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【製作国 : スペイン 抽出】 >> 製作国別レビュー統計
評価順12
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21.  この自由な世界で 《ネタバレ》 この人の映画のいいところは、スルッと社会問題の内部に入り込んでいくうまさ。不法移民就労問題なんて、日本のニュースだと、強制送還されてかわいそう、という面と、斡旋業者がさも極悪人のように逮捕されていく場面といった、外部から眺める視点しか持てない。それがちょっと内側から眺めると、複雑な力があちこちからぶつかり絡まりあっている現代の一局面として浮き上がってくる。同情と金儲けで揺れるヒロイン、金儲けと言ったって解雇されたばかりの33歳の彼女にとっては、人生最後の賭けのような気合いが入っている。金持ちのギャンブルとは違う。こういう正解のない問題を、できるだけ解に近づけようと小数点以下二桁ぐらいまで割り続けていくのがローチ作品の偉大さだった。ただ本作は、やや問題を整理し過ぎたきらいがあり、いつもに比べると小数点以下一桁ぐらいで止めてしまった感じもある。自分の手持ちの労働者のために不法移民排除を企てる、ってのは、ローチのストーリーとしては、ちょっと分かりやす過ぎる展開になってなかったか。[DVD(字幕)] 7点(2009-07-28 11:58:45)(良:1票)

22.  ブルジョワジーの秘かな愉しみ たぶんブニュエルでは、メキシコ時代の作品群が最も充実しているだろうが、どれが好きかと言うと、私はこれ。自在な語り口の妙。不安と妄想とトボケた笑いが渾然一体となって、「作者は何を言いたいのか」なんて要約されることをきっぱり拒絶した、まさに映画でしか表わせない世界。映画でしか表わせないものというと、とかく美的な構図やスリリングな移動の効果などに多くの監督は工夫を凝らしてきた、でもブニュエルはそうはしない。ごく普通のカットを織り合わせるという基本で、映画が表わせるものを突き詰めた、いや拡大したと言うべきか。道を主人公たちがただ歩いていくシーンがポンとはいる。意味を考えりゃ、車に乗っていないブルジョワジーたちの頼りなさとか、周囲の農作物と隔てられた食欲だけの存在とか、いろいろ出てくるが、妄想と夢が氾濫した後にポッとその屋外シーンになると、もう意味がどうのではなく映画のリズムとしてまことに効果的で、こうして歩き続けていく彼らが映画を貫いてまとめ上げていくそのさまを、感じ入って見守るしかなくなる。あのシーンで感じる気分を、映画以外で味わうことは不可能だ。繰り返されるごとに夢の状況は悪くなっていくし、やたら発砲も起こる。喫茶店での軍人の話と神父のエピソードが重なってくる。それでも彼らは映画を貫いて歩き続ける。意味と無意味の境のような道を、あてがあるんだかないんだか歩き続ける。こちらは落語家の名人芸に立ち会っているように、ただただ話術に身を任せていればいい。[映画館(字幕)] 10点(2009-07-08 12:09:30)(良:1票)

23.  大地と自由 イギリスから見た南の戦争。最初はロマンであった、失業からの救済であった、戦場のほうにこそ自由が望めた。歴史上最も理想的な・自発的な・非強制的な軍隊としての義勇軍であった。ただこの軍隊の弱点は、タテ系統を持たないため勝てないということ。アナーキストがボルシェヴィキに勝てなかったように、個人を尊重する組織は個人をないがしろにする組織に勝てない、という人類の歴史がどうしても乗り越えられない悲劇に触れていく。自由だった組織は、組織の防衛のための組織となり、やがて内部崩壊していく。多言語が行き交っていた共同体は、同じ言語同士が呼び交わしつつ銃火を交えることとなる。牧歌的だった戦場は市街戦に移る。でもこの監督は美しい悲劇として投げてしまわない。嘆きの歌を歌わず、人類の課題として繰り返し作品を提示する。その人がいるということで、映画への尊敬を持ち続けられる監督の一人。[映画館(字幕)] 9点(2009-03-15 12:05:26)

24.  カルラの歌 この人は「悪い時代の国」を描くのだけど、その悪い時代の中にひそむ若さや可能性を、老いたグラスゴーの街と対比して見ている。うらやましいなどと思ってはいけないが、と作者自身自戒しつつ、どこかでうらやましがっているような。不自由な国の中で自由を求めて戦っている者にのみ、自由は味わえるのではないか、と。老いた国での自由は、二階建てバスでピクニックをしてしまうこと、ただし失業と引き換えだ。バスがグラスゴーとニカラグアをつないでいる。この人は、どこかで起こっている悲惨に常に関心を持ち続けているが、それはまた常に自国との関係において問われているところがいいんだ。[映画館(字幕)] 7点(2009-02-06 12:11:42)(良:1票)

25.  マイ・ネーム・イズ・ジョー 《ネタバレ》 前半、若くもない男女が次第に親密になっていくあたりの丁寧な進行。壁紙、70年代ポップスの歌手あてゲーム、セーラの仕事場に行ったとき「ああ、ジョー?」と受付の女性にももう知られていることが分かる、なんて。で、ボーリングを経て、恋人を殴った過去を告白するまでに。いっぽう甥リアム周辺に不吉の影が立ち込め出し、ここらへんからドラマが動き出す。運び屋の仕事を引き受けてしまい、それがばれたときのセーラのせりふ「あたしを殴るの」がむごい。どこかエモーションは、仁侠映画に近いのではないか。主人公の回りをうろちょろするリアムみたいのって仁侠映画にもいるでしょ、殺され役。そして主人公の情感の爆発。ジョーがボスを殴るのは、健さんがドスを抜いたようなもんだ。リアムはジョーの分身でもあり、家庭を持てたジョーでもある。だからリアムが死んでジョーが再生し、ジョーの家庭がおそらく生まれるであろうラストになるわけ。主人公が殺されたり牢屋に入ったりしてこの社会から降りるという安易なラストにならない。地獄でも極楽でもないこの世界に踏みとどまる。いや、極楽ではないが地獄でもない、という順番かな。[映画館(字幕)] 8点(2008-11-09 12:15:30)

26.  アザーズ 冒頭のヒロインの悲鳴が、終わってみると意味深長で。召使たちが怪しく、ヒロインも怪しく、観客はどこにも足を落ち着けられずに、この家を見守ることになる。最初のうちは姉のいたずらという可能性を残しているところも膨らみ。死者の写真は気味悪く、二階からの音も効果満点。でも終わって一番怖かったのは、カーテンを閉め切って太陽の光を避け、暗い部屋で息を殺してじっとしている存在って、いまここに集まっていた映画館の観客である我々のことではないか、と思ったとき。キャーッ。[映画館(字幕)] 7点(2008-07-14 10:49:41)

27.  蝶の舌 内戦・子ども・昆虫というスペインお得意の三題噺。かたわらで犬が吠えてないと燃えない女とか、狼にさらわれた娘とか、四つ脚のケダモノの臭いもたちこめ、どこか民話の匂いに混ざり込む。そういう空気の中に政治がヌッと顔を出す。これはもうラストシーンのためにある映画で、安易な反戦映画だと、子どもが「大人は間違ってる」と大見得を切るところだが、政治とはそんな生易しいものではない。政治は途方もなく大きな困惑として子どもの前に立ちはだかる。怒りを描く映画は多いが、困惑を切実に描いてここまで成功した映画は少ないのではないか。怒りはまた別の戦争を肯定しかねないが、子どもをこのように困惑させるものは、ただただ否定するしかない。[映画館(字幕)] 7点(2008-07-09 10:52:54)

28.  バスを待ちながら 《ネタバレ》 ボリス・ヴィアンの小説「北京の秋」のアタマを思わせる出だし、またブニュエルの『皆殺しの天使』もヒントになってるようで、あちらはシュールレアリズムがごく自然に日常につながっている。通過地点であるバス停が、巣となって住処に変わっていくファンタジー。前半は、アメリカにもロシアにも頼らずに自力でバスを動かそうっていう政治的メッセージが感じられるが、しだいに純粋なファンタジー性が濃くなる。いちおう夢落ちなのだが、その夢を皆が共通に見てるってとこが大事で、生理現象としての夢と希望としての夢とが重なっている。強欲な缶詰男は夢に参加できなかったし。どうでもいいことだけど、あちら方面の映画の主人公って日本人から見るとすごくニヤケて見えるんだよな(子どもの時「怪傑ゾロ」のガイ・ウィリアムスを見てそう感じたのが最初)。文化によっていい男の基準が違うよい例だろう。[映画館(字幕)] 7点(2008-07-02 12:16:26)

29.  パンズ・ラビリンス 《ネタバレ》 おとぎ話と現実とがぶつかりあうのかと思っていたら、歴史をおとぎ話に呑み込ませてしまったような映画だった。悪役の大尉が歴史上のファシストを再現するというより、童話の憎々しい継父の造形で、幻想と現実とが対立するというより並行している感じ。別にそれでもいいんだけど、フランコがまだ生存中に作られた『ミツバチのささやき』より緊張に欠けるのは仕方なく、こうして内戦の歴史の記憶が過去の物語になっていくのだろう。興味深かったのは、生まれてくる息子への大尉の思い込みの強さ。もう妊娠中から男の子と決めている。男から男へという父権の強さが、カトリックの国ではいまでも重苦しいということか。そう思うとアルモドバルの女性映画の見方にも、また新たな視点が加わってくる。話の終わらせかたも、同じスペイン映画の『汚れなき悪戯』をちょっと思い出させ、やはりカトリック的なものを感じた。実はこの映画で一番感動したのは、手のひらに目玉のある化け物の登場で、江戸時代の百鬼夜行図にも、両方の手のひらに目があるのっぺらぼうがいる。そっくり。バケモンの想像力において世界は一つだなあ、と感動した。[DVD(字幕)] 7点(2008-06-17 12:18:36)(良:3票)

30.  ガウディアフタヌーン なんかスリラーと紹介してる記事もあったけど、こりゃコメディ。ジュディ・デイビスがコミカルなのって珍しいか。あともクセモノ女優を揃えてある。ガウディを背景にしてるのが正解で、あの建築のそこはかとないユーモアと質が似ている。一見歪んでいるように見えて、これはこれで調和がとれてる、って話。直線ばっかじゃつまんないって話だ。男装する母と女装する父とが母性愛を競い合うんだもん。ヒロインのアパートの大家の騒々しい家庭が、マットウな家庭として対置されて、あれもあればこれもあると世界が広がっていく。スペインの明るさ。警察に“父親”の人相を告げるとこ「髪はカツラで肩まで、身長はヒールを履いて云々…」ってのがおかしかった。マジシャンの場、映画の中の舞台ってのは、なぜかワクワクさせる。[映画館(字幕)] 6点(2008-06-16 10:13:56)

31.  ブレッド&ローズ この人の映画って、政治宣伝ビラになりそうなぎりぎりのところで、それを越えて深く入ってくる。たとえば“強盗”で本国送還になるケース、この被害者を老人にして観客の心が引っかかるようにしてある。これが脂ぎった中年男だったら、観客はヒロインに寄り添ってもっと簡単に善悪を判断してしまうところ。あるいはオルガナイザーに「で、あんたのリスクは何なの?」と問う場面、これ適度に同情的に見てた観客に向かっても放たれた言葉だ。白眉は姉妹対決の場で、裏切った姉にも言い分がある。労使間の搾取の下に、男女間の搾取がぞろっと見えるその奥深さ。「知らないふりしてたんでしょ」が効く。[映画館(字幕)] 7点(2008-06-10 12:10:24)

32.  SWEET SIXTEEN 印象深いのは、友人の“ピンボール”。人懐っこそうでいて、破壊的。彼にはリアムしかいないんだ。リアムには姉と母がいるけど。さらにやくざの“ファミリー”には、リアムだけが迎え入れられていく。ピンボールはあらゆるファミリーから除かれる。彼には“部屋”しかない。けっきょく彼がどうなったのか、どうともとれるようになっているんだけど、気になる。リアムもやがてピンボールのように“ファミリー”から排除されて海辺に立った。でも彼には姉からの電話がある。スコットランドなまりって、普通の英語と全然別ものに聞こえるんだけど。[映画館(字幕)] 7点(2008-06-07 12:16:49)

33.  トーク・トゥ・ハー この人の映画に出てくる女性って2種類あって、ひとつは力強い母親のイメージをひくゴツゴツした人、もうひとつはお人形さんのようなただただ愛らしい人。ベニグノ君の愛の対象は当然後者のタイプのアリシア。ベニグノ君のやったことは準強姦と言われるもので、これ法律上のみならず良くないことよ。でもこの尽くす愛のわがままさをもっと上のほうから肯定して見てしまうと、たとえば谷崎の言う「おろかという徳」なんて言葉を思い出したりして、この奇跡譚もやはり愛の一つの核心の現われではあるなあ、とか思ってしまう。「ククルククパロマ」の歌がしみるが、これ日本語に訳すと「鳩ぽっぽ」なのか。[映画館(字幕)] 7点(2008-05-12 12:13:47)

34.  ビリディアナ 《ネタバレ》 単純にヒロインを非難するだけなら出来ないことはない。伯父を孤独のまま死なせ、浮わついた慈善で乞食を犯罪者にしてしまい、自らも堕落していく、って。でもこの人の映画がそんな単純にまとめられるはずがない。あの伯父だってクセもので、自殺前に浮かべる何とも生臭い笑みを見ると、自殺自体がビリディアナを閉じ込める罠だったのかとも思われる。あの女中だって怪しい(黒い牛って何なのよ)。「罪を犯せばそれだけ悔い改めることができる」がキーワードか。ブニュエル自身が自伝で「私は神のおかげで無神論者でいられる」って言ってたけど、何か宗教的な回路を経て、最後には人間関係の問題につながっているような気がした。乞食パーティのシーンがやはり凄く、短いカットをハレルヤコーラスでつなぎ、女装男が鳩の羽根をまき散らしてのドンチャン騒ぎ。[映画館(字幕)] 8点(2008-03-29 12:18:29)

35.  ボルベール/帰郷 《ネタバレ》 東風が人を狂わす、と最初にことわりを入れたことで、全体に古典喜劇のような柔らかなトーンがかかった。かなり悲惨な事件を扱いながら、刺々しくならない。姉と妹が、それぞれ“死人”について隠し事をしながら探り合うあたりのおかしみなど、こういう素直な映画も撮れる人だったのか、と見直した。いつもはそれがかえって落ち着かなくさせる暖色系に埋め尽くされる世界も、今回はそのまま暖かさととっていいような気になる。それにしてもアルモドバルに出てくる男はしょうがないな。ペネロペ・クルスの亭主にしろ、登場はしないが父親にしろ、女たちの世界の邪魔ものでしかない。祖母から孫までの三代の女、近所のかみさん連中も含めての女たちの世界の闊達な連帯の前で、邪魔ものの男どもは、桃太郎で退治される鬼の役割程度の存在。朗々と歌われる女性賛歌を、男は黙って聞くしかない映画だ。母親はお墓で眠ってなんかいない、千の風になんかなってない、風は人を狂わせ、母親はベッドの下に隠れて目玉をぎょろつかせてる。[DVD(字幕)] 7点(2008-03-27 12:16:52)(良:2票)

36.  苺とチョコレート 男二人、反発から友情へという定型の話だけど、二人だけの話で閉じず、だんだん社会に開いていくところがいい。「ぼくがいなければ、この国は何かを失う」という主人公の言葉に、すべてが凝縮している。見ようによってはずいぶん割り切りすぎてもいる。共産主義者のダビドに対してディエゴは性的異端、宗教や芸術サイドの証言者にもなっている。もっと討論でダビドに主張してほしいところもあるが、大事なのはいろいろな立場や考え方が複数存在することを認めあうことであって、そこへ話が絞り込まれていくので後味はいい。どんな社会体制であろうと、女の仕種をする男というものは笑いの種になり、これを単に偏見として切り捨てるのではなく、なぜ男の仕種をする女は笑いの対象にならないのかを含め、仕種の社会学として研究する価値があるのではないか。冷蔵庫にロッコという名前をつけてペットがわりにしている。[映画館(字幕)] 6点(2008-01-10 12:23:04)

37.  ウィスキー ときに人形の表情が雄弁になるように、無表情が多くを語ることがある。髪型を変えても気がついてもらえない・写真を撮らねばと言っても反応がない、そこで主人公はがっかりした表情を作らず、無表情で通す。がっかりした表情をすれば、それは「がっかり」だけだ。無表情だと、がっかりしたけどがっかりしたことを男にさとらせないぞ、という意地や、別にがっかりしてないもん、という自分へのごまかしや、その他いろいろ複雑な感情を、見てるほうが類推し膨らませてしまう。無色を保っている彼女の内面に、多彩な色彩が飛び交って見えてくる。演技力とは、そういう無表情を作れる能力を言うのだろう。[DVD(字幕)] 8点(2007-10-29 12:22:08)(良:1票)

38.  麦の穂をゆらす風 《ネタバレ》 最初のうちは、明確な敵に対決していく何の迷いもない義勇軍の時代。訓練もどこか戦争ごっこのようなのどかさを伴う。しかしそのかつて訓練をしていた緑の野で仲間を処刑してから、ドラマは陰惨さを帯びてくる。ああローチの世界に入っていくな、と思う。敵の輪郭が崩れ、仲間の輪郭と溶け合い出す。やがて協定への妥協派と否定派への分裂、義勇軍は正規軍と反乱軍として対決する。これはアイルランドの特殊な物語ではなく、歴史上どこにでも見られた悲劇。ローチ監督自身すでに「大地と自由」でスペイン内戦を舞台に描いたテーマだ。何度描いても色あせぬテーマであることが哀しい。国家の哀しみ、民族の哀しみ、名前を知っているもの同士が殺し合う哀しみ、抵抗のための組織が組織のために弾圧を始めてしまう哀しみ。この映画では反復が効果を挙げている。冒頭のイギリス軍に銃で脅される場面が、終盤ではアイルランド正規軍によって反復される。密告を勧める場面も反復される。立場を変えて反復されることのやりきれなさが、この映画を底で支えている怒りだ。でもいったい何に対して怒ればいいんだろう。[DVD(字幕)] 8点(2007-09-09 12:46:43)(良:3票)

39.  機械じかけの小児病棟 《ネタバレ》 舞台は英国のひんやりとした空気に包まれている島だけど、どこか監督スペインの南のカトリックの空気も混ざってきている。死者の世界との近さ、そのことを登場人物たちが当然のように納得してしまうあたり。また音楽にコーラスが入ってくると、それだけでミサを連想してしまうもので。しかしこの外はひんやり・内に熱い情念って、ポイントになるナースの存在そのものでもあるんだな。憎悪によるたたりよりも、愛による迷いのほうが怖い。闇の黒よりも、閉鎖病棟の、深海の底のような緑のほうが怖い。[DVD(字幕)] 6点(2007-08-27 10:57:41)

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