の「自爆テロ」では、まさにこの手法が戦果を上げてしまったワケです。時代が巡ってしまったのか…いや、中東でこの映画を上映したら、ちょっとは状況変わらんかなァ。いやもう、そういう状況を超えちゃってるよなあ…とかマジで思ったりします、観てて。 宇津井健の鬼気迫る眼力も良かったですが、学徒の身の回りの世話をする兵卒の殿山泰司・加藤嘉の2人がいい味を出しまくりでした。出撃前、殿山に向かって言う「寿司、美味かったぞ」のセリフでなんか涙が出ちゃってねェ…他にも胸に迫るセリフはいっぱいありましたけどね。 実は同時期のイタリアの戦争映画で『人間魚雷』ってのがあると聞いて、この作品に出会いました(コレも凄いらしい)。そっちも切に観てみたいんですが、ギャオでやってくんねーかなー。 【エスねこ】さん [インターネット(字幕)] 9点(2006-08-07 00:40:31)(良:1票) スポンサーリンク
【哀しみの王】さん [ビデオ(吹替)] 10点(2005-07-02 14:59:50) 1.特攻隊といえば、敵艦目掛けて体当たりするゼロ戦ことゼロ式戦闘機が有名。そして、もうひとつの特攻隊である人間魚雷「回天」も忘れてはならない。潜水艦に備え付けられた魚雷に隊員が乗り込み、ゼロ戦と同様、敵艦に突っ込むという正気の沙汰とは思えない戦法である。まさに戦争による狂気が生み出した産物であり、人間を人間として見なさない当時の帝国陸海軍の証左ともいえよう。この作品は回天特別攻撃隊津村敏行の手記を映画化したもので、脚本は須崎勝弥に、監督は松林宗恵による演出。戦後10年しか経っていないこともあるとは思うが、リアリティ溢れる描写とセット美術が素晴らしい。荘厳で哀愁漂う音楽も、この戦争ドラマに厚みを加えている。岡田英二演じる特攻隊員を筆頭に木村功、宇津井健、沼田曜一など個々の切々と訴える好演も手伝い、見る者により一層悲壮感を掻き立たせる。とくにラスト。「赤とんぼ」の歌声が幻聴となって表われる中、朝倉少尉(岡田英二)が「我未だ生存せり」と心境を刻み込み、生を噛みしめんとするエンディングは悲し過ぎる。このシーンは何回見ても涙なしではいられない。もう遅い、すべてが遅過ぎたのである。神よ神よとおだてられ、自ら志願した後では時すでに遅く、お国の為に散っていくより選択の余地のない土壌が用意されていたのである。純粋な学徒達を特攻隊へと駆り立てた歴史的事実を描いた作品としては、「雲ながるる果てに」と共に日本映画史上、永遠に記録されるべき名作です。 【光りやまねこ】さん 9点(2004-04-05 21:56:47)(良:2票)
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