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21.  ドラゴン・タトゥーの女 音入れの工夫が際立っている。 映画は男女それぞれのシーンが交互に展開していくが、次のシーンからの音を前のシーンの最後に挿入する、いわゆるズリ上げが随所でシーン間の浸透とアクセントの効果を挙げており、長丁場のドラマをスムーズに繋いだ秘訣の一つだろう。 そして心臓の鼓動のような、環境雑音のような微妙な音響の活用。レイプシーンに重なる廊下の掃除機の不協和音、あるいは過剰なまでに悲痛な絶叫が前面に出ることで、画面に不穏の様相が与えられていく。 拷問シーンにかかる挿入曲「オリノコ・フロウ」によって不気味さを増す対位的な効果、静寂の丘に響き渡るライフルの銃声のインパクトなども絶妙だ。 オープニングとは対比的な叙情性に富んだ静かなエンディングのサウンドトラックがヒロインの切ない姿に被り、一際耳に沁みる。 一方では、写真フィルムの流れやルーニー・マーラの手際の良い仕事ぶりを表すハイテンポのカッティングが説話のリズムを創り出し、無機質な邸宅内の廊下を歩くダニエル・クレイグと資料室の書架の間を歩くルーニー・マーラの一体化された構図のクロスカッティングは静かな緊迫感を醸し出す。 サウンドのズリ上げ・ズリ下げだけでなく、構図的連続を擬したシーン転換の技巧も、交互に語られる二人のシーン間のモンタージュを滑らかにし、二人の関係性を映画的に強調する効果まで挙げており秀逸だ。 それら精密に設計された編集による緩急もまた音楽的と云える。 [映画館(字幕)] 7点(2012-02-24 18:34:54)《改行有》

22.  東京島 《ネタバレ》 導入部の大胆な省略と、蛇を捕獲する木村多恵のインパクトあるショットで一気にドラマに引き込む語りの妙は原作の出だしにも負けていない。 現代風刺や寓意性を殊更に強調しない節度も原作の精神の尊重だろう。 したたかと脆弱、善良と狡猾と、ヒロインのみならず個々のキャラクターも多面的かつ複雑な諸相を見せる点に、人間描写へのこだわりの意思が伺える。 キャストとは対照的に原作を始めとする主要スタッフには女性が多く、特に出産シーン以降は反逆光を活かして力強さと繊細さと色彩美を湛えた芹澤明子の撮影が印象的だ。 サヘル・ローズと木村が洗濯する水辺のシーンにおける水面の光の照り返し。 岩場の影で、生まれた赤子を懐に抱く二人のショットの自然な光。 後日談での、東京の夜景を背景にした食卓のキャンドルの暖かな灯りなどは格別に美しい。 窪塚洋介が背負う亀の甲羅のユーモアが秀逸で、10年後のエピローグにもさりげなく登場することで物語に映画オリジナルの膨らみをもたらしている。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2012-02-23 20:43:32)《改行有》

23.  東京のヒロイン 《ネタバレ》 劇伴音楽ではなく、流しのバイオリン弾きや轟由起子のピアノ演奏によるミュージカル演出。 森雅之と轟がデートする川沿いの公園からクレーンアップし、東京の夜景を俯瞰するカメラワーク。 バーの前の歩道でクリーニング店の配達員や潮万太郎が繰り広げるサイレント風&スラップスティック演出。 さらには横文字の看板があふれる街路の風情と、全篇に溢れるルネ・クレール風の洒落た味わいが楽しい。 会いたくないときには鉢合わせ、会いたいときにはすれ違いの連続の二人。そんな二人を取り持つのが「座席に置かれたハンチング」と花束という粋。 劇場でのすれ違いのカッティングや、写真や手紙のエピソード等はもっと工夫が欲しいところだが、潮万太郎のコメディ・パートはそれを帳消しにするくらい笑わせてくれる。 そして、香川京子が何度か披露するバレエのお辞儀(レヴェランス)も爽やかで可愛らしい。 菅井一郎のバーテンが、彼女に作ってあげたのはレモンスカッシュだろうか。 [映画館(邦画)] 7点(2011-12-18 20:28:37)《改行有》

24.  毒婦高橋お伝 時計台からクレーンダウンし、活気ある明治の街並みを再現したオープンセットを捉えるファーストショットから引き込まれる。 神社の鳥居と石段、貸間、長屋の風情など、いずれのセットもぬかるみや汚しが絶妙に施され、見事な出来だ。(美術:黒澤治安) そのセットに配された襖、天窓、鏡が、狭い路地裏と共にフレーム内フレームとしてドラマ効果を発揮しており、また坂道のロケーションや俯瞰を多用したセット撮影との組み合わせの妙とも相俟って、明治の風俗が立体的に浮かび上がっている。 『無法松の一生』的な人力車のリズミカルな車輪の回転運動は日傘の回転へ、そして横浜篇の賭場のルーレットへと流転し、浴槽や川面の光の揺れや暖炉の炎、簾、雨垂れの反映といった様々な揺らぎがメロドラマを彩る。 女性、母親、そして復讐者としての多面的表情を見せる若杉嘉津子の横顔を捉えるショットの官能性もまた素晴らしく、『東海道四谷怪談』コンビの前哨としても納得の出来栄えだ。[DVD(邦画)] 8点(2011-10-23 20:46:21)《改行有》

25.  どぶ鼠作戦 まず巻頭に登場するトラックの車両ナンバー「42219」の乾いたユーモアがいい。 愚連隊シリーズ前2作と比べてドラマ中の対立構造は複雑さと多様さを増しているが、 例えば、張り手のアクションとリアクションのショットで全く別のシーンに繋いでいく、といった岡本監督独特の場面転換が鮮やかで、(濫用気味の感もあるが)テンポは快調だ。 御殿場ロケだろう、急峻な山越えあり、渡河あり、結婚式の火祭りに紛れての追跡劇は『隠し砦の三悪人』の影響も垣間見せる。(藤田進のセルフパロディもご愛嬌。) 特務隊内で対立する中谷一郎と田中邦衛も個性的だが、砂塚秀夫の繰り出すパントマイムギャグによる脱出劇は特に傑作だ。 捕虜役:江原達怡や村娘役:田村奈巳など、登場時間はわずかながら、再登場でその存在感を印象づけると共に、その再登場の意味が佐藤允のキャラクターの魅力を間接的に引き立てる点等も実に首尾が良い。 また、人気のない(砦のような)村を五人横並びとなって歩く構図や、円看板を拳銃で撃って賭けをする着想、佐藤允と中丸忠雄の最終対決の距離感覚など、西部劇へのこだわりの強さも徹底的だ。 ウェスタン活劇志向と戦争映画の思想性との拮抗と分裂も、シリーズ三作の中でもより際立っているといえる。 (婚礼の輿を日本軍が空爆することで、特務隊が窮地を脱するというやりきれない皮肉) [ビデオ(邦画)] 8点(2011-10-22 17:10:11)《改行有》

26.  トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン カーチェイス等を主とする水平軸のアクションよりも、垂直軸・あるいは傾斜軸を活かした高低差のアクションのほうが、やはり3Dには相性が良いのか。 『パールハーバー』で戦艦アリゾナに向かって落下する爆弾を高空から追うバーチャルキャメラや、戦艦オクラホマの傾斜した甲板を船員が滑落していく移動ショットで試みられた斜面感覚がここに結実している。 ビルの高層階から地上を俯瞰する縦に深い構図の奥行きは、平衡感覚を瞬間的に迷わせ、落下の錯覚を催させてはくるのだが、それはあくまで感覚刺激にとどまり、映画の感情を際立たせることは無い。 高層ビルから飛行艇へ、シャイア・ラブーフを追ってヒロインが果敢に飛び移るショットや、半壊して傾斜の度を増すビルの中で手を繋ぎ支え合う二人のアクション等にはもう少し情感というものが伴っても良さそうなものだが。 その無頓着ぶりと、状況をナンセンスコメディに転化させてしまうエキセントリックな感覚こそがマイケル・ベイの資質なのだろう。 それでも(それゆえ?)楽しめてしまうのは、画面の豊かな活劇性ゆえだ。 全身による螺旋回転運動を採り入れながら敵を蹴散らしていくトランスフォーマーのダイナミックな横移動ショットなどは、マキノ的な殺陣アクションを連想させずにはおかない。 [映画館(字幕)] 7点(2011-09-03 19:53:18)《改行有》

27.  東京公園 《ネタバレ》 奇しくも、ゾンビの劇中映画で同時期公開の『SUPER 8』と微かに繋がりあうところが面白い。 『リップスティック』、『ゾンビ』、『瞼の母』といった直接的な映画ネタが飛び交う脚本は好みではないが、榮倉奈々のリズミカルな台詞廻しは小気味よくて大変よろしい。 大福をほおばりながら、あるいはおでん、さらにはケーキや肉まんや赤ワインを美味しそうに飲み食いしながら話す姿も愛らしい。 順撮りか、中抜きか、炬燵を挟んで向かい合う彼女と三浦春馬の対話シーンで、正面からの切り返しごとに二人の多彩な表情を見せていく編集が新鮮な感覚だ。 (後半さらに反復されると共に、木登りで笑わせてくれる高橋洋と、神秘的な井川遥の「正対」切り返しショットの幸福感もいい。) それに対して、彼との正面からの相対を避ける小西真奈美。彼女は表情を隠そうとするがゆえに、三浦との抱擁シーンで見せる手のアクションは感動的だ。 今回のキャメラマンは月永雄太氏。屋内・屋外シーン共に、揺れる木漏れ日を繊細に捉えていて素晴らしい。 潮風公園、筆島のショットにおける波音、風音も聞き逃せない。 [映画館(邦画)] 9点(2011-07-03 20:29:56)《改行有》

28.  トゥルー・グリット 秋口の景観が印象的なヘンリー・ハサウェイ版(69)とは大きくトーンを異にし、こちらは原作に忠実な冬枯れのロケーション。 粉雪が風に舞う山岳地帯の寒々しさがいい。 黒の濃い「夜用の夜」によるナイトシーンも増え、映画のルックは現実的で渋く冷たい。 シネスコ画面を活かした(『許されざる者』的)長大な地平線のライン、スコープ内の像と空砲の音響の時間差、そうした劇空間の広大さや距離感の演出も徹底している。 その中で、ジェフ・ブリッジスが傷ついたヘイリー・スタインフェルドを搬送する夜の画面が美しく味わい深い。 夕景から夜景へと移り変わる地平線を馬が駆けていく夢幻的なイメージの連鎖と、娘が星空を背景にした「父親」を仰ぎ見るショットの古典的画像処理は一際輝いている。 一方で、より「叙事詩」的となり人間ドラマに傾注した感のあるコーエン版は、ハサウェイ版でジョン・ウェインが酒瓶を指に引っ掛けてグイ飲みする粋な仕草や、馬上でライフルを回転させる手捌き、キム・ダービーが急坂を転げ落ちる動作といった(内面性を伴わない)西部劇的アクションの大らかな魅力を必然的に欠いてしまってもいる。 [映画館(字幕)] 7点(2011-05-21 17:42:49)《改行有》

29.  塔の上のラプンツェル 《ネタバレ》 ラプンツェルが危機一髪で崖からジャンプする瞬間と、刑場に引かれていくユージーンのショット。映画の中で二箇所限定で用いられたスローモーションの沸き立つような高揚感。 あるいは的確なクロースアップ、POV、移動ショット、ジャンプカットと、洗練された映画的ショットと編集の宝庫ともいえる。落下運動の向地性と無限上昇運動としての浮遊を対比的に活かしたアクションの緩急と、光の見事さ。 ティアラの輝きと透明感の表現力は、ディズニーの伝統を着実に受け継いでいる。 画面の充実は、エンドクレジットに記されたレイアウトやライティング担当スタッフの豊かさにも明らかだ。 語りを含めた完成度の高さを十分認めた上であえて欲をいうなら、離れ離れとなった二人が塔の上で再会するクライマックスにかけてはそれに相応しいもう一段の困難と試練が欲しい。 落下と振り子運動をダイナミックに駆使した、中盤までの縦横無尽のアクションシーンがあまりに素晴らしいだけに、二人が互いを求め合うクライマックスでは塔の高低と構造を活かしたよりドラマティックなアクションが間違いなく出来たはず。 『カリオストロの城』の時計塔や、『長靴をはいた猫』の魔王城のような。 [映画館(吹替)] 8点(2011-04-26 22:32:02)《改行有》

30.  トスカーナの贋作 検閲の厳しいイランを離れ、イタリア・ルネサンスの地で表現される女性のエロティシズム。 それをジュリエット・ビノシュが艶めかしく体現する。 車のフロントガラスを流れていく街並みと空、そこに重なる車内の男女の像。ガラスや鏡を介した複写の主題も、レストランの窓ガラスや化粧室の鏡から、オートバイのミラーへの反射に到る細部まで手が込んでおり、迷宮感すら催す。 ウィリアム・シメルが登ってゆくホテルの階段の深い暗がりと、窓から差し込んでくる微かな陽光の推移など、光に対する感性あふれる画面にも魅了される。 画面奥の空間を示唆する多層的遠近感の演出も、ルネサンス絵画技法の映画版というべきか。 そして、雷鳴・風音・鳥の羽音・鐘の音色がもたらす豊かな空気の震えも聞き逃せない。 [映画館(字幕)] 8点(2011-03-05 21:51:41)《改行有》

31.  ドリラー・キラー 《ネタバレ》 盗み撮りを交えたゲリラ撮影的なマンハッタンロケと画像の粗さが、街の猥雑で荒んだ様相を生々しく伝える。 滑稽感すら漂わせる調子はずれのロックグループやホームレス達が醸しだす気だるい停滞感が、カウンターカルチャーの行き詰まりを如実に物語る。 しかし一見ラフにカメラを廻しているようでいて、蒼暗い街路とスポット的な赤(口紅、シーツ、衣類、血)の意識的配置は終始明確だ。 逆光の中に浮かび上がる主人公のシルエットと電動ドリルの芯の鈍い光の見事さ。 主人公の眼窩に落ちる黒い影の凄み。眼の見えない相貌は、生気や理性を感じさせない。 ガラス越しのイルミネーションを背景にしたドリル殺人の鮮烈なイメージ。 夜の街中、路上のホームレスたちに主人公が無差別的に襲い掛かるアクションの俊敏さ。 そして圧巻といえるクライマックスの緊迫感。 主人公が待ち伏せるベッドの側のルームランプを女性が消灯した途端、画商殺害シーンと同様の「赤」が画面を覆う。 赤一色の画面と女性のモノローグ、そして沈黙というほぼ最小限の要素が、最大限のサスペンスを発揮する。 低予算を逆手にとる積極的な消去法が実現した息詰まるラストが鮮やかだ。 [DVD(字幕)] 8点(2011-02-03 20:12:48)《改行有》

32.  捕らえられた伍長 アンドレ・バザンがもしこの映画を見ることが出来ていたならば、『小間使いの日記』以上に「悲劇と喜劇の結合」を達成した作品と評したのではないか。 悲喜劇が目まぐるしく交錯する様においては、ルノワール作品の中でも随一と思われる。 葬列に紛れて逃走するシークエンスでは、逃げおおせる者と警察に連行されるものが同一ショット内で交差する。 あるいは、歯科医での絶叫。懲罰のあひる歩き。農家からの脱走失敗。どれもこれも悲惨の中の滑稽味に笑いを誘われずにいられない。 開いたドアの奥で、伍長(ジャン=ピエール・カッセル)と歯科医の助手のドイツ娘とが交わす抱擁とキスのシンプルな描写がいとおしい。 ラスト近く、国境そばの小作農の男女が伍長らに見せる気持ちよい応対と表情も忘れ難い。 フランス贔屓の酔っ払いも、農家の主も、敵対する収容所看守に到るまで人間的魅力に満ちているところがルノワールならではの人間主義といえる。 『大いなる幻影』で賞賛された観念性にも囚われることなく、ひたすら人間本意に、俳優の魅力をありのまま写し撮ることが第一義として貫かれている。 そのための必然的な長廻し。ここぞのクロースアップ。民主的パン・フォーカス。 手段としての技法が映画の中で活きてくる。 [ビデオ(字幕)] 10点(2010-11-19 22:23:51)《改行有》

33.  ドノバン珊瑚礁 リー・マーヴィンの漂着を歓迎する島民のウェーブのアクションからしてすでに幸福感全開。 ハワイアンメロディーが流れる南洋の長閑なリズムの中で、窓枠の外に映し出される降雪や青い稲光などの印象的な細部が厳かなアクセントをもたらしつつ、土砂降りのスコールやジョン・ウェインらの殴り合い、きびきびしたジープ操作や水上スキーのスピード感、エリザベス・アレンが幾度もみせるズッコケぶりといった豪快でコミカルなアクションの要素がさらに幸福感を呼び込む。(ビールの栓抜きや、「休戦」の握手の仕草も小粋で良い。) 三人の子役たちの存在も、大きく貢献している。長女役:ジャクリーン・マルーフのナイーブなイメージ。水上スキーに出かけることになった三人の子供たちが、神父がいなくなった途端にはしゃいで踊り出す場面の無邪気な愛らしさも特筆もの。 そして様々な国籍、職種、階級、民族の老若男女がスコールに濡れながら一堂に会する教会の場面も素晴らしい。[DVD(字幕)] 8点(2010-10-31 19:46:37)《改行有》

34.  トイ・ストーリー3 序盤の列車アクション、2度のゴミ回収、飛翔による脱出、夜間の「脱獄」のシークエンス、そして溶鉱炉へ向かうコンベアーラインの活劇。いずれも縦の構図による遠近法に立体効果を活かした極上のサスペンス演出。同時に、水平軸から垂直軸へのアクションを複合させることで共通しており、空間表現としても大変充実している。(第一作でみせた、カーアクションから一転、ロケット上昇という見事な軸転換から全くぶれていない。) それら空間造形術といい、暗いナイトシーンが支配する「サニーサイド」保育園の構造的隠喩といい、ポール・グリモーから宮崎駿経由の継承が窺える。(冒頭の同時上映『デイ&ナイト』の主題とも通じ合う) 絶妙にデフォルメされた全身表現によって付与される人形たちの喜怒哀楽の感情と生命感。内気な少女の細やかな仕草・表情変化の豊かさ。脱出シーンの切れ味の良いパンショットやダンスシーンの見事なカッティング。溶鉱炉の赤から、夜明けの美しい光への推移。全編見所に溢れている。 そして、文字に拠らずに行為の画面で語ったラストは大したもの。[映画館(字幕)] 8点(2010-09-25 23:15:07)《改行有》

35.  トロッコ 台湾の潤い豊かな緑の中をトロッコが走り出すと共に高鳴る叙情的なヴァイオリン音楽。川井郁子のノスタルジックな音色と、李屏賓の移動撮影の高揚感と、その融合の具合がとても絶妙で陶然となる。 トロッコの軌道上から縦移動で捉えられた、緩やかに流れいく情景ショットなどには侯孝賢礼賛が直截に現れている。 超微速のカメラの動きが醸す緩やかな時間の感覚。屋内に入り込んだ自然光が、床からの照り返しで人物の顔を浮かび上がらせるナチュラルな光の感覚。 昼の屋内でも、暗闇の空間が確りと活きている旧家屋建築の魅力。夜の食卓を照らし出す電球の灯の温かみと、ブルーがかった夜の庭の色調バランス。いずれも素晴らしい。 下手に父親の回想シーン等を持ち込まない慎ましさも好感度高いが、それらにしても、律儀に侯孝賢をなぞっている感があって、やはり既視感は否めない。 母親役の尾野真千子が役者的演技をしすぎの感があって、惜しい。 [映画館(邦画)] 7点(2010-06-13 17:39:42)《改行有》

36.  時をかける少女(2010) 2010年の母親が意識不明でありながら主人公の行動が暢気で悠長であったり、その使命自体に何の切迫感もないなど根本的な設定の欠陥も多い上、寄り画面の多さにも辟易するけれど、その役者たちの魅力的な表情は救いだ。 8mmキャメラを一心に覗く中尾明慶の眼差し。ラストの安田成美の美しいクロースアップと、シルエットとしての存在の石丸幹二との切り返し。そして喜怒哀楽の表情豊かな仲里依紗がなんとか映画を支える。何度か登場する、小さな炬燵を挟んでの主演二人のシーンも良い。菓子やラーメンの食事を交えながら二人の対話と沈黙を捉える長廻しが、あるいはお互い逆向きに足を伸ばし合う俯瞰ショットが、二人の微妙な距離感を醸し次第に湧き上がる情感を巧く掬い取っている。そして相合傘、おでん屋台、実験室の机での二人の横並びのショットが、彼女の最後の決断にそれなりの納得性を持たせていく。 70年代のアイテムやファッションやオマージュシーンを目一杯画面に散りばめながら、それをあくまで細部に留めさせるさりげなさも好ましい。別れの廊下のノスタルジックな光、父親と会う公園の風と木漏れ日、時を越える装置としてのフィルムに感応するヒロインの大粒の涙など忘れ難い。[映画館(邦画)] 7点(2010-03-14 20:24:40)《改行有》

37.  トウキョウソナタ 映画の基調色となる緑が印象深い。ハローワークの階段の壁に貼られた無機質な表示や小泉今日子を拘束するガムテープ、清掃する香川照之の前で子供がこぼすメロンソーダらしき液体、井之脇海が拘置される警察署地下のホラー風アクセント照明、あるいは小柳友が仲間とチラシを投げ捨てる橋のライティングなど等、闇や陰影が控えめとなった替わりに多様なグリーンが画面を彩る。香川と小泉の断絶の提示が画面上で決定的になるのは、居間とダイニングの段差がもたらす立位置のみならず二間を分けるグリーンとオレンジの照明の分断にもよるだろう。地平線に立つ女性主人公を照らす光と大気と風と、時刻の変化が示す奇跡的な瞬間の感動は、個人的にはロメールの『緑の光線』や『レネットとミラベルの四つの冒険』の一遍(『青い時間』)に通じる映画感覚である。随所に散りばめられた色彩効果によって、最期の演奏場面のシンプルな白い光線の揺れが一層引き立ち、輝きを増している。[映画館(邦画)] 9点(2009-07-19 16:08:59)

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