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プロフィール
コメント数 1274
性別 男性
年齢 43歳
自己紹介 嫁・子供・犬と都内に住んでいます。職業は公認会計士です。
ちょっと前までは仕事がヒマで、趣味に多くの時間を使えていたのですが、最近は景気が回復しているのか驚くほど仕事が増えており、映画を見られなくなってきています。
程々に稼いで程々に遊べる生活を愛する私にとっては過酷な日々となっていますが、そんな中でも細々とレビューを続けていきたいと思います。

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221.  ローン・サバイバー 《ネタバレ》 海兵隊のかっこよさ、勇敢さを称える一方で、対するタリバンは地元住民からも嫌われる絶対悪として描かれているという、今時珍しいほどのアメリカ万歳映画でした。アフガン紛争開始から10年以上経つにも関わらず、いまだにタリバンが勢力を維持できているという事実こそが、彼らにも地元民からの一定の支持があることの証明になっているわけですが、そんな理屈などハリウッドの人々には大した問題ではなかったようです。『猿の惑星/新世紀』のような含蓄に富んだ戦争映画が作られる一方で、本作のような脳筋映画が堂々と作り出されているという点に、ハリウッドの幅広さを感じました。。。 ただし、政治的にはマズイ姿勢であっても、アクション映画としてはあながち間違っていないという点が、本作の面白いところ。中立性に配慮した戦争映画というものはかなりの確率でつまらなくなるのですが、一方で勧善懲悪という単純な図式にまで落とし込まれた本作には、どストレートな興奮が宿っています。この物語を彩るビジュアルの迫力も素晴らしく、アレな監督として知られていたピーター・バーグが、本作ではとんでもない実力を披露しています。戦闘シーンの迫力、見せ場としての面白さ、「実際の戦争はこんな風だったんだろう」と観客に信じ込ませるだけの説得力、そのすべてにおいて満点に近い見せ場を作り出せており、近代戦を描いた映画としては、『ブラックホーク・ダウン』に比肩するほどの完成度だと言えます。。。 俳優陣は、ベン・フォスターとエミール・ハーシュがほぼ完璧に役柄にハマっていた一方で、テイラー・キッチュの空気ぶりと、ウォルバーグの浮きっぷりが気になりました。キッチュは部隊のリーダー役であり、戦闘の発端となる羊飼いの処遇についての決断を下したり、戦闘開始後には自己犠牲を買って出たりと、なかなか美味しいパートを担っているのですが、にも関わらず退場後には物凄い勢いでその存在を忘れてしまいます。ウォルバーグは、単純に歳食いすぎで違和感しかありませんでした。リーダー役かと思っていたら、まさかの平隊員役。俳優としてのキャリアが違いすぎるフォスターやハーシュとバカ話をしている様がとても不自然でした。あと、『ブラックホーク・ダウン』でもシールズ隊員をやっていたエリック・バナが、本作では作戦責任者役で出ており、「この人も出世したんだなぁ」としみじみしました。[ブルーレイ(吹替)] 7点(2014-09-29 00:00:39)《改行有》

222.  フライト・ゲーム 《ネタバレ》 今やスタローンやセガールをも超え世界一の暴虐オヤジとなったリーアム・ニーソンが、アクション野郎・ジョエル・シルヴァーとのタッグで放つサスペンスアクション。1996年にシルヴァーが製作した『エグゼクティブ・デシジョン』とよく似たプロットなのですが、その後18年の間に同種の映画がいくつも作られたこともあって、脚本上の仕掛けはかなり高度に進化しています。次の展開はまるで予測できないし、犯人を当てることもほぼ不可能。それでいて、「そのオチはズルい!」と思わせるようなインチキもしておらず、なかなかよく練られた脚本だと思います。また、時に過剰となるシルヴァーのサービス精神も、本作では吉と出ています。ひとつのネタ、ひとつのシチュエーションに執着しすぎず目まぐるしく状況を変えていくことにより、観客に余計な推理をさせる時間を与えていないのです。ラストに思わぬスペクタクルがあったことも好印象でした。。。 さらに良かったのは、この企画にアクションもやれる演技派・ニーソンが加わったことであり、企画と俳優との間で見事な化学反応が起こっています。映画を振り返れば、主に事態を悪化させていたのは主人公の過剰な対応だったわけですが、ニーソンによる演技の説得力のおかげで、そのアラがほとんど目立っていません。また、乗客やパイロットから疑わしいと思われていた主人公が状況を反転させ、乗客を味方に付けるに至った演説場面でのニーソンの演技は非常に素晴らしく、脚本の要となる部分を演技で補強できているという点には感心させられました。。。 難を言えば、真犯人たちの動機や目的がさっぱり理解不能だったことでしょうか。また、彼らは爆破を控えた飛行機からパラシュートで脱出しようとしていましたが、戦闘機に追尾されている状況でパラシュート降下すれば、着地点で逮捕されて終わりでしょ。そもそも、旅客機にパラシュート降下可能なドアってありましたっけ?真犯人たちの言動にはまったく説得力がありませんでした。あと、爆発までの残り時間がデカデカと表示される時限爆弾はもうやめにしませんか?あんなバカみたいな見た目の爆弾を作る犯罪者やテロリストなんていないでしょ。[映画館(字幕)] 7点(2014-09-22 01:19:55)(笑:1票) 《改行有》

223.  ハンガー・ゲーム2 《ネタバレ》 第一作でも感じた世界観の脆弱さが、映画そのものを破壊しかねないほどのレベルに達しています。独裁体制を敷く国の大統領は相当忙しいと思うのですが、本作のスノー大統領は僻地にあるカットニスの実家に直接足を運んだり、テレビスタジオでハンガーゲームを鑑賞したりと、そこら辺の年寄り以上にヒマそうなご様子。彼がここまでハンガーゲームに入れ込む背景、政治的に重要である理由がよくわからないため、「この世界の住人は、上から下までこんなゲームにのめり込んでバカじゃないの」という気持ちにさせられます。。。 ゲームが始まると、映画はさらに迷走します。出場者同士の殺し合いと、それに付随する心理戦こそがハンガーゲーム最大の見せ場だと思うのですが、今回は主催者側の仕掛けるトラップからいかに逃げ切るかが中心となるため、もはやハンガーゲームですらありません。これでは、「風雲!ホフマン城」ですよ。ラストではハンガーゲームのセットそのものが破壊され、外の世界に出て「次回に続く」。ハンガーゲームをやらないなら、別のタイトルを名乗った方がよいのでは?[ブルーレイ(字幕)] 3点(2014-09-20 01:33:20)(良:3票) 《改行有》

224.  ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー IMAX-3Dにて鑑賞。舞台の高さや広さを活かしたアクションや、無数の戦闘機が入り乱れるドッグファイト等、3D効果を狙った見せ場が多く、3D料金を払う価値が充分にある映画でした。。。 この映画の構成は抜群に優れており、マーベル・シネマティック・ユニバースに属する現行10作品の中では、もっともよくまとまった作品だと思います。それぞれに複雑なバックボーンを持つヒーローが5人もいる。彼らは根っからの善人ではないため戦いに参加するだけの動機を与えてやる必要があるし、敵組織も味方となる勢力も一枚岩ではない。おまけに、どちらの勢力にも属さない謎の宇宙人までが登場する始末。これだけ複雑な情報を観客に伝えながら、抜群のタイミングで見せ場を入れつつ、主人公たちの友情物語も無難にまとめる。よくぞこれを2時間程度でやりきったものだと感心しました。。。 ジェームズ・ガンは『スクービードゥー』や『ドーン・オブ・ザ・デッド』の脚本を手掛けた経験はあるものの、ハリウッド大作の監督を務めるのは本作が初。直球勝負の純粋娯楽作を撮った経験のない監督が本作をどう味付けするのかには関心があったのですが、クライマックスに向けて舞台を大きくしていくという見せ場の配分や、ピンチの中で味方の救援が駆けつけるタイミングの絶妙さなど、恐ろしく熟れた仕事ぶりを見せています。これだけ器用にやれる監督はそうはいません。。。 とはいえ、このバランスの良さが時にアダともなっています。善人ではなかった5人が正義に目覚めたり、友情を大切にしたりといった展開はハリウッドの王道すぎて、ドラマとしての面白みに欠けます。また、「毒を持って毒を制す」がコンセプトの企画ながら、主人公たちの悪の面が強調されていないことにも不満を覚えました。無味無臭の標準的な娯楽作に徹しすぎているのです。前作『スーパー!』ではヒーローものをバラバラに解体し、物凄く気味の悪い形で観客に提示してみせたジェームズ・ガンが、ここまで大人しいものを撮ってどうするんだという気にもなります。続編こそは、もっとヤンチャで、もっと挑発的なものを期待します。[映画館(字幕)] 7点(2014-09-19 00:22:10)(良:1票) 《改行有》

225.  るろうに剣心 伝説の最期編 《ネタバレ》 原作未読です。原作がマンガ、しかも長期連載だったものを2時間の実写映画に作り変えることには相当な困難があった様子で、脚本の練り込みが足らないように感じました。まず違和感を覚えたのは、時間感覚の不自然さ。『京都大火編』のラストで風雲急を告げる展開を迎えたにも関わらず、本作の前半で剣心は師匠とチンタラと禅問答をしたり、志々雄は志々雄で東京に急襲を仕掛けるのかと思いきや(そのための偽装だったのでは?)、ドッシリと構えて明治新政府と話し合いをしたりと、舞台で起こっているイベントと、それを受けての登場人物達の行動のスピード感とがうまく噛み合っていません。また、志々雄による革命にも無理があり過ぎで、感覚的にピンと来ないものがありました。戦艦1隻とわずかな手勢だけで明治政府を右往左往させるという展開は、さすがにありえないでしょう。マンガという媒体であれば違和感なく受け入れられた展開であっても、実写ではより多くの理屈付けが必要となりますが、本作にはその点が大きく欠けていました。また、『京都大火編』のレビューでも述べたのですが、御庭番衆絡みのサブプロットはメインプロットとうまく絡んでおらず、これは丸ごと削除した方が話の通りが良くなったと思います。。。 と、お話の方はイマイチだったのですが、アクションはとんでもないことになっています。『京都大火編』のアクションにも感激したのですが、あれですら出し惜しみだったと言えるほど本作のアクションは充実しています。志々雄の戦艦に乗り込んで以降、20分に渡って延々繰り広げられるアクションの数々は日本映画史に残るであろう完成度で、その質と量には圧倒されました。さらには、それまでのドラマとアクションを関連付けることにも成功しており、これだけエモーショナルなアクション映画は世界を見渡してもそうそう見つかるものではありません。ラスボス戦に向けてきっちりと盛り上がっていくペース配分の良さや、達人級のキャラクターが何人も入り乱れるラスボス戦の描写の素晴らしさなど、すべてが良すぎました。志々雄の散り方も重々しくて素晴らしく、これだけの悪役はハリウッドでもなかなか作り出せないのではないかと思います。上述の通り、脚本には少なからずアラがありましたが、そんなことは小さな問題だと言えるほど満足度の高いアクション映画として仕上がっています。 [映画館(邦画)] 8点(2014-09-17 00:09:43)《改行有》

226.  るろうに剣心 京都大火編 《ネタバレ》 原作未読につき思い入れのある作品ではないため、前作はブルーレイで済ませたのですが、本作については1ヶ月後には完結編が控えていることからソフトのリリースを待つ余裕がなく、劇場での鑑賞としました。。。 感想は前作と同様で、アクションはとにかく凄まじいし、役者のなりきり具合も素晴らしいが、肝心のお話が見せ場に追い付いていないという印象を受けました。映画を見る限り、製作側は一見さんにも理解可能なお話を目指していたように思うのですが、それでもやはり原作未読者にはよくわからない点が多々あります。特に、前作より大幅に登場人物を増やした結果、行動原理が不明な人間が何人も現れたことは痛かったです。全体的に、私怨なのか大義なのかの説明が不足しているんですよね。特に御庭番衆にはその思考がわからない人物が多く、この集団そのものを切ってしまった方がよかったように感じます。。。 また、本筋とは無関係なサブプロットもいくつか目に付きました。剣心が刀を折られた後、錬治の家族の元を訪れて新しい刀を手に入れるというくだり、及び、その刀を巡る金髪の敵(名前を忘れました)との攻防戦は、明らかに不要だったように感じます。なぜなら、このくだりの前後で、剣心の心境や人となりに変化がないからです。本筋と無関係な上に、キャラクターの成長を描くために不可欠なパートというわけでもないのだから、これはスッパリと落として、志々雄軍団との攻防戦に専念すべきでした。その志々雄にしても、明治新政府を打倒するという壮大な計画のまさに実行段階にあるにも関わらず、神谷薫を誘拐して剣心をおびき寄せるという合理性を感じられないことをチマチマとやっており、その優秀さを疑わざるをえなかったことは残念でした。藤原達也による演技には大変な凄みがあっただけに、脚本上のこの落ち度は勿体ない限りです。。。 以上、いろいろと文句をつけてきましたが、それでもアクションの出来は超一流。日本映画界におけるマンガ原作映画はハリウッドの猿真似ばかりで、その出来を誉められないものが多いのですが、本作は日本映画界にしか作れない題材を選び出し、その方向を深彫りしたことで、唯一無二のシリーズとなっています。こうした作品が作られ、映画館にお客さんが入っているということは、日本映画界にとって非常に良いことだと思います。[映画館(邦画)] 6点(2014-08-25 01:27:37)《改行有》

227.  リベンジ・マッチ 本作を見てわかったことは、豊富な人生経験は、時に才能をも凌駕するということです。主演2人のうち、役者としての能力が高いのはデ・ニーロの方なのですが、映画の中で自分がやるべきことをきちんと理解できているのはスタローンの方でした。スタローンは、90年代に『オスカー』と『刑事ジョー/ママにお手上げ』を大失敗させた経験からコメディに向かないことをよく自覚しており、本作ではあくまで受け身に徹しています。あらゆるタイプの映画への出演経験のあるアラン・アーキンを脇に置き、コメディパートは専らアーキンにお任せしているのです。アーキンの下ネタのキレは絶好調であり、おかげでレーザー側のドラマはそれなりに笑いながら見ることができました。他方、デ・ニーロはコメディ演技全開でスベりまくっています。演技派として不動の地位を持ち、目立った失敗をしてこなかったデ・ニーロは、演技をやりすぎてしまっているのです。デ・ニーロが笑わせる気マンマンでオーバーアクトをしてくる度に、とても残念な空気が流れていました。キッド側のドラマはあまり面白くありませんでしたね。。。 以上の通り、本作で笑えたのはアラン・アーキンが出ているところだけであり、コメディ映画としては残念な出来だったと言えます。だからと言って完全にダメな映画かと言えばそうでもなく、往年のスターが顔を揃えたセルフパロディ映画としては決して悪くない仕上がりでした。1976年のオスカーを争ったスタローンとデ・ニーロを競演させ、その間にはキム・ベイシンガーを挟むという気の効きすぎたキャスティング、その3者に均等に見せ場を与えた演出バランスの良さなど、スター映画としては堅実な作りとなっています。また、スタ×シュワの『大脱出』に期待したが得られなかったものが、本作にはちゃんとあります。設定や役名は違うものの、観客の側でジェイク・ラモッタvsロッキー・バルボアと脳内変換して見られるよう、気の利いた小ネタをいくつも挟んできているのです。70歳のデ・ニーロを裸にし、現役のアクション俳優であるスタローンとのファイトをやらせたことも大きなポイントだし、さらにはエンドロールにとんでもない大ネタを仕込んできたことにもお得感があり、その溢れんばかりのサービス精神には素直に感動しました。 [ブルーレイ(吹替)] 6点(2014-08-23 00:40:03)(良:1票) 《改行有》

228.  ラッシュ/プライドと友情 《ネタバレ》 仲間とワイワイやりながら戦果を挙げていく天才タイプの戦士と、人を寄せ付けないほど技術や鍛錬にこだわる職人タイプの戦士(たいてい良家の出身)。矢吹丈vs力石徹、孫悟空vsベジータ、纏流子vs鬼龍院皐月、マーベリックvsアイスマンetc…古今東西、非常にありがちな構図なのですが、この陳腐とも言える素材を、本作は驚くほど面白いドラマとしてまとめています。カッコいいのはニキ・ラウダの生き方だが、共感できるのは凡人の感覚を残したジェームス・ハントの方であり、観客がどちらの人物にも感情移入できるよう調整された脚本が絶品です。本作の脚本を手掛けたのはピーター・モーガン。現代史における大事件にフォーカスし、その渦中にいた人々が当時何を感じていたのかを推測しながらドラマを組み立てることを得意とする脚本家であり、その手法には「映画としては面白いが、歴史の捏造に繋がるのではないか」との批判もあるのですが、本作ではニキ・ラウダが存命中だったこともあり、余計な批判を受けずに済んだようです。。。 ロン・ハワードによる演出も絶好調で、両主人公に対してほぼ均等に見せ場を与えて二つのドラマを丁寧に描写しつつも、上映時間を120分程度に収めてしまうという見事なバランス感覚を持った娯楽作として仕上げています。力点の見極め方が実に素晴らしいのです。歴史的に確定した事実を描く作品である以上、「レースでどちらが勝つか」にこだわっても仕方のない題材であるため、そうした対決の要素はほとんど切り捨てています。レースシーンの迫力は素晴らしいものの、そこを追いかけ過ぎていないのです。監督があくまで重視したのは正反対の生き方をする男たちの仕事観や人生観を描くことであり、邦題の「プライドと友情」という要素すら、それほど重くは扱われていません。そのためにスポーツ映画としてはやや弱くなっているのですが、男の生きざまを描いた作品としては、掛け値なしの傑作として仕上がっています。この辺りの大胆な取捨選択は、本当に見事だったと思います。また、KinKi Kidsによる吹替も悪くなかったですよ。特に堂本光一は、プロの声優と遜色ないほどうまかったです。 [ブルーレイ(吹替)] 7点(2014-08-23 00:39:19)(良:1票) 《改行有》

229.  エンダーのゲーム 《ネタバレ》 原作未読。少年が主人公のSFということで「どうせ宇宙のハリー・ポッターだろう」と勘違いして映画館へは行かなかったのですが、後にブルーレイで鑑賞して、これは大スクリーンで見とけばよかったと激しく後悔した力作でした。。。 登場人物の大半は少年少女なのですが、子供らしい天真爛漫さを持つ者は皆無であり、それどころか、主人公が関わるのは陰湿なイジメをやってくる嫌な連中ばかり。当の主人公にしても、優秀なのはわかるが可愛げゼロで世渡りが異常にヘタクソ、通常の娯楽作に登場する子供達とはかなり趣が異なります(本作の登場人物達は『新世紀エヴァンゲリオン』に相当な影響を与えたとか)。そんな子供達が『フルメタル・ジャケット』ばりの厳しい訓練に挑む様には、かなり異様なものがありました。異様と言えば大人代表であるグラッフ大佐も同じくで、主人公の才能を見抜き、軍人としての育ての親となる一方で、後に人間のクズのような男であったことが判明するキャラクターであり、こちらも一筋縄ではいきません。この役に父性の塊のようなハリソン・フォードをキャスティングすることで、善悪という価値基準の脆さが実にうまく表現できている点には感心しました。。。 本作には含蓄あるセリフが多いのですが、中でも私が心を打たれたのは、イジメっこをボコボコに殴り、蹴り倒した理由を聞かれた主人公の回答で、「もし圧勝であれば程々のところで手を引いたが、あの場合はギリギリの勝利だったため、二度と攻撃する気を起こさせないよう、徹底的に相手を痛めつけた」と言うのです。これこそが多くの自衛戦争の真相だし、21世紀のアメリカが手を染め、泥沼に嵌った対テロ戦争のホンネです。1億ドルバジェットの娯楽作を装いながらも、こういう深いテーマをズバっと突いてくる本作の姿勢には感銘を受けました。。。 残念だったのは、主人公の背景の描写が不足していたこと。原作によると、舞台となる世界では人口抑制政策がとられており、3人以上の子供を持つことは禁止されているのですが、主人公の家庭については長男が天才児だったことから3人目までの出産が特別に許可されており、その結果生まれたのがエンダーだったとか。エンダーが周囲から厳しい視線を受けることや、彼が常に思い悩んだ顔をしているのはこの背景に起因するものなのですが、映画版ではその説明がないために、ドラマの通りがやや悪くなっています。[ブルーレイ(字幕)] 8点(2014-08-17 00:05:03)(良:1票) 《改行有》

230.  リディック:ギャラクシー・バトル 『ピッチブラック』がSFファンの間で話題になった後、ユニバーサルのお偉方は「これはいけるコンテンツだ」と判断し、なにをトチ狂ったかその年の最大予算を投じて『リディック』を製作。しかし、そもそも前作がマイナーだったために一般客からは相手にされず、それどころか、前作とはまったく別の映画になってしまったことから『ピッチブラック』のファンからもソッポを向かれ、興行成績は惨憺たるものでした。さらなる続編を匂わせるクライマックスも今となっては虚しいもので、『リディック』は、その製作に関わったすべての人々にとっての黒歴史となったのでした。。。 あれから10年、まさかの続編製作には驚かされました。ネクロモンガーとの一件については「気の迷いでした」という、リディックと監督双方からの言い訳が冒頭でなされた後は、『ピッチブラック』の路線に戻されます。宇宙的な犯罪者とバウンティハンターとの戦いがあって、そこに強力な土着生物が絡んでくるという物語なのですが、今回登場するバウンティハンターは2組であり、それぞれに異なった目的と特徴を持っていることが、一作目との差別化ポイントとなっています。リディック捕獲という共通の目的のために協力関係を結びつつも、実際には反目しあっているこの2組の微妙な関係であったり、意外な人物に悪の本性があったりするというサスペンスフルな要素が本作の特徴となっているのですが、残念ながら、これが本筋であるSFアクションの面白さには繋がっていません。こいつらが内輪揉めをすればするほど、これだけ結束の緩い隙だらけの連中を追い込みきれないリディックの弱さが目立ってしまうし、上映時間の多くをバウンティハンターの描写に充ててしまった結果、土着生物・マッドデーモン(ジェイソン・ボーンじゃないよ)の出番が少なくなってしまい、辺境の惑星でのサバイバルという作品の核心部分がアッサリ流されてしまうという、本末転倒な構成となってしまっています。。。 このシリーズのそもそもの欠点として、リディックが悪人に見えないという点が挙げられます。決して善人ではないが、倫理的に許されないことには手を出さず、観客の側は好感を持ってリディックを見れてしまう。これでは、「毒をもって毒を制す」というシリーズの基本コンセプトが死んでいるのではと感じます。[ブルーレイ(字幕)] 5点(2014-08-14 23:52:18)《改行有》

231.  エージェント:ライアン 《ネタバレ》 パラマウントはジャック・ライアンシリーズを最重要コンテンツのひとつとして位置づけているようですが、その映画化にはこの20年間、苦戦し続けています。面白かったのは『レッドオクトーバーを追え!』のみであり、その他はすべて駄作。複雑な諜報戦をアクション映画として撮ることは非常に困難なようで、ジョン・ミリアスやスティーブン・ザイリアンといったハリウッドトップの脚本家を雇ってきても、思うような結果を残せていません。。。 そんな中、二度目のリブートである本作でパラマウントがとった作戦は、原作に頼らず完全オリジナルの物語で勝負するというもの。これなら、長大な原作を圧縮するという作業をせず、最初から2時間の映画サイズで話を作ることができるというわけです。新人脚本家によるシナリオを『ミッション:インポッシブル』のデビッド・コープに手直しさせ、それを文芸作品も娯楽作も撮れるケネス・ブラナーに監督させるという鉄壁の布陣で挑んでいます。果たしてその結果はというと、これが見事な失敗でした。トム・クランシーによる原作を採用しなかったために、肝心の諜報戦にまったく面白みがありません。ジャック・ライアンシリーズの醍醐味は最新テクノロジーを駆使した遠隔操作の諜報戦だったわけですが、本作では顔を突き合わせての騙し騙されが中心となっているので、主人公がジャック・ライアンである必然性が極めて薄くなっています。こんな仕事はイーサン・ハントにでもやらせとけばいいのです。後半部分は諜報戦ですらなく、新人であるジャックの勘を頼りにして事態を収集していくという、何ともつまらない話になってしまいます。ジャックの勘に頼りっきりのケビン・コスナーが間抜けに、ジャックにしてやられるケネス・ブラナーがバカにしか見えなくなる始末で、この方向性は完全に失敗でした。。。 また、キーラ・ナイトレイをウザいだけの女にしてしまった罪も重いです。諜報員とテロリストが多くを占める中で、唯一とも言える民間人キャラが彼女であり、彼女こそが物語と観客とをつなぐ架橋となるはずだったのですが、そんな彼女にまったく感情移入できないのでは問題外です。ジャックがCIAであると聞かされた時に驚きもしないなど、そのリアクションにリアリティがないために観客の視点の役割を果たせていません。[ブルーレイ(字幕)] 4点(2014-08-11 00:52:43)《改行有》

232.  トランスフォーマー/ロストエイジ 《ネタバレ》 IMAX-3Dにて鑑賞。『4』製作開始のアナウンスがあった時には、「『3』で締まった話の続きをどうやって作るんだ」と心配したのですが、考えてみればこのシリーズには話も設定もあってないようなものなので、本編には何の問題もありませんでしたね。心配した私が愚かでした。。。 そもそも適当なこのシリーズですが、本作の適当ぶりは映画史上屈指のレベルに達しています。オートボッツが何のために戦っているのかわからない、そもそも誰と戦っているのかわからない、ロックダウンが地球で何をしているのかわからない、冒頭の恐竜絶滅に何の意味があったのかわからない、ラストで突然オプティマスが空を飛んでビックリetc…基本的な話がまったく理解できません。また、人間パートも同様の手抜きぶり。『アルマゲドン』でやったことを繰り返してるだけですから。主人公は貧乏発明家。SF映画における発明家といえば『ゴーストバスターズ』のようなオタク臭い面々を連想しますが、本作でこれを演じるのはマーク・ウォルバーグなので、出来ちゃった婚で高校を中退した元アメフト選手のムキムキ男という設定が加えられており、どうやっても発明家には見えません。実戦においても専ら使うのは頭脳ではなく肉体であり、素人とは思えない素晴らしい戦闘スキルでオプティマスの援護をします。その娘は、テキサスのド田舎の女子高生にはどうやっても見えない超ゴージャスなルックス。どんなに激しい戦闘の中でも、決して顔は汚れません。。。 以上、映画としてはガタガタなのですが、これが欠点となっていないのが本作のすごいところ。カーチェイスとロボットバトルをゲップが出るほど見せられる中では、ドラマとか設定とかはどうでもよくなってしまうのです。さらには、見せ場は多いもののきちんとバリエーションがあるので、同じようなアクションを何度も見せられるようなことはありません。また、「ロボットの区別がつかない」という前作までの欠点がきちんと修正されている点にも感心しました。3Dの使い方も素晴らしく、3D効果を実感しやすいショットが意図的に入れられているのでアトラクション映画として上々の仕上がりです。本作の上映時間は『ウォッチメン』や『ダークナイト』をも超えているのですが、それだけの長丁場を見せ場のコラージュだけで見せきったベイの絶倫ぶりには心底驚かされます。バカをやりきって偉業の域に達したような映画でした。[映画館(字幕)] 8点(2014-08-10 23:58:38)(良:1票) 《改行有》

233.  MUD -マッド- 《ネタバレ》 本作の紹介にあたっては『スタンド・バイ・ミー』がしばしば引き合いに出されますが、その含蓄の深さは名作『スタンド~』をも凌駕しています。まず、少年のひと夏の冒険物語があって、その周りに男女関係の難しさへの考察があって、さらにその外側には普遍的な人生哲学がある。噛めば噛むほど味の出る、多層構造の素晴らしいドラマです。。。 主人公・エリスの両親は離婚寸前の状態にあり、もし離婚すれば、住み慣れた家は取り壊されてしまう。傍から見ればボロ家であっても、エリスにとっては思い出の詰まった大事な我が家です。また、マッドの求めに応じてエリスは他人の敷地に放置されていたボートのエンジンを盗み出します。エリスにとっては盗んでも問題のないガラクタにしか見えなかったそのエンジンも、所有者にとっては大切な生活の糧であったことが後に判明します。人は、それぞれ大事なものを抱えて生きており、それは他人の価値観では測りきれない場合もあるのです。。。 しかし、大事なものに執着し続けると、その人は壊れてしまう。過去を捨てられなかったトムおじさんは変人となり、マッドは人殺しになりました。また、マッドへの復讐に固執しすぎた被害者の父親は、もう一人の息子までを失ってしまいました。人生を進めるためには、何かを捨てねばならないのです。ラスト、エリスは住み慣れた家の取り壊しを見届け、親友と父に別れを告げて、母の待つ知らない土地へと旅立ちます。エリスにとってはまったく不本意な展開ですが、到着した新居では近所の美少女に挨拶されて、ちょいとテンションが上がります。愛着ある古いものを捨てることは辛くて苦しいが、その先に待つ変化には良いことだって含まれているのです。。。 以上の趣旨は素晴らしいのですが、前作『テイク・シェルター』と同じく、この監督さんの演出はひとつひとつのシーンが微妙に長いため、全体としては間延びして感じられるのが難点でした。あと、絶対何かやらかすだろうと思ってた悪人顔のマイケル・シャノンが、最後まで何もしなかったという点にも、妙にガッカリさせられました笑。「人生とは何かを捨てることだ」というテーマの本作において、川底のゴミを拾うことで生計を立てる彼の役どころには何らかの意味があると思ったんですけどね。そして最後に、TSUTAYA傘下のアーススターエンターテイメントによるDVDの画質・音質は何とかならんもんですかね。 [DVD(吹替)] 7点(2014-08-06 19:58:06)(良:1票) 《改行有》

234.  アメリカン・ハッスル 《ネタバレ》 俳優達にオスカーを獲らせまくってるデヴィッド・O・ラッセル、本作でも俳優をうまく使いこなしています。精悍なイメージの強いクリスチャン・ベールをぶくぶくに太らせ、おまけにハゲ頭全開という衝撃的な冒頭で一気に観客の心を掴み、その後は華も実力もある俳優達を続々と登場させて、まったく目を飽きさせません。普通に考えれば、市長役はクリスチャン・ベール、詐欺師役はブラッドリー・クーパー、FBI捜査官はジェレミー・レナーだろと思うところですが、各俳優の得意とする役どころを微妙に外してきているのが本作のミソ。汚職政治家が人間的には物凄く良い奴だったり、詐欺師が良心の呵責に苦しんだり、ハミだし刑事を気取るFBI捜査官がお母さんと同居中だったりと、単純な善悪に縛られない人間の二面性が本作の大きな構成要素となっているため、各俳優のパブリックイメージを裏切ったキャスティングが見事に功を奏しているのです。この辺りのレイアウトのうまさには驚かされました。特にクリスチャン・ベールはハマり役。登場時には「なんだ、この汚いオヤジは」と思ったものの、2時間眺めているうちに、女性にモテて当然の良い男に見えてきてしまうのです。本来は二枚目というベールの個性が、抜群のサジ加減でキャラクターに反映されています。。。 また、突然のデ・ニーロ投入によって映画の空気をガラっと変えるという演出も素晴らしいと感じました。前半部分はややコミカルだったものの、デ・ニーロ演じるマフィアのボスの登場により、少しでも判断を誤れば殺されるという緊迫感あるサスペンスへと豹変するのです。ここ10年ほどは仕事を選ばなくなり、その存在にもはや何の有り難みも感じなくなっていた御大ですが、本作のように効果的な使い方をすれば、まだまだ光るものはあるようです。[ブルーレイ(吹替)] 7点(2014-08-06 19:56:53)(良:2票) 《改行有》

235.  キック・アス ジャスティス・フォーエバー 《ネタバレ》 前作はジャンル映画の傑作でした。子供が悪党を殺して回るというアメコミものの異常性を炙り出してジャンルの破壊活動を行いつつも、クライマックスでは空前のカタルシスを生み出してヒーローものとして王道の着地点に降り立つという離れ業をやってのけたのですから。第一作で完璧にまとまっていた話の続きを作るという点については期待よりも不安が大きかったのですが、案の定、本作の前半部分はグダグダでした。。。 前作において登場人物達の年齢ははっきりと言及されていませんでしたが、キックアスとレッドミスト(続編ではマザー・ファッカーと改名)は高校生、ヒットガールは小学生という設定だったように見受けました。一方、続編ではキックアスとヒットガールが同じ高校で勉強しており、成長したクロエ・グレース・モレッツに合わせてキャラクターの設定が操作されたらしい点にまず萎えました。前作でマフィアを壊滅させ、ヒーローとして覚醒したはずのキックアスが再び弱々しい存在に戻っていたり、前作のラストでキックアスへの復讐を誓ったはずのマザー・ファッカーが、本作でもキックアスへの復讐心を抱くに至る描写を加えられたりと、前作との重複が目立つ点もマイナスです。ストライプス大佐をはじめとした新キャラ達の印象も薄く、前半は二番煎じ以下の酷い出来でした。。。 しかし、マザー・ファッカーによるキックアスへの復讐が本格化する後半部分になると、映画は突如として息を吹き返します。ナイト・ビッチがレイプされたり、キックアスの父親が惨い殺され方をしたりと、物語は凄惨を極めます。ここに来て映画はアメコミものという領域を離れ、コテコテのバイオレンス映画と化すのです。マザーロシアが警官隊を返り討ちに遭わせる場面や、ヒットガールが囚われた主人公を救出するカーアクションなど、見せ場の出来も絶好調。前作と比較すると落ちる出来ではあるものの、アクション映画としては水準以上の作品だと感じました。[ブルーレイ(吹替)] 7点(2014-08-04 01:22:13)《改行有》

236.  ウルフ・オブ・ウォールストリート いかにもオリバー・ストーンが扱いそうな題材から経済ネタをスッパリと削ぎ落し、下品な男が成り上がり、そして破滅するまでを描く簡単な物語とした脚色が絶品でした。舞台は変わるものの、やってることは『グッドフェローズ』や『カジノ』とまったく同様であり、スコセッシは自分の得意とするフィールドに題材を寄せて来ているのです。『ソーシャル・ネットワーク』や『マージン・コール』等、出来の良い経済映画というものは経済そのものを扱わず、これを観客にとっても馴染みのある別の物語に置き換えます。本作もその点で成功を収めています。。。 本編で起こることは予告編で描かれた通りのことであり、あっと驚くサプライズや、後半での方向転換等は一切ありません。これほどシンプルな話でありながら、179分という大変な長尺を一瞬の緩みもなく見せ切ったスコセッシの絶倫ぶりには恐れ入りました。上映時間の8割を占めるのは成金による下品なドンチャン騒ぎであり、そこにはアクション映画のような視覚的興奮も、ドラマ映画のような深い含蓄もないのに、それでも観客の目を画面に釘付けにしてしまうのです。この演出のパワーは本当にトンデモないものだと思いました。。。 もちろん、締めるべきところは締めてきます。普段は愚かであっても、社員の前で演説をぶつ時の主人公の表情や言葉には大変な魅力と牽引力があって、「確かにこの人は成功するだろう」という説得力を持たせているし、その主人公が破滅に至った道についても、「ここで引いていれば助かっていたのに」という運命を分けたラインを観客にもはっきりとわかる形で提示したことで、諸行無常の世界を描き出すことに成功しています。。。 以上、本編は文句なしでしたが、ボカシ入りまくりの日本公開版の無惨な有様は何とかならなかったのでしょうか。本来、スコセッシは映画におけるヌードを嫌う監督です。「裸が映った途端に物語がピタっと止まってしまう」との理由から、『タクシードライバー』や『エイジ・オブ・イノセンス』のようなセクシャルな題材にすらヌードを登場させてこなかったのですが、本作ではその主義を曲げており、ここで登場する裸には明らかな演出意図があるのです。にも関わらず、これをボカシで勝手に隠してしまった日本の配給会社の判断には納得がいきません。18禁という厳しい年齢制限を設けているのだから、その規制で十分ではありませんか。[ブルーレイ(吹替)] 8点(2014-08-04 01:21:14)(良:2票) 《改行有》

237.  GODZILLA ゴジラ(2014) 《ネタバレ》 IMAX-3Dにて鑑賞。全世界ほぼ同時上映から日本公開まで2ヶ月もお預けを喰らわされ、期待をパンパンに膨らませて映画館に駆け込みましたが、そんな上がりまくったハードルを楽々越えてきた本作の完成度には感動しました。子供の頃にゴジラにハマった私としては、これこそが夢にまで見たハリウッド版ゴジラです。。。 怪獣映画は、怪獣を出しすぎるとただの怪獣プロレスになってしまう。怪獣そのものよりも、怪獣が出現したことで混乱に陥る文明社会をどこまで克明に描けるかという点にこそ成功の鍵があるのですが、この点、ギャレス・エドワーズは前作『モンスターズ』でも怪獣が存在する世界をほぼ完璧に創造しており、本企画の監督には最適任者であったと言えます。シナリオは理詰めで考えられているし、歯が立たない相手を目の前にした人類の絶望感の演出も見事なものであり、怪獣映画に必要な空気感を作り上げています。また、この監督は怪獣を出しすぎてはいけないという点も熟知しており、溜めて溜めてテンションが最高潮に高まったところで怪獣をドーンと出すという演出も決まっています。。。 東宝ゴジラは破壊者とヒーローという二つの性格の間で耐えず彷徨っていましたが、本作では、その相矛盾する性格を破綻なく折衷することに成功しています。第1作だけに仁義を切るのではなく、駄作も含めたすべてのゴジラ映画を総括するキャラ造形としており、この点に、東宝ゴジラに対する最大のリスペクトを感じました。一方で、その設定には大胆な変更が加えられています。放射能怪獣という最大のアイデンティティを奪ったことをはじめとして、オリジナルではゴジラ自身が担っていた役回りの大半をムートーに譲っているのです。人類との接点は専らムートーに任せることで、ゴジラは人類程度には及びもつかない超越的な存在として描かれているわけですが、このアプローチによって、かえってゴジラはオリジナルに近い存在感を獲得するに至っています。この判断は見事でした。。。 本作の欠点としては、ムートーのデザインは線が細く、どう見てもゴジラには勝てそうにないという点がまず挙げられます。もっと強そうなデザインにするか、ゴジラを追い込むような特殊な必殺技を持たせるべきだったと思います。あとは、核兵器の扱いが相変わらず雑。覆いもかけず剥き出し状態の核弾頭を列車で輸送する場面には失笑するしかありませんでした。[映画館(字幕)] 9点(2014-07-29 00:48:43)(良:1票) 《改行有》

238.  ムカデ人間2 『1』のレビューでは、映画としての完成度の高さは評価するが、エログロへのこだわりが足りないと書きましたが、『2』は一転して容赦のないエログロ祭りとなっております。これはもはや、ホラー映画界の『エイリアン2』。文字通り出血大サービス状態であり、「いくらホラー映画でも、これ以上やってはいかんだろ」という壁を平気で越えてきます。当方、ホラー映画への免疫を持っているつもりですが、それでも本作は見てられませんでした。。。 『1』と『2』を両方見れば、『1』製作時点ですでに『2』の構想があったことは明らか。描写を控え目にした『1』で幅広い客層に本シリーズを周知させ、そして『2』でネジの飛びまくったスプラッターを見せる。この豹変ぶりには度肝を抜かれたし、トム・シックスなる監督の周到さにも感心させられました。イベントの仕掛け人としてはピカ一ではないでしょうか。また、『1』とはまったく違う作風ながら相変わらず映画のクォリティは高く、この監督の引き出しの多さにも驚かされました。モノクロ映像には『イレイザーヘッド』を思わせる何とも言えない薄気味の悪さがあって、そこにあるのは、ただスプラッターを見せるだけの単純な芸当ではありません。。。 作風の転換の一方で、無名俳優でキャストを固めることで不気味さを高めるという『1』のポリシーは本作にも引き継がれています。誰がどんな目に遭わされるのかわからないというサスペンスは健在だし、無名俳優から渾身の演技を引き出すという点では、本作は引き続き成功を収めています。そして本作最大の功績は、ハゲ・チビ・デブの三拍子揃った怪人マーティンを生み出したこと。「この俳優は、今までどこで何をしていたんだ」と思わず気になってしまうほどのアクの強さですが、『1』のハイター博士とはまた違ったベクトルで強力な悪役を生み出し、映画への出演経験のない無名俳優にここまでのインパクトを与えられる監督はそうそういません。現在製作中の『3』はホラーを離れ、政治的性質を帯びるとのことですが、もし『3』が監督の意図する方向性で成功を収めることができれば、本シリーズはカルト映画史上に残るだろうと思います。。。 絶賛の嵐となってしまいましたが、10年後には、トム・シックスは誰もが知る有名監督になっているのではないかと、私は結構本気で思っています。第2のサム・ライミはこいつで決まりです。[DVD(吹替)] 7点(2014-07-22 22:36:40)(良:1票) 《改行有》

239.  エージェント・マロリー インテリぶったソダーバーグがコテコテのB級アクションを撮るということで、本作についてはもしかしたら意外な化学反応が起こっているのではないかとの期待がありました(文芸映画の専門家・ケネス・ブラナーが『マイティ・ソー』をとっても楽しい娯楽作に仕上げたという前例もあるし)。しかしフタを開ければ、純粋娯楽に対してソダーバーグが抱く照れが如実に表れた、何とも中途半端な映画に仕上がっていてガッカリでした。10年前に『オーシャンズ11』でやった失敗を繰り返してどうすんの。。。 美しすぎて、しかも実力もある格闘家ジーナ・カラーノが、ソダーバーグの顔で集められた一流俳優達をボコボコに殴るということが本企画のコンセプトだったと思うのですが、実際にカラーノと対戦するのは若い俳優ばかりで、大物は参戦しません。まず、これがマズかった。観客が期待するのは、ダグラスやバンデラスが完膚なきまでにぶちのめされる姿でしょ。おまけに格闘シーンは意外と少なく、さらにはカラーノの身体能力の高さを誇示できるような見せ方にもなっていません。監督も脚本家も、要らん手を加えすぎてせっかくの素材を台無しにしているのです。この手の映画の語り口はシンプルでいいのに、結果をみせた後で過去の経緯を振り替えるという回りくどい説明が2度もあってうんざりさせられるし、黒幕は一人いれば充分なのに、二人も置いたことで話の勢いが失われています。観客は謎解きをしたいわけではありません。序盤のバルセロナ作戦は効果音を排し、音楽と編集により美意識を強調した見せ方となっていましたが、これは完全にソダーバーグの自己満足。アクション映画を見に来る人間は、四方八方で鳴りまくる銃声や、腹に響く爆発音が三度の飯より好きなんだよ。見せ場のクォリティはクライマックスに向けて尻すぼみに落ちていき、ラスボス戦を迎える頃には映画のテンションは海の底。ソダーバーグには二度と娯楽作を撮らないことをオススメしたくなるような仕上がりでした。[ブルーレイ(字幕)] 3点(2014-07-22 22:30:36)(良:1票) 《改行有》

240.  300 <スリーハンドレッド> ~帝国の進撃~ IMAX-3Dにて鑑賞。 「もはや300って数字は関係ないじゃん」というツッコミはさておき、ザック・スナイダーのビジュアルを完全移植した見せ場の出来は素晴らしく、特に、冒頭とクライマックスにおいて主人公・テミストクレスが披露する、雑魚を斬りながらラスボスへ近づいていくという流れるような殺陣の迫力と美しさは、前作をも上回っていたと思います。ただし、やたらと畸形を登場させたり、忍者軍団や妖術軍団といった訳の分からん敵が続々現れたりした前作と比較すると、本作にはマンガ映画ならではの遊びが少なかったように思います。多少ビジュアルに凝った史劇という印象であり、この生真面目さは『300』の続編にはそぐわないと感じました。。。 生真面目と言えば、本作の主人公・テミストクレスも同様です。前作において、精神論を大声で叫ぶだけのレオニダス王の脳筋ぶりは見ていて実に楽しめたのですが、他方、テミストクレスは現実的な解決策を模索する良心的な指導者であり、破天荒さに欠けていました。交渉のためにスパルタを訪れたテミストクレスがスパルタ式の過激な新兵教育を見てドン引きしたり、兵士たちに「死ぬな」と言って聞かせたり(レオニダスは「戦死こそ名誉」と部下に説いていた)、彼が率いる軍隊は、前作でレオニダスが鼻で笑っていた素人の寄せ集めだったりと、あらゆる点でレオニダスとの差別化が図られているわけですが、そんなテミストクレスならではの強みが分かりやすい形で打ち出せなかったために、主人公ながら影が薄く感じられるのです。。。 そんな主人公の弱さを補ったのが、敵のボスであるアルテミシア。悲惨な生い立ちゆえに人間性が失われ、ギリシアへの復讐のためなら手段を選ばぬ鬼と化した女戦士ですが、悪人顔のエヴァ・グリーンが、脱ぐわ、暴れるわの大怪演でこれになりきっています。小粒のテミストクレスではなくレオニダスと対決させたいと心から思う逸材であり、彼女の存在により、映画はかなり救われていました。。。 3D効果については、血飛沫や槍の切っ先といった定番の飛び出し効果や、見下ろしたり、飛び降りたりする場面での高さの表現などにおいて素晴らしい3D効果を体感できる反面、クライマックスの戦闘場面では3D効果がほとんど追求されておらず、その謎のペース配分には驚かされました。3Dで見て損はありませんが、2Dで見ても情報量はそれほど変わらないと思います。 [映画館(字幕)] 6点(2014-06-22 02:18:25)《改行有》

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