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プロフィール
コメント数 1275
性別 男性
年齢 43歳
自己紹介 嫁・子供・犬と都内に住んでいます。職業は公認会計士です。
ちょっと前までは仕事がヒマで、趣味に多くの時間を使えていたのですが、最近は景気が回復しているのか驚くほど仕事が増えており、映画を見られなくなってきています。
程々に稼いで程々に遊べる生活を愛する私にとっては過酷な日々となっていますが、そんな中でも細々とレビューを続けていきたいと思います。

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281.  プリデスティネーション 《ネタバレ》 冒頭15分は何が起きているのかサッパリ分かりません。さっきのシーンには一体何の意味があったのか、今画面に写っているのは誰なのか、そいつはなぜここにいるのか、そういうことがまったく分からないわけです。時空捜査官を主人公としたSFのはずなのに派手なガジェットやSF用語も登場しないまま、舞台は70年代NYの場末のバーに。そして、店に来た客とバーテンとの会話劇となり、さらにはその客がフォレスト・ガンプみたいな身の上話を始めて、どんどんSFからはかけ離れていくのですが、その身の上話が滅法面白いので引き込まれます。その後、客とバーテンの正体や、なぜ舞台が70年代なのかという理由が明かされ、物語は急速にSF方面へと舵を切っていきます。前半で張り巡らされた伏線もここでキッチリと回収され、すべての要素が完璧に繋がり収束。これをたったの90分でやりきってしまった構成力、この兄弟監督の手腕には恐れ入りました。 タイムトラベルものといえば、歴史的大事件に介入するようなスケールの大きなテーマをまずは思いつくものですが、これを映画化する場合には、舞台を小さく設定した方がうまくいくようです。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』も『バタフライ・エフェクト』もそうでしたが、主人公を取り巻く家族や友人との物語に終始し、舞台をひとつの町内としたことが成功の要因でした。その法則に当てはめると、本作は考えうる最小単位のドラマであり、そもそも手堅い成功が見込める素材だったと言えます。鍵は、登場人物達が同一人物であることを観客に気付かせないことであり、文章で表現する分にはさほど難しくないこの部分を、どうやって役者に演じさせるかが唯一にして最大の問題でした。本作は、イーサン・ホークという演技力はそこそこあるのになぜか目立たないスター俳優と、サラ・スヌークという奇跡的にうまい役者さんを発見したことにより、この点をうまく処理できています。 作品全体の感触は、名作『12モンキーズ』に近いものとなっています。歴史改変をミッションとするはずの時空捜査官が、変えられない運命に絡め取られていくという逆説的な物語。そこら辺の倦怠感をうまく醸成できている点が見事でした。無から生み出された人物という設定はSFとしては✕ですが、寓話としては面白いので、こちらも良しとしましょう。緻密な映画ではありますが、考えすぎないことが大事だと思います。[ブルーレイ(吹替)] 8点(2015-07-18 02:28:03)《改行有》

282.  ジャッジ 裁かれる判事 《ネタバレ》 当て書きだったこともあってダウニーJrはハンク役に完璧にハマっているのですが、少年の心を持つ不良中年、芯の通ったひねくれ者といういつものダウニーJrなので、特に目新しいものはありません。娯楽作で活躍する彼が、プロデューサーも兼ねて小規模予算のドラマ作品に出演したからには、俳優として何かしらのチャレンジがあるのだろうと期待したのですが、そういうものは見られなかったので少々ガッカリしました。他方、ジョセフ役のロバート・デュバルは御年83才にして体を張っており、こちらの演技には目を見張るものがありました。磯野波平を10倍濃縮したような頑固オヤジぶりと、年齢に勝てず弱っていく老人ぶりを同時に見せるという器用な演技を披露しており、演技の幅の少ないダウニーJrをうまくフォローしています。 父と子の対立と和解が作品の主たるテーマであり、ソリの合わない父親を田舎に残している私としては、他人事とは思えないお話だったのですが、これがビックリするほど心に刺さりませんでした。この手のシナリオのテンプレートに当てはめて作ったようなお話で、あまりに無個性なのです。長めの上映時間も有効には活用されておらず、似たり寄ったりの話を何度も繰り返すのみなので、途中で飽きてしまいました。とどめはエンドロールに流れる音楽で、ご丁寧に本作のテーマをすべて歌詞にして歌ってくれます。「大丈夫、もうわかったから」と言いたくなりました。 法廷劇としても中途半端。いかにも出来るげに登場したビリー・ボブが主人公達を苦しめる強敵となるのかと思いきや、こいつがほとんど活躍しません。ハンクを阻む最大の敵は、容疑者であるジョセフその人。ハンクは、ジョセフがしらばっくれることで故殺の疑いからは逃れられるような導線を作るのですが、肝心のジョセフがこの作戦に乗ってこないのです。これにはさすがにイライラさせられました。ハンクは勝つために何でもやる弁護士であることは当初から分かっていたのだから、そのやり方に従えないのであれば、そもそもハンクを雇わず、心根の優しい田舎弁護士にでも頼んでいれば良かったのです。一度はハンクに弁護を任せながら、その作戦にうだうだと文句をつけてくるジョセフがめんどくさくて仕方ありませんでした。そして、容疑者自身に勝とうという目的意識のない裁判では、さすがに手に汗握れません。[ブルーレイ(吹替)] 5点(2015-07-12 01:33:36)《改行有》

283.  ターミネーター:新起動/ジェニシス 《ネタバレ》 『3』『4』は不評だったし、シュワはすっかりおじいさんだしと、もはや世界中で誰も待っていないのに勝手に”I’ll be back.”しちゃった『ターミネーター5』。日本より一足先に公開されたアメリカでは興行成績も批評も振るわず、「ほらほら、やっぱ作らなきゃよかったじゃん」という空気が漂っておりますが、映画とは自分の目で見るまでわからんもので、これが意外にも良かった。3D料金に加えてドルビーアトモス特別料金も加算され、しめて2,400円もかかった鑑賞でしたが、その元は十分にとれたと言えるほどの満足感がありました。 『1』からの伝統に乗っ取り、本作も未来戦争からスタートしますが、映像技術の発展の恩恵もあって、かなりテンションの高い見せ場となっています。その後は我々の知っている展開が待っていると見せかけておいて、その場面が次々と覆されていきます。これにより、本作の舞台となっているのはタイムスリップにより改変された後の世界であることが明らかになるのですが、老人タイプのT-800や警官に化けたT-1000の登場場面など、予定調和の壊し方がとにかく素晴らしく、ここで一気に引き込まれます。その後は、このシリーズのひとつのテーマでありながら、これまで重く扱われてこなかったタイムパラドックスを扱ったSF映画となり、誰も予想しなかった方向へと話が広がっていきます。 次から次へと繰り出される見せ場の迫力は素晴らしく、さらには縦の構図を意識したアクションが多いため、3D効果を得やすくなっています。アトラクション映画としてよくできているのです。一方、お話の方は緻密なようでいて、その実かなり適当な部分もあったりしてツッコミを入れたくなるのですが、タイムパラドックスなんて細かくやりすぎると『プライマー』みたいな訳のわからん代物ができてしまうんだし、夏の大作としては、これくらいの密度で丁度良かったような気もします。少々分かり辛い部分もありますが、幼少期よりセワシ君理論に慣れ親しんできた日本人の観客であれば、その辺は何とかなるはずです。 最後に、日本の配給会社による宣伝はどうにかならないものですかね。ネタバレに当たる部分を予告の時点でほとんど見せてしまっていることには、怒りを通り越して呆れてしまいました。そういえば、『T4』公開時にもT-800シュワモデル登場という最大のサプライズをCMでバンバン流していたし、あまりにモラルに欠けるような気がします。[映画館(字幕)] 8点(2015-07-11 03:20:16)(良:2票) 《改行有》

284.  ターミネーター2/特別編 『ジェニシス』公開に便乗して本作アルティメット版ブルーレイがリリースされたため、久しぶりに鑑賞しました。劇場版は数え切れないほど見てきた一方で、特別編はゴールデン洋画劇場で観たきりなのですが、再度鑑賞してみての印象は、劇場版とほとんど変わりませんねってとこです。追加カットとしてはっきり認識できたのは、サラとジョンがT800のCPUを壊す壊さないでひと悶着したとこくらいで、あとはあってもなくてもいいカットばかりでした。このバージョンを見ると、作品の印象をほとんど変えずに17分も尺を詰めてみせた劇場版の編集が、いかに優れたものであったかが分かります。私としては、よりタイトな劇場版の方が好みです。 公開時、『T2』についてはVFXが凄いという評価ばかりでした。確かに、映像表現を変えたという点では映画史上のターニングポイントとなった作品ではあるのですが、CGによる表現が当たり前になった現在の目で見返すと、意外にもCGが多用されていないことに気付きます。例えばT1000のアクションシーン。T1000がダメージを受ける場面は昔ながらの弾着で表現し、ダメージを回復する場面にのみCGを使う。そして演出や編集の妙により、当該場面全体が最新の映像技術で作られたかのような印象を与えているわけです。この辺りの騙し方は、本当に見事なものだと思います。その他、T1000が他人に化ける場面では双子の役者を使ったり、右腕を失った後のT800の胴体がいきなり太くなったりと、冗談のようなローテクが炸裂しています。映画学校には通わず、ロジャー・コーマンの元で修行したキャメロンならではのフットワークの軽さが本作を支えており、凡百の金満ハリウッド大作とはまるで作りが違うのです。そして、当時のハイテクに依存しなかったからこそ、四半世紀経った今でも面白い作品であり続けているのです。 あらためて見て印象に残った場面はと考えると、狭い通路でジョンを挟んで、あっちからT800、こっちからT1000が迫ってくるとこだったりします。あの場面の緊張感はハンパなものではなかったし、続くアクションの熱さは相当なものでした。T800がジョンの弾除けになるとこはカッコよかったし、周りの壁にボコボコと穴をあけながらの揉み合いも凄かった。あの短いアクションで、人外のパワー表現が見事にできているのです。本作を面白くしているのは予算やCGではなく、そうした的確な描写の積み重ねなのだと思います。[ブルーレイ(字幕)] 8点(2015-07-10 17:21:08)(良:1票) 《改行有》

285.  機動戦士ZガンダムIII 星の鼓動は愛 3部作完結篇はMS戦の連続。ボリューム・テンションともに凄まじいレベルに達した見せ場が連続し、息つく暇がありません。さらには新作カットの分量も多く、3部作中、もっとも気合を入れて作られていることが素人目にも分かりました。例を挙げると、コロニーレーザーの内部構造がより精緻に描写されたことから、主要登場人物が勢揃いしての大乱戦の戦況や位置関係が分かりやすくなっており、誰が何をしているのかがイマイチ掴めず没入感の薄かったテレビ版と比較して、戦闘シーンのテンションは格段に上がっています。これぞリメイクの恩恵です。 また、エピソードのリストラがしばしば問題視される当3部作ですが、本作ではかなり的確な取捨選択がなされています。テレビ版ではウザくて仕方なかったカツ・コバヤシやロザミア・バダム関係のエピソードが大幅に切られており、特にロザミアについては居ないも同然の扱いで、これによりストレスなく鑑賞できるようになりました。これもまたリメイクの恩恵ですね。 そして、これまた賛否の分かれるクライマックスですが、これはこれで良かったのではないかと思います。ただし、「新訳Ζ」を謳った割には改変が少なく、もっと凄い展開が見られると勝手に期待していた私としては、多少の落胆もありましたが。[DVD(邦画)] 7点(2015-07-10 17:19:54)《改行有》

286.  機動戦士ZガンダムII 恋人たち 3部作全体の評価については『星を継ぐ者』にてレビューした通りで、私としては新訳Ζに対して肯定的な立場をとっています。語り口が荒っぽい点については目を瞑り(そもそも、50話を費やしてもわかりづらい話だったのですから)、リファインされた映像面に注視しましょうというのが、本3部作に対する私の姿勢です。 その点で、もっとも評価が苦しいのがこの『恋人たち』です。戦闘シーンに際立ったものがなく、テレビ版のダイジェストを見ているだけという印象なのです。映像面での恩恵が少ないため、評価はやや低めにせざるをえません。 ただし、良かった点もあります。もっとも評価できるのは、フォウ・ムラサメをスードリで殺したこと。テレビ版ではスードリの爆発を生き延び、後にキリマンジャロで再登場するのですが、カミーユの成長物語として考えれば、フォウはスードリで死ぬべきでした。新訳版ではそうした自然な形に修正されたことで、私としては腹落ちの良い展開となりました。また、作品の緊張感がピークに達したところでアクシズが仰々しく現れ、「この先、どうなるんだ」という期待と不安を抱かせたところでブツっと終わるという幕引きには興奮させられました。3部作の中編という立ち位置をうまく使い、映画らしい展開を作れているのです。完結編への期待を煽る、見事なクライマックスだったと思います。[DVD(邦画)] 6点(2015-07-10 17:19:12)《改行有》

287.  機動戦士Zガンダム 星を継ぐ者 リメイクではなく「新訳Ζ」。つまり、オリジナルありきの映画版ですという立ち位置をコンセプトの段階より明確にした作品であり、ゆえに、テレビシリーズを踏まえていない観客には徹底的に不親切な作りとなっています。驚いたのは冒頭、カミーユがジェリドに殴りかかるという、すべての発端となった事件をカットしていること。「この時点で分からない人は、この映画を見ても仕方ないよ」と、監督が冒頭で宣言しているのです。以降の展開も恐ろしい程の駆け足で、かつ登場人物の紹介も一切なく、テレビ版を見ていない人は論外としても、見たことはあっても記憶が曖昧な人では、ついて行くのはちょっと難しいのではというレベルです。そもそも、50話を費やしてもよく分からなかった『Ζ』を90分×3部作でやるには相当な無理があるわけで、観客の方で脳内補完をしてもらうことが作品の前提条件となっているようです。 では、本作の存在価値は何かというと、新規作画により大幅にパワーアップしたMS戦をタップリと堪能できることであり、「こういう戦闘を見たかった!」と満足できるクォリティの見せ場が次々と展開されます。本作のクライマックス、アッシマー隊との追撃戦のスピード感やテンションには凄まじいものがあり、これだけでも見る価値は充分にありました。また、Ζはシリーズ中でも特にMSのバリエーションが充実した作品であり、21世紀の技術でエゥーゴやティターンズのMSが続々と登場するだけでもワクワクしました。 1988年の『逆襲のシャア』でも感じたのですが、富野監督は音響へのこだわりも相当なものです。テレビ版のモノラルから5.1チャンネルにパワーアップした音響は素晴らしい迫力だったし、ガンダムMk-Ⅱのヘッドバルカンの効果音を変更するなど、細かい部分にまで気の利いた演出には感心させられました。賛否両論ある本作ですが、最新技術でΖを再リリースするということの意義は、きっちりと果たせていると思います。[DVD(邦画)] 7点(2015-07-10 17:18:29)《改行有》

288.  her 世界でひとつの彼女 《ネタバレ》 前妻がルーニー・マーラで、エイミー・アダムスが元カノ兼親友で、友人からの紹介で渋々会ってみたらオリヴィア・ワイルドとか、どんだけ恵まれてるんすか、お兄さん。これだけの女性に囲まれたリア充の主人公がOSとの恋愛にハマるという設定がよく飲み込めなかったので、お話がなかなか頭に入ってきませんでした。もっと孤独で情けなく生きてる男が、やむにやまれず辿り着いたのがOSとの恋愛だったという設定の方が今日的で、より多くの独身男性の心に届いたと思います。 そもそもの問題として、OSが人格持ってたらウザイでしょ。メールの内容も通話の内容も筒抜け、何を検索したかも丸分かりで、夜な夜な増えていくエロ画像コレクションも全部お見通し。私だったら耐えられません。そんな感じで基本設定が弱すぎるため、核心部分にまで私の興味・関心がたどり着かないということが難点でした。SFというよりも寓話に近い作品なのでリアリティを追求する必要はないのですが、そうは言っても2時間は観客を納得させておけるだけの設定は準備しておくべきでした。 そんな感じで全体としてはイマイチだったものの、基本的には甘い作りの作品ではないので、部分評価が可能な点はいくつかありました。例えば、長年連れ添ったエイミー・アダムス夫妻が、ものすごく些細な理由で離婚してしまうこと。男女関係って、確かにそんなものだったりします。相手の明確な欠点や弱点については了承済なので意外と破局の理由にはならず、本当にどうでもいいことが火種になるものです。また、主人公とOSが破局に至った原因も、男女関係というものの一側面を的確に捉えているように感じました。リアルで何人かの女性から拒絶され、自分を肯定してくれる相手を欲していた主人公と、人間についてもっと知りたいと思っていたOSが、タイミングの一致もあって交際を開始。しかし、交際によって双方ともに変化が起き、誰が悪いでもなく交際が終了してしまうという呆気ない別れ。リアルの恋愛もこんなもので、♪寂しさゆえに愛が芽生え、お互いを知って愛が終わる~と長渕剛が歌っていた通りです。[ブルーレイ(吹替)] 6点(2015-07-09 01:19:51)(良:2票) 《改行有》

289.  アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン 《ネタバレ》 ヒドラの秘密基地を襲撃する冒頭から、映画のテンションはフルスロットル。6人の主人公の能力をバランスよく見せる演出の素晴らしさには、つくづく感動させられました。ただし、それと同時に違和感も残りました。序盤から楽勝ムードが全体を覆っており、緊張感が皆無なのです。特に冒頭は、軽口を叩きながら圧倒的なパワーで迫っていくアベンジャーズがとても感じの悪い集団に見えてしまい、一方で生身の人間でありながら神やモンスターを相手に防戦せねばならないヒドラの兵士達が気の毒になったほどです。 タイトルロールであるウルトロン登場以降も、その傾向は変わりません。「最大の敵現る!」という予告編での煽りとは対照的に、こいつがとにかく弱いのです。ボディはアイアンマンの改造版に過ぎないし、人工知能ならではの緻密な戦略があるわけでもない。また、これは前作からの問題点でもあるのですが、大ボスとその他大勢の雑魚から成り立っているというシンプルにも程がある敵の組織構造はいかがなものかと思います。雑魚をちぎっては投げ、最後に大ボスを始末するといういつもの流れで、クライマックスの見せ場が恐ろしく単調なものとなっているのです。個性的な能力を持った中ボスを置き、戦いにバリエーションを作るべきだと思います。 見せ場の合間に挿入されるドラマも、実にどうでもいいものでした。単独主演作を持たないキャラクターのドラマが中心となるのですが、ハルクとブラックウィドウがなぜか良い仲になっていたり、ホークアイの家族が唐突に登場したりと、激しくどうでもいいものばかりで眠たくなりました。また、平和の護り方を巡って多少の内輪揉めが起こるのですが、「人工知能を使い、システマチックな監視体制を作るべきだ」と主張するアイアンマンに対して、「あんな信用ならんものに頼れるか」と年寄り臭い主張をするキャップ(実際に年寄りなのですが)。お話は、アイアンマンの主張が間違ってるっぽい感じで進んでいくものの、途中から登場するヴィジョンが底抜けの正義漢ぶりを発揮し、結局あの議論には何の意味があったんだと、観客を大いに混乱させます。 最後に、日本のみ世界最遅上映という扱いはどうにかならんものでしょうか。この手のイベント映画は鮮度が大事。長々と悪口を書いてしまったのも、世界同時上映から2ヶ月も待たされ、私のテンションが完全に下がってしまっていたためでもあります。[映画館(字幕)] 4点(2015-07-06 06:34:24)(良:1票) 《改行有》

290.  アンダー・ザ・スキン 種の捕食 《ネタバレ》 捕食対象だった人間に情が移ったために弱くなってしまったエイリアンの物語。溺れた夫婦を助けようとして自らも力尽き浜辺で気絶した青年を石で殴り殺す、その夫婦の赤ちゃんを浜辺に残して去るなど、非情の限りを尽くしていたスカヨハエイリアン。この頃の彼女は無敵だったが、絶望的な孤独の中で生きるプロテウス症候群の青年(特殊メイクかと思いきや、本物の患者を起用している)の姿を通して自分の孤独を認識したことから、人間への同情を抱いてしまいます。そこから彼女(女性かどうかは不明ですが)は防戦一方となり、最後にはレイプ魔に焼き殺されます。悲しいかな、人間の世界は依然として力により支配されており、他者への共感は躊躇を生み、それが弱みになってしまうという、非情な真理を描いた作品と私は解釈しました。 エイリアンを演じるスカヨハは、まさに体を張った名演技を披露。これまで多くの映画でセックスシンボルを演じながらも脱ぎの仕事はやってこなかった彼女が、この低予算映画でアッサリ脱いでしまうという気前の良さ。また、女優さんであれば美しい体を撮って欲しいと願うものですが、彼女はあえてタルんだ体に仕上げてきています。肌の下”Under The Skin”に本体が隠れているという設定を再現するためには、贅肉を落とした美しい体ではなく、ダボダボの体が必要だったのです。ここまでやってしまう女優根性には恐れ入りました。 また、独創的かつ美しい映像にも見ごたえがあり、総じて見所の多い作品なのですが、その一方で緩急のない語り口が曲者であり、途中で飽きてしまうという点が問題でした。映像のコラージュだけでいくなら90分以内で収めるべきであり、それ以上の上映時間でやるならもっと饒舌な語り口とし、娯楽性への目配せも必要だったと思います。[DVD(字幕)] 6点(2015-07-02 00:52:41)《改行有》

291.  レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで 《ネタバレ》 エイプリルについては「自分探しをこじらせた女」との評価がありますが、それはちょっと違うと思います。パリ行きを言い出した時、彼女は自分を二の次にして、専らフランクがどうするのかを考えていました。私が働くから、フランクはやりたいことを探してくれとまで言っており、彼女の中心にあるのは常にフランクだったのです。恐らく、エイプリルはヒモを抱え込むタイプの女性です。どんなに貧乏をしても、暴力を振るわれても、それでも夢を語る時だけはまっすぐな男に憧れており、彼女が愛したのは地位も金もないのに大口だけは一人前だった若い頃のフランクなのです。仮にパリ移住を決行して、その結果、一家が貧乏暮らしとなっても、彼女だけは幸福を感じたはずです。しかし、そんな彼女の嗜好とは裏腹に、フランクはマトモになり続けている。時には常識人の顔をして説教までしてくる。もはや、彼女が愛したフランクは消えかけています。 他方、フランクは家族のため真面目に働くという自己の側面が嫌悪されているなどとは考えもつかない。それは世間的には美徳だし、会社でそこそこ評価され、人よりもちょっと良い家を買った自分に満足すらしている。このズレが悲劇の元凶でした。フランクはエイプリルが何を問題にしているのかが分からない。分からないから、自分の人格すべてを否定されていると思い込んで余計にストレスを抱え、たまに頓珍漢な対応をしてしまう。ディカプリオによる素晴らしい小市民演技と相まって、フランクには心底同情しました。 本作は終始気が滅入る内容なのですが、中でも夫婦喧嘩の描写は天下一品。ヒステリックに捲し立てる嫁→旦那のイライラはピークに達するが、かといって暴力を振るうわけにもいかず、感情のやり場を失って半狂乱となる→その無様な姿を見て勝ち誇った顔をする嫁。うちでもよくあります笑。また、夫婦喧嘩の翌日、当てつけのように良い妻を演じる嫁の姿もよく見かけます。本作のエイプリルは女優経験がある分、その演技には真に迫ったものがあり、それを見たフランクは彼女の真意をすぐには掴み損ねます。あそこでエイプリルが期待したのは「それは君じゃないよ」の一言だったのでしょうが、最終的にフランクがその演技を額面通りに受け取ってしまったことが、最後の悲劇を生んでしまいます。[DVD(吹替)] 8点(2015-07-02 00:51:03)《改行有》

292.  ケープタウン(2013) 《ネタバレ》 差別主義者に父を焼き殺され、自身も犬に局部を食いちぎられて性的不能者になったズールー人・アリと、差別主義者を父に持つ白人・ブライアンがタッグを組むバディムービー。随所に南アフリカの難しい現実を投影したと思われるアイコンが登場するのですが、同国の情勢に詳しくない私にとってはイマイチ伝わらない点が多かったことが苦しかったです。フランス人が監督し、ハリウッドから俳優を呼び寄せて作った国際色豊かな作品なのだから、世界中の人が理解可能な内容にすべきだったと思います。 そんなわけで、作品に込められた裏の意味を理解できなかったので、あくまでバイオレンスアクションという表層部分に絞っての評価としますが、これがなかなかエグイ内容でビビりました。アリの父が殺害される場面から映画は始まるのですが、これがただの焼死ではなく、タイヤネックレス(ガソリンをかけたタイヤを首から被せ、そのタイヤに火をつけて焼き殺す。顔は炎に焼かれ、溶けた高温のゴムが体にまとわりつくという凄惨極まりない処刑方法)だったのでゲンナリ。本編がはじまると撲殺された女性の死体が登場するのですが、これがまた死ぬまで殴られましたということが一目で分かるほどのひどい傷み具合で、本作はハンパなバイオレンス映画ではないなと腹を括りました。 ソフトなイケメンというイメージの強いオーランド・ブルームが、本作でははみ出し刑事を熱演。ハリー・キャラハンとマーティン・リッグスを合わせたような狂犬ぶりを見事モノにしており、意外と良い役者さんだったのねと感心しました。他方、フォレスト・ウィテカーはブレない安定感。ブルームと違って強烈な演技は見せていないものの、難しい部分は彼が引き受け、縁の下の力持ちとして作品の土台部分を担っています。この二人のコンビがなかなか良くて、バディムービーとしては上々の仕上りでした。 残念だったのは、謎解きの答えに面白みがなかったこと。死体やアクションの見せ方等、ディティールにはリアリティへの目配せがあるのに対して、本筋部分には荒唐無稽な部分があって(黒人抹殺兵器ってのはさすがに…)、そこのバランスの悪さが気になりました。「アフリカではこういう酷いことが現実に起こっているのかもしれない」と思わせるような内容であればよかったのですが。[ブルーレイ(字幕)] 6点(2015-07-02 00:48:33)(良:2票) 《改行有》

293.  マッドマックス 怒りのデス・ロード IMAX-3Dにて鑑賞。昨年末に解禁された予告編のイカれっぷりに狂喜乱舞したものの、全世界ほぼ同時公開から日本公開まで1ヶ月もお預けを喰らうという拷問を経て、ようやく鑑賞まで漕ぎ着けたマッドマックス最新作。ファーストカットから殺伐とした空気が画面を支配し、ポストアポカリプス映画の総本家としての堂々たる風格を漂わせています。『MAD MAX』というタイトルが出るタイミングまでがかっこよすぎで、この感じで突っ走ってくれるなら、これからの2時間は最高に違いないという確信を得ることができました。 その確信の通り、本編に入るとイカれた世界をひたすら爆走。カーアクションの壮絶さは映画史上最高クラスであり、映画館の座席から立ち上がりそうになるくらい興奮しました。「お話なんてどうでもいいんだ」と開き直り、ひたすらに視覚的刺激の追求に走った監督の割り切り加減も気持ち良く、頭から尻尾まで男の映画となっています。 『マッドマックス2』の影響から『北斗の拳』ができたことは有名な話ですが、本最新作においては、その『北斗の拳』にマッドマックスが似てくるという逆転現象が見られた点が興味深かったです。敵集団の途方もないスケール感や、過剰なまでのハッタリ、子供を労働力としてこき使うという点など、聖帝サウザーを思わせる描写の連続には、これまた興奮させられました。また、ハート様を思わせるデブが登場するのですが、こいつの名前が「人喰い男爵」笑。スーツを着ているものの乳首の部分だけ穴が空いていて、そこから出た乳首をしょっちゅう自分でいじっているという、いろいろと気の毒なキャラクターなのでした。他に武器将軍なる大幹部も登場し、そのチャイルディッシュなキャラ造形にはひたすら感動でした。 問題点を挙げるとすれば、マックスが大してマッドではなかったことでしょうか。「善vs悪」という構図ではなく、毒を盛って毒を制すという物語にした方が、マッドマックスらしかったのではないかと思います。[映画館(字幕)] 8点(2015-06-21 02:57:46)(良:1票) 《改行有》

294.  LUCY ルーシー B級素材のジャンル映画に一流俳優を出演させることで独特の味わいを作り出すフランスの映画製作会社・ヨーロッパ・コープ。その総帥であるリュック・ベッソン自らが脚本・監督を務めた本作は、従来以上に闇鍋感溢れる怪作に仕上がっています。これは21世紀の『未来惑星ザルドス』。ツッコミどころは多くあれど、その試み自体は評価したいという気にさせられます。 まず凄いのが本作の脚本。ヤクザと警察の戦いが描かれる犯罪アクションと、人類はどこまで進化するのかというSFを同居させるという、常人では逆立ちしても思いつかない、仮に思いついたとしても、どうやって両者を結びつけて一つのお話にまとめればいいのかが分からないという二つの要素を強引に折衷してみせた闇鍋感。結局は話をうまくまとめきれずとっ散らかってしまっているのですが、その不完全ささえも作品のかわいげに転化してしまうという卒のなさには感心しました。 ベッソンが重きを置いているのは明らかにSFパートなのですが、この部分がどうしようもなく出来が悪くて、一方で犯罪アクションのパートがなかなか面白くできているという捻れた仕上がりも興味深く感じました。『フィフスエレメント』を見れば分かる通り、この人はSFには向かないのですが、それでもSFをやりたいんだというジャンルに対する愛情を感じましたね。犯罪アクションは、チェ・ミンシク演じるヤクザの組長がとにかく素晴らしかった。登場場面から狂犬ぶり全開。警官隊がいる前でも堂々と銃の準備を始めるなど、ナチュラルボーンキラーな雰囲気が最高でした。その後、どうやっても勝てないレベルにまで進化したLUCYに戦いを挑んでいくという気の毒な役回りを演じるのですが、最後までLUCYに食い下がろうとするド根性には感服いたしました。 もうひとつキャスティングに関しては、LUCY役を演じるスカーレット・ヨハンソンが良かったですね。頭が弱く運も悪いギャルとして登場し、その後はバトルヒロインを経て、最終的には人間という枠を飛び越えてしまう難役を見事に演じきっています。他の女優さんでは、ここまで幅のある演技は難しかったのではないでしょうか。[ブルーレイ(字幕)] 7点(2015-05-17 01:47:14)《改行有》

295.  ワイルド・スピード/SKY MISSION 設定やキャストの大幅な一新もなく7作目まで製作され、しかも興行成績が右肩上がりに伸び続けているアクションシリーズというのは映画史上前例がなく、本シリーズはアクション映画界の老舗タイトルの一つになったと言えるのですが、内容はもういっぱいいっぱい。見せ場のインフレ状態で、目の前で起きていることは確かに凄いんだけど、凄いことが当たり前になりすぎて手に汗握らないという、娯楽アクションの典型的な衰退サイクルに入っています。フリーザ編の後にもダラダラと続いた『ドラゴンボール』を見ていた時と同じ感覚を味わいました。 第一作では遊ぶ金欲しさに長距離トラックを襲って家電を盗むケチな強盗団として登場した主人公達も、本作ではアメリカ政府の仕事を引き受ける闇の外注先に超絶ランクアップ。カート・ラッセル長官の指示の下、007かトリプルXかという勢いで世界を飛び回るのですが、そもそもラッセル長官がこのグループにテロリスト退治を依頼した理由がよくわからないので、お話はスタート時点から行き詰まっています。討伐作戦においては絶対に必要なのだが、そこいらの捜査官や軍人には備わっていない適性がこのグループにはあった等の理由付けは欲しいところでした。また、見せ場はやりすぎの遥か上を行っており、もはや生身の人間が戦っているという感覚は残っていません。『SKY MISSION』という邦題は言い当て妙で、本作において車は飛ぶものとして扱われています。パラシュートをつけて飛行機からダイブするだけではなく、いろんなものを踏切台にしてピョンピョンと飛び回るのです。そのありえない様から戦いの緊張感を味わうことなどできず、ただ画面で起こっている光景を唖然として眺めるのみでした。 こうした見せ場のインフレを見ると、007やミッション・インポッシブルといった長い歴史を持つアクションシリーズが、いかにうまく作られているかがわかります。「原点回帰」と称して地味な作品を入れたり、作風をガラリと変えたりで、やりすぎになる一歩手前でシリーズ全体の流れをうまくコントロールしているのですから。本作の大ヒットから、ユニバーサルはまだまだシリーズを継続する意思を持っているようなのですが、だとしたら、そろそろ見せ場のインフレを収める方向での調整をかける必要があると思います。[映画館(字幕)] 5点(2015-05-17 00:37:57)(良:2票) 《改行有》

296.  それでも夜は明ける 《ネタバレ》 人種差別問題を扱った映画には、あまり傑作がありません。白人によるごめんなさい映画が多数を占め、歴史映画の皮を被りながらも、その内容は極端に惨い面ばかりを強調し、当時の一般的な社会情勢を描写できていないためです。この辺りの事情は、我が国において近現代史をまともに扱えた作品がない点と似ています。センシティブな問題であるがゆえに、製作者がどのポジションをとるのかに注目が集まってしまい、結果、事実関係が二の次になってしまうのです。 そこに来て本作ですが、アメリカ資本により製作された人種映画としては、過去最高の出来だったと思います。奴隷制度を抱えていた当時の社会をきちんと描けているのです。従来の作品群で私が疑問に感じていたのは、映画で描かれている通りの暗黒一色の人生ならば、黒人奴隷が反乱を起こして社会は大混乱するのではないかということでした。白人農場主と黒人奴隷の間には持ちつ持たれつの関係があったはずなのですが、何が何でも白人を悪にしなければならないという製作側の事情から、そうした描写がスッポリと抜け落ちてしまっていたのです。その点、本作は実際に奴隷生活を経験した黒人運動家による著作を原作とし、イギリス出身の黒人監督を起用、さらには脚本家にも黒人を入れるという念の入れようであり、アメリカ出身の白人監督がやれば「奴隷制度を肯定している」との批判を受けかねない描写にも果敢に挑んでいます。多くの農場主は財産として奴隷を大事に扱っていたこと、中には奴隷と主人という関係を超えた信頼関係を結ぶケースもあったことが、きちんと描かれています。また、同胞が理不尽な扱いを受けても、他の黒人奴隷は見て見ぬフリをしていたという黒人側の問題にも言及されており(最終的には、主人公も他の奴隷を見捨てて行く)、これにより当時のアメリカ社会が随分と理解しやすくなりました。感情的になりすぎないマックィーン監督の演出も、本作のアプローチには合っていたと思います。 気になったのは以下の2点。まずはブラピの登場場面。ヒーローの如く颯爽と現れ、長年主人公を捕え続けていた問題をいとも簡単に解決してしまうのですが、彼だけは現代の価値観で発言するため、作品から完全に浮いています。次は、12年という時間の重みを描けていない点。予算や撮影スケジュールに余裕がなかったとはいえ、経過時間を示す演出が皆無というのは良くありません。[ブルーレイ(吹替)] 7点(2015-05-10 02:50:10)(良:3票) 《改行有》

297.  ファーナス/訣別の朝 ウディ・ハレルソンのキ〇ガイ演技が素晴らしすぎて、彼が出ている場面には目が釘付けになりました。次の瞬間に何をしでかすか分からない怖さは『グッドフェローズ』のジョー・ペシに匹敵するレベルであり、製作陣もこの男の底知れぬ魅力に気付いていたのか、その登場場面を作品の冒頭に持ってくるという大盤振る舞い。これまたすごいのが、この登場場面が本筋にまったく影響を与えていないという点であり、作品の冒頭が一人の脇役を紹介するためだけに存在していたことには二度驚かされました。脇役をここまでフィーチャーした映画が他にあるでしょうか。 その割を食ったのが主人公であり、強面俳優がひしめく本作において、主人公は空気同然の存在感となっています。クリスチャン・ベールはいつも通りの深刻な顔で、演技に変化がありません。このままいくと、ハリソン・フォード並みのワンパターン演技の俳優となってしまう恐れがあります。 作品全体の空気はなかなか良くて、こういうガサガサした映画は私好みなのですが、前述した通り脇役が強烈すぎて、相対的に主人公の出ている場面がつまらないという点と、作品の要となるような強烈な場面を一つも作れておらず、結局は雰囲気もので終わってしまっているという点が残念でした。[DVD(吹替)] 6点(2015-05-08 00:55:25)(良:1票) 《改行有》

298.  バトルフロント 《ネタバレ》 もはやどれがどれだか分からない状態になっているステイサム作品群の中では、ピカイチの出来だと感じました。観客の感情を高ぶらせることに長けた脚本家・スタローンによる作品だけあって、心にガツンとくる仕上がりとなっています。主人公に絡んでくる田舎者がとにかく不快で、忍従を重ねた末に主人公が殺人技を駆使して敵をなぎ倒す様には拍手喝采したくなるほどの興奮がありました。これぞB級アクションの醍醐味です。また、田舎者を演じる面々が、かつては次世代スター候補として将来を期待されていた俳優達ばかりで、その変貌ぶりも含めて楽しむことができました。現役時代には清楚なイメージのあったウィノナ・ライダーに田舎の年増売春婦をやらせるというキャスティングを考えた人は天才だと思います。 しかしこの映画、単純なB級アクションという体裁とは裏腹に、暴力の連鎖に関する興味深い考察も行っており、見終わった後にもいろいろと考えさせられる内容となっています。結局、このお話で誰が悪かったのかを考えると、なかなか答えが出てきません。モンスターペアレントはクズ野郎だが、子供の前であれだけ無様にやられれば腹も立つだろうし、一応の悪役とされている半グレだってマジのヤクザが出てきた辺りから事態を収めきれなくなっており、誰も意図しないままに争いがどんどん膨れ上がっているのです。この田舎町における異物であった主人公こそが火種だったのではという気すらしてきます。主人公は、町外れの大きな屋敷を買い、新車に乗って娘と二人でスローライフを満喫。働いている様子もないのですぐに噂は広まり、彼らの存在を面白くないと感じる住民も現れます。それが田舎なのです。しかし主人公はそうした空気を察知できず、田舎町を成り立たせていた秩序を無意識のうちに破壊していきます。例えばあの半グレ。注目すべきは彼の登場場面で、ちょっと悪さをはじめた高校生をボコボコに殴り、「ワルを舐めんなよ!」と言って日常へと追い返す。一昔前には日本の街にもいた怖いお兄さんとして夜の風紀委員の役割を担っており、それゆえに、保安官も彼の行動には目を瞑っていたようです。しかし、善か悪かの二元論でしか物事を捉えられない主人公はこいつを潰しにかかり、その結果、事態は制御不能となってしまうのです。『ダークナイト』でもやっていましたが、敵を倒せばいいというものでもないのです。[ブルーレイ(吹替)] 8点(2015-05-06 01:24:43)(良:1票) 《改行有》

299.  チョコレートドーナツ 良い映画すぎてヤバかったです。基本的にはモラルを語る映画なのですが、観客に対して大上段からお説教をするような押し付けがましさがない辺りが素晴らしいと感じました。それはアラン・カミング演じるお姉の性格と、要所要所で挿入される楽曲センスの良さによるものであり、こういう題材を堅苦しくしすぎることなく90分程度でさらりと見せられる監督の余裕が心地よかったです。また、何となくうまくいきそうな雰囲気を見せておきながら、最後の最後でバッドエンディングを持ってくるという段差の付け方もよく計算されており、本当によくできた映画だと感心しました。 問題に感じたのは、観客に実話だと勘違いさせるような演出がたまにあったこと。本作は「ゲイのカップルが障害児を育てたらしい」という都市伝説に着想を得た完全なるフィクションなのですが、さほど必然性がないのに舞台を70年代に設定したことや、妙にリアルな法廷劇から、実話であると錯覚してしまう人が少なからず出てしまうのではないかと思います。しかし、観客の人生観にまで影響を与えかねない映画だからこそ、実話か創作かの線引きをきっちりしておくことが、作り手側の良識ではないかと思います。本作は出来が良いだけに、その点は特に気になりました。[DVD(吹替)] 7点(2015-05-05 01:28:50)《改行有》

300.  サボタージュ(2014) 意外性ある展開を狙ってはいるものの、サスペンス映画にはよくある流れなので、最後まで見たところで観客にとっては大したサプライズがないという点が苦しかったです。デビッド・エアーは才能ある脚本家兼監督だとは思うのですが、この人は態度の悪い公務員が悪態つきながら暴れ回る映画を撮っていればいいのであって、騙し騙されの駆け引きを描かせると、途端に手際の悪さが露呈します。ヤクザよりもタチの悪そうな麻薬特捜班の登場場面や、ホラー映画顔負けの残酷描写にはこの監督ならではの個性を感じられたものの、全体としては不手際の方が目立っていました。 また、監督の引き出しのなさと同様に、シュワの演技の幅の狭さも、作品に大きな支障をもたらしています。この人の俳優としてのキャリアは1985年の『コマンドー』で確立されており、基本的に同作のジョン・マトリックス大佐以外の役柄を演じることはできません。にも関わらず、シュワ氏は無謀にも本作で新境地開拓に挑んでおり、そして見事に失敗しています。同業者であるスタローンが、90年代の多くの失敗作から自己の演技の幅を認識し、近年ではセルフパロディに徹することでファンを喜ばせているのとは対照的に、シュワ氏は自己の限界をいまだに認識できていないようです。物語の進行とともに主人公の本性が暴かれていくということが作品の要だったにも関わらず、その主人公を演じるのが一種類の演技しかできないシュワ氏だったということは、観客にとっては悪夢としか言いようがありませんでした。[ブルーレイ(吹替)] 4点(2015-05-05 01:26:17)(笑:1票) 《改行有》

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