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1.  パシフィック・リム 《ネタバレ》 異星人が次々と送りだしてくる怪獣を、人が巨大メカを操縦して撃退する本格的怪獣映画。最新技術を駆使して、怪獣とメカの戦いという“絵空事”を大真面目で製作するという姿勢に心打たれた。それも日本と米国の怪獣・メカ文化の伝統に則っており、「怪獣・メカ好き」の心の琴線に触れる作品に仕上がっている。監督は間違いなく“少年の心”を持っている。視覚的には文句なし。巨大感、重量感、臨場感が見事に体現できている。怪獣とメカが巻き上げる水飛沫や土埃を細部まで描き、複数の照明で明暗を際立たせ、前景に鳥、魚、車など尺度の分かる物を配し、雨、雪、火の粉を降らせて奥行きを出している。飛び道具はほとんど使用せず、肉弾戦で闘うことにこだわりがある。体感型の映画で、特撮の見本だ。戦闘場面の迫力ありすぎて見落としがちだが、人物描写にも時間を割いている。家族との死別、精神的外傷の克服、育ての親と子のつながり、怪獣への復讐心、恋愛、協調と信頼の大切さを学ぶ、仲の悪い者が仲直りする、引退操縦士の復帰、病気を隠す、自己犠牲と盛り込んでいる。特に、二人が同期しないと操縦出来ないなど、協調と信頼に重きを置いている。人類が力を合わせて怪獣を倒すという命題の象徴だ。加えて、生物博士、数理博士、闇商人という個性豊かな人物が登場する。彼等に諧謔や道化の役割を持たせて、観客に一息つかせ、同時に世界観を広げることに成功している。彼等は安直な脇役ではなく、怪獣の最大の秘密を探し当てるという重要な役目を果たす。特に新味は無いが、どの人物も手際よく描きわけている。核兵器で倒せるのなら核ミサイルで攻撃せよ、海底に核弾頭を運ぶのなら潜水艦だろう、怪獣防護壁が脆弱すぎる等の点には目をつぶるしかない。説明の無い部分はそういう世界観だと納得して観るしかない。それぞれのメカに個性があり、メカ愛があるのは分かるが、怪獣愛は日本人のそれとは違う。日本の怪獣は、恐怖と破壊をもたらし、忌み嫌われるだけの存在ではなく、恐竜や爬虫類が巨大化した生物でもない。どの生物とも違い、さほど醜くなく、造形美を供え、どこか愛嬌があって、人間味さえ感じられる。その人形を部屋に飾って置きたくなるものだ。本作品では「人類の危機」を強調する余りか、怪獣を醜悪に描きすぎている。殺害方法も血腥く、むごたらしい。本当の怪獣は、応援したくなるもので、死ぬ怪獣に憐みを持つのが日本人だ。[DVD(字幕)] 10点(2015-02-09 04:59:15)(良:2票)

2.  パピヨン(1973) 《ネタバレ》 ①このような映画はもう作れないかも知れない。監督や演者の映画に対する意気込みが現代と違うのだ。最初に囚人たちが行進するシーンだけでも大変な手間がかかっている。今ではCGで簡単に出来ることが、当時は全て手作りだった。主演二人の演技は迫真を通り越して、神がかりといっていい。役者魂を見せてもらいました。 ②パピヨンは銀行強盗の罪を犯したが、無実である殺人罪で実刑を受けた。社会への反逆心が強く、脱獄に執着するのはこのためだ。特筆すべきは友情に厚いこと。差入れをしたドガを密告せず、命がけでかばった。尋常でない強靭な精神と生命力である。だからこそドガも心を開いたのだ。「誘惑に勝てるかどうかで人間の価値が決まる」 ③驚くべき展開の連続である。海で撃たれる囚人、船内で体内に隠したお金を奪うための殺人、ギロチン、ワニなどに先ず驚かされる。最初の脱獄は、窮地のドガを助けるために監視を殴り、その勢いで脱獄。独房の劣悪な環境。さらに食事半分で、光もない生活。次の脱獄は、用意されたボートが腐っていた。と思ったら、奇妙な刺青をした人物がハンターを殺し、手助けしてくれた。筏で着いた先で、ハンセン病の密輸業が船を用意し、お金もくれた。両者は共にアウトサイダーとして共感するものがあったのだろう。やっと着いたと思ったら、地元警察と鉢合わせ。見知らぬ犯罪者と一緒に逃走。警察と原住民に追われるが、危機一髪で海に飛び降り、なんとか脱出。行きついた先の原住民は穏健でパピを迎えてくれた。かわいい娘と一緒に暮らす平穏な日々。だが彼らはある日いなくなる。商人を殺したことに関係がありそうだ。真珠をもって町へゆき、修道院に紛れこむが、警察に突き出されてしまう。再び5年間の独房生活。その後島流しに遭い、ドガと奇跡の再会。椰子の実の袋で潮流に乗り、脱出成功。 ④「バカ野郎!俺は生きてるぜ」と叫ぶ。自由を勝ち取ることが彼の存在証明なのだ。「自分は既に死んでいる」「人生を無駄にした罪で有罪」という自覚があるため、人間らしく生きる=自由になることに挑戦し続けたのだ。諦めることは死んだも同然なこと。どんな逆境や困難にも決して諦めない彼の生き方には共感できる。 ⑤冒頭の行進シーンで「パピヨンきっと帰れるわ」と声をかけた女性がいた。あの女性の正体は自由の女神だったのだろう。14年もかかったが、蝶は自由になった。[DVD(吹替)] 9点(2010-06-08 00:30:37)(良:1票) 《改行有》

3.  橋(1959年/ベルンハルト・ヴィッキ監督) 《ネタバレ》 少年兵の悲劇を扱った反戦映画の佳作。 戦争となれば、子供達もいや応なしに巻き込まれてゆくのが現実だ。出征するまでの少年七人の人物描写を丁寧に行っているのが成功の第一の要因だろう。戦場での迫真の激闘場面と、少年兵が恐怖と錯乱に陥ってゆく生々しい様子も見所のひとつ。前半の少年たちの明るくて活気ある、そしてどこか鬱積した思春期の日常生活の描写と、後半の荒々しくも凄惨な戦場描写の対比が実に見事に描かれている。戦争に対して無邪気なまでの憧憬を持ち、軍隊に志願する少年達と、我が子の将来をひたすら憂慮する母親達の対比も心に残る。母親の愛は世界共通。軍人の子供を立派な軍人に育てるのも母親の愛の一種なのだろうか。打算的にみえる父親に対する反抗や嫌悪の露呈が物語に重みと深みを与えている。少年達が、想像していた勇猛果敢で英雄的な戦争と、実際のむごたらしく血で血を洗う戦争の違いを身をもって知ることになるのが主題だが、軍隊に入る前の描写に十分時間をかけているので、容易に感情移入できる。 生徒達の先生が、生徒の前途を案じて、軍舎に出向き、所属隊長に庇護を懇請する。そのような依願は拒否するのが建前だが、隊長は戦闘で子息を失ったばかり。遺族の気持ちは痛いほどわかる。特別に配慮すて、安全な後方の橋の守備につけることにした。しかし、これが徒とあるのが運命の皮肉。来ない筈の米軍戦車部隊が襲来してきたのだ。運悪く、その時彼らの上官は勘違いで味方に射殺されており、少年兵だけで対応しなければならなくなる状況。このあたりの流れは秀逸だ。さらに彼らの死守した橋は、実は軍事上何の価値もなく爆破されるという。そして最後に少年兵の銃が向けられるのは味方に対して。脚本は、戦争の悲惨さと虚しさを余す所なく描いており、精彩を放っている。実話を元にした小説が原作らしいが、首を傾げたくなる事柄もある。昨日軍隊に入ったばかりの兵隊では、小銃の扱いはおろか、敬礼さえ覚束ないはずなのに、重機関銃や対戦車擲弾筒「パンツァーファウスト」を扱い、最後には戦車隊撃退に成功するという摩訶不思議さ。これは見過ごせない瑕瑾である。 もう一つ、生徒の一人と妖艶な女教師とに肉体関係があるような描写があるが、不要だろう。思春期の青い性を垣間見せるくらいならよいが、先生と関係をもたすのはやりすぎだ。集中力が削がれてしまう。[DVD(字幕)] 8点(2013-06-08 14:40:33)《改行有》

4.  パットン大戦車軍団 《ネタバレ》 鉄血将軍パットンの伝記映画だが、奥底には「人間は何故戦争するのか」という命題を含んでいると思う。新兵への演説で、 「米国民は常に戦いを求めている。お前たちが子供の頃あこがれたのはビー玉や徒競走の優勝者、野球の名選手、タフなボクサーだ。米国民は勝者が好きだ」と断言する。「死ぬほど戦場が好きだ。外に生き甲斐が無い」と言い切る男、「永遠に戦いに生きる男」とも 偉大なる時代遅れ」とも称される男、このような人間がどうして生まれたのか。それは時代が必要としたからだろう。平時ではものの役に立たない人物が、乱世や争乱になると人間ばなれした活躍を見せ、英雄になる場合がある。日本では、幕末の高杉晋作がよい例だ。戦争がいつから始まったか不明だが、紀元前25世紀の頃には記録がある。それ以前の戦争がない時代であも、動物を狩るということに快楽を覚えることがあっただろう。農業が始まると、富の蓄積が起こり、略奪行為が発生する。すると今度は防衛のための備えが重要になる。隣の村や部族同士で軍事力が増し、緊張が高まると、偶発的な事故や突発的な争いで戦争が勃発するようになる。生き残るためには常に戦争に備え、戦争に勝たなければならない。このような事情から、人類には闘争というDNAが沁み込んでいったのだろう。別言すれば、闘争というDNAを持たない人種、部族は滅亡する運命を辿ったのかもしれない。さて怪物的な闘争本能の持ち主であるパットンは良い時宜を得て、良い戦争に巡り合った。味方の兵にさえ人権を認めない彼は敵に対して容赦などしない。敵、味方関係なく、次々と屍の山を築いていく。勝つためには勇気と犠牲が必要だが、「愚将は敵より恐い」という諺があるようにその匙加減が難しい。彼は運よく勝利し、英雄となる。しかし勝利しても、「次はナチスと組んでソ連を叩く」と嘯く。戦うことが総てである彼にとっては当然の所見だ。ローマの英雄が現代に出現したかのような生き様を見せる彼は時代を映す鏡だ。国民を鼓舞し激励する指導者であり、戦争の英雄であり、血に飢えた愚将であり、弱い人間の見本のようにも映る。戦争と人間について考えさせられた映画だ。批判や英雄視を廃し、パットンを客観的に見据え続ける視座がよい。アフリカでの戦闘場面は迫力があった。  [DVD(字幕)] 8点(2012-12-17 22:25:23)(良:1票) 《改行有》

5.  バック・トゥ・ザ・フューチャーPART3 《ネタバレ》 パート1では、高校生マーティが悪者に襲われ、緊急避難的に1985年から1955年へタイム・トラベルする。そこで偶然出会った父親(将来の)に意図せず干渉してしまい、父と母がつきあう機会が失われ、自分が生まれない未来に改変されてしまう。それを何とか元に戻そうとする話で、マーティと発明家ドクとの友情、エイリアンのネタ、チャックベリー小ネタ、落雷を利用して未来に戻る方法等、アイデアが洗練されていて夢がある。爽快感があるのだ。残念なのは「歴史に干渉してはいけない」といいながら、改変してしまっているところ。マーティの父親は成功者になったし、発明家ドクは射殺を免れる。願わくば歴史改変はドクが死を逃れるだけにしてほしい。そしてマーティは今回の経験から自信をつけ、音楽の才能を開花させるという方向にすれば座りがよくなったと思う。パート2は退屈だ。未来のスポーツ年鑑を持ち帰って、ギャンブルで金儲けをする話で、俗っぽく、夢がない。ほとんどがマーティと不良のビフとの喧嘩場面といってよく、飽きてしまう。腕力のビフに対して、頭脳で対抗するのが本来の姿であるはず。老人のビフが初めてみたタイムマシンの操作ができるなど無理があるし、マーティの恋人はただ寝ているだけの存在だ。パート3は、ドクの恋という意外性のある話で、脚本に破綻はない。タイムマシンが壊れて途方にくれたとき、70年間郵便局に留置の手紙が届くなど出色のアイデアだ。最後の未来へ脱出する疾走機関車の場面での怒涛の盛り上がりも見事だ。マーティは「腰抜け」と呼ばれると、熱くなって、自分を失ってしまう短気な性格だったが、その欠点を克服して、大人に成長する。ドクは科学一辺倒の変人で、恋とは無縁だったが、意中の相手に出会うと、てもなく「恋する男」に変身してしまう。とても人間味にあふれ、愛すべき人物だ。こういった軽いノリと、コミカルな雰囲気が本シリーズを「愛と夢にあふれるファンタジー」にする下地となっている。パート2の失速が重ね重ね残念だ。[DVD(字幕)] 8点(2012-11-21 03:32:55)

6.  ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2 《ネタバレ》 1、2、3、と観て、一作毎に完結しており、連続した物語の面白さは感じられなかった。それが4作目あたりからシリーズものの”つながり”が表れ、最終章で、謎の解明と、張り巡らせた多くの伏線が回収される快感を味わった。予想外の出来の良さだ。謎と伏線のほとんどは、魂を分けて保存する「分霊箱」と「三兄弟と死者の秘宝の物語」と「ダンブルドア校長の遺言書」に集約される。一度限りの登場としか思っていなかったり、大した意味もないと思っていた人物やものが、再登場したり、真の意味が明らかになるなど、奥深い一面を見せる。ハリーの額の傷の秘密とヴォルデモート卿との関係。ヴォルデモートの不死身の秘密と分霊箱の謎。伝説のグリフィンドールの剣と大蛇バジリスクの毒の合体の意味。ハリーがダンブルドアからもらった「透明マント」の由来。トム・リドルの日記の正体。世界最強の「ニワトコの杖」の真の主が、前所有者スネイプを殺害したヴォルデモート卿ではなく、ハリー・ポッターに移った理由。スネイプがダンブルドアを殺した理由。スネイプとハリーの母リリーの関係。細部までよく考えられている。屋敷しもべ妖精ドビーの思わぬ活躍と死など、意表をつく展開もあった。特筆すべきはCGの出来で、繰り返されるハリーとロンの仲違いと仲直り、生ぬるい恋愛、敵の弱すぎる手下など、”ゆるい”部分には目をつぶるしかない。描写希薄なヴォルデモートのまとめ。孤児院で生まれ、母親(魔法使い)はすぐに死亡。父はマグル(人間)。魔法学校で能力を発揮し、分霊箱の術で不死の力を得ると、ダークサイドに落ちる。純血主義を唱え、忠誠を誓う手下「死喰い人」を率いて、「マグル」や「半純血」を粛清。父親とその親族も抹殺。魔法界の大半を支配下に置く。ある日彼を滅ぼす可能性を持つ者の出現が予言される。それがハリー。赤ん坊だったハリーに放った「死の呪い」がハリーの母親の「守りの魔法」で撥ね返り、肉体を失ってしまう。この時ハリーの額の傷にヴォルデモートの魂の欠片が引っかかり、意図せぬ分霊箱となる。ハリーの血によって復活するが、ハリー母の「ハリーを守る呪文」も取り込んだため、彼が死なない限り、ハリーもまた死ぬことはなくなる。最後「ニワトコの杖」で、ハリーに「死の呪い」を用いたが、杖の真の所有者ハリーに対する忠誠心により、呪いは無力化され、結果的にハリーの体内の彼の魂だけが破壊された。[DVD(字幕)] 8点(2012-11-10 06:34:17)(良:2票)

7.  母なる証明 《ネタバレ》  母性が理性に勝ったという映画。それだけではなく、きれいごとでは済まされない母性の本質をえぐり出した問題作。世に氾濫する勧善懲悪の御都合主義映画などとは無縁。「母の愛は永遠」などと考える楽観主義者にビンタを食らわせるような衝撃があり、実に見ごたえがある。単純にサスペンスとしてみても面白い。知恵遅れの息子が殺人の冤罪、ど素人の母親が探偵役で、容疑者が次々に登場、遂に真相にたどり着くが、そこには悲劇が待っていた。どんでん返しの妙があります。しかしこの作品の主題は母性。正直母親は怖いと思いました。愛は盲目の箴言の通り、母にとっては知的障害の子供はどうしても過保護になりがちで、自分と同一化してしまう傾向にある。自分が辛くなったときには殺してしまおうと考える。これが心中未遂。息子の冤罪を晴らすためには、全てをなげうって一心不乱に邁進する、その姿には心打たれる。息子が真犯人だと判った瞬間、逆上して目撃者を撲殺し、証拠隠滅の放火までする。総て母性のなせる業、愛こそは全て、善も悪も超えている。しかし因果応報の理あり。息子が心中未遂事件を思い出して、「母が僕を殺そうとした」と復讐される。息子が焼け跡から針道具を回収してきて、罪の意識が決して逃れることがないことが暗示される。母と子の関係が一生消えることがないのと同様、罪の意識は永遠に母親を苛む。そして真犯人にされた無実の男との対面。男は息子と相似で、軽い知的障害がある。しかし母親はいない。そのことに涙するのは、男はこの先、誰の愛も受けられれず、殺人の汚名を着て生きていかなければならないことを知っているから。この男への罪の意識も重い。これから二重、三重の苦しみが待っているが、母として息子のために生きていかなければならない。夕日の中の踊りは、苦しくとも、明日に向かって生きる勇気を振り絞る決意の表れだろう。◆警察の杜撰すぎる捜査や堕落しすぎている弁護士など、リアリティに欠ける部分があるのは惜しい。「ゴルフボールだけで逮捕」はありえない。伏線の回収は見事でした。息子はバカと言われたら暴力で立ち向かうように躾られていた。被害者は常日頃から鼻血を出しやすい体質。屋上に置かれた死体の謎。廃品回収の人は善い人。ゴルフクラブの血というミスリードもナイスショット。息子の悪友の容疑者から捜査協力者への転換なども見事、映画の勘所を心得ている監督です。[DVD(字幕)] 8点(2012-09-10 18:20:29)《改行有》

8.  白鯨 《ネタバレ》 盛り上げ方がとても巧い。旧約聖書を下敷きにした挿話を盛り込み、神の存在感の大きさ、畏怖を感じさせる。神か悪魔か、善か悪か、復讐するのは誰か、裁くのは誰か、神による救いはあるかなど、重厚な内容に酔いしれながら鑑賞すべし。①雷の閃光に一瞬映る船長の後ろ姿。あとはなかなか姿を現さない。②船長の名前エイハブは旧約聖書の神を捨てたイスラエルの王アハブ。だから呪われた名前。③牧師のヨナの説教。予言者ヨナは神に逆らったので巨大な魚に飲み込まれたが、後に救われた。④港で預言者の言葉。「島がないのに島の匂いがするとき、船長は死ぬ。だがすぐに甦り、皆を手招きするだろう。一人を残して全員が死ぬ。」⑤何百頭もの鯨の群れを狩っている最中に白鯨の消息を聞いた船長は作業を中断させ、白鯨を追う。⑥副船長が船長に反逆を起こそうをするが誰も耳を貸さない。⑦見張りが海に落ち、行方不明。それから何日もベタ凪。⑧インディアンの銛打ちが占いをして、自らの死が近いのを悟り、棺桶を作らせ、絶食をする。⑨白鯨とファースト・コンタクト。逃げられる。⑩他船から白鯨に襲われた船を探すようの頼まれるが断る。⑪船長が鍛冶屋に巨大な銛を作るように命令。水の代わりに血を使う。⑫嵐に遭って帆が破れるが、船長は嵐は白鯨に追いつくための神の贈り物だと主張し、強行を命令。⑬副船長はマストを切ろうとするが船長にさえぎられる。⑭セントエルモの灯が出現。船長は白鯨への道案内だと主張し、灯を手で触る。セントエルモの灯は船乗りの守護聖人である聖エルモの火で、これが出現すると嵐が収まると信じられていた。⑮副船長が船長を殺そうとするがためらう。島の匂いがして、白鯨とセカンド・コンタクト。死闘を繰り広げる。【感想】一言でいえば船長の復讐譚だが、その由来が少ししか描かれておらず不満。最大のサプライズは、終始白鯨への復讐を否定していた副船長が、船長の死を目にした途端、船員に白鯨を追うように命令したこと。善良なクリスチャン船員が呪いにかかった瞬間だ。その呪いは神のものか、悪魔のものか、白鯨のものか、船長のものか。どんな人間にも魔が訪れる瞬間があり、運命には逆らえない存在だ。そんな恐怖を体験できただけで満足です。白鯨は何の暗喩か?考えるのも楽しい。ちなみに日本の捕鯨では鯨が逃げないように音を出して囲み、弱った鯨によじのぼり手刀包丁で鼻をそぎとどめを刺す。[DVD(字幕)] 8点(2011-09-10 13:25:38)

9.  バンテージ・ポイント 《ネタバレ》 テンポのよい犯罪娯楽作品として楽しめました。 一つの事件を複数の時間軸で再構成してみせるやり方は秀逸です。 時間が戻りながらも少しづつ物語が進行し、謎が解けてゆくところにカタルシスを覚えました。 退屈はしませんでした。 事件を大統領暗殺(実は誘拐)にしたのは愛嬌でしょう。 ハイライトのカーチェイスシーンは手ぶれカメラの映像を短くつなぎ、臨場感を出していましたね。今後の映画の同シーンのお手本となるでしょう。 大統領を暗殺させて、実は影武者だったというひねりは面白かったです。 難をいえば、犯人側の心理が描かれていないことです。 シークレットサービスとカメラをもった黒人は心に傷をもっており、それがストーリーに上手に取り込まれていました。 しかし、犯人側は何を描かれてもおらず、誘拐の目的さえも不明のままです。 シークレットサービスの一人が仲間なので、計画は最初から成功したようなものだったはずですが。 どうしてリモート銃で暗殺したり、広場を爆発させたのでしょうか? ホテルの中で自爆テロする必要もないでしょう。 それに肝心の誘拐実行犯が、特殊工作員の一人だけというのにも無理があります。 しかもこの人は弟を人質に取られて、脅迫されて仕方なくやっているのですから、本来ならうまくゆくはずがありません。 そして最後の場面で、市長のボディーガードを射殺しますが、これも意味不明です。 そんなことをして弟が無事で済むはずがありません。 逃走が失敗するのが、大統領の反撃と交通事故というのもマイナスポイントです。 もうちょっと知的なところを見せて欲しいです。 それから最初のシーケンスはテレビクルーでしたが、その後彼らは物語にからみません。 そりゃあないでしょ。もったいない。 もう少しシナリオをひねれば名作になりえた作品と思います。 [映画館(字幕)] 8点(2008-04-04 20:16:59)(良:1票) 《改行有》

10.  幕末残酷物語 《ネタバレ》 田舎から上京した柔弱な郷士青年・江波三郎が、新選組にあこがれて入隊するも、苛烈な規律で隊士を統率し、違反者は容赦なく殺戮するという恐怖の支配する閉塞的組織の中で徐々に人間性を失っていく様子を描く物語。と、視聴中思って疑わなかった。血を見ただけで卒倒していた江波が自ら切腹の介錯を申し出るようになり、又女中さととの恋愛も悲恋に終り、悲劇を盛り上げるものと信じていた。しかし最後に思わぬどんでん返しがあった。江波は近藤派に殺された、新選組初代隊長・芹沢鴨の甥で、復讐を誓って新撰組にもぐりこんだのだ。しかも坂本龍馬の海援隊の間諜でもあった。こうなると話が違ってくる。現実主義的手法で殺戮を繰り返す侍達の人間性を冷徹に描く筈が、単なる復讐譚に堕してしまうのだ。物語の軸がぶれており、失望感がぬぐえきれない。 新撰組の鉄の掟に辟易しながらも、心情的に近藤から離れられない沖田総司の葛藤の描写も全くの無駄に終る。沖田は江波のまだ汚れていない純粋な精神を見込んで新撰組に入れたのだ。だから江波の変化を意外に思うし、新選組の暗黒史である芹沢鴨暗殺の秘密も洩らす。その辺りの両者の微妙な心情変化もよく描けていた。結局のところ、江波の正体が間諜で近藤を狙う刺客であるという設定が全てを台無しにした。近藤を狙う機会はいくらもあったのに、何もしなかったという矛盾もある。舞台のほとんどが新撰組の屯所の中だけなのも不満だ。不逞浪人を取り締まる外でこそ新撰組の面目躍如があるからだ。途中までは非常に良いのに最後でしくじった作品である。白塗りのない大川橋蔵が見れる貴重な作品だが、興行面では失敗だったとのこと。[DVD(邦画)] 7点(2014-12-13 01:50:01)《改行有》

11.  白昼堂々 《ネタバレ》 女掏摸(すり)が捕まったと思ったら、実は元掏摸が助けたという導入部は興を引く。元掏摸は伝説の箱師の銀三で、女掏摸の親分が綿勝、再会した二人は旧交を温める。廃炭鉱の無人宿舎に掏摸や万引きの常習犯が逃げ込む「泥棒部落」がある。綿勝はそこの首領で、四十人程の組合員を養っている。組合員は炭鉱閉鎖で行き場をなくして仕方なく悪事を働く朝鮮人、記憶喪失者、老人等で、同情の余地がある。綿勝は銀三を仲間に誘い、組合員を率いて大掛かりなデパート万引きを行う。これを追うのが嘗て二人を逮捕し更生させた老刑事森沢。仲間が逮捕された綿勝はデパートの売上を盗むという大勝負に出る。それを嗅ぎ付けた森沢との一騎打ちが最大の佳境。 義理と人情の狭間で悩む銀三の姿が描かれ、痛快な犯罪映画ではない。組合員の悲哀も描かれ、銀三の恋愛、若刑事と女掏摸の恋愛もある。犯罪、喜劇、社会派の入り混じった混合映画だ。犯罪映画としては、犯罪世界を見せる面白みに欠け、痛快さが無い。掏摸は洗練さを欠き、万引きの方法も目新しいものではなかった。社会派としては中途半端である。構成員の人物の掘り下げが浅い。老刑事も喜劇に組み込まれているので立ち位置が微妙である。人情喜劇としても物足りない。笑える場面もあるが、銀三と娘の逸話の“泣き”の比重が大きく、「泣き笑い劇場」になっている。分りやすく言えば、犯罪を背景とした二人の男の友情物語だろう。。 構成は悪くない。最初に魅力的な女掏摸や泥棒部落という奇抜さで興味をもたせ、構成員の哀れみを見せ、中盤から二つの恋愛を交えつつ、二人の友情と老刑事の執念を描き、最終対決に至る。要は均衡と落としどころの問題だ。最終対決は悪くないが、語り継がれるような水準ではなく、もう一工夫か、もう一波乱欲しい。何より森沢が二人の大勝負の相談の会話を立ち聞きするという安易な設定が興味を削ぐ要因となっている。犯罪者と刑事の知恵比べが見たかった。二人が看守から掏った煙草を吸い合う場面は一服の清涼剤だ。[DVD(邦画)] 7点(2014-09-06 11:49:33)《改行有》

12.  パイレーツ・オブ・カリビアン/生命の泉 《ネタバレ》 物事を深く考えず、常に飄々と出たとこ勝負のジャック・スパロウの珍妙奇抜な行動が見ものだ。クスクス笑いの連続で、物語の本筋よりも枝葉末節の方が断然面白い。椅子に縛られたまま卓上のシュークリームを取りに行ったり、馬車に飛び込んで口でイヤリングを盗んだり、縛られたまま椰子の幹を登って脱出したり、泉への入口で聖杯をぶつけて鳴らしてみたりと、つい笑ってしまう。海賊の冒険物語というより、意表を突き、人を食った演出を楽しむコメディ映画だ。 登場人物を多彩にして飽きさせない工夫をしている。ジャックの旧知の友ギブス、超能力を操る黒ひげ、黒ひげの娘でジャックの元恋人の女海賊アンジェリカ、黒ひげを仇と狙うバルボッサ、船に乗った人間を襲う人魚、人魚と恋に落ちる宣教師、生命の泉を破壊しようとするスペイン軍、まぬけ面のジョージ一世、ポンセ・デ・レオン。意図はわかるが詰め込み過ぎで説明不足は否めない。 冒頭、魚網で引き上げられる男の正体。ポンセ・デ・レオンとは何者か?恋人同士だったアンジェリカとジャックの詳しい経緯。黒ひげはあれだけの超能力を持っているのにどうして予言を恐れるのか?ボンバッサと黒ひげの因縁。人魚と宣教師の結末。ギブスはどうやって船の小瓶を盗んだ?スペインが生命の泉を破壊する理由などなど。脚本に工夫の余地がありそうだ。特に黒ひげについては腑に落ちない点が多い。彼の能力はすば抜けている。命令のままに動くゾンビ水夫を造り出す、綱を意志あるように動かして人を捕える、船を小瓶の中に保管する、呪いの人形で人間を苦しめる、船の火炎放射器。彼の能力は発揮されずにあっけなくバルボッサに倒されてしまう。あたら惜しいではないか。それと宣教師を登場させる理由が判らない。船乗りでよいではないか。 次の事実を知っていれば理解が深まる。ポンセ・デ・レオンは16世紀のスペインの探検家で、若返りの泉を探している途中でフロリダを発見したという伝説の持ち主。黒ひげは18世紀の海賊、船は「アン女王の復讐号」でアン女王への共感が命名由来。聖杯はキリスト教の聖遺物のひとつで、最後の晩餐に使われたとされる杯。人魚の名シレーナは、ギリシア神話の海の怪物セイレーンに由来。米国人にとっては常識なので説明がないのだろう。ところでアンジェリカだが、ジャック人形を使ってどうやって孤島から脱出するのか?次回が楽しみである。[DVD(字幕)] 7点(2014-05-14 05:26:06)《改行有》

13.  ハート・ロッカー 《ネタバレ》 ひと癖もふた癖もある映画だ。突き放して、結論を観客に想像させるタイプの映画で、好みが分かれそう。その手法は、さほど成功しているとは思えない。理由はいろいろあるが、主人公の感情が読めないことが大きいと思う。冒頭場面、3人の爆弾処理兵があまりにビビっているので笑ってしまった。爆弾処理兵たるもの常に冷静であるべきで、実際にそうだと思う。周囲に民間人がうじゃうじゃいるのに、警告もせず、避難・警戒線も張らず、X線透視カメラも無し。予想通り爆破したが、あんなに遠くで爆発したのにまさかの死亡はあ然。肉屋の携帯との関わりは不明のまま。次に芋蔓式の爆弾がでてきたけど、何のためのものなのか?米軍車が偶然にあの上を通るのを願うのか?万事この調子。どれも説明不足な上に、各挿話の結論が放りっぱなしだ。転機となったベッカム少年の挿話を例にとっても、何故少年をそんなに気にするのか。ベッカムそっくりさんの正体は?ベッカムのいた露天商の主に何故通訳をつけて質問しないの?人間爆弾のことを上に報告して、チームで調査すればいいのに、何故単独でベッカム家に乗り込んでいくの?何故おばさんにやられっぱなしだったの?ベッカムに再会出来て何故あんなによそよそしいの?など、すっきりしないこと甚だしい。「任務あけまであと何日」としつこく字幕を出しながら、その日を描かない。わざと難解にしているようにも思えるくらい。だから、いつまで経っても映画の方向性が見えてこない。戦争の狂気を描きたいのか、悲惨さを描きたいのか、主人公の英雄ぶりを描きたいのか、成長を描きたいのか、戦場での兵士心理を描きたいのか、友情を描きたいのか、イラクでの現状を知ってもらいたいのか。緊張感だけは伝わってくるが、手ブレカメラの多用は目に余る。主題が「戦争は麻薬だ」ということは序文にある通り。となれば、最後の場面の説明としては、「帰国して日常生活に戻ったものの、妻との会話は通じず、かえって孤独は増し、無力感に苛まれていったが、やがて召集通知が届き、主人公な嬉々として戦場に戻っていった」ということになる。この人、特に成長してないと思う。戦場でしか生きられなくなった自分を再確認したということ。それを戦争の悲劇の一面として描いた作品。戦争は兵士の精神を蝕む。[DVD(字幕)] 7点(2012-12-20 05:52:48)

14.  パンズ・ラビリンス 《ネタバレ》 いきなり流血する少女のアップで始まり、テープが逆回転。全編、観客にショックを与えようという意図に満ちる。”意欲的”な作品で好感は持てるが、グロ・痛いシーンが多いのには辟易。大尉の父は将軍で、亡くなるとき懐中時計を壊して息子に”死の時刻”を遺す。大尉は父に憧れて軍人になった。懐中時計の逸話を無い事にするのは他人に弱い部分を見せたくないから。息子に対する執着は異様。臨月の妻に長旅させて自分の元で産ます、出産前から男の子と決めてかかる、医者には万が一の時には赤ん坊の命を優先せよと厳命。軍人の血統を継承させたい宿願があり、死期が近いのを本能で察している。洞察力に優れ、敵に対して情け容赦無い。完璧な軍人になりきろうとするあまり、彼にとって現実はファンタジーでしかない。大尉には現実がファンタジー、少女にはファンタジーが現実。両者は全く違うように見えるが、合わせ鏡のような関係。不幸の国にあるという摘んだ人に永遠の命を授ける奇跡の薔薇は、毒棘があるせいで誰にも摘まれない。少女が胎内の弟に語り聞かせる寓話だが、これには弟に摘み取ってもらいたいという願いが込められている。少女も自分の死を察している。ラストで、現実主義の大尉は閉じた迷宮の扉を難なく突破できたが、その先には死が待っていた。少女は死んで無垢の血を流すことで、魂が魔法の国に帰還できた。両者は常に対比して描かれる。全てを少女の幻想と決めつける事はできない。父を亡くし、継父とはそりが合わないが、母には愛され、経済的に恵まれ、戦争の悲惨さは知らない。彼女の幻想は戦闘の前から始まっている。現実逃避するほどのトラウマがない。泥で汚れた服、魔法の根っこ、チョークは実在するし、病気の母親は医者が首を傾げる程回復したし、チョークドア無しでどうやって壁を破り赤ん坊を横奪できたのか。それに現実逃避の幻想なら甘美で自分に都合のよいものと決まっている。魂の開放のためには死のイニシエーション=継父の銃弾が必要だったとの解釈も可能だろう。この場合継父はユダで、キリストの復活には不可欠の存在。どこまで現実か、ファンタジーか。作り手のそのあたりの匙加減、曖昧さ加減は絶妙。彼女がこの世に残したという”印し”を見つけたいものです。葡萄を食べたのは、まだこの世に残りたいという未練があったから。母が死んで未練は消えた。「手目坊主」そっくりお化けが出てきてびっくり。[DVD(字幕)] 7点(2012-08-10 12:35:23)

15.  バッファロー'66 《ネタバレ》 【ビリー】父親には反発し、母親とは心が通わない。同級生に好きな女の子がいたが相手にされずじまい。女には奥手。裸を見られたくないなど神経質。酒、麻薬と無縁。愚図のグーンが親友。行動は行き当たりばったり。ボウリングの腕はプロ並。金も無いのに大金を地元チームに賭け大損。その償いで他人の罪をかぶり5年間の禁固刑。両親には結婚し、働いていると嘘。母を思いやる気持ちは強い。女を拉致し、妻として紹介。自分に絶望し、八百長選手を殺して自殺すると計画。 【母】アメフト依存症。ビリーを産まなければ地元チームの優勝場面が見れたのにと悔やむ。子供のチョコアレルギーを忘れるなど子への関心薄い。 【父】元歌手。ビリーの愛犬を殺す。短気。フォークが自分の方を向いているなどと難癖。 【女】まさにムーンチャイルド。踊りはヘタ、頭は悪そう。いつでも逃走できるのに従順。孤独で一人暮らしか。想像力は豊か。男の心を読み取る能力に長けている。風呂に押しかけるなど押しが強い。 【感想】奇妙なボーイ・ミーツ・ガールもの。あんな奇妙な女がいる?自分を拉致したムショ出男を愛するなんて。男は無害とすぐに見破ったのでしょう。愛は奇跡を生みますね。アイデアは秀逸。「あなたは世界一優しい男でハンサム」は優しさから出た言葉。女の愛情が男の殺伐とした心を癒し、殺人を思いとどまらせた。初めて無条件で愛され、ようやく自分の居場所を見つけた男。女の身上が語られないのは残念。人生に退屈しているのは明白。女は彼に何を求めたのか。最初は同情心から。徐々に彼の優しさ、心の弱さ、純粋さを見抜いたようだ。嫉妬も手伝い、母性をくすぐられたのだろう。車の運転できないし、恋には純真で、両親に反発しつつも愛し、粗暴で繊細、まるで子供だもの。女は自分を頼ってくれる人を欲していた。「かわいい駄目さ」は魅力がある。心に傷を持つ者同士は共感しやすい。冒頭トイレを探すシーンはギャグ?それともうまくいかない男の人生の暗示?。リアリティに欠けのが惜しい、いっそミュージカルにしたら。どちらかが自己犠牲を見せる場面があればよかった。四人いるのに三人しか映さない食卓シーンは興ざめ。ラストの銃撃シーンの3Dもどきもインパクト無し。写真は死後両親に送るものだが、誰が送付するのか。それに死ねばすぐに両親に知れる筈。やっぱりかわいいね。今後二人で成長してゆけそうです。[DVD(字幕)] 7点(2010-06-10 13:37:38)(良:1票) 《改行有》

16.  ハロー・ドーリー! 《ネタバレ》 ジーン・ケリーが監督なので、ダンスシーンには気合が入っている。屋外でのパレードや群舞シーンは映画ならではのもので圧巻でした。音楽もいい。『日曜は晴着で』『ほんの一瞬のこと』などは佳作で、映画「ウォーリー」にも効果的に使われていました。アカデミー賞の音楽賞を受賞したのも納得です。さて、ストーリーだが、四組の恋愛が描かれている。男やもめホレスと世話好き未亡人ドーリー。画家とホレスの姪。ホレスの店の店員コーネリアスと帽子屋の女店主アイリーン。もう一人の店員バーナビーと帽子店の店員。恋愛もので感情移入できるかどうかは、「女性が男性を好きだ」という感情が伝わるかどうかだと思う。ドーリーやアイリーンが相手の男性のどこを好きになったのかわかりにくい。ホレスは傲慢で、しみったれだし、コーネリアスは田舎者丸出し、共にハンサムではない。都会女性が魅かれる要素が見当たりません。それにドーリーは恋愛の策士で、自信たっぷりすぎます。応援する気にはなれないですね。やめといたほうがいいのでは?と余計な心配をしてしまいます。夫の生存中は毎日ニューヨークの高級レストランに着飾って現れ、お金をたっぷり浪費していたらしいのですが、そんな彼女がどうして田舎に引っ込んで、紹介業などしているのか?画家カップルの恋愛は途中、放りっぱなしにされ、結局最後まで詳細が不明です。そのあたりの脚本のツメをおろそかにして、ダンスシーンを撮るのに熱中している監督の姿が見えてきます。映画ではある程度のリアリティが必要なので、成功した舞台の脚本をそのまま流用してもアラが目立つのです。ただ女性とキスどころか、女性に触ったこともなく、かつ田舎も出たことがない青年が、一日だけ休みをとって女性とキスするまで帰らないと都会にでてゆく設定は魅力的でした。自分の殻を破ろうと冒険に出る青年は誰でも応援したくなります。サッチモの扱いにも疑問です。出番はほんの少しで、メインストーリーには絡まず。もっとリスペクトして欲しかったです。それにしてもあんな豪華な造りのレストランは日本で観たことがありません。舞踏の伝統のある国ならではのものです。ミュージカルだから細かいところにはこだわらず、素直に音楽とダンスを楽めばよいという主義の人にはうってつけの映画です。古き良きハリウッド・ミュージカルの最後を飾る映画でもあります。[DVD(字幕)] 7点(2009-09-18 21:18:47)

17.  パッチギ! 《ネタバレ》 パワー溢れて活気のある映画。俳優が活き活きと演技しているのがいい。監督が上手に乗せるのだろう。監督の美徳である。一方で暴力シーンの連続には辟易。冒頭オックスがヘタな演奏を聞かせるが、これは実在のバンド。何か恨みがあるのだろうか。映画の原作は松山猛で「イムジン河」の訳詞者。「誰が祖国をふたつに分けてしまったの」など原詞には無い勝手(過激)な訳をつけたために発売中止に。そこをフォローするためか原詞で削られた「共同農場の稲、波の上で踊る」の部分が語られている。朝鮮人が松山猛訳をどう思っているのか知りたいところ。危惧するところでもあります。例えば朝鮮人が広島の原爆の悲劇を歌にするようなものか。沢尻は日本人と仏人のハーフ。在日朝鮮人を演じていいのだろうか。いがみあう日本人と在日の間に風穴をあけたのが歌。主人公は歌で仲間に入れたし、ラジオで熱唱して恋人の親族に気持ちが伝わった。ラストは河での喧嘩と出産とフォークコンテストが三つ巴の同時進行。感動するシーンだ。特に主人公がギターを叩き割るところがよい。普段感情を露わにしないキャラなので驚いた。注文もある。ラジオのディレクターに暴力を使わせたこと。ここは誠意で上司の心を動かすのでなければならない。暴力では解決にならない。当時「イムジン河」は放送自粛で歌えないので、本来は別の歌を予定していたが、急遽「イムジン河」を歌わせてくれとお願いするような展開なら無理がなかった。出産も父親がそのことをどう思っていたのか全く触れられていなかった。父親としての自覚を持つにしては唐突すぎるのだ。ところで在日と日本人がどうして喧嘩するのか描かれていない。兄や親の代からの惰性でそうなっているのだろう。在日への差別もあまりなく、ただ在日の貧しさが描かれていた。棺を前にして老人が主人公に怒鳴り、虐げられてきた経験と怒りを吐露する。監督の最も言いたい部分でしょう。素直に拝聴しておきます。[DVD(邦画)] 7点(2009-05-07 10:52:42)

18.  花とアリス〈劇場版〉 《ネタバレ》 独特の映像美に魅せられました。高感度フィルムの採光オーバー撮り、周辺をぼかすフィルター、様々なアングルの多用、小津監督のようなローアングル、凝った背景、いろいろとやっています。物語の中心になるのは、偽の記憶喪失ですが、すぐに気づくはずで、引っ張るのは無理があります。宮本のキャラと演技に魅力がないのが欠点。花とアリスの恋のせつなさが伝わりづらいです。アリスが中心に描かれています。両親は離婚。一緒に暮らす母は母親の役割を果たしません。父を思慕していますが、両者の会話はぎこちなく、記憶もかみあいません。3人でデートする場面は、アリスの思い出の追体験です。親子三人で海に来て、縄跳びをし、トランプをし、おむすびサンドを食べたのでしょう。「ねえ、これ覚えてる?」の質問は宮本ではなく父に向けられています。父と宮本が重なって見えたとき、擬似的な恋愛感情が生まれました。それが、「ジョウダンヨ」のせりふになります。父はアリスがところてんを嫌いと思っていましたが、それは過去のことで、すれ違いがあります。宮本との恋愛もところてんが原因で破綻します。このあたりの脚本はうまいですね。宮本が「失われたトランプ」を拾っていたのを知って号泣するアリス。本当に恋をした瞬間です。が、すぐに別れなければならない宿命。トランプを渡して「せめてときどき思い出してね」の後に、伝わらないのを承知で、父から教わった「我愛称」をいいます。切ない青春の1ページ。これらのことを経験し、アリスは過去(楽しかった家族の思い出)に捕らわれないで、現実と向き合い、強く生きていこうとします。それが自分らしさを初めて表現できたバレエシーンとなります。花には引きこもりの過去があり、それが原因で「生き残るためのウソ」を覚えたのでしょう。強引な恋愛は、なめくじのようにぬめぬめしています。アリスとの友情を思い出し、宮本に真実を話したことで、トラウマは解消されました。そして二人は元の仲良しに。写真部の女性、グッジョブ。で、宮本は?うーん中途半端。何故落研なのかも触れられていない。落語へただし。花の見せ場として落語を演じて欲しかった。アトムやライオンキングなどの小ネタ満載で楽しめました。 で[DVD(邦画)] 7点(2009-04-20 06:09:42)

19.  パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド 《ネタバレ》 沢山のキャラをだして無難にまとめていますね。愛に裏切られ、悲しげなオルガンを弾き、女神に呪われたジョーンズが最も印象的です。 鳥、猿、犬の桃太郎動物キャラもいい味出してます。厚化粧のマダムチャン船長はひどかったけど。 箱、鍵、コンパスの小道具もうまく活用しています。 最も心躍るシーンは戦闘中の二人の結婚式シーンだけど、なぜ急にあんなシチュエーションで結婚を申し込むのか不明のまま。 冒頭に絞首刑シーンが出てきて、ここで歌われた海賊の歌が海賊評議会を開催するきっかけになったらしいですが、これもよくわかりません。 悪人キャラのベケット卿が迫力なしで、最後「すべては会社の利益のため」と称して大砲を撃たず自滅するのも意味不明です。 最強の怪物クラーケンをどうして殺した?殺さずとも活用できるだろうに。ジョーンズがずっとそうしてきたじゃないか? 死から蘇るという設定に問題あり。生命の重みがなくなり、緊張感がなくなります。 エリザベスの父は「寿命だ」でおわりですか? そもそもスパロウを死から再生させようと提案したのはカリプソ。どーして? カリプソは呪縛を解かれ本来の女神の姿に戻るとおもいきや姿が大きくなったあと、大量のカニに変身して海に沈んだね。そして怒りで嵐と渦巻きを起こすのみ。迫力がないなあ。ジョーンズとの恋はどうなったの? バルボッサ船長、復活したあとはいい人になってる! ヒロインのエリザベスがスパロウを騙して殺したり、正義役のウィル・ターナーが父親のために裏切り行為を働いたりするので、あまり感情移入ができない。 だから見終わって爽やかな気分になれないんだなあ。 キャラは首尾一貫していないとダメでしょ。ファミリー向け映画なのだから。 海賊長や海賊船をあれだけだしといて戦闘させないのはどうしたことか? 海軍の船も沢山残っており、数的には優位なはずだが。 おっと、今回スパロウ船長はあまり活躍しなかったね。[DVD(字幕)] 7点(2008-05-12 09:02:18)《改行有》

20.  幕末太陽傳 《ネタバレ》 何よりテンポがよいのが魅力。 主人公の明るさと生き抜くためのさまざまな知恵が見所。 複数の落語のエピソードを紡ぎ上げた作品であるそうな。 主人公を肺病病みにする必要はなかった。 肺病を治すために女郎宿で無賃宿泊をし、居残りを決めるという設定は理解できません。 昭和の無責任男のように、ただ飄々と生きてゆくさまを描くだけでよかったと思う。 人生の奥深さを描くなど、この映画には不要です。 最後のエピソードは平凡。 オチになっていない。 嘘をみすかれて逃げ出すように去ってゆくような男じゃない。 みんなが唖然とするような啖呵を切って出てゆかないと。 [DVD(邦画)] 7点(2008-05-02 20:28:36)《改行有》

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