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プロフィール
コメント数 2389
性別 男性
自己紹介 〈死ぬまでに観ておきたいカルト・ムービーたち〉

『What's Up, Tiger Lily?』(1966)
誰にも触れて欲しくない恥ずかしい過去があるものですが、ウディ・アレンにとっては記念すべき初監督作がどうもそうみたいです。実はこの映画、60年代に東宝で撮られた『国際秘密警察』シリーズの『火薬の樽』と『鍵の鍵』2作をつなぎ合わせて勝手に英語で吹き替えたという珍作中の珍作だそうです。予告編だけ観ると実にシュールで面白そうですが、どうも東宝には無断でいじったみたいで、おそらく日本でソフト化されるのは絶対ムリでまさにカルト中のカルトです。アレンの自伝でも、本作については無視はされてないけど人ごとみたいな書き方でほんの1・2行しか触れてないところは意味深です。

『華麗なる悪』(1969)
ジョン・ヒューストン監督作でも駄作のひとつなのですがパメラ・フランクリンに萌えていた中学生のときにTVで観てハマりました。ああ、もう一度観たいなあ・・・。スコットランド民謡調のテーマ・ソングは私のエバー・グリーンです。


   
 

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21.  地獄のモーテル 《ネタバレ》 噂には聴いていたけど、期待に違わずメタメタなトンデモ映画でしたね。“人肉を混ぜて隠し味とした世にも美味な燻製”をウリにして商売繁盛のサイコ兄妹、アメリカB級ホラーでは定番のジャンルである“モーテルもの”でございます。でもこの映画、登場するキャラがみな頭のねじが外れていて善玉を含めて行動がほとんどシュールです。ヒロインといちおう位置付けできる女性にしても、普通に考えれば半ば拉致されたような境遇なのに、危ない目になんども逢いながらも緊張感がまるで欠落している。挙句には弟の保安官からのモーションを振ってサイコな兄貴になぜか惹かれていって、ついにはマジで結婚しようとする。もっと判らんのは食材の“畑”で、声帯を切って呻くことしかできない人間を首だけ出して埋めるって、こりゃなんの意味があるんだい?脚本も酷いけど監督が超怪作『ゴースト・イン・京都』のケヴィン・コナーですからこうなるのは必然だったのかもしれない、ほんと『ゴースト・イン・京都』がまともに感じるほどです。ラストが唯一の見せ場であるチェンソーでのチャンバラですが、ブタの生首を被った兄貴のビジュアルはさすがに強烈でした。インパクトがある絵面でスプラッター映画のアイコンみたいな扱いをされていて自分も知ってはいましたが、まさかこの映画のキャラだったとは… ラストの兄貴の死に際での衝撃の告白、たしかにこれはこの映画をコメディにカテゴライズする唯一の要素かもしれませんね(笑)。[CS・衛星(字幕)] 2点(2022-08-25 22:52:18)

22.  地獄の警備員 《ネタバレ》 92年の製作、もう三十年も前の映画なんですね。この頃はまだバブルが残っていたころ、そういや商社なんかではいわゆる絵画ビジネスなんて代物が流行っていましたね。「セザンヌを85億円で落札出来たら安い買い物か?」なんて会話があって、時代を感じさせられます。そして警備員に電源を落とされて外部に電話して助けを求めることが出来なくなる、そうかまだこの頃は携帯もPHSもメールもない頃、せいぜいポケベルが最先端ツールで、現代の若者には絶対理解できないシチュエーションだと思います。 松重豊が演じる元力士という設定の警備員はいわばジェイソン的なサイコキラー、というよりなぜか赤いロングコートらしきもの着ていて『帝都物語』の嶋田久作みたいな感じ。彼の登場シーンはすべて薄暗いシーンなのではっきりした姿形を認識しづらいけど、どう見ても“身長が2mちかい元力士”にはほど遠い感じがするのが難点。それこそ嶋田久作をキャスティングした方が正解でしょう。殺しの手口も巨漢という設定を活かしたあまり凶器に頼らない工夫が認められます。まあキ〇ガイのすることですから理屈が通らなくても全然かまわないんですけど、終盤でヒロインが唐突に警備員を説得というか対話を始めるのは黒沢清映画らしいところです。あと大杉漣がヒロインを個室に連れ込んでいきなりズボンを脱ぐところや、ラストで長谷川初範の奥さん(?)として洞口依子がワンカットだけ登場するところなんかもね。 怖いか、面白いか、と問われれば「微妙です」としか答えられないけど、不条理劇のようなものを好む方にはお奨めできるかも。[CS・衛星(邦画)] 5点(2022-07-11 23:03:01)(良:1票)

23.  シャッフル(2007) 《ネタバレ》 物語は木曜日から始まる。リンダは娘たちを学校に送ってから、日常家事のルーティーンに戻る。留守中に出張中の夫・ジムから留守電にメッセージが残されていることを知るが、直後に保安官が訪問して来てジムが昨日に事故死したことを知らせる。 終いまで観て我に返ると、この導入部の木曜日の展開に辻褄が合わないことに気が付かされます。前日に残されたメッセージに気づかなっかったということはまあ現実でも良くあることでツッコむところじゃないですが、その内容はリンダが曜日シャッフルの渦に巻きこまれた状態での火曜日の行動の結果であり、メッセージを残している最中にリンダが電話をかけてきている。でも木曜日の彼女は前日に普通にジムを出張に送り出している冷めた夫婦関係のままだとしか思えない。ということに気づいちゃうと、この映画のプロットがますます理解しがたくなっちゃいます。こんな理不尽な曜日シャッフル現象に“なぜこうなるの?”なんて問いを投げかけても意味ななく、それこそ神様の悪戯ということにでもしておけばいいです。“大混乱の末最後に夫婦の愛が再確認されて新しい生命を授かりました”と言うのが脚本家の意図するところなんでしょうが、 “ジムが事故を免れる”というハッピーエンドや、“ジムの代わりにリンダが事故死する”という疑似ハッピーエンドで閉めなかったところだけは評価したい。 “頑張れば運命は変えることが出来る”というハリウッド映画で定番のテーゼからは逸脱しているけど、たまにはこういうのもイイんじゃないでしょうか。 さすがにサンドラ・ブロックはいい演技を見せてくれるけど、この映画じゃ彼女の無駄遣いなんじゃない?[CS・衛星(字幕)] 6点(2022-06-18 22:22:42)

24.  釈迦 《ネタバレ》 日本初の70ミリ映画として有名だけど、最近はあまり語られることのない寂しい超大作でもあります。熱心な日蓮宗(あの宗教団体ではない)信者であった大映社長・永田雄一としては、やはり“自分がやらなきゃ誰がやる”という感じのテーマであったのは確かです。イエス・キリストの生涯を描いた映画は古今で数多製作されていますけど、マホメットを画像・映像化することがご法度であるイスラム教は別にしても、お釈迦様を正面から映画化したのは浅学ながら本作しか知りません。 製作費が七億円というのは確かに破格の超大作で、現代の貨幣価値でいうと何十億ということになりますかね。でも七億円というのは永田雄一お得意の大ぼらで、実際には一億七千万程度というのが真相みたいです。70ミリ撮影と銘打っていますが『スパルタカス』で使われた35ミリビスタビジョン・カメラをパラマウントから払い下げてもらい、それに圧縮レンズを装着して撮影して現像時に70ミリに焼き付ける“なんちゃって70ミリ”方式だったみたいです。でもそのカメラは重量860キロもある代物で、おかげで見せられるのは演劇公演の舞台映像みたいに動きが極端に少ない映像になってしまっています。 美術やセットには確かにカネをかけているのは判りますが、問題なのは脚本です。この映画では本郷功次郎演じるシッダ太子よりもダイバダッタの勝新太郎の方が目立ちすぎちゃってるんですよ。なんせ本郷は開始二十分あまりのところで悟りを開いて仏陀になってからは、影や遠景で存在を示しているだけでまったく画面に登場しないんですから!まるでマホメットの映画を見せられているみたいです(笑)。対する勝新は座頭市になる直前のキャリアで、『マグマ大使』のゴアみたいな風貌の悪役王子を熱演しています。ストーリー自体も史実を改変しているのは良しとしても、釈迦入滅後のエピソードまで同時代の出来事としたりして、要は詰め込み過ぎなんです。出演者はまさに大映オールキャストで豪華絢爛、雷蔵の義父である市川壽海まで登場するのは珍しい。 まあ言ってみると特撮スペクタクルは期待するほどでもなかったし、文字通りの“説法映画”というわけでした。これを70ミリスクリーンで観ればまた印象も違ってくるのかもしれませんが、現在70ミリスクリーンで上映できる映画館なんて日本にあるんかね?[CS・衛星(邦画)] 5点(2022-04-21 11:10:55)

25.  13日の金曜日(1980) 《ネタバレ》 『13日の金曜日』シリーズと言えばジェイソンが暴れまわるお話しだと思いきや、この第一作ではジェイソンのおかしくなった母親が殺しまくる犯人だという設定なんですね。最後に登場するジェイソンはこの設定では死者、つまりスピリチュアルな存在だったというわけで、単なるモンスター映画と成り果てた続編群との違いは大きいんじゃないでしょうか。このシリーズは “『13日の金曜日』フランチャイズ”とも称されているそうですが、『ソウ』シリーズなんかと違って毎回の監督・脚本家・製作者が異なっているので“フランチャイズ”とは言い得て妙かと思います。 カーペンターの『ハロウィン』と並んで70年代から80年代にかけてのスラッシャー・ジャンルのパイオニア的な立ち位置ですけど、製作者の発想といいストーリーと言いほぼ『ハロウィン』のパクりみたいなもんです。それも製作者や監督たちの出自もあり、B級映画の域を脱していないのも確かです。尺を稼ぐためか登場人物たちの何気ない意味もない行動を長々と見せたりして、これも監督の力量のなさが成せる技なんでしょう。俳優たちもジェイソンの母親役の他は若手の安い無名俳優ばかり、その中でケヴィン・ベーコンだけがビッグな存在になれたのは目出たい事です。スラッシャー・シーンは若き日のトム・サヴィーニが担当、ちなみにラストのジェイソン登場も実は彼のアイデアだそうで、まあ当時は『キャリー』のパクりだとしか評価されなかったみたいです。 はっきり言えばほんと大したことのないB級映画なんですけど、インデペンデント系としては初めてメジャーが配給したことは、本作の最大の功績なのかもしれません。「映画界にはびこる最も卑劣な生き物」と監督ショーン・S・カニンガムを罵倒した批評家もいたそうですが、いくら何でもそりゃ可哀そうです。[CS・衛星(字幕)] 5点(2022-03-22 19:44:43)

26.  白いドレスの女(1981) 《ネタバレ》 『氷の微笑』と双璧をなす80~90年代悪女映画の金字塔、本作のマティ・ウォーカーのさらなる進化形が『氷の微笑』のキャサリン・トラメルということになるでしょう。この映画の同年には『郵便配達は二度ベルを鳴らす』もリメイクされていますけど、長い間途絶えていたファム・ファタール映画は80年代が始まるや否や復活したって感じです。 舞台がフロリダ近辺みたいですけど、それにしても登場人物がみんな汗かきすぎ。80年代のアメリカなんだから、室内にエアコンぐらい普及してそうですけどねえ。男性の汗じみが拡がったYシャツ姿が苦手なのは、自分だけでしょうかね。ストーリー自体は、今や四十年も経って似たような映画は山ほど撮られましたので新鮮味は薄くなってしまいましたが、当時としては卓抜なストーリーテリングと賞賛してもいいんじゃないでしょうか。でも粗というか、この映画には大きく絞っても難点と言えるところが二つあります。一つはマティとメリー・アンが実際に交流しているところを、弁護士ネッドが見てしまうという展開。これがラストのオチが観客に受け入れやすくなるというのが監督の意図だったのかもしれませんが、かえって深く考えてみるとウソ臭さが目立って逆効果だった感じです。そしてもっと大きい難点は、「なんでネッドは殺しを決意したんだろう?いくらなんでもアホ過ぎない?」ということに尽きます。少なくともマティは劇中では夫殺しを懇願するようなことはしていない、いくら床上手といっても二流とはいえ弁護士の男をあの技だけで操れるもんでしょうかね。でも、この映画の中ではマティの悪女的な行動を観客に一切見せない演出で、これは上手いストーリーテリング思います。舞台経験が豊富だったとはいえ、映画デビュー作でアラサーなのにバンバン脱ぎを見せてくれたキャスリーン・ターナーにも敬意を表しておきましょう。 それにしても、映画の中で完全犯罪に成功するのはなんで女性ばっかりなんでしょうかね?男ってやっぱアホなのかな?[CS・衛星(字幕)] 6点(2021-11-10 22:55:52)

27.  十三人の刺客(1963) 《ネタバレ》 三池版リメイクを先に観ていますけど、やはりオリジナルは正統派時代劇という感じです。悪役殿様は明らかに三池版よりもまともというか迫力不足(リメイクの稲垣吾郎がぶっ飛びすぎとも言えるけど)、最期も単なるボンボン育ちらしい小物感が濃厚だったのが残念。こんなのが老中になっても大した影響なさそうな感もあるけど、逆に体面のためには妾腹といっても将軍の弟までも抹殺する幕府というか武家社会の非情さを強調する意図のストーリーテリングなのかもしれません、まあ考え過ぎでしょうけどね(笑)。十三人の刺客たちの半数は正直言って誰と特定できないような無個性なのがこの映画の欠点だけど、片岡千恵蔵・嵐寛寿郎・西村晃をキャラ立ちさせれば良いという脚本の割り切り方みたいですね。リメイクと違って里見浩太郎・山城新伍という若手キャラが目立たなかったのも残念、きっとまだ時代劇全盛時代のことですから、千恵蔵・アラカンといった大御所がメインで若手が活躍するような映画造りは難しい時代だったんじゃないでしょうか。出番はわずかでしたが月形龍之介=牧野靱負もさすがの存在感。リメイクでも松本幸四郎がキャスティングされていますが、「このチョイ役になんで幸四郎が起用されるんだろう?」という疑問がありましたが、オリジナル版へのリスペクトだったと納得しました。内田良平=鬼頭半兵衛も鬼気迫る演技、東宝製作だったら仲代達也が演じたんだろうなという感じもして、この二人の侍姿は雰囲気が似てますね。 クライマックスの大活劇はまさに“集団抗争”と呼ぶに相応しいごちゃごちゃぶり、これはこれでリアルなんでしょうけど好き嫌いは分かれるでしょうね。あんだけカッコよかった西村晃の無様な最期と逃げ延びてなぜか哄笑する明石藩士がラスト・カットというカタルシスのない幕の閉じ方、この辺りこそが工藤栄一らしいところなんでしょう。[CS・衛星(邦画)] 6点(2021-10-05 22:21:25)

28.  情婦 《ネタバレ》 どんなジャンルを手掛けても傑作をモノにしちゃうビリー・ワイルダーがアガサ・クリスティーのミステリーに挑戦。まるでヒッチコックが撮った様な極上の英国法廷劇になったわけですが、意外にもヒッチコック自身はアガサ・クリスティー原作を映画化したことはありません。チャールズ・ロートンを始め英国俳優が顔を揃え、おまけにマレーネ・ディートリッヒまで出てくるととてもハリウッドで製作された作品だとは思えません。唯一のハリウッド・スターと言えるのはタイロン・パワーですが、彼は次作の『ソロモンとシバの女王』を撮影中に急死していますから、本作が実質的に遺作なわけです。しかも死因が心臓発作だったというところは、本作からの因縁を感じてしまいます。彼は単なるイケメン・アクション俳優としてしか認知されていなかったけど、本作で見せた演技は演技開眼と呼べる好演だったので惜しまれるところです。因みに、ヴォールがフレンチ夫人と二度目に邂逅する映画館で上映されていた映画は、タイロン・パワーがジェシー・ジェームズを演じた『地獄への道(39年)』で、いかにもワイルダーらしい楽屋オチです。 そりゃあワイルダー映画ですから脚本は完璧で、チャールズ・ロートンと看護婦エルザ・マンチェスターの掛け合いは実生活でも夫婦だけあって傑作です。マレーネ・ディートリッヒもさすがの貫禄、例のシーンでの彼女の演技は完璧ですっかり騙されてしまいました。まああんまり詳しくは書けませんけど、50年代の作品としてはかなり強烈などんでん返しだったんじゃないでしょうか。 この映画の唯一最大の欠点はやはり『情婦』という邦題で、どこからこのワードを思いついたのか謎でしかありません。自分はこの邦題のおかげで長いこと敬遠してしまいましたが、同じような経験の人も多いんじゃないでしょうか。“内容が伝わらない悪センス邦題ランキング”があるのなら、間違いなくベスト3以内にランクインするでしょう。[ビデオ(字幕)] 8点(2021-09-30 23:55:42)

29.  城取り 《ネタバレ》 時は戦国、関ヶ原合戦に向けて徳川家康が策動を始めたころ。上杉征伐の軍勢が会津に迫ってきたのに呼応して北隣の伊達政宗は上杉家領内に多聞山城という出城を構築して会津征服を狙ってきた。憂慮を深める直江山城守兼続にたまたま侍大将・俵左内を訪ねてきていた名うての兵法者・車藤三は左内と五百両の軍資金があれば自分が城を落としてみせると豪語した。しかし多聞山城の城代は切れ者で知られた赤座刑部、果たして藤三の作戦は首尾よく事が運ぶのだろうか? 司馬遼太郎の『城をとる話』の映画化ですが、この日経新聞で連載された小説自体が主演である石原裕次郎に依頼されたもので、完結を待って石原プロが製作した映画です。裕次郎の相棒・左内には千秋実、これまた百戦錬磨の戦上手だけど銭を貯めることが生きがいというキャラが面白い。堺の白粉行商人役で芦屋雁之助と伊賀の抜け忍として若き日の石立鉄男が城取りチームに加わりますが、口八丁の雁之助が傑作なキャラでした。作戦としては城の建造現場に潜り込んで銭を使って使役されている村人たちを決起させるという割とオーソドックスなものですが、ストーリー展開はどこか『七人の侍』を意識している感が強かったですね。『七人の侍』とは大きく相違するところは悪役で、赤座刑部=近衛十四郎がこれでもかという存在感とキャラ立ちで、完全に裕次郎を喰っていました。裕次郎と十四郎のチャンバラ対決は当然のごとくラストで用意されていますが、互いに長太刀を使って太刀がぶつかり合う瞬間に激しく火花が散る夜間を活かした演出が印象的でした。ちょっと気になったのは裕次郎のセリフ回しで、彼だけはほとんどのセリフが現代調なんです。藤三が村人を集めて作戦説明するシークエンスでは、「こんばんは、皆さん」って裕次郎が挨拶するのにはズッコケました(笑)。 城取りチームの四人は誰も死ななかったけど、ヒロインの中村玉緒など死者が村人衆だけというところが『七人の侍』と大きく違ったところですかね。テンポも良く個々の役者もいい芝居してるんだけど、なんか物足りない、要は裕次郎のチャンバラを見せるための映画だったということかもしれません。[CS・衛星(邦画)] 6点(2021-07-30 23:12:26)

30.  ジョーンの秘密 《ネタバレ》 80歳を超えた老婆ジョーン・スタンリーはある日スパイ容疑でMI5に逮捕される。容疑が信じられない息子で弁護士のニックが取り調べに立ち会うが、そこで母親の驚くべき過去と向き合うことになった。 これは1999年に起きた“メリタ・ノーウッド原爆情報スパイ事件”に着想を得た小説の映画化です。ソ連は1949年にアメリカに次いで原爆開発に成功しましたが、ソ連の原爆開発は米英の原爆開発プロジェクト内に潜むスパイからの情報が無ければこれほど早期に成功しなかっただろうというのが定説で、英国の原爆開発情報を漏洩していたノーウッドもその一人だったというわけです。 この映画と言うか原作小説はこの事件をモチーフにしているに過ぎず、主人公の名前から登場人物および事件の経過はほぼフィクションです。あとこの映画はジュディ・デンチが主演となっていますが、どう観てもデンチとソフィー・クックソンのダブル主演で、過去のジョーンを演じたクックソンの方が圧倒的に出番と存在感がありました。 海外の作品評では「魅力的な実話を当惑するほど退屈な形でドラマ化した」「ジュディ・デンチの圧倒的な才能を無駄にしている」などと酷評されていますが、私もそこまで言っちゃうと可哀そうかなと思いますが当たらずとも遠からずかなと思います。ジョーンをスパイにリクルートしようとするケンブリッジ大学の研究者や外務省の若手官僚などのいかにも胡散臭いキャラたちも登場しますが、どうもこの連中がストーリーから浮いてしまっていたんじゃないかと思います。どうせフィクションならもっとサスペンスを盛り上げるストーリーテリングにした方が良かったと思います。途中からジョーンの夫・ニックの父親が登場しないのが気になっていましたが、ラスト近くでそれが明かされたのが本作で唯一の感銘を受けたところでした。結局はスパイ・ミステリーというよりも、ジョーンの純愛物語だったと言えるでしょう。そして出番は少なかったけど、ジュディ・デンチの存在感はさすがでした。[CS・衛星(字幕)] 5点(2021-07-15 22:29:35)

31.  ジーザス・クライスト・スーパースター 《ネタバレ》 舞台版が極端に演出を現代に寄せているのと較べて、イスラエルの遺跡や荒れ地で撮影されているので、意外と違和感は少ないです。全編でセリフがすべてロック・スコアのミュージカルですが、ラストでユダの二言三言の語りだけが普通のセリフだったというのが印象的です。やはりこの劇の主人公はユダで、イエスは狂言回しだったという結論に落ち着きましょうか。でも本作のイエスの人物像は驚くほど人間的で、自分の影響力があまりに大きくなりすぎて苦しむ心の弱さが感じられて、自分が今まで観たイエスを描いた映画の中でもっともしっくりうるイエス・キリストでした。たぶん実際のイエスも、始めは当時では70年代のヒッピーと大して変わらないような存在だったんじゃないでしょうか。それがここまで世界宗教化できたのは、使徒たちの力が大きかったからには違いないでしょう。他の二つの世界宗教の創始者である釈迦とマホメットとイエスが違うところは、彼らが一応天寿を全うしたのにイエスは処刑されたってことです。たしかにテッド・二―リーが演じるイエスは70年代のヒッピー文化の申し子としか見えない単なる“愛の人”という感じで、この映画が教会から猛反発されたのもむべなるかなって思います。 アンドリュー・ロイド・ウエバーのミュージカル人生はまさにここから始まったというわけです。各スコアは名曲揃いですが、やはりユダ役のカール・アンダーソンの歌唱がいちばんの迫力です。監督がノーマン・ジュイソンだけに演出に特有の臭さやダサさがありますが、彼の熱唱がやっぱり良かったので、プラス一点ということで。[映画館(字幕)] 7点(2021-07-06 23:23:55)

32.  白と黒のナイフ 《ネタバレ》 ハリウッド製法廷映画には“外れなし”とまでは言わないけど、水準以上の作品が多いのは確かです。その中でも本作はストーリーテリングや結末などはすでに古典の部類になるんじゃないでしょうか。 そうは言っても自分が先に観たというだけではなく、類似の結末のケヴィン・コスナーの『追いつめられて』と比較するとかなり落ちるというのが正直な感想です。脚本を書いたのは『氷の微笑』や『ショーガール』のジョー・エスターハスですから、ケレン味はともかくとしてけっこう粗っぽい展開のストーリーだなと思います。最大の「?」は、いくら妻と使用人が惨殺されたからといっても、あんな状況証拠だけでジェフ・ブリッジスが起訴できるのか?ってことでしょう。凶器すら発見されていないんですからねえ、でもそれを言っちゃあ物語が始まらないか(笑)。そんな状況で検察側も弁護側も、ブリッジス夫妻のダブル不倫を暴く証人を都合よく見つけてくるところはなんか出来過ぎなんだよな。まあ普通に観ていれば犯人はあの人だってのは判りますし、上映始まってから半分以上の時間が過ぎるまで他に犯人として疑われそうなキャラがいないんですから。グレン・クローズはまだわかい頃とはいえさすがの演技力ですが、簡単に依頼人と寝ちゃう女弁護士にはちょっと引きます、まあこれは彼女の演技のせいじゃないですけどね。本作の方が先に撮られてますけど、結末といい『危険な情事』とは真逆のキャラだったのが面白い。ジェフ・ブリッジスも、単に有能な好人物と見えるけどいろいろとウラがありそうなところを上手く演じています。でもいちばん好感が持てて美味しいところを持って行ったのは、ロバート・ロジアが演じた調査員だったのは間違いないでしょう。 ラストでクローズに返り討ちにあった男が黒覆面をはがされて素顔を見せるところ、前後の思わせぶりな撮り方から実は皆が予想するあの人じゃなくて意外な人物だったという展開、と思いきやごく平凡な結末、ヘンなところでもったいぶるな![CS・衛星(字幕)] 6点(2021-06-15 23:21:49)

33.  ジョン・ウィック:パラベラム 《ネタバレ》 シリーズも三作目となると大抵は息切れが目立ってくるものですが、さすが『ジョン・ウィック』、予想を裏切るパワー・アップぶりでした。前作のエンド・シーンからほぼ繋がる形で物語がスタート、第一作でジョンが暴れ出してから本作が始まるまでが実は一週間の出来事だったということが明示されますが、いくら何でも一週間で人殺し過ぎでしょ、ジョン・ウィックさん!追われる身の辛さで、アンジェリカ・ヒューストンのもとにたどり着くまでひたすら戦いながら逃げるばかり、でも馬に乗ってバイクとチェイスするなんてこれは斬新すぎます。今回新たに登場するキャラはそれぞれにキャラ立ちが凄くて、その中でもゼロさんが率いる寿司職人軍団がやっぱ最高でした。ホテルでいきなりジョンのわきに座ってきて「ファンです」と告るところなんて、思わずのけ反ってしまいました。ラストの鏡の間みたいなところでの寿司職人軍団との決戦は、やはり『燃えよドラゴン』のオマージュなんでしょうね。ゼロと決着つける前の一番弟子・二番弟子との闘いですが、二番弟子はあのヤヤン・ルヒアンなんですよ、なんと贅沢なことか!この二人もやっとこさでねじ伏せますが、止めを刺さずに「また会おう」と爽やかに去ってゆくジョン・ウィック、シリーズ中で敵を殺さなかった珍しいケースです(一作目のロシアン・マフィアのボス以来かな)。 今回で主席連合なるものの実態がまた明確になってきましたが、この組織のトップはあのベドウィン族の首長みたいな人物でいいのかな?でも「主席のうえにいる人」というジョンのセリフもあるし、謎が深まるばかりです。ジョンがエンコ詰めまでして再び主席連合への忠誠を誓うという展開には「へ?」となりましたが、ウィンストンに迫られて誓いを反故にしちゃう展開にもびっくり。そしてそのウィンストンまでもが最後に主席連合に寝返ってジョンを裏切るとは、これぞ二転三転のジェット・コースター状態です。こうなってくると、主席連合に最後まで突っ張ってなめし斬りにされてもへこたれなかったバワリー・キング=ローレンス・フィッシュバーンがじつはいちばんカッコいいキャラだったってことになりますね(笑)。 一目瞭然ですが、このシリーズはまだまだ続くみたいです。次回作は、あの中途半端な退場からするとハル・ベリーの大暴れが期待できそうです、ジョン・ウィックと愛犬を殺された同志でね。[CS・衛星(字幕)] 8点(2021-06-13 01:24:49)

34.  新仁義なき戦い(1974) 《ネタバレ》 一応は新シリーズと銘打っているけど、一作目は完全に第一作のリメイクみたいなものだし、あとの二作は広島も広島戦争も関係ないないただの実録風フィクション。やっぱ何事にも引き際が肝心なのよ、未練がましいぞ!岡田茂。 というわけで似たような役者を揃えたリメイクを見せられるわけですが、なんと菅原文太の役名が広能昌三じゃなくて三好万亀夫に変わっている!あの聞きなれた「しょうぞう~」という呼び名が「まきちゃ~ん」となってしまっただけで違和感が満載。でもなぜか山守義雄と山守組だけはオリジナル通りというのは解せないところです。広能、もとい三好万亀夫キャラ自体は旧シリーズのムダにカッコよい感じが消えてがさつな普通のヤクザといった感じで、襲撃されたら情婦を盾にしようと画策するなどけっこう悪い奴です。話の流れは第一作とほぼ同じなんですが、どのキャラも実録的な凄みを前面に出した描き方かなとは思います。でも山守義雄=金子信雄と山守の腰ぎんちゃく坂上元=田中邦衛だけはオリジナル通りのゲスっぷり、やはりこの二人は『仁義なき戦い』には欠かせない定番キャラだってことです。 ストーリーは山守組若頭である青木尚武=若山富三郎がタマをとられてエンドですけど、結末は同じでもオリジナルとは事件での文太の係わり方が真逆なのが興味深いです。若山が演じた役はオリジナルでは松方弘樹だったわけですが、ホテルで文太と松方はしんみりしたやり取りをしたりしてどっか松方を助けたい風さえあったのに、本作では黒幕的な立ち位置ではあるけど青木殺しの推進役です。被弾してのたうち回る青木尚武=若山富三郎に止めを刺すのが松方弘樹だというのも、皮肉というかややこしい。オリジナルのラストは葬儀での有名なシーンですが、浮かない顔しているとはいえ青木殺しの成功に浮かれる山守組の乱痴気宴会に参加している文太が本作でのラストですから、その差は甚だしい。 とまあいろいろ考察してみましたが、やはり『仁義なき戦い』は四部作いや五部作で完結したと見做すのが正しいんじゃないでしょうか。[CS・衛星(邦画)] 6点(2021-05-01 20:35:03)

35.  仁義なき戦い 完結篇 《ネタバレ》 すったもんだあったけど、四作目で終わるはずが「完結編」五作目が撮られてこれにて“広島弁のシェイクスピア劇”は無事完結したわけです。皮肉にもこの五作目がシリーズ最大のヒットとなり、脚本・笠原和夫の美学に岡田茂社長の商魂が勝利を納めたってことでしょうか。前作以上に菅原文太の出番が少なく、完全に小林旭と北王子欣也が主軸となってストーリーが進行します。シリーズ中盤から登場した旭ですがどんどん存在感を増してきて、本作では押しも押されもせぬ重量感でその貫禄には惚れ惚れしてしまいます。前作からの傾向でエピソード羅列といった感じのストーリーテリングでしたが、シリーズ通して登場してきたキャラたちにも引導を渡す意図も感じました。突然に再登場してきた大友勝利でしたが、やはりここは千葉真一に演じて欲しかったところです。宍戸錠は多分に千葉の演じたキャラ像に寄せたつもりだった感じですが、ちょっとオーバーアクトで違和感すらありました。 奇しくも昨日は田中邦衛の訃報が流れました。本シリーズで、彼が演じた槇原政吉ほどシェイクスピア的なキャラはいないんじゃないでしょうか。東宝映画の人と言ったイメージが強かったですけど、東映に乗り込んで彼が演じたのは『若大将』シリーズの当たり役青大将がそのまま極道世界に迷い込んできたようなキャラ、第一作で鉄砲玉仕事を泣き落としで回避するところなんかは今までのヤクザ映画では見られなかったリアルさで、ちょっと衝撃的でした。槇原はいろいろと小ズルい動きをしていかにも卑怯者という印象が強いけど、通して見ると意外と山守義雄=金子信雄には忠実で裏切ることは最後までありませんでした。そんな槇原も歳を重ねてちょっと風格が出てきたところでついに非業の最期、この死が武田明=小林旭に引退を決意させたわけで、それなりの人物だったと言えるでしょう。RIP,田中邦衛=槇原政吉。[CS・衛星(邦画)] 7点(2021-04-03 22:18:49)

36.  ジョン・ウィック:チャプター2 《ネタバレ》 前作の異世界の出来事のような不思議な世界観は後退してNYやローマと言った具体的な舞台設定が明確にされてますけど、ジョン・ウィックが属する世界的な犯罪ネットワークについてはさらにスケールアップした描かれ方になりました。どうもこのネットワークは“コンチネンタル”と呼ばれているみたいで、NYにある不思議なホテルはローマやたぶん世界各国に存在して、そこには銃のコンシェルジュや防弾スーツのテーラーなどが稼業のお手伝いをしてくれるみたいです。ジョンはそのネットワークの有力者と誓印という恐ろしい誓いを交わしてとりあえず引退することができた。まあだいたい以上のような事が判ってきました。 今作の敵はマフィアより凶暴なカモッラでございます。今回のジョン・ウィックはいきなり愛車をスクラップにされ(まあ自分でやったんですけどね)家は焼かれてホームレス状態。でも、あいかわらず殺しにかけてはブギーマンで、前作で語られていた伝説の“鉛筆殺法”まで披露してくれます。キアヌ・リーヴスのガンアクションにはマーシャル・アーツ的なスタイルが盛り込まれていて、監督がスタント・コーディネーター出身ということが活かされています。随所でセリフのキーワードだけがテロップで表示されるスタイルは面白かったですね。キアヌのアクションは相変わらず満身創痍になるガメラ・スタイルで、だいたい上映時間の三分の二は血糊が付いた顔で通したってのは、ある意味で凄い。キーパーソンとなるキャラはみなあっさりとした最期でしたが、ジアナやカシアンの死にざまにはちょっと意表を突かれてしまいました。でも唖者の女性ボディガードのキャラだけは、『ザ・レイド GOKUDO』のハンマー・ガールをパクったんじゃないの(笑)。 いい意味で型にはまらず予想を外してくるストーリー展開は、次作『パラベラム』にも期待が持てちゃいます、私このシリーズに嵌ってしまったみたいです。やっぱジョン・ウィックは21世紀最強のガンファイターですね(今のところは)。[CS・衛星(字幕)] 8点(2021-03-21 23:28:45)

37.  しとやかな獣 《ネタバレ》 ほぼ団地の一室だけに限定された空間で繰り広げられる密室劇。登場する四人の家族のキャラの異様さは数ある日本映画の中でもほぼ頂点に近いんじゃないでしょうか。「うちの娘は不思議と妊娠しないんですよ」という伊藤雄之助のセリフがありますが彼は私が今まで観た映画でもっとも異様な父親です。要はこの夫婦は息子が横領してきた金と娘が愛人からせびってきたカネで優雅な暮らしを維持する寄生虫みたいな存在ですけど、妙に丁寧な言葉遣いで捲し立てられる二人のそれを正当化するロジックは、聞いているとふと納得してしまいそうになるから恐ろしい。基本的に横移動に徹する撮影には、歌舞伎の音を挟んだ進行もあって歌舞伎か能の舞台を見せられている印象すらあります。またこの映画の特徴は、劇伴としての音楽の使用を最低限にして、開け張られた窓から聞こえる音がその代わりを果たしているように感じるところです。ジェット機の轟音、蒸気機関車の音、夕立の雷、そして最後は救急車(パトカー?)のサイレン、などが印象的な使われ方をされています。そして時おり挿入されるドイツ表現主義を思わせるような誇張された階段を使った人物の心象表現がまた深みをつけてくれていますね。ここまで来ると、もうコメディというよりも心理ホラーと分類した方が正解かもしれません。全編でほとんど感情を交えることなく押し通す若尾文子の悪女も秀逸で、彼女が演じた中で最高のヴァンプなのかとすら思えます。 やはり本作は新藤兼人の脚本の最高傑作じゃないでしょうか。[CS・衛星(邦画)] 9点(2021-03-09 22:41:09)(良:1票)

38.  仁義なき戦い 頂上作戦 《ネタバレ》 第四作目にしていよいよ本題の広島戦争に突入、さすがの警察も世論の非難もありいわゆる頂上作戦を展開してきて、結論から言うと組織自体の真正面からのぶつかり合いとはならず手打ちに落ち着き、各組織の若い輩どもが自分らの鬱憤を晴らすために暴れて死者を増やしたってのが正直な感想です。まあこれは実話ですからしょうがないですけどね。広能昌三=菅原文太は本編半ばであえなく刑務所入りしてまたもやフェイドアウト、ここからは前作から引き続いて武田明=小林旭が存在感を増して主役のような展開で、やはり日活の大スターでしたから東映も気を使ってた感があります。ラストで文太と旭を刑務所で再会させ、本シリーズを象徴するような会話をさせますが、当時では文太より旭の方がはるかに格上だったということです。笠原和夫は本作で四部作終了とするつもりで脚本を書いたというのは有名な話しですが、たしかにここで話を終わりにするために作品全体のテンションを下げていったのかもしれません。とくに本作の後半はいろいろな人物のエピソードが盛り込まれており、群集劇としての要素がシリーズ中でもっとも強くなっています。なかでも志賀勝が小池朝雄を射殺して「あんたら見とった通りじゃ」と捨て台詞を吐くところは、彼の風貌も相まって日本映画史に残る殺人シーンだとおもいます。 しかし、岡田社長の鶴の一声でさらに五作目が撮られることになり、さすがに笠原和夫も脚本から降りることになりました。“泣く子と岡田茂には勝てない”という東映の体質ではしょうがなかったのかもしれませんが、当時の東映って暴力団も顔負けするような強面だったようです。こういうポリシーがないがめつい根性が、日本映画界のダメなところなんですよ。[CS・衛星(邦画)] 7点(2021-03-04 11:09:56)

39.  シャッター(2008) 《ネタバレ》 すみません、大変不謹慎なのかもしれませんが、アメリカ人夫婦がビジネスで日本に来て霊に憑りつかれるというプロットが、私にはどうしても『ゴースト・イン・京都』という製作者たちは真剣に怖がらせるつもりで撮ったのに出来上がりは抱腹絶倒だったという珍品ホラーが思い出されてしまうんです。これはスーザン・ジョージや服部真湖という東西セクシー女優をフューチャーしたお色気路線も濃厚なホラーでしたが、本作とはストーリーや雰囲気は全然違っていて、一緒にされたら怒られそうです。ぶっちゃけて言えば、『ゴースト・イン・京都』というよりかは『ロスト・イン・トランスレーション』のホラー版というのが正解です。 感想は一言で済ますと標準的なJホラーという感じですかね。主演女優も『ザ・リング』のナオミ・ワッツの劣化版というルックスで、これはヘアメイクなんかから見ても明らかに狙ってますね。でも幽霊役に奥菜恵を持ってきたのは大正解だった感じがします。これほど幽霊が似合う女優だったとは意外でした。体重計の数値を見て首を傾げるナースという伏線はラストで回収されますが、それにしても二人合わせて120キロとは、男の体格から導き出される目方からすると奥菜恵の体重は推定○○キロ、ていうか、なんで幽霊に体重があるんだよ(笑)。[CS・衛星(字幕)] 5点(2021-02-08 12:15:01)

40.  仁義なき戦い 代理戦争 《ネタバレ》 シリーズ三作目はいよいよ本題の“広島抗争”が始まるわけですが、本作はいわば『広島抗争・前編』といった位置づけです。内容はもう“ヤクザ版国際政治(東アジアの某半島)”といった趣で、中世ビザンツ帝国の歴史を思い出させるような権謀術数の世界です。山守義雄=金子信雄をスケールダウンしたような打本昇=加藤武の登場で、ますますヤクザの屑っぷりが濃厚に描かれるようになってきました。前作から引き続き登場の成田三樹夫や山城新伍も、裏では卑怯な振る舞いをする凡人にキャラ変しています。原作者がモデルなだけに精一杯カッコよくしている広能昌三=菅原文太も、保身のために神戸の大組織と繋がって駆け引きに余念がなく、まあ地方都市の弱小組織のボスだからしょうがないといっちゃあ身も蓋もないですけどね。この広能昌三というキャラの最大の弱点は、山守義雄の子分になったり打本昇と兄弟分関係になっていたりとどう考えても人を見る眼がなくあとでそのことを後悔する愚を重ねるところでしょう。田舎のことですから、他に選択肢がなかったのかな。そう考えると、途中から若頭になって存在感を出してくる武田明=小林旭が本作ではいちばんおいしいキャラだったと言えるでしょう。もちろんいちばん酷いキャラは“手首切り落とし男”=川谷拓三で、舎弟の渡瀬恒彦をチクって殺させて自分は東京に逃げるというのはあんまりだ。でも、この渡瀬を同じ元教え子ということで就職の世話するみたいに文太の組に入れさせる教師と、まるで息子を奉公に出すようにしか感じていない母親も、かなりのクソですよ。こういうクズみたいな人間が沢山観れるのは、ある意味このシリーズの魅力かもしれません。[CS・衛星(邦画)] 7点(2021-02-03 20:10:39)(良:1票)

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