みんなのシネマレビュー |
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ネタバレは禁止していませんので 未見の方は注意です! 【クチコミ・感想】
13.《ネタバレ》 弱き者を助ける、決して見て見ぬふりはしない。 私はそんな人が大好きだ。 おそらく、そんな自分を無理に抑えたから、体調が急変して死んだんだ。 だけど、また乱暴を働けばムショに戻らなくてはならなくなる。 だから我慢した。 よく頑張って辛抱した。 お疲れ様と声をかけてあげたい。 【にじばぶ】さん [インターネット(邦画)] 7点(2021-07-10 01:56:32) 12.《ネタバレ》 映画館で映画を観るメリットのひとつは作品世界に没入しやすいことだが、本作においても終始主人公・三上の生き様を追ううちに、自然に彼に感情移入していることに気づく。 殺人犯として服役していた刑務所を出所するところから始まる物語だが、「受刑者の社会復帰」という通常では垣間見えない視点をとおして、人間と社会を考えさせる秀作だった。 特に役所広司の演技は秀逸で、一本気で喧嘩っ早い反面、どこか愛嬌のある三上という男を表情豊かに演じている。 長澤まさみ演じるTVプロデューサーも時折印象的なセリフを吐く。 「レールの上を歩いてる私たちも、ちっとも幸せだと感じてないから、はみ出た人を許せないんだよね」 そして三上の喧嘩の撮影中怖くなって逃げる若手ディレクターに「撮らないんなら喧嘩を止めろ。止めないのなら、撮って人に伝えろ!」と凄む。 この一件から、ディレクターは本気になって三上と向き合うことになる。 三上が社会復帰のために、失効した運転免許の再取得に動き出すシークエンスは、本作の肝にあたる。 こうした三上の努力や周囲の助力を知ったあとだけに、ラスト近く、三上のアパートに駆けつけ号泣するディレクターと一緒に、観客である自分の目頭も熱くなっていることに気づく。 そしてラスト、三上に関係した人々が集まるアパートから青空へと画面がパンし、ここで初めてタイトルが浮かび上がる。 「大事なのは誰かとつながりを持って、社会から孤立しないことです」 最初にケースワーカーが三上にかけた言葉を思い出しながら、タイトルの意味をずっと考えていた。 そして観終わった今もずっと考えている。こうした映画こそ佳作と呼んでいいと思う。 【田吾作】さん [映画館(邦画)] 8点(2021-03-22 14:44:32) ★11.《ネタバレ》 10~20代の時に見たら、多分この映画の本質の半分も理解できなかったかなと思う。いや、30代もあやしい……。 映画館からの帰り道からずっと、あの人の人生を考えずにはいられなかった。 短気であまり頭の良くない、挫折を繰り返す男。でも優しいし一本気で、子供のような男。 あの人はきっと、あのままじゃ長生き出来ない人だったと思う。 あの時。弱いものを嬲っていた男たちを、心の思うがままに暴行して痛めつけていたら、彼の体はストレスをためることなく、いまだ生きていたかもしれない。でも、支援してくれた人々をまた悲しませ、落胆させ、失望させていた。 だから死に物狂いでその衝動に耐えた。結局、彼の体はそれに耐えられなかったけれど。 綺麗できっぷの良いイカす元妻から、娘と一緒に会おう、楽しみ! なんて言われて。 きっと神様は最後に御褒美をくれたんだと思う。 最後に、花の香りを嗅ぎながら、彼は思ったんじゃないかなぁ。 ・優しい坊主、守れなくて悪かった、我慢せずやっちまいたかった ・でも、やっちまってたら、スカっとしたけど、あの人達を失望させた ・だから、これで良かったんだ、これで良かったんだ すばらしき人生って言っていいのだと思う。 運のない人だったけれど、死んでから泣いてくれる人がいるだなんて、うらやましい。 個人的には、六角精児が演じたスーパーの人には一番頭が下がる。あの人は凄い。本当に凄い。 人生は人との繋がり、なんだなぁと、自己を顧みてつくづく反省した。 多分一生頭の片隅にこびりつく映画。 【りんどう】さん [映画館(邦画)] 8点(2021-03-16 01:07:23)(良:3票) 10.《ネタバレ》 この映画に登場する人物のほぼ全員は、主人公・三上正夫に対して、悪意や敵意を示して接することはない。 むしろ皆が、偽りなき「善意」をもって彼に接し、本気で彼の助けになろうとしている。 そして、三上自身も、その善意に対し感謝をもって受け止め、“更生”することで応えようと、懸命に努力している。 その様は、「やさしい世界」と表現できようし、この映画のタイトルが示す通り、「すばらしき世界」だと言えるだろう。 でも、それでも、この世界はあまりにも生きづらい。 その、ありのままの「残酷」を、この映画は潔くさらりと描きつける。 西川美和という映画監督が表現するその世界は、いつも、とても優しく、そしてあまりに厳しい。 僕自身、ようやくと言うべきか、早くもと言うべきか、兎にも角にも40年の人生を生きてきた。 平穏な家庭に育ち、平穏な成長を経て、そして自らも平穏な家庭を持っている。 決してお金持ちではないし、生活や仕事において不満やストレスが全く無いことはないけれど、今のところは「幸福」と言うべき人生だと思う。 だがしかし、だ。 その平穏という幸福を自認し噛み締めつつも、僕自身この世界における“生きづらさ”を否定できない。 人並みにアイデンティティが芽生えた少年時代から、40歳を目前にした現在に至るまで、「生きやすい」と感じたことは、実はただの一度も無いかもしれない。 人の些細な言動に傷つき怒り鬱積を募らせ、僕自身も“本音”を吐き出す程に周囲の人間を困らせたり、怒らせたり、傷つけたりしてしまっている。 どんな物事も思ったとおりになんて進まないし、「失敗」に至るための「行動」すらできていないことが殆どだ。 自分自身の幸福度に関わらず、人生は失望と苦悩の連続で、この世界はとても生きづらいもの。 それが、殆ど無意識下で辿り着いていた、現時点での僕の人生観だったと思う。 そしてそれは、この世界に生きるすべての人たちに共通する感情なのではないかと思う。 そういった個人の閉塞感を、この世界の一人ひとりが持たざる得ないため、その負の感情は縦横無尽に連鎖し、社会全体が閉塞感に包まれているように感じる。 この映画で西川美和監督が、社会に爪弾きにされた前科者の男の目線を通じて描き出したことは、決して一部の限られた人間の人生観ではなく、この世界の住人一人ひとりが共有せざるを得ない“痛み”と一抹の“歓び”だったのだと思う。 確かに、この世界はすばらしい。 美しい光に満ち溢れているし、エキサイティングで、エモーショナルで、ただ一つの命をまっとうするに相応しいものだ。少なくとも僕はそう信じている。 そんな世界の中で、人は皆、誰かに対して優しくありたいし、誰しも本当は「罪」など犯したくはない。 それでも、結果として「罪」が生まれることを避けられないし、すべての人が無垢な「善意」のみで生きられるほど、人間は強くない。 この映画の登場人物たちは皆優しい人間だと思うけれど、主人公に対する「善意」の奥底には、それぞれ一欠片の「傲慢」が見え隠れする。 取材をするTVディレクターも、身元引受人の弁護士とその妻も、スーパーの店長も、役所のケースワーカーも、ヤクザの老組長も、心からの善意で主人公を助けているけれど、同時にその心の奥底では彼のことをどこか見下し、自分の優位性を感じていることを否定できない。 無論、だからと言って、彼らを否定する余地などはどこにもない。 彼ら自身も、この生きづらい世界の中で、自分の心の中で折り合いをつけながら、必死に生きているに過ぎないのだから。 自分の感情に対して「正直」に生きることしかできない主人公は、それ故に少年時代から悪事と罪を重ね、人生の大半を刑務所内で過ごしてきた。 理由がどうであれ、犯した罪は擁護できないけれど、誰にとっても生きづらいこの世界が、益々彼を追い詰め、ついには自分自身で、文字通り心を押し殺さざるを得なくなっていく様を目の当たりにして、悲痛を通り越して心を掻きむしられた。 それは、単なる暴力による報復などとは、比べ物にならないくらいに残酷な業苦を見ているようだった。 ラストの帰り道、どこか都合よくかかってきたように見える元妻からの電話による多幸感は、果たして「現実」だったのだろうか。 そして、とある人物から貰った秋桜を握りしめ、最期の時を迎えた主人公の心に去来していた感情は、如何なるものだったのだろうか、救済だったろうか、贖罪だったろうか、悔恨だったろうか。 僕自身、様々な感情が渦巻き、鑑賞後数日が経つがうまく整理がつかない。 空が広く見えた。 人間は、この「すばらしき世界」で、ただそれのみを唯一の“救い”とすべきなのか。 【鉄腕麗人】さん [映画館(邦画)] 10点(2021-03-01 12:30:15)(良:1票) 9.《ネタバレ》 じんわりと心に沁みる作品でした。映画館から出た後、ついつい空を仰ぎたくなりました。 それにしても、西川美和監督には嫉妬してしまいました。自分が好きな本を映画化できてなおかつ、自分の思う(多分)キャストを日本有数の俳優陣で揃え、そして兎に角素晴らしい作品を仕上げてしまうなんて、映画や本好きのまさに夢を実現してしまっているのですから・・・・。 【TM】さん [映画館(邦画)] 8点(2021-02-27 21:23:36) 8.《ネタバレ》 役所広司が素晴らしい。普段の三上の顔があまりに善人過ぎて、殺人犯という過去とのギャップが大きすぎるのではないかと、実は予告で見た時から思っていた。 ところが冒頭の刑務所での、今でも無実だと思っている、というセリフのところでドキッとさせられ、その後町のチンピラとの数度のトラブルの時や、スーパー店長に対して切れて怒り出すシーンなどでの豹変具合は、三上という人物像にとても説得力を与えるものだった。これらのシーンでは、彼の精神面の未成熟さもよく表現できていたと思う。そう、三上氏は、根っからの悪人というよりは、我慢を知らずに育った大きな子供だった。だから笑っているときは憎めない。 それを知る三上の周りの少なからぬ人々が、道を失いそうになった彼を何とか引き留めようと、見捨てずに手を差し伸べつづける。ラストで彼は思わぬ形で寂しく生涯を閉じるが、しかし堅気として死ぬことができた。よかったね、とさえ言えるラストだった。感涙。 【Northwood】さん [映画館(邦画)] 8点(2021-02-23 20:05:57) 7.《ネタバレ》 元殺人犯の社会復帰物語。曲がったことが大嫌い、まっすぐで血の気の多すぎるオイラ。周囲とぶつかりながらも生活のために就活を進める。直情的で危なっかしいけれど見ていて憎めない、そんな不器用な男を役所広司が熱演。介護施設のパートとして辛抱強く働く、ちょっぴりオトナになったオイラ。世の中捨てたもんじゃねえ、すばらしき世界。良作。 【獅子-平常心】さん [映画館(邦画)] 7点(2021-02-21 23:27:03) 6.《ネタバレ》 刑務所から出所した元囚人にありがちなベタな話が延々と続く映画。役所広司演じる元ヤクザの三上は頭で拵えたようなツクリモノ臭が鼻について、私はストーリーに入っていけなかった。例えばビートたけしに演じさせたらこうはならなかった。役所の裸を見せるための映画ですか、と思っているうちにポックリ死んで終わり・・・つまらない映画だと思うが、役所が自分より不幸な男の存在を知りコスモスの花を貰うシーンは唯一グッと来た。それと北村有起哉の演技のリアリティーが素晴らしくて映画全体の救いとなっている。過去の法廷シーンの粒子を荒らした映像もセンスが良いしプラスマイナス全部合わせて5点。 【ブッキングパパ】さん [映画館(邦画)] 5点(2021-02-20 19:14:23) 5.《ネタバレ》 良かった。すごく良かった。 原作があるのか無いのか知らんけど、映画良かった。 俳優さんたち、みんな素敵だった! ところで『すばらしき世界』という題名って、すごい皮肉よね。 確かに主人公が出所後、手を貸してくれた人々が周りにたくさん居たけど、 だけど、 あんなに気持ち=正義を押し殺して、(もちろん「本人にとって」の正義だけど) 文字通り死ぬほど感情を押し殺して、素晴しい世界なの? あの人(主人公)、本当に本当に苦しかったと思う。 「カタギ」に馴染むためには、 理不尽な事も許せないことも何もかも「自分の感情」をスルーして、 全て「他人事」と位置づけて。 そうしないと生きていけない世界って「スバラシイ」の? 自分が死んだあと、誰が泣いてくれてもしょうがないのよ。 自分が生きている間に、自分らしく生きられないのなら ただの人形。 最後に(あえてハンドルネームは出しませんが)「3.」の人。 「僕のすばらしき世界」が訪れますように。。。 【ジャスミン】さん [映画館(邦画)] 9点(2021-02-18 22:50:53)(良:2票) 4.《ネタバレ》 すごくいい。三山がちっともかわいそうな人じゃないのがいい。むしろ、だからお前はマズいんだといいたくなるような、ヤキモキというかウンザリというか、しょうがない人なところがいい。そんな三山が、暴力をふるわれる人を見て見ぬふりしたり、人を揶揄するのに同調したりするのが、堅気になることと気づくかのようなところがいい。みんな、ちゃらんぽらんに生きてるんだよ。こころに暖かいもの(元妻との約束)を抱えて、自分のアパートへの帰り道。やっと人生が和らいだ時。三山にとって、最期の最後で、この世はすばらしき世界だったのだと思います。 【なたね】さん [映画館(邦画)] 8点(2021-02-17 19:59:52) 3.《ネタバレ》 人との繋がりがすばらしき世界なのかも。僕自身は当たり障りなく受け流してはいるけどどこかストレスを感じて避けているような気がします。良い事も悪い事もあるけどプラマイゼロではなく、ちょっとだけ良い事がプラスになるようにバランスをとって生きたいですね。リアルでオヤジが脳出血で倒れ、救急車を呼んだのでダブってしまい、ラストは胸が締め付けられる思いでした(なんとかリハビリコースに行けそうな雰囲気です、いつか一緒に映画とか観れたら、僕のすばらしき世界になるかもです) 中国嫁コメントなし(色々思うところがあったのかもしれない)映画は娯楽だけじゃないよってことが伝わったらなぁと思います。前情報無し(役所さん出演ぐらい)で観たので、知ってたら一緒に観なかったかもですw 5さんありがとね、すばらしき世界に近づけたかも。 【追記】年明け早々に、倒れてからおよそ10か月で亡くなりました。コロナで面会もままならない状況で何もしてやれなかったけど、オトンのスマホを預かってて、僕の知らないオトンの友人とお話しする機会が多々あり、外向きのオトン像を知ることができました。とある競技でMVPとったり、年度優秀選手に選出されたり(黎明期故に代表招集とか無かったのが残念)、地元草チームに加入して国体参加して、大学、実業団を食ったりと誇れる栄光の時代もあり、オトンにとってはすばらしき世界(人生?)だったと思えます。 【ないとれいん】さん [映画館(邦画)] 7点(2021-02-16 11:50:22) 2.《ネタバレ》 <原作未読>出所した元ヤクザで殺人犯の男が「今度こそ堅気ぞ」と決意し社会復帰を目指すも、やはり壁にぶち当たる。しかし周囲は手を差し伸べる。身元引受人やケースワーカーは分かるけど、なぜスーパーの店長があんなに良くしてくれるんだ… すばらしき世界とはこういうことか。もちろん「めでたしめでたし」と簡単に終わるわけではない。終盤、三上がどっちの選択をしようと胸が締め付けられるような場面が出てくる。そんな"すばらしくない世界"もちゃんと見せつつ、自分の死に涙を流してくれる人がいる世界はやはりすばらしいのだと監督は最後に言ったような気がする。温かさを内包した脚本に、名優役所広司の憑依したような演技が加わってまた一つ、傑作が世に出た。 【リーム555】さん [映画館(邦画)] 9点(2021-02-12 10:45:35) 1.《ネタバレ》 三上という男は、たとえ人前だろうが、怒り、泣き、そしてよく笑う。自らの感情に素直で真っすぐなところ、とても人間味があって好きだった。過去がどうであろうと、その生き方はまさに、「退かぬ、媚びぬ、省みぬ」(笑) だよね。彼のように堂々と生きたいもんだ。 その三上を演じた役所さんからすれば、うなぎ、三度目の殺人に続く、"受刑者三部作" の最終章だけど、前二作とは全く別の人間を魂を込めて演じていたと思う。 映画的な表現として面白かったのは、スカイツリーと東京タワーの使い方。前者が未来 (前進) の象徴であったのに対して、後者は九州ヤクザ編の導入部に空撮されたように、過去 (後退) の象徴。しかし、僕としては、東京タワーの方が好きなんだ、、そこがなんとも。 →2021/9/16追記。 これは、まるで "横道世之介" を観た時のように、観てからしばらく経つと、後からじわじわときます。この世界が彼を失ったという喪失感を今さらながら感じてきます。自分がいつ死ぬかなんてわからないし、大切な人がいつ死ぬかだってわからない。だから今を大切に生きよう、、そう思わせてくれる映画だ。 こんな時代だから、なおさらかもしれない。 【タケノコ】さん [映画館(邦画)] 7点(2021-02-11 22:22:34)
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