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221.  配達されない三通の手紙 《ネタバレ》 【人間を描く】特殊な事情の下での復讐的犯行であり、もっと犯人に同情できるように描かれていれば余韻が残ったろう。犯人が結婚直前に婚約者の男性に捨てられた失意の様子、その後の3年間の喪失の日々、婚約者が戻ってきてからの和解の過程、楽しいヨーロッパでの新婚旅行、満ち足りた結婚生活、これらの動機に関する重要なことが簡略にしか描かれていないのが不満だ。犯人の内面に踏み込んでおらず、女の情念や嫉妬といった感情は記号的にしか伝わらず、感情移入ができない。また夫は二人の美女から死ぬほど愛される役柄である。それなのに男性的・人間的魅力に乏しい。神経質な顔に軟弱そうな体、言われるまま義父の会社に勤務するが勤務評価は低い、感情的に女に手をあげる、酔いつぶれて「あの女を殺す」と叫ぶ、別れてくれない女を毒殺しようとする、妻や妻の姉に金を無心する…、ダメ人間である。いったいどこに魅かれるのか。彼がどうして結婚破棄をして逃亡したのかも説明されない。過去の苦悩や苦悩が描かれなにので、この男が自殺しても観客の心は動かない。脚本は米国青年が日本にやってきてからの出来事を律儀に時系列で進め、ジョギングや陶芸やフルートなど不要なものばかり描いている。加害者の不幸な人生を描くことに成功して名作となった「砂の器」と好対照をなす。ただ被害者である元恋人の不幸な人生は描けている。 【サスペンス】登場人物の少ない家庭内殺人事件である。夫が犯人であるかのようにミスリードしているのは見え見えで、苦笑を禁じえない。三女と居候の青年は探偵役、長女は本筋に絡まない、父親も母親も影が薄い。となると残るは妻と夫の妹だけで、意外性がないのだ。三女の婚約者や長女、父親などを容疑者候補にするくらい練らないと良質のサスペンスをはいえないだろう。警察の捜査も不信で、どうして被害者の身元を真っ先に確認しないのか。素人探偵に先を越されている。警察の不注意で無実の容疑者人が逃亡、自殺させてしまった責任は重い。逃亡を幇助した容疑者の妹も見逃している。事件の真相を明らかにせず、闇に葬るのは検事としてあるまじき行為である。証拠がないというが、ヒ素の入手経路を調べれば真相が明らかになるはずである。[DVD(字幕)] 5点(2012-11-21 22:44:41)《改行有》

222.  タイム・アフター・タイム 《ネタバレ》 低調な映画。凡作といわれても仕方がない出来。つじつまが合わないことが多い。歴史上の切り裂きジャックは1888年に犯行を行ったが、本作のスティーブンソンは1893年に娼婦殺しをする。彼が犯人と判明する経緯が何ともあっけない。警察が偶然彼の荷物を調べて、証拠品を発見するだけである。何の推理やサスペンスもない。探偵役のウェルズは相当なおバカである。タイム・マシンに同時気化装置なるものをとりつけているのだが、それをつけた意図が不明である。鍵をはずすと中にいる人間が永遠の彼方へ飛んでいってしまうという物騒な機能は必要だろうか?自分が乗っている間に、誰かがいたずらするという可能性を考えないのか。あるいは運転中に衝撃ではずれるとか。鍵を車外に付けていれば、当然その可能性はあるだろうに。また逆転ロックをかけておけば、マシンは常に元にいた場所に戻るという。だがそれはトラベラーが外にいた場合、永遠に戻れなくなることを意味している。うっかりミスを想定しないのか。極めつけは、犯人を追って1979年に飛んだことである。犯人を捕まえたいのなら、マシンで数時間前に戻ればよいだけじゃないか。それから博物館のタイム・マシンだが、鍵がなくても動くはずだ。「連続して旅行をを続けたい場合は鍵を使う」とウェルスも説明している。事実犯人は鍵なしでタイム・トラベルしている。犯人も犯人で、ウェルズを殺すとか、他の都市にさっさと移ればよいものを。ウェルズの恋人が殺されたと観客に思わせるトリックがあったが、あれは反則だ。どう見ても実際に死んだ恋人の友人は部屋にはいなかった。犯人は、「鍵を渡さなければ恋人を殺す」と手紙で脅すが、そんなことをすれば避難・潜伏されてしまうのはわかりきったことである。誘拐して脅かさなければ意味がない。恋人を避難・潜伏をさせられないウェルズは犯人より低能である。そもそも犯人は何をしたいのか、そこが見えてこない。人間が描けていない。タイム・トラベルや切り裂きジャック事件に対する情熱も、H・G・ウェルズに対するリスペクトも見られない。[DVD(字幕)] 5点(2012-11-21 08:12:17)

223.  バック・トゥ・ザ・フューチャーPART3 《ネタバレ》 パート1では、高校生マーティが悪者に襲われ、緊急避難的に1985年から1955年へタイム・トラベルする。そこで偶然出会った父親(将来の)に意図せず干渉してしまい、父と母がつきあう機会が失われ、自分が生まれない未来に改変されてしまう。それを何とか元に戻そうとする話で、マーティと発明家ドクとの友情、エイリアンのネタ、チャックベリー小ネタ、落雷を利用して未来に戻る方法等、アイデアが洗練されていて夢がある。爽快感があるのだ。残念なのは「歴史に干渉してはいけない」といいながら、改変してしまっているところ。マーティの父親は成功者になったし、発明家ドクは射殺を免れる。願わくば歴史改変はドクが死を逃れるだけにしてほしい。そしてマーティは今回の経験から自信をつけ、音楽の才能を開花させるという方向にすれば座りがよくなったと思う。パート2は退屈だ。未来のスポーツ年鑑を持ち帰って、ギャンブルで金儲けをする話で、俗っぽく、夢がない。ほとんどがマーティと不良のビフとの喧嘩場面といってよく、飽きてしまう。腕力のビフに対して、頭脳で対抗するのが本来の姿であるはず。老人のビフが初めてみたタイムマシンの操作ができるなど無理があるし、マーティの恋人はただ寝ているだけの存在だ。パート3は、ドクの恋という意外性のある話で、脚本に破綻はない。タイムマシンが壊れて途方にくれたとき、70年間郵便局に留置の手紙が届くなど出色のアイデアだ。最後の未来へ脱出する疾走機関車の場面での怒涛の盛り上がりも見事だ。マーティは「腰抜け」と呼ばれると、熱くなって、自分を失ってしまう短気な性格だったが、その欠点を克服して、大人に成長する。ドクは科学一辺倒の変人で、恋とは無縁だったが、意中の相手に出会うと、てもなく「恋する男」に変身してしまう。とても人間味にあふれ、愛すべき人物だ。こういった軽いノリと、コミカルな雰囲気が本シリーズを「愛と夢にあふれるファンタジー」にする下地となっている。パート2の失速が重ね重ね残念だ。[DVD(字幕)] 8点(2012-11-21 03:32:55)

224.  ハリー・ポッターとアズカバンの囚人 《ネタバレ》 美術的なセンスは優れているのだが、演出に問題があるのでのめりこめない。例えば幽霊が何度も出現するが、ストーリーとは無関係で、集中力を削ぐ結果となっている。二つの出来事のつなぎや感情のながれもうまく処理できていない。鳥獣バックビークは処刑されるところをハリーとハーマイオニーに助けてもらい、その後二人を人狼から救うのだが、バックビークには何の感情も表われない。両者に友情が生まれないのだ。もっと感動的に演出できるはずだ。代わりにハリーがバックビークに乗って飛翔する場面が感動的な演出で表現されているが、ハリーは日常的に杖で空を飛んでいるので観る側にさほどの感興は湧かない。ハリーの味方であったはず先生の正体が人狼で、月を見て変身しハリーを襲うのだが、翌日はもとの先生の姿に戻って通常通り親しく会話をしている。この不自然さはいかんともしがたい。ハーマイオニーが突然悪童ドラコを殴る場面があるが、殴る理由はあとにならないと分からない。わかりやすく伝える努力をしてほしい。題名が「アズガバンの囚人」なのに、アズガバンの牢獄の描写が一切ないのも不満だ。恐怖の番人「吸魂鬼」の目をかいくぐって、どうやって脱獄したのかミステリーで、それを知りたいのに、完全にスルーされてしまっている。冒頭、ハリーが人間界で使ってはいけない魔法を使っても処罰されず、その理由も明確に提示されない。メインの主題は冤罪で幽閉されていたシリウスの無実が判明するということなのに、その大団円の場面がない。ネズミ男の正体もはっきしないまま、行方不明で終わる中途半端さ。このように演出が拙劣で、この監督は「魅せる」才能に恵まれていない。◆ハーマイオニーが持つタイムトラベル時計で事件が解決されるが、これが最大の問題点だ。まず彼女がどういう経緯で入手したのかが描かれていない。何度も過去に戻って、やり直しが効くというのであれば、どんな問題でも解決できてしまう。死人だって生き返らすことができるだろう。間違いないなく、賢者の石に匹敵する重要アイテムだ。大変危険でもあり、魔法学校の生徒が持っているのがおかしい。ファンタジーであっても軽々しく登場させてはいけない類のもので、これを登場させたせいで底の浅い世界観にしか見えなくなってしまっった。[DVD(字幕)] 5点(2012-11-19 17:05:23)(良:1票)

225.  ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還 - スペシャル・エクステンデッド・エディション - 《ネタバレ》 CGによる特撮効果の長所・美点が遺憾なく発揮されたファンタジーの最高峰。 単純な戦記ものに留まらず、独自の世界観が具現され、複雑な人間ドラマ・心理ドラマを基底に展開し、人間の本質に迫る重厚で深みのある作品となっている。これを越える作品は当分現れないだろう。あえて穿った見方をしてみる。 ◆最大の疑問は、闇の冥王サウロンと指輪の関係。「指輪が破壊されるとサウロンも滅びる」のはどうしてか?あっけなさすぎるではないか。且つ、王国の城と土地まで崩壊、地下に埋没してしまうという理由が説明されていない。指輪にはサウロンの魂(生命力)が宿っているが、サウロンの魂は指輪なしでも復活したはず。両者が同時に滅びるほどの強い絆を持つ運命共同体であるならば、サウロンは指輪のありかを常に知り得るはずだ。誰かが指輪をしたときだけ知り得るとしても、ゴラムもバギンズも何度か指輪をはめたはずである。どうして存在と場所を知られずにすんだのか。指輪の方ではサウロンに近づくと重くなることから、確実にサウロンの居場所を把握しているのに。また指輪が滅びの火口に近づいているのを知りながら、どうして防御を固めないのか。危機管理がなっていない。 ◆ゴラムは、指輪をホビットのバギンズに盗まれたとどうして知ったのか?知りながら、どうして60年間もほうっておいたのか。 ◆魔法使いガンドルフが大鷲(鷲の王)を使えるのならば、最初から指輪運びに利用すればよいものを。運び人は欲望の少ないホビットでないと務まらないので、彼を大鷲に乗せて火口近くまで運べば、ことは速やかに進んだと思われる。もし発見されたとしても戦闘能力は龍よりも上なので、安心はできる。少なくとも道に不案内なホビットが徒歩でいくより確実な方法だろう。 ◆悪の賢者サルマンは、戦闘要員として、何万ものウルク=ハイ(新種のオーク)を土中から製造する。進退極まったアラゴルンが援助を求めたのが「死者の軍団」。これらは「限りある生命」を超越した存在なので、彼らが活躍しようが、戦死しようが感情移入しにくい。「限りある生命」の大切さを教える物語であってほしい。 ◆サルマンは、手下に塔から突き落とされて串刺し死するが、あっけなさすぎである。 ◆樹木の精「エント」の造形がかっこよくない。ここだけ、まるで安っぽい漫画だ。[DVD(字幕)] 10点(2012-11-11 15:39:27)《改行有》

226.  ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2 《ネタバレ》 1、2、3、と観て、一作毎に完結しており、連続した物語の面白さは感じられなかった。それが4作目あたりからシリーズものの”つながり”が表れ、最終章で、謎の解明と、張り巡らせた多くの伏線が回収される快感を味わった。予想外の出来の良さだ。謎と伏線のほとんどは、魂を分けて保存する「分霊箱」と「三兄弟と死者の秘宝の物語」と「ダンブルドア校長の遺言書」に集約される。一度限りの登場としか思っていなかったり、大した意味もないと思っていた人物やものが、再登場したり、真の意味が明らかになるなど、奥深い一面を見せる。ハリーの額の傷の秘密とヴォルデモート卿との関係。ヴォルデモートの不死身の秘密と分霊箱の謎。伝説のグリフィンドールの剣と大蛇バジリスクの毒の合体の意味。ハリーがダンブルドアからもらった「透明マント」の由来。トム・リドルの日記の正体。世界最強の「ニワトコの杖」の真の主が、前所有者スネイプを殺害したヴォルデモート卿ではなく、ハリー・ポッターに移った理由。スネイプがダンブルドアを殺した理由。スネイプとハリーの母リリーの関係。細部までよく考えられている。屋敷しもべ妖精ドビーの思わぬ活躍と死など、意表をつく展開もあった。特筆すべきはCGの出来で、繰り返されるハリーとロンの仲違いと仲直り、生ぬるい恋愛、敵の弱すぎる手下など、”ゆるい”部分には目をつぶるしかない。描写希薄なヴォルデモートのまとめ。孤児院で生まれ、母親(魔法使い)はすぐに死亡。父はマグル(人間)。魔法学校で能力を発揮し、分霊箱の術で不死の力を得ると、ダークサイドに落ちる。純血主義を唱え、忠誠を誓う手下「死喰い人」を率いて、「マグル」や「半純血」を粛清。父親とその親族も抹殺。魔法界の大半を支配下に置く。ある日彼を滅ぼす可能性を持つ者の出現が予言される。それがハリー。赤ん坊だったハリーに放った「死の呪い」がハリーの母親の「守りの魔法」で撥ね返り、肉体を失ってしまう。この時ハリーの額の傷にヴォルデモートの魂の欠片が引っかかり、意図せぬ分霊箱となる。ハリーの血によって復活するが、ハリー母の「ハリーを守る呪文」も取り込んだため、彼が死なない限り、ハリーもまた死ぬことはなくなる。最後「ニワトコの杖」で、ハリーに「死の呪い」を用いたが、杖の真の所有者ハリーに対する忠誠心により、呪いは無力化され、結果的にハリーの体内の彼の魂だけが破壊された。[DVD(字幕)] 8点(2012-11-10 06:34:17)(良:2票)

227.  TSUNAMI-ツナミ- 《ネタバレ》 惜しい映画だ。ディザスター映画の肝心要は何といってもパニック場面。「デイ・アフター・トゥモロー」のスタッフを招聘してCGパートを作成したと聞く。これは成功している。津波が押し寄せからの場面だけでも見る価値はある。だがそれに至るまで群像劇の描き方に物足りない部分がある。主人公の男は、数年前のスマトラ地震のときに出漁中で、自らの判断ミスで叔父を死に至らしめるというトラウマを抱えている。男は妻と別れ、一人で幼子を育てている。孤児となった叔父の美しい娘とは相思相愛だが、叔父への自責の念のため、思いを伝えられないでいる。この娘へのプロポーズのときに大地震、大津波が発生する。この人間ドラマ部は悪くない。トラウマや障害を乗り越え、さらに大津波に呑まれながらも愛を貫く姿は感動的。しかし残念なことに、残りの人間ドラマ部は、皮相的であり、とってつけたような軽薄な人間関係に終始している。男の弟がレスキュー隊員で、最後には殉職するのだが、この男の恋愛が浮ついたラブコメである。恋人は浪人生なのに女子大生と偽ったり、とってつけたような恋のライバルが登場したりで、重厚な物語の主題と乖離している。これがあるための全体の印象が浮薄に感じられる。大変損をしていると思う。さらに言えば、恋のライバルでちょこまかと動き回る小男が必要以上に登場するが、これはうるさいだけの存在でしかない。もう一人の主人公である地震博士は、離婚した妻と娘との家族愛を取り戻す物語であるが、描き方が通り一遍でしかなく、ころころ性格の変わる妻にはいらいらさせられる。これに加え、漁村をリゾート化しようという開発派と、反対派の対立が描かれる。地震・津波の科学パートだが、目新しい発見や発明があるわけでもなく、見るべきところはない。メガ津波といった言葉だけが大仰で、地震観測や地震予知に関してはおざなりしか描かれていない。監督は興味がないのだろう。韓国で興行収入歴代四位を打ち立てたそうだが、よほど宣伝がうまかったのだろう。[DVD(字幕)] 6点(2012-11-08 21:05:21)

228.  彼とわたしの漂流日記 《ネタバレ》 これは拾い物。隠れた名作的位置づけにあたる作品だ。生きる希望を失い、孤独な生活を続ける二人の男女が知り合い、奇妙な交流を通じて自己再生していく物語。その”奇妙さ加減”が抜群に面白く、コミカルな小ネタもふんだんで、観る者を飽きさせない。意表を突く展開の連続で、先が読めない小気味さがある。丁寧なカメラワークで二人の繊細な内面を写しだす手法には感服する。韓流特有のオーバー・アクションや感情過多は少なく、むしろ控えめな演出で、日本人には共感しやすい。◆男はリストラ、離婚、借金苦で、人生に絶望し、橋から投身自殺を図るが、漢江の中洲の無人島に漂着する。最初は助けを求めたり、自殺を図ったりしてあがくが、いつかサバイバル術を覚え、そこに住み着くようになる。砂浜に描いたHELPがHELLOWに変わるのがおかしい。女は三年間、マンションの一室で引きこもり生活を続けている。両親とは会話もしないが、ネットでは別人になりすまし、偽りの対話で自らを慰めている。趣味は月の写真を撮ること。月に人類はおらず、完全な孤独なところに魅かれるのだ。年に二度、地上を撮ることがある。有事訓練で路上に人がいなくなるときがあるのだ。そのとき女のカメラが偶然に中洲の男を捉えた。男が孤独であると知った女は、内なる欲求に抗いきれず、ついに男との交流を図る。それが何とも不器用で、朴訥で、はがゆく、おかしく、そして微笑ましい。最初の返事が来るのに二月半もかかるし、メッセージも一行だけという慎ましさだ。だがこの交流で二人の心に変化が芽ばえ、徐々に人間らしさを取り戻していく。その過程はやわらかく、しなやかで、孤独がちな現代人に温かいメーっセージとなって伝わってくる。◆台風の日、女はネットでのなりすましがバレて、逃避先を失う。男も台風の清掃にきた職員に発見されて、島を追われる。絶望した男は自殺を決意する。それを止められるのは女だけだ。女は必死に走って男の乗ったバスを追い駆けるが追いつけない。もうだめだと諦めたとき、奇跡が起きる。漸く初対面を果たせた二人の眼から溢れでる涙。それは忌まわしい過去を流し、本来の自分を取り戻した喜びの涙だ。沖を流れるアヒルの船が映し出されて終了。この船は、男が住居としていたもので、男は”醜いアヒルの子”を自認していた。”醜いアヒルの子”との訣別という象徴性に富んだエンディングに拍手。才能のある監督です。 [DVD(字幕)] 9点(2012-11-08 14:01:12)(良:2票) 《改行有》

229.  帰らざる河 《ネタバレ》 主要登場人物は、服役を終えて社会復帰したばかりのマットとその息子マーク、酒場歌手のケイとケイの恋人でギャンブラーのハリーの四人。人間関係は至って単純だが、物語に腑に落ちない点が多い。マックはマークを呼び寄せて父親の名乗りを上げ、共に農業を始めるのだが、それ以前のマークの暮らしぶりがわからない。母親は死んでいるらしい。ケイはマークの世話をしていたそうだが、どのくらいの期間、どう世話をしたのかわからない。ケイはマットが人殺しの罪で服役していたことを知っているが、これはマックの友人から聞いたのだろう。ハリーは鉱山の権利書をギャンブルで勝って所有しているが、その詳細は不明で、元所有者はまだ自分のものだと思っている。ハリーは鉱山の登記を終えた後、何故戻らなかったのか。戻れば何もかもうまくいくのに。ケイに未練がなかったとは思えないのだが。川下りの途中でマットがケイを唐突に強姦しようとするが、これが作品を貶めている最大の原因だ。お互いが惹かれあっているという描写が十分でないうにこのような性急な行動に出るのはまずい。冷静に考えて、殺人犯の服役囚を安易に好きにはなれないだろう。マットもケイのことを嫌っていた。こういうわけで恋愛パートは失敗している。ハリーはどうしてマットを撃とうとしたのだろうか。話し合いで解決する雰囲気になっていたのに。その前にマットは「使う気はない」といって拳銃をカウンターに置いていったのだが、そのフォローがない。 先住民が執拗に襲撃してくるが、その理由が不明。襲撃方法も崖から石を落とすとか、武器ももたずに筏に乗り込んでくるとか、理解に苦しむ。ハリーを追ってきた二人組もあっさり退場で肩透かし。最後は三人で農場に戻るのだが、セキュリティの悪さは最悪で、あんな土地に住んだら生命がいくつあっても足らないだろう。よってハッピーエンドと思えない。それにケイは恋人ハリーを失って傷心しているはずで、マークの愛を簡単には受け入れないだろうし、マークも正当防衛とはいえ人を殺しているのでショック状態のはず。いずれにせよ、子供に殺人をさせるのはよくない。[DVD(字幕)] 5点(2012-10-24 02:29:04)《改行有》

230.  やさしく愛して 《ネタバレ》 戦争で敵軍から奪った金を着服したのが露見する話と、除隊して四年ぶりに実家に戻ったら、死んだものと誤報されており、婚約者が実弟と結婚していたという悲話の混合。兄は潔く身を引き、単身西部へ向かおうとするが、途中保安官に補導され列車に載せられる。それを昔の仲間が難なく救出する。金を返すべきか議論している最中、弟は、兄が金を持って妻と逃亡するのではないかと邪推し、冷静さを失い、あらぬ行動に出る。シリアスで重い内容だが、淡々と描かれる。エルビスの初出演作品として有名。主題歌はナンバーワン・ヒットを記録。エルビスが死ぬのを見て大泣きした母を慮って、これ以降は死ぬ役はやらなくなったというエピソードが残る。脚本がなまぬるく、エルビスのファン以外が観ても退屈すると思う。エルビスが大活躍するわけでもなく、未熟で道理をわきまえない脇役にすぎないので、ファンが観ても落胆するだろう。これを観て揶揄したくなった人なら、「プレスリー VS ミイラ男」を観ると楽しめるかも。[DVD(字幕)] 4点(2012-10-21 00:36:02)

231.  サブウェイ123 激突 《ネタバレ》 評価の高いオリジナルにも関わらず、目を覆いたくなるほど酷い脚本に堕している。事件の概要や各キャラクターからして、地下鉄の専門職員と知能犯と市長を含めた警察の三つ巴の知能戦が繰り広げられると期待するが、これといった捻りもなく、数々の伏線も回収されずに終了、消化不良どころか、欲求不満になる。そもそも、「59分以内に1000万ドル持って来い」という要求が無茶だ。いくら市の公金とはいえ、そんな大金を簡単に用意できないだろう。ましてや場所は、地下鉄のどこか。途中、現金輸送車両が交通事故に遭うが、間に合ってしまうのだから呆れてしまう。たとえ身代金を奪ったところで、札番号が記録されているので使えない。スーツケースを要求しているが、発信機が付いているくらいの察しはつくだろう。「小型飛行機を用意しろ」という要求はどうなったのか、話題にすら上らない。身代金とは別に、金相場で儲ける算段だったようだが、地下鉄の人質事件発生程度で、金相場が変動するはずもない。発生から1時間しか経っていないのだ。犯人と職員とのやり取りだが、意味が汲み取れない恨みがある。犯人は職員に何故あれほど拘るのか。職員の収賄事件の真相はどうか。犯人が自分の事について正直に話すのは何故か。会話の意図が不明なのだ。犯人の身元が簡単に割り出されてしまうのも興ざめだ。逃げおおせるつもりなら、目出し帽くらい被るだろうに。従犯の二人があっさり警察に包囲されてしまうが、どうして犯人とわかったのか。完全包囲の状況で拳銃を撃つのは自殺行為だ。単純に馬鹿なのか。職員と妻の会話も不可解だ。妻が牛乳1ガロン要求しているのに、職員は半ガロンといい、実際半ガロンしか持参しない(ようにみえる)。4人家族なのに子供達は登場せず、子供達とうまくいっていないことが示唆されている、収賄裁判があり、ハッピーエンドにはみえない。感動が得られないのはこのため。それ以前に、事件後、職員が何の取り調べも受けずに家に返されるものは解せない。射殺して取り調べ無し!警察は、最初あれほど犯人との関係を疑っていたのに。結局、犯人によせ、職員にせよ、警察にせよ、一貫性がないので混乱させられるばかり。その他、思わせぶりの市長、職員を敵対視する同僚、パソコンのウェブカメラ、暴走電車など、好材料が生かされていない。身代金は1000万ドルだが、映画制作費は1億ドル。こちらの方が驚き。 [DVD(字幕)] 5点(2012-10-19 03:31:02)《改行有》

232.  死刑台のエレベーター(1958) 《ネタバレ》 サスペンス映画の傑作。2つのサスペンスが同時に進行し、意表外なことから思わぬ展開となり、複数の犯罪が一気に白日の下にさらされるラストは見事である。中年の愛と若者の愛も描けている。硬質なモノクロ映像、心理描写に卓越したカメラワーク、主演女優の艶麗な美しさ、クールで洗練された音楽、頗るゴージャスだ。完全犯罪を目論んだが僅かの偶然から破綻していく過程を見せる映画のように見えるが、そうではないだろう。主題は「倦怠(アンニュイ)からの開放」。登場人物のほぼ全員が倦怠を感じている。倦怠とは、退屈な生活、本来の自分でない自分に対する嫌悪感といったところ。社長夫人は、夫との愛のない生活に疲れ果てている。ジュリアン(大尉)は戦争で死線をさまよったが、戦争で儲けている男の下で働いている。花屋の娘は、退屈な仕事と貧しさに甘んじながら一人暮らし。青年はやりたいことが見つからず、仕事もせず、バイク窃盗で指名手配され自暴自棄になっている。その他、秘書、警備員、各飲食店の従業員、酔っ払いの大尉の友人、警察の受付まで、誰一人明るい顔をしていない。人生に倦む現代人の無表情がそこにある。倦怠を暗喩するのが雨模様の夜の都会であり、その中を夜を徹して恋人を探して徘徊する社長夫人の姿は、自由を渇望してもがく現代人の姿そのものだ。恋人通しがお互いに惹かれ合うのは、倦怠から脱出したいという共通の素懐があったからだろう。彼らは犯罪を起こす前から 倦怠という名のエレベーターの狭い空間に、息も絶え絶えに閉じ込められていた。だからこそ中年の恋人達は自分たちの邪魔になる男の殺害するという決死の決断をし、若い恋人達は自分たちの犯罪が明るみになりかけたとき、躊躇なく自殺を決行したのだ。殺人を犯したことでエレベーターは死刑台へとつながる。展開上、若者の恋人達は、中年の恋人達をかき乱しているだけの存在にみえるが、実は両者は対等だ。アンニュイを感じている人ほど、この作品に惹かれるのではないか。残念な点もある。鉤爪付きロープが地上に落下しているが、もし雨などのせいで勝手に滑り落ちたとしても、ベランダに落ちるはず。ロープは回収するつもりだったが、警備員が部屋に入ってきて、あとで回収するしかなかったという筋にすべき。殺される観光客はおちゃらけすぎ。最後の抱擁写真だが、あれは一枚で良い。風景写真の中にたった一枚あった方が印象が強い。[DVD(字幕)] 9点(2012-10-06 04:20:24)(良:1票)

233.  フランケンシュタイン(1931) 《ネタバレ》 原作者メアリ・シェリーは、16歳のとき、妻子持ちだった詩人シェリーと不倫の恋に落ちる。メアリの父親の怒りを買った二人は駆け落ちする。19歳の夏(1816年)、シェリーと共に、バイロン卿の館で過ごした。このときまで一度流産をし、最初の子供は11日で夭折、生後三ヶ月の乳飲み子を抱えていた。このときに悪夢を見て、小説「フランケンシュタイン」の着想を得る(ディオダディ荘の怪奇談義)。その後1年かけて小説を完成させるが、その間にシェリーの本妻が入水自殺し、二人は正式に結婚した。原作の背景にはこのような出来事があった。原作での人造人間は、知性は秀れ、感性も豊かであるが、醜悪な容姿のせいで誰にも理解されず、孤独だ。そこで永遠の伴侶たる花嫁を造ることをフランケンシュタインに要求する。人造人間がメアリの分身であることは容易に想像がつくだろう。劇中でも花嫁が不安を抱く場面が出てくる。「きっと何か起こる、感じる。二人の間に何かが近づいている」メアリの結婚に対するあこがれ、障壁、不安、苦悩、悲劇のすべてが込められている。少女が湖に投げ込まれて水死するが、偶然にも小説脱稿の5年後にシェリーが、船の沈没で水死する。メアリには未来が見えていたのかもしれない。◆世界で最初のSF小説という名誉を担う原作があまりにも素晴らしいので、凡庸な作りであっても記憶に残る映画になっただろう。最大の特徴は、人造人間の容貌の醜怪さだろう。かなりショッキングだ。人造人間が生まれる場面、少女と遊ぶ場面とその後の投げ込み場面、我が子の死体を抱いて歩く父親の姿、水車小屋の炎上場面、どれも印象に残り、名作たらしめている。原作に対する掘り下げや感情描写は足りないが、怪奇性を前面に出すことでそれらを補っている。美と醜を強調することで、生と死を鮮やかに対比させることに成功しているのだ。マッドサイエンティストと怪物、怪物と少女、怪物と花嫁、たいまつの群衆と怪物、炎と怪物、これらが完全な絵になっているのは、深層心理に働きかけてくるからだ。これに音楽を加えたら、今でも相当怖い映画になると思う。メアリの見た悪夢は今でも生きている。脚本の難点をいえば、少女が水死した原因が人造人間のせいであると、どうしてわかったのかが描かれていないこと。それとセットの背景画の布のしわが丸見えなのはいただけない。[DVD(字幕)] 8点(2012-10-05 02:31:15)

234.  陰陽師Ⅱ 《ネタバレ》 平安時代中期の時代に、古事記の神話をもってこられても、当惑するだけだ。この時代錯誤ぶりが、脚本の命取りとなった。 「18年前に朝廷は、将来反乱する恐れのある出雲族を滅ぼした。その出雲族の怨念が……」という設定だが、どうにも安意過ぎる。”荒ぶる神”スサノオを復活させ、天叢雲の剣、天岩戸伝説が出てきたりと、神話を換骨奪胎しただけの薄っぺらさ。本来、平安時代の陰陽師と接点がないものなので、違和感がつよい。平和時代は、もう「大和」や「出雲」の時代ではない。それに、出雲族が恨みを持つのは、出雲族を滅ぼせと命令した天皇に対してのはずで、どうして平安京すべてを破壊し、無垢な庶民まで抹殺しようとするのか?出雲族の王、幻角の憎む「大和」の定義は?「大和」は誰を指すのか?須佐がスサノオに変貌するとして、須佐の姉、日美子までがアマテラスになるのはどういうことか。納得いく説明がない。アマテラスの肉を食べなければスサノオになれないというのなら、その理由はなにか?アマテラスが天岩戸に籠っているのは何故なのか?安倍晴明が生き返ったあと、琵琶を弾いていた幻角が死ぬのはどうしてか?等々、あいまいな部分が多く、物語に一本、筋が通ってないので、観客は置き去り食うことになる。他にも、スサノオの御印(みしるし)がヤマタノオロチであったり、出雲国が京都のすぐ近くにあったり、18年前の遺体がそのまま遺棄されていたりと、疑問点が多い。 他方、安倍晴明の活躍ぶりであるが、これがアマノウズメに女装して舞うだけという腰砕けぶりだ。あとは出現したアマテラスがスサノオをうまく懐柔しておしまい。弟を思う姉の愛に感動?し、恨みを捨てた幻角は、ある種の術を使い、晴明を生き返らせる。前回といい、生命を軽んじている傾向がある。土台、神に対して人間が立ち向かうという話に無理があるのだ。神を鬼のような姿にしたところで説得力を持たない。もっと想像力を駆り立てるような演出がほしい。ところで幻角は白髪を染めたのか?[DVD(邦画)] 4点(2012-10-04 17:56:24)《改行有》

235.  陰陽師 《ネタバレ》 晴明と博雅が、「お前は本当に良い男だ」「お前もな」と笑い合って終わるが、これにどれほど共感するか映画を観た満足度が測れると思う。全く同感できなかった。二人が親友として認めあうには、相互扶助の関係があってこそ。なのに博雅は晴明に一方的に助けられるだけの存在。青音によれば「二つの星が一つになったのは、晴明と博雅が二人で都の守り人となったこと」を意味するそうだが、その説明が欠落している。「一方が死ねばもう一方も……」と暗示するが、博雅が死んでも、晴明には何の影響も現れなかった。悪の権化、道尊だが、この人の内面が描かれていないのが、ドラマとしての最大の難点だ。陰陽師として高い地位にあり、そこそこの暮しをしている。そこに何の不足があるのか?人間や世の中に関心はないのに、どうして天皇を亡きものとし、都を地獄と化すことに執念を燃やすのか?そのあたりの動機がみえてこない。それにあれほどの術が使えるのなら、天皇を意のままに操ることなど朝飯前だと思うのだが……。早良親王も同様で、通り一遍の描き方しかされてないので、遺恨や怨嗟は伝わらず、ましてや青音との愛は空疎にみえる。早良親王憤死の顛末を20分程費やして描いていれば、いくらか深みがでたと思う。最大の見せ場は晴明と道尊の術合戦だろうが、結果は肩透かしだ。道尊はいろいろと術を使うが、晴明は結界を張っただけ。それに嵌ったは道尊はあっけなく自死する。ここは二転、三転して盛り上がりを見せるべきところ。それに晴明が術を使うのにつぶやくだけなのは迫力に欠ける。気分が高揚しないのだ。痛快活劇伝奇映画として失格。自死といえば、右大臣の自死も物足りない。こちらは自死の理由も不明だ。技術的な不手際も目立つ。からくり仕掛け丸出しの式神烏や蛇、苦笑するしかない鬼の面、チープなCG、冬枯れの庭に無理に咲かせた花。夕日の中で博雅が笛を吹くと青音が出現するが、その場面は夜になっている。道尊が帝を追い詰めてゆくと、ほぞを固めた帝は、「自分を差し出せ」とまで叫ぶが、その後は姿を現さない。やっつけ仕事のオンパレードだ。何がなんでもこんな映画を創りたい、こんなことを伝えたいという映画愛や情熱が感じられない。こだわりがないのだ。最後に、早良親王の恋人で永遠の生命を持つ青音は、二十歳くらいの娘が演ずれば絵になるものを、年増が演じたのでは台無しである。恋愛パートも失格。[DVD(邦画)] 6点(2012-10-04 03:31:45)(良:2票)

236.  シャーロック・ホームズ(2009) 《ネタバレ》 登場人物中、最も頭脳明晰なのはドワーフ(小男)だろう。電波受信装置、遠隔操作装置、防御システムなど、新発明ふんだんの青酸ガス発生兵器を完成させている。シャクナゲ毒の擬死薬や銅と反応するしびれ薬、石を繋ぎ止めておけるが雨で流れる蜜の接着剤、無味無臭で発火性の強い粉末、青酸ガスの解毒剤(本当にあったら大発明)なども作っている。まさに天才。対してホームズは、拳銃の消音装置は失敗。首吊実験は自力で降りれない。せいぜい或音階で蝿が回転飛行する習性のを発見した程度。その蝿を捕まえるのに6時間もかけている。小男なら腐臭を利用するだろう。大人と子供で比較にならない。こんなに利用価値の高い男を殺してしまうブラック・ウッド卿は愚者です。◆19世紀のロンドンを再現したセットやCGは見る価値がある。ハイスピード撮影された連続爆破場面が最大のスペクタクルだった。アイリーンの立ち位置が秀抜。ホームズの元恋人で盗人、男勝りでやたらナイフや拳銃を取り出す、敵であり、味方であり、ある人物に恐喝されている。演出を次第でもっと活きた。裸で手錠はかんべん。ホームズはやんちゃで、ワトソンと別れたくない甘えん坊。二人は共依存。探偵ものだが、謎解きや推理要素は希薄。例えば絞首刑で死なないトリックは、フックと隠しベルトとかの小学生レベル。服を調べれば判ることで、関係者全員を買収しないかぎり無理。アクション重視の娯楽映画だ。そのアクションだが、屠殺場の機械でアイリーンが屠殺されそうになり悪戦苦闘するが、電源を切ることを思いつかない。大男と対決する造船所の場面が最も大仰で華やかなのに、タワー・ブリッジでの最終対決はスケール・ダウン。前半あれだけ強調されていた、ホームズの相手の行動を予測して打ち負かす戦闘能力が中盤後半失われるなど、ちぐはぐだ。さりとてテンポが早く映像もスタイリッシュなので退屈はしない。【気になった点】①メアリーの事を知っていた女手相見はホームズの仕込み?②ブラックウッド卿が父トマス卿から指輪を抜き取った理由。家督継承の意味?③ホームズが医者に化けてワトソンを治療する意味。医療技術あるの?変装がメアリーに見破られてる!④自分の血を垂らしてまで、悪魔の儀式を再現する理由。⑤ホームズがワトソンに贈った婚約指輪のダイヤは、アイリーンから奪ったブレスレット?⑥警察所の遺体を自宅アパートに運んで調べる?論外。[DVD(字幕)] 7点(2012-09-22 17:01:33)

237.  世界侵略:ロサンゼルス決戦 《ネタバレ》 突然エイリアンの襲来による無差別爆弾攻撃が始まり、ロスアンジェルス他、世界12ケ所で烈しい攻防戦が繰り広げられる。国家レベルを超えた、地球全体、人類の存亡のかかった一大危機である。カメラはこの戦闘に参加した海兵隊の小隊の行動をドキュメンタリータッチで追う。勇躍ヘリに乗り込んだものの、圧倒的優位に立つ敵戦力の前に友軍ヘリは次々と墜落、制空権は完全に奪われている。かろうじて着陸し、司令部に合流出来たものの既に撤退指令がでており、警察署にいるらしい民間人救出を命令される。見えない場所から銃撃され、防戦一方。敵は百発撃ち込んでも死なない不死身ぶり。砲火を交えつつ、辛うじて民間人を発見。ここから対エイリアン戦争から、民間人救出劇にスケールダウンする。ロスがほぼ壊滅している状況で、民間人数人に小隊がかかりっきり。民間人の男(父)が死ぬと皆で愁嘆場を演じだす始末。「勇敢だった、(子に)泣いていいぞ、勇気をもて、海兵隊は絶対諦めない」場違い感がある。それよりエイリアンの死体何故持って帰らない。日中に目立つバスで移動するのもどうかと思うが、敵も本気で米国を相手にするなら、先ず軍事基地を叩き、放送・通信網を遮断し、発電所を爆破し、橋や鉄路などの輸送インフラを破壊すべきなのにこじんまりとした市街戦を演じてのんびりムード。そんなことしてるから、ほら、最後はあっけなくミサイルによる中央指令センター爆破で、ジ・エンド。対ミサイル防御システムがあんな貧弱ではね。今はレーザーを当てて誘導しなくても座標をインプットだけで、目標に命中するタイプのミサイルもあるよ。何年も前から侵略計画を練っていたはずでは?敵の愚かさぶりを嘆くようでは映画として成功とはいえない。「小賢い敵の意表を突く弱点攻撃」こそが望ましい結末。不死身に近かった敵があからさまに弱くなっていくのもいただけず。ドラマ部は、明日結婚する、妻が妊娠中、近く退役予定、部下を失くした過去、エリートだが経験不足の若隊長と老部下の葛藤などと、手垢のついた筋書きを浅く演じられても感動は遠い。とはいえセットやCGの出来映えは良で、役者の演技も合格、何も考えず暇つぶしに観るには好作品。平和な現代では、単純な軍隊英雄万歳ものは支持されにくい。何が足りないか?新鮮味、斬新さだろう。それにつきる映画。[DVD(字幕)] 6点(2012-09-17 14:22:58)

238.  グラン・ブルー/グレート・ブルー完全版 《ネタバレ》 ジャックとエンゾの海物語と、ジャックとジョアンナの陸物語を軸に物語は進む。エンゾは素潜り大会で優勝することに生き甲斐を感じている。海の魅力に憑りつかれて、恋人は精神集中を妨げる存在でしかない。ジョアンナは平均的な女性で、ジャックに一目惚れ。ジャックは自由人というより求道者。母は不在、父は漁で事故死し、天涯孤独で育つ。人づきあいや恋愛に疎く、社会人として未成熟。海の魅力というより”魔力”に憑りつかれている。エンゾからは「人間より魚に近い」と言われる。彼にとって素潜りは海の意識(宇宙意識)と繋がる方法。「海の中にいると辛い」理由は「上がってくる理由が見つからないから」。深海は全ての生物の生まれた故郷であり、自分もいつかは胎内回帰するように母なる海に還りたいという宿望がある。深海「グラン・ブルー」には死を超えた何か(理想郷)があると信じている。彼のイルカへの愛は常軌を逸したもの。ジョアンナと初対面のとき「前に会ったね、君はイルカに似ている」という。テレパシー能力の持ち主で、イルカへの愛と女性への愛が同質化している。イルカの写真を見せて「僕の家族」。イルカと手信号など使わなくとも交信可能。元気のない水族館のイルカを勝手に連れ出し、海でリハビリさせる。ベッドに寝ている恋人そっちのけで、海で一晩中イルカと遊ぶ。一方恋人との交信は不得手で、恋人の言うことを聞こうともしない。そんなある日悲劇が起きる。エンゾが素潜り事故で亡くなったのだ。ジャックは遺言通り、エンゾをグラン・ブルーに還してやるが、その戻りに彼も潜水病にかかり、生死の狭間をさまよう。その夜ジャックは不思議な幻影を見た。天井から荒海がのしかかるように侵入し、部屋を満たすのだ。そこには不安や恐怖はなく、イルカは楽しそうに泳いでいる。天啓を受けた彼は船で素潜りできる沖に向かう。グラン・ブルーに何があるか確かめるためだ。恋人は止めるように懇願するが、聞く耳を持たない。妊娠の事実を告げても同じ。諦めた彼女は「行きなさい、私の愛を見てきて」と送り出すしかない。彼がグラン・ブルーに達すると、イルカが迎えにきていた。こうして彼は彼岸の人となった。この映画に癒し効果があるのは、海やイルカの美しさもそうだが、主人公のように家庭や社会生活の煩わしさを捨て去り、自然に還りたいという願望を充足させてくれるから。このジャンル唯一孤高の作品。 [DVD(字幕)] 8点(2012-09-14 06:44:06)《改行有》

239.  白い馬(1952) 《ネタバレ》 鮮烈な印象が残る映像詩。寓話性、象徴性に富み、映像と物語が高度に昇華された好短編。白い馬の気高き精神、他者に屈しない自尊心、野生の剛健さ、躍動する生命力が遺憾なく表現されている。最後の行動は、自由を奪われるくらいなら死を選ぶというような単純な考えではない。少年と馬を衝き動かしたのは、常人では考えもつかぬ、より高みへ進もう、未知の新天地を目指そう、新しい冒険の旅にでようとする開拓精神の表れだと思う。沖に漂う少年と馬は若さと自由のメタファーであり、逃避や自殺などでは決してない。最後は光となって消えた「かもめのジョナサン」と比較されるべきものだ。 ◆最後の語り「強くたくましい白い馬は友である少年を素晴らしい土地へと運んでいった。人と馬が仲良く暮らせる国へ」は余計だ。何故少年と馬は沖へ沖へと進んでいったのか、いつか戻ってくるのかなどを想像させて、深い余韻を残すのが常套手法。短編であればなおさらだ。 ◆惜しいのは少年パート。少年の内面が見えてこない懸念がある。少年が自尊心の高い白い馬に認められて、強い絆を築く過程がややもすると平坦。少年が何度も捕まえようとしては失敗し、時には怪我をし、時には馬飼達から守ってやるなどの辛労、精神力を見せる場面がもっとほしい。心の成長を見せてほしい。短編で尺が足りず、仕方ないのだが、非常に残念である。少年の弟(妹にみえる)が、三年後に「赤い風船」の主役を演じるとは驚きだ。子供の成長は早いもの。「赤い風船」と同じ主題であることにも驚いた。このごつごつとした現実とは別に、どこかに理想郷が存在すると夢想しているのだろう。そのロマンチシズムに乾杯。監督さん、あなたは詩人だ。[DVD(字幕)] 9点(2012-09-13 19:28:41)《改行有》

240.  赤い風船 《ネタバレ》 「こころあたたまる良質のファンタジー」のはずが……。野暮を承知でかくと、風船がしぼんでいく場面で操作線(細い線)が丸見えになり、少し鼻白んでいると、少年の空中飛行場面ではスタントマンに代わっている。体型が全然違う……。ああ、最も感動する場面で気分を削がれてしまった、途中まで佳い映画だったのに恨めしい。気を取り直して、少年が風船と出会う場面をチェックしてみると、少年が階段を降りる前は美しいパリの払暁風景だったのに、階段を降りると陽が高くなっている。延びていた影がなくなっているのだ。と、残念なことばかりが続いた。残念ついでにいうと、昔この映画にあこがれて風船でアメリカに渡ろうとした「風船おじさん」が消息を絶ったという事件もある。大人の視点で観ると、どうしても制作の側に目がいってしまう。風船は二本の線で操作されているなとか、風船はいくつ用意されたのだろうかとか、ちょっと大きすぎないかとか、ここはフィルム逆回転かとか。悲しい性です。 ◆街灯に引っかかった風船を少年が取る出会いの場面。少年はよじのぼって自力で取ってますね。これが良い。苦労して手に入れたからこそ愛着が湧く。これが風船との友情の萌芽となる。両者の間に友情が生まれ、風船は少年にまとわりつくようになるのですが、この不思議な風船を周りが放っておかない。大人達にとっては迷惑で、邪魔な存在、子供達にとっては不思議で、欲しい対象。風船にとっては受難のようなことになり、とうとう子供達に割られてしまう。そのときに町中から風船が続々と集まってきて、少年を乗せて大空へ飛び立ちます。奇跡が起こったのですが、どう解釈すべきか?風船は割れても風船の思念は残っている。風船は自分と子供を区別していない。同じ仲間と思っている。それで自分の家に招待したのでしょう。風船の国へ、それはたぶん空の上にある。少年にとっては友達の家にちょっと遊びにいく気分。子供っていいなって思いました。ここで問題、赤い風船は男の子?女の子? 男の子でしょうね。だって……。 追記:風船おじさんも風船の国にいったのかな。[DVD(字幕)] 7点(2012-09-13 15:38:45)《改行有》

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