みんなのシネマレビュー
田吾作さんのレビューページ[この方をお気に入り登録する

◆検索ウィンドウ◆

◆ログイン◆
メールアドレス
パスワード

◆ログイン登録関連◆
●ログインID登録画面
●パスワード変更画面

◆ヘルプ◆
●ヘルプ(FAQ)

◆通常ランキング◆
●平均点ベストランキング
●平均点ワーストランキング
●投稿数ランキング
●マニアックランキング

◆各種ページ◆
●TOPページ
●映画大辞典メニュー
●アカデミー賞メニュー
●新作レビュー一覧
●公開予定作品一覧
●新規 作品要望一覧照会
●変更 作品要望一覧照会
●人物要望一覧照会
●同一人物要望一覧照会
●関連作品要望一覧照会
●カスタマイズ画面
●レビュワー名簿
●お気に入り画面
Google

Web www.jtnews.jp

プロフィール
コメント数 270
性別 男性
年齢 57歳
自己紹介 歳をとるごとに趣味と呼べるものがだんだん少なくなり、今では多忙ななか映画を鑑賞することがひとときの楽しみとなっています。
無数の作品の中から良作を探し出すツールとして、本サイトのお世話になっています。

投稿関連 表示切替メニュー
レビュー表示レビュー表示(評価分)
その他レビュー表示作品用コメント関連表示人物用コメント関連表示あらすじ関連表示
コメントなし】/【コメント有り】
統計メニュー
製作国別レビュー統計年代別レビュー統計
要望関連 表示切替メニュー
作品新規登録 / 変更 要望表示人物新規登録 / 変更 要望表示
要望済関連 表示切替メニュー
作品新規登録 要望済表示人物新規登録 要望済表示
予約関連 表示切替メニュー
予約データ 表示

【製作国 : 日本 抽出】 >> 製作国別レビュー統計
評価順12345
投稿日付順12345
変更日付順12345

1.  幸福の黄色いハンカチ 《ネタバレ》 日本映画の名作として名高い本作だが、遅ればせながら先日の健さんの追悼番組で初鑑賞。あらすじは知っていたものの、主要キャストが出会い、徐々に明らかになる健さんの回想シーンの入れ方が絶妙で、どんどん引き込まれた。はやり本作の面目躍如はキャスティング、特に主役に高倉健を配したことに尽きる。それまで任侠モノばかりだった健さんがヒューマンドラマに進出したきっかけにもなった本作だが、そうした健さんのイメージと本作の主人公がぴったり重なる配役の妙。役名は島勇作だが、私には髙倉健としか見えなかった。それまでの作品での役柄上、当時の観客は健さんの「殺し」には麻痺していたのだろう。今の時代ならなんらかの贖罪シーンが必要なところだが…。最初は野暮ったくみえた武田鉄矢や桃井かおりだが、見ているうちに彼らと一緒に旅をしているかのような錯覚に陥り、一緒に健さんの一挙手一投足にスカっとしたり、やきもきしている自分に気付く、というロードムービーのお手本のような作品。番組冒頭で本作の主題について武田鉄矢が健さんの言葉をとおし、「おかえり」の声が返ってくることの幸せ、と語っていたが、作中の欽ちゃんと朱実もこの短い旅でそのことに気付き、若者から大人に成長することを予感させる終わり方も良かった。そしてラストの名場面は、普通ならベタに抱き合うところを敢えてそうせず、ただうつむき嗚咽する倍賞千恵子の手を引き、優しく家へといざなう健さんの不器用な姿にどれだけ多くの日本人が共感し涙したことだろう。あと、北海道民としては昭和50年代の街並みや車、生活風景が妙に懐かしかった。上映以来、本作のような出会いを(無意識に)求めて北海道を訪れた若者はきっと数知れなかっただろうと思うと、本作がもっている普遍的な輝きを感じざるを得ない。[地上波(邦画)] 10点(2014-11-29 16:51:11)

2.  この世界の片隅に(2016) 《ネタバレ》 原作未読。本サイトでの高評価が気になり鑑賞したが、なるほどその理由に納得した。 本作はジャンルでいえばいわゆる「戦争もの」に入ると思われるが、主人公は題名が示すとおり一介の無名の女性庶民であり、英雄でもましてや兵士でもない。舞台も戦場ではなく、普通の庶民の生活の場である。したがって本作では、庶民の側からみた戦争、本土に住む大半の市井の人々にとって、あの「戦争」とはいかなる体験だったのかが描かれている。その意味ではあの『火垂るの墓』と軌を一にするものの、こちらは悲愴感は控えめに、むしろユーモアや希望、力強さといったポジティブな感情に訴えかけくる違いがあった。 本作にはいわゆる悪人は登場しないし、残酷描写も控えめである。そのため、中高生などの鑑賞にも適していると思われるが、実際にあの時代に生きていた人々は本作での控えめな描写よりもっと大変で過酷であったことは(大人ならば)容易に想像できるはずだ。 おっとりのんびり屋の少女だった「すず」が18歳になり、戦争の暗雲が立ち込める中、相手もよくわからないまま広島から呉に嫁にゆく。 見も知らない土地の中で懸命に働くすず。早朝水を汲み、火をおこし、炊事をし、掃除、洗濯、裁縫…食糧が不足するなかでも、さまざまな工夫をして食卓を彩ろうとするすず。本作ではこうした何気ない生活や街並みなどが丁寧に描かれている。そのすずの狭い世界にも戦争は「少しづつ」影を落としていく。この「少しづづ」の描写が大変秀逸なため、観客も、すず達と一緒に忍び寄る脅威を追体験できる。 のどかな山野に襲い来る空襲また空襲、鳴り響くサイレンまたサイレン。そして、その空襲は、ついにすずの右手と晴美を奪い、さらに8月6日には…. 玉音放送を聞いたあとの、すずが怒りを爆発させ「何も考えん、ぼーっとしたうちのまま死にたかった」と慟哭するシーンは、見る者の心をわしづかみにして離さない。 戦争が(いかなる大義名分があろうとも、たとえそれが正義といわれるものであったとしても)なぜ起こしてはいけないのか。もしわからなくなった人はこの作品を観ればよい。あの時代、何万人、何百万人の「すず」が「晴美」が、浦野家の人々が、北條家の人々が、確かに生きていたこと。そして今を生きる私たちの祖父母や曾祖父母がまさにその人々であったことを、思い出させてくれるだろう。 ただし、本作が投げかけるメッセージは単なる「反戦」などではない。 救いだったはの夫である「周作」の「すず」への変わらぬ愛情が物語のベースにあったこと。 お互いにとってそれは大切な人生の「居場所」だったのだ。 戦争という狂気の時下にあっても、「この世界の片隅に」こうした居場所さえあれば、人はたくましく生きていける。 灯火管制が解除された戦後の町に灯りがともっていく。その光のひとつひとつが愛しく思えた。[映画館(邦画)] 9点(2016-12-04 23:24:11)(良:1票) 《改行有》

3.  遥かなる山の呼び声 《ネタバレ》 「幸福の黄色いハンカチ」と並び称される本作だが、何かとやかましい武田鉄矢の出番が少ない分(笑)、こちらの方が落ち着いて観られた。登場人物に寄り添い、時間の流れを丁寧に見せる手法は共通している。「幸福の~」では健さん達と一緒に旅をしているような気持ちにさせられたが、こちらは倍賞の牧場に健さんと一緒に住んでいるような思いにさせる力がある。だからこそ、健さんと母子が少しづつ家族のようになっていく姿に自然に共感してしまうのだ。その思いは草競馬のシーンでピークを迎えるわけだが、それまでに多くの時間をかけて丁寧に描いている分、その後の「転」「結」が劇的になるという、映画のお手本のような作品。本作の肝は倍賞の健さんに対する心の動きにあることは言うまでもないが、ここの描き方に手抜きがないので、自然に受け止められる。また本作の素晴らしさは北海道の描き方に嘘がないこと。酪農作業の所作や住居や家財道具、言葉や風習など相当な取材をして各シーンを作っていることが伺える(私が道東在住なので…)。これは子役の吉岡秀隆を含め、名作ドラマ「北の国から」にも繋がっていく流れにも感じた。ただ惜しむらくはタイトルが内容を反映しておらず、損をしている。例えば『望春』のような希望を感じさせるタイトルの方が良かったのではないだろうか。[DVD(邦画)] 9点(2015-04-05 16:41:51)

4.  切腹 冒頭の若浪士の切腹までは淡々と展開するが、仲代達也扮する主人公がかの若浪士を「いささか拙者の存じよりのものでな」とひときわ据わった声で語り始めるところから、物語の展開がガラッと変わる。そこからは一気に引き込まれた。回想シーンで語られる主人公の主家没落から家族がたどる悲哀の末路には、本当に心が痛む。歴史の影にはこうした悲劇はおそらく無数にあったのだろう。今でこそ努力次第でチャンスはいくらでも開けるが、当時は身分や階層という絶対に乗り越えられない壁が厳然とあったのだ。それゆえに主人公が「所詮うわべだけ」と語る武士の誇りの空しさが一層心に響く。「切腹」という世界的にも特異な作法をキーワードに、本作はその武士の空しさを存分に描いている。若浪士が家族のために自分の差料を竹に代えていたことを知った主人公が、自らこれだけは、と手放さずにいた刀を放り出し「こんなもののために・・」と絶句するシーンが圧倒的に胸に迫る。それにしても、どの役者も腹の据わった力のある台詞まわしで、圧倒された。今の役者に、いや今の時代にない力を感じる。見終わって、いい時代に生れて本当に良かったと思う反面、人間としての強さとは、と考えてしまった。9点(2004-10-10 12:09:07)(良:1票)

5.  あん 《ネタバレ》 主演の樹木希林と永瀬正敏の名演技が印象に残る作品。 特に樹木希林演じる徳江さんの台詞は、完全に樹木希林さんの「間」になっており、特別なディレクションは不要だったのではと思えるくらい自然な演技で、もはや他の俳優の追従を許さない域に達していると思われる。 わが国におけるハンセン病の隔離(差別)政策が、結果的には大きな誤りであったことは今日では周知の事実だが、それがどれほど人間の尊厳を奪ってきたか…。今後当事者がいなくなるにつれ、その社会認識が次第に薄れていくだろうことを考えると、本作が製作された意義は決して小さくない。 愛する家族とわけのわからないまま引き離され、子どもを授かっても産むことが許されず、人生のほぼ大半を社会と隔てられた施設で過ごさなければならなかった不条理は決して繰り返されてはならないが、だからといって、それらの人々が弱く哀れむべき存在であったかは別であることを、本作の徳江さんが示している。 「どら春」の常連女子中学生達のぼやきに「自由に生きればいいんだよ」と明るく諭す徳江さんに救われた気がするのは、決して私だけではないだろう。[CS・衛星(邦画)] 8点(2023-04-13 10:40:56)《改行有》

6.  男はつらいよ お帰り 寅さん 《ネタバレ》 某BS局で昨年から放映された全作品をコンプリートした後に鑑賞。 まさに50周年だからこそ企画製作された作品だろう。 他のレビューアーもご指摘のとおり、内容については気になる点は少なくない(ゴクミの棒読み、泉の父役の改変など)が、諏訪家とそれを取り巻く人々の「その後」を見たい、懐かしい寅さんの映像も見たい、という欲求にはきちんと応えてくれたと思う。 スター・ウォーズのジョージ・ルーカスではないが、多くのファンをもつ作品ほど、皆が納得できる続編を作るのは難しい。 でも、これは他でもない山田組による続編なのだからと納得するしかない…… 「男はつらいよ」は、極端に一言にまとめてしまうと、フーテンの寅さんが故郷・柴又にふらりと帰ってくるお話だ。 なぜか間の悪いタイミングで帰ってくる寅さんに、とらやの面々はいつも慌てふためいてしまい、なかなか普通に「お帰り」と迎えることができなかった。 だから、今回は観客も含め、みんなで「お帰り、寅さん」と迎えてやろうじゃないか、というのが本作の魂ではないだろうか。 その時、寅さんの横にはきっと「女房」が伴われているに違いない。さくらはどれほど嬉し泣きをするだろうか…… ラスト、歴代マドンナの回想シーンが流れ、合間にあの懐かしい寅さんの笑顔が挿入される。 そうしているうちに、あのテーマ曲が聴こえてきて、渥美清さんの歌声と共にエンドクレジットが流れる。 私はこれでやっとこのシリーズが完結したのだと、瞼を熱くしながら思った。[CS・衛星(邦画)] 8点(2021-03-23 11:20:59)(良:3票) 《改行有》

7.  すばらしき世界 《ネタバレ》 映画館で映画を観るメリットのひとつは作品世界に没入しやすいことだが、本作においても終始主人公・三上の生き様を追ううちに、自然に彼に感情移入していることに気づく。 殺人犯として服役していた刑務所を出所するところから始まる物語だが、「受刑者の社会復帰」という通常では垣間見えない視点をとおして、人間と社会を考えさせる秀作だった。 特に役所広司の演技は秀逸で、一本気で喧嘩っ早い反面、どこか愛嬌のある三上という男を表情豊かに演じている。 長澤まさみ演じるTVプロデューサーも時折印象的なセリフを吐く。 「レールの上を歩いてる私たちも、ちっとも幸せだと感じてないから、はみ出た人を許せないんだよね」 そして三上の喧嘩の撮影中怖くなって逃げる若手ディレクターに「撮らないんなら喧嘩を止めろ。止めないのなら、撮って人に伝えろ!」と凄む。 この一件から、ディレクターは本気になって三上と向き合うことになる。 三上が社会復帰のために、失効した運転免許の再取得に動き出すシークエンスは、本作の肝にあたる。 こうした三上の努力や周囲の助力を知ったあとだけに、ラスト近く、三上のアパートに駆けつけ号泣するディレクターと一緒に、観客である自分の目頭も熱くなっていることに気づく。 そしてラスト、三上に関係した人々が集まるアパートから青空へと画面がパンし、ここで初めてタイトルが浮かび上がる。 「大事なのは誰かとつながりを持って、社会から孤立しないことです」 最初にケースワーカーが三上にかけた言葉を思い出しながら、タイトルの意味をずっと考えていた。 そして観終わった今もずっと考えている。こうした映画こそ佳作と呼んでいいと思う。[映画館(邦画)] 8点(2021-03-22 14:44:32)《改行有》

8.  羅生門(1950) 《ネタバレ》 原作未読。 雨の羅生門と猛暑の藪の中、そして検非違使での告白と3シーンにおける、今でいうところのシチュエーションミステリー。 特に京マチ子が顔に汗を浮かべながらの妖艶な演技が印象に残る ある強姦事件を当事者たちが全く違う視点で供述を展開し、さて真実はいかに…という展開がユニーク。 しかもその全員が自分に都合のよい解釈(つまり都合悪い点を改変している)で告白するわけだが、恐らく最も真実に近い告白をする志村僑(事件の目撃者)ですら、自分に都合の悪いこと(短刀のこと)を隠している。 興味深いのは、結局多襄丸と武士との決闘もお互い「へっぴり腰」だったということ。 本作は戦後まもない時期の作品だが、恐らく戦争での歴史や回想というのも似たようなもので、大本営発表の例を持ち出すまでもなく、また一人ひとりの戦地での回想も自分に都合よく、そして自分に都合悪いことは語られなかったであろう。 しかし、最後はそうした人間の暗部を認めつつ、それでも人間に希望を示して終わるエンディングもよい。 本作は戦後という時代背景も踏まえ、人間存在の本質を焙り出して見せた黒沢監督の力量が光る名作。[地上波(邦画)] 8点(2020-04-27 12:01:02)(良:1票) 《改行有》

9.  男はつらいよ 誰もが知っている国民的映画だが、某BS局でデジタル修正版が放送された事をきっかけに鑑賞。 本シリーズは高速バスの車中などで成り行き上鑑賞したことはあったが、自ら「観よう」と思って観たのは初めてである。 記念すべき第1作はどんな作品なんだろうと思ったが、果たしてその後のシリーズの基本フォーマットが本作でほぼ確立されていることに驚いた。 日本人なら一度は聞いたことのある主題歌から始まり、地方行脚から「ふらり」と帰ってきた寅次郎が、柴又の「とらや」を舞台に一悶着を起こし、妹のさくらを中心に周囲を振り回す。そこに登場する美しいマドンナに、寅さんはすっかり舞い上がってしまう。全くうだつが上がらないくせに饒舌で時に非常識な寅さんだが、困っている人を放っておけない人情肌の男だ。そしてたった一人の肉親である妹が可愛くてしょうがない。最後にはマドンナに振られ、またフーテン暮らしに戻っていく…… 後年まで人気が衰えない作品、あるいはシリーズ化していく作品の1作目というのは、制作陣や俳優、音楽などが奇跡的に集約されるエネルギーをもっているものだが、本作も紛れもなくそうであろう。 自分の気持ちに正直に、怒り、笑い、泣く。誰もが望んでできない生き方を寅さんに投影しながら、一緒に怒り、笑い、そして泣く。 そして誰もがもっている故郷や家族への思い、分かっていてどうしようもない自分自身の業などが、昭和から平成にかけての日本各地の風景と入り交じり、なんとも言えない気持ちにさせてくれる。 こうした気持ちを味わいながら、全シリーズを鑑賞してみようと思わせる第1作だった。[CS・衛星(邦画)] 8点(2020-04-20 15:42:33)《改行有》

10.  湯を沸かすほどの熱い愛 《ネタバレ》 親から継いだ銭湯を営む夫が1年前に遁走し、やむなくパートで働きながら娘を育てる「お母ちゃん」を、宮沢りえが文字通り「熱演」している。 そのお母ちゃんが末期がんと診断されてからの、約3か月を描いた作品。 本作では、どこにでもありそうな家庭の雰囲気を上手く表現している。 洋画に対する邦画のひとつの優位性は、この「どこにでもありそうな」画を通して、観客を作品世界に誘いやすいことだが、 特に家での食事シーンなどは、家族ならではの会話や独特の間などに、俳優や脚本(監督)の力量を感じる。 高校で陰湿ないじめに遭う娘に「今逃げたらずっと逃げることになる」「お母ちゃんにはわからない」「いやわかる」「わからない!」「わかる!」 このやりとりだけで、お母ちゃんもかつていじめを受けていたことが暗示される。 普通なら、戸惑いのなか中途半端な同情から甘やかしてしまうところを「お母ちゃん」は決して妥協せずに娘の背中を押す。 産みの母の迎えを待ち続ける(夫と他人の間に生まれた)子を真剣に気遣い、明るく受け入れるお母ちゃん。 突然家からいなくなった夫を許したのも、すべて自分がいなくなった後の家族を考えての事。 夫婦問題やいじめ、複雑な家庭環境といった不遇な人生を経験した人間なら、彼らの喜怒哀楽が画面の向こうの出来事とは映らないだろう。 (本作では、これらを演じる俳優陣の演技力も相当に高いことも付言しておきたい) そして、物語が進むにつれて、それらのお母ちゃんの愛が「湯を沸かすほどの熱い愛」だったことに気付いていく流れも秀逸。 娘に買ったブラジャーや、毎年同じ日に届く「タカアシガニ」、たびたび食卓に登場する「しゃぶしゃぶ」といった小道具も上手く活用している。 (ちなみにこの「しゃぶしゃぶ」の湯も暗示的ではある) そして、最終盤には、このお母ちゃんにも、はやり不遇な過去があったことが示されるくだりでは、胸が痛くなった。 最後のオチも含め、この家族の行動には現実離れしているところも多いが、私は映画表現として問題なく受け入れられた。 そして観終わった後は、(湯を沸かすほどではないにしろ)自分の心もお母ちゃんにほのかに暖められていたことに気付く本作は、久しぶりに観てよかったと思える作品だった。[インターネット(邦画)] 8点(2019-06-09 20:04:48)《改行有》

11.  カメラを止めるな! 《ネタバレ》 ご多分にもれず、巷の話題に乗せられて鑑賞。 前の日に観た「ミッション・インポッシブル」が約200億円を投入したハリウッド大作なのに対し、本作は無名の俳優オンリーで300万円だとか。 しかし観終わってみると「ミッション…」とは全く違う「面白さ」が確かにあり、その意味では映画の「面白さ」というのは色々なんだと今さらながら考えさせられた作品。 ちなみに本作は、一見私の好きな「ゾンビもの」のように思えるが、その実はB級映画人達の悲喜こもごもであり、家族の物語であったというところでしょうか。 映画好きな人なら観て損はないと思います。[映画館(邦画)] 8点(2018-08-15 11:57:44)《改行有》

12.  時をかける少女(2006) 《ネタバレ》 原作は未読で大林監督作品も観ていないが、結構楽しめた。ありそうでなさそうな高校生の日常の中に、タイムリープというSF要素を絡めた、爽やかな青春ドラマ。主人公の行動は基本的に幼稚なのだが、その幼稚さゆえに誰の記憶にもある二度と戻らない青春の日々を追憶させる力を持っている。実際には本作のような「男2人と女1人」の友達関係を経験した人はあまりいないと思うが、誰もが憧れるシチュエーションだったりもする。夏の日、自転車、キャッチボール、堤防、そして友達……全てがかけがえのない日々だったことを思い起こさせる不思議なアニメだった。[地上波(邦画)] 8点(2015-07-21 11:47:00)

13.  銀の匙 Silver Spoon 《ネタバレ》 原作未読でのレビュー。青春ドラマの割には、ベタな友情や恋愛表現に走らず、コメディー要素すらも控えめで、全編通して淡々と進んでいくストーリーは、いかにも現代風な印象。受験競争や家族から「逃げてきた」八軒が、「逃げられない家畜」に向き合い、先生やクラスメイトとの交流を通して「逃げた先にある何か」を模索しながら、最後には「現実から逃げない」勇気をもつに至る心の動きには、世代を超えて普遍的なメッセージが込められている。ありがちな成長ストーリーに「農業」という都市生活者から見えない世界がもつ厳しさと普遍性を織り込んだ良作。ちりばめられた伏線もきっちり回収されており、また後半には「ばん馬レース」という見せ場もあり、淡々とした中にも気持ちよく鑑賞できた。帯広在住であることと、御影のチャーミングさに少し甘い点数を献上したい。[DVD(邦画)] 8点(2014-11-10 10:48:54)

14.  永遠の0 《ネタバレ》 原作は「命を惜しむ戦闘機乗り」というこれまでに描かれなかった異色のキャラクターを主軸に、現代ともリンクさせた家族愛や同志愛、さらにはミステリー要素も盛りまれ、その底流にゼロ戦や、太平洋戦争史といったミリタリー面からのアプローチを誠実に描いたところに秀逸さがある作品だが、本作はまずこうした原作に対する監督のリスペクトがしっかり感じられる作品とはなっている。特に歴史考証がしっかりなされた衣装やセット(戦後のバラック小屋などは地味だが手抜きをせずに作っている等)に加え、本作の面目躍如はリアルな空戦シーンなど、監督がこだわったであろうシーンもVFXの進化によって過去にないレベルで再現されている点だ。反面、現代パートは定点での取材シーンが中心のため、画面に動きをつけるのは難しかったと想像されるが、ベテラン俳優の演技力がしっかりそれをカバーしていたと思う。特に本作が遺作となった夏八木勲は味のあるいい演技を見せている。もし宮部久蔵なる人物が実在していて、その史実に基づいたフィクションとして製作され、エンドロールで実際の写真が映し出されたと想像すればおそらく嗚咽クラスの感動があったかもしれないが、作中でも語られていたように、戦争で死んだ人、生き残った人にも、それぞれのドラマがあったことを改めて想起させてくれる点で、この作品が平和な時代に生きる私たちに有益なメッセージを投げかけていることは間違いない。[映画館(邦画)] 8点(2013-12-28 20:46:44)(良:1票)

15.  踊る大捜査線 歳末特別警戒スペシャル<TVM> 《ネタバレ》 TVシリーズ最終回で交番勤務に異動になっていた青島が、再び湾岸署に戻ってくるまでのドタバタを「歳末」という慌ただしい雰囲気に乗せてテンポ良く描けている。さらに定年退職した和久が指導員で復帰する、真下が親のコネで係長になっているなど、設定が自然なのが良い。後の映画版での設定で次第に違和感が増えていくことを思い起こすと、設定のリアリティを軽く考えるべきではない。また同じく後の映画版(特にムービー3やファイナル)と同じ監督・脚本家とは思えないほど、シナリオやカットが冴えまくっている。ファンの間で本作の人気が高いのはそれらに加え、「踊る」の基本ラインといえる、青島と室井の関係(青島が現場で頑張り、室井が上を目指す)、青島とすみれとの関係(同僚以上恋人未満)、スリアミの磨きのかかったオトボケ、「事件に大きいも小さいもない」信念、などを全シリーズを通じて本作が一番わかりやすく見せてくれているところだろう。[地上波(邦画)] 8点(2012-12-17 00:20:02)

16.  それでもボクはやってない ガリレオ・ガリレイの宗教裁判での有名な言葉「それでも地球は回っている」からタイトルが引用されていると思われるが、昔からある「裁判」という制度も、ひとつの問題に対して「区切りをつける」という人智のひとつであって、必ずしも真実を担保してきたわけではなかった。本作は、痴漢冤罪事件という、多くの人が我が身にあてて考えやすいテーマを取り上げ、冤罪と裁判というテーマを考える機会を提供した点は評価できる。我が国では普段は縁遠いと思われる「刑事裁判」の実態を多くの人に知らしめたいとの製作者の意気込みが伝わってくる。今年4月にも電車内で痴漢をしたとして1審、2審では有罪とされた大学教授を、一転無罪とした最高裁判決があったばかりだ。痴漢行為そのもののは決して許すことのできない、憎むべき卑劣な犯罪行為であることは論を待たないが、最初の裁判官が劇中で言っていた、刑事裁判の最大の目的「罪のない人を罰しないこと」、そして冒頭のテロップ「十人の真犯人を逃したとしても、一人の無実の人を罰してはいけない」との主張の妥当性は、鑑賞者自身が本作の主人公の状況に遭遇したと想像すれば容易に首肯できるはずだ。映画自体はまさにドキュメンタリーのように進行していくが、映画という手法を上手に使って、事件の本質を表現することに成功している。特に度重なる公判でのやりとりは息詰まる見せ場であり、「沈黙」という間もきちんと表現しているのは秀逸。主役の演技も自然であり、平凡な日常から一転被疑者として扱われることになった普通の人間のとまどいが見事に表現されている。ラストの結論も、安易に後味の良さを求めることなく「これが今の現実」とのメッセージが込められており、良かったと思う。この作品はこうしたメッセージ性と共に、最後まで観客を引っ張る娯楽性をもバランスさせており、現代社会を生きる全ての人が見て損はないと言い切ることができる。 [DVD(邦画)] 8点(2009-10-22 11:02:26)(良:1票) 《改行有》

17.  実録・連合赤軍 あさま山荘への道程 《ネタバレ》 60年代から各地に広がった学生運動の経過と、その行き着いた先としての連合赤軍の「山岳ベース事件」と「あさま山荘事件」を中心に映画化した作品。冒頭のテロップにあったとおり、実名での配役を含め、事実に即した構成になっている。ちょうどその年代に生まれた世代の私などは、これらの事件(特に山岳ベースでのリンチ事件)を全く知らなかったが、この作品はそのような世代にもわかるように丁寧に時系列で彼らの軌跡を見せており、まさにあの学生運動という巨大なエネルギーがどのようにして「あさま山荘」に至ったのか、文字どおりその道程を描いている映画である。各役者も体当たりの演技を見せており、見応えのある映像に仕上がっている。エレキギターをフィーチャーした音楽も雰囲気が見事にマッチしている。これまでにこのような作品が作られなかったことを考えると、近年になって永田や坂口らの主犯格(ここではあえてこう表現する)の刑罰が確定したことからも、この事件をようやく「総括」できる時期にさしかかって来たと監督は判断したのだろうか。しかし私個人としては彼らの行動を「総括」することはまだできない。ただ言えることは、いかなる高邁な理想を掲げた組織であっても、大衆の支持(そしてその健全なる監視)を得られず、閉鎖的になった途端、そのエネルギーは外から内に向かうようになり、その理想とは正反対に自己破壊に至ってしまう、という現実だ。これはいかなる組織にも言えることだろう。その意味で、彼らの本当の敵は、体制ではなく、自らが創造した組織(軍)そのものだったのではないだろうか。それゆえに、あさま山荘で加藤弟の「あんたも、あんたも、勇気がなかったんだ!!」との叫び(これがあきらかに脚色だとしても)に、この事件の真実があると若松監督は言いたかったのではないだろうか。しかし、それ以上に、この作品は極めて近い過去に、理想に生き、命がけでその理想を実現しようとした若者たちが確かにいたことを改めて想起されてくれる。かれらの犯した罪に弁護の余地はないとしても、「思いつき」で「なんとなく」人を殺してしまう今の一部の若者を思ったとき、あの時代の若者が、今の若者に「私たちは確かに失敗した。だが、あなたたちは命をかけて悔いない理想があるか」と問いかけているように感じてならない。あっという間の3時間余りを観おえ、平和な街の喧騒を歩きながら、そう思った。[映画館(邦画)] 8点(2008-05-05 19:12:36)

18.  フラガール 感動した!ストーリーは実話に基づいているとはいえ、あまりにも予想通りに進んでいく。しかし多くのレビューアーご指摘の通りラストのダンスシーンは予想を超えたレベルに達しており、特に主演の蒼井優が放つ輝きには圧倒される。CG全盛の時代ではあるが、この作品は昔の、そう、映画が大衆の一番の娯楽だった時代の映画のように、日本が「一生懸命」だった時代を、「人間」が一生懸命に演じている。だからこそ多くの感動を呼ぶのだろう。「炭坑町とフラダンス」という発想は正直海外にはアピールしないだろうが、日本人なら時にこういう作品で爽やかな涙を流すのもいいものだ。[映画館(邦画)] 8点(2006-11-21 21:56:51)

19.  ALWAYS 三丁目の夕日 鑑賞後、50年前の「ありふれた日常」が映画作品になり大ヒットするほど、今は殺伐とした世の中になってしまったんだなー、と思うことしきりであった。いつの時代でも家族や身近な人の愛情がやっぱり一番なのだ。あの頃たしかに自分はそこにいた、どこかそう思わせる力がある作品。だからこそ多くの人の心の琴線に触れ、涙を流させるのだろう。[DVD(字幕)] 8点(2006-07-16 10:46:05)

20.  いま、会いにゆきます 《ネタバレ》 「目玉焼き」「高校(部活)の風景」「生活感のある日本家屋」「てるてる坊主」など、いずれも私たち日本人の誰もが心に持っている原風景が背景に展開され、どこか懐かしい感じが好印象。竹内結子は雨と共に帰ってきた澪を実に印象的に演じて、結構好きになりそう。見終わってふと考えると、ここでの澪がもし記憶をなくしていなければ、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」になってたよな・・。それにしても、学生時代の澪役と巧役はナイスキャスティングですね。おかげで、グッと感情移入できました。終盤でタイトルの本当の意味を知った時は、やられたー!ウルウル~、という感じ。家族がいたので、グッとこらえたけど、泣きたかったなぁ。「ありえねー!」と言ってしまえばそれまでだが、ファンタジーというものは時に現実以上に大切な視点を提供するものだ。澪が去った後、あのダイアリーを読む巧の心境を想像すると少し切なくなる。これではおいそれと再婚はできないよな・・、とこれは余計か。いずれにせよ、万人にお勧めできる良質な邦画に仕上がっていることは確かです。[DVD(字幕)] 8点(2005-07-07 10:26:24)

全部

Copyright(C) 1997-2024 JTNEWS