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1. チェブラーシカ(1969)
なぜだか観終えたあと、気持ちが沈んでしまった。
チェブラーシカはかわいいんだけど、全体的にもの寂しい感じがして、辛い。基本的に幸せな物語であるはずなのに、能天気ななかにも暗い影が見え隠れしているというか…(いや、そこが魅力なんだろうけれども)。繊細すぎる登場人物たちは愛しいというよりも痛々しくて、見ていられない感じがした。泣き虫の子どもの相手をしているみたいな、いたたまれない気分だった。
正直、『おじゃる丸』みたいに底抜けに明るいほうが好きかな。[DVD(字幕)] 6点(2006-12-04 22:50:05)《改行有》
2. 父、帰る
シャープで洗練された映像感覚が素晴らしく、個人的につぼにはまった作品。それだけで妙に高評価になってしまったが、冷静に考えるとそんなにたいした話ではないような気もしてくる。リアルで迫力があるし、宗教や政治についての象徴性はよく考えられているが、その実こころから感動できるほどのめり込める物語ではなかった。無骨で愛情表現の下手な父親との間の絆が、悲劇を通して回復する。子供たちに欠けていた父性が、わずか一週間で受け継がれるまでを描く。父親が自分の親の姿と重なり、少し切なかった。(ところで、説明不足な点はそんなに気にならなかった。大体見当はつくし、謎解きは主眼ではないので説明しなくてもほとんど差し障りはないと思う。)[DVD(字幕)] 9点(2005-12-02 07:26:05)(良:2票)
3. 動くな、死ね、甦れ!
スターリン政権時代の一人の少年の青春が描かれているのだが、あまりにも救いがない。『大人は判ってくれない』にも似ているけれど、さらに重く、ハードな物語。画面から受ける印象は常に暗く、厚い雲が張った空の下の凍えるような寒さが伝わってくる。少年は一人を除いて誰からも受け入れてもらえず、自分の居場所を見つけることができない。胸を打つのは、それでも彼が健気に現実と戦い、生きていこうとするところだ。神経質な母親は彼を泥棒扱いして殴ったのに、「あんたのママはあんたを愛してるわ」と友達に言われ、「わかってるよ」と答える。スケート靴を盗まれても、取り返してはしゃぎ、笑い転げる。強盗殺人の片棒を担いで顔に返り血を浴びた横顔を見せたときは、さすがにもうだめかと思った。それでも、絶対にへこたれない。その点『大人は…』の主人公よりもずっと強く、頼もしい少年に見えた。ところが、そう思えたのも束の間、唯一の理解者であった少女が殺される。少年はいちおう生きていることが示唆されるが、もう画面に映されることもない。辛い出来事にも負けずに明るく生きようとしていた人間から、最後の希望まで奪いとる現実。たぶん彼は肉体的には生きていても、もうそれまでの彼ではいられないだろう。彼が子供でいられた時代は、銃声で終わった。一人の少年の心が殺されるまでを描いた、悲痛な作品。 また、主人公が強制収容所送りから逃がれようとする女を助けようともせずに見つめている場面も印象的だった。人が人として生きていけなかった時代の、暗鬱な空気。重く哀しく、恐ろしい映画だった。8点(2005-02-06 02:37:05)(良:1票)
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