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341.  岸辺の旅 《ネタバレ》 並みの演出家なら、過去のフラッシュバックをジャンジャン繰り出すのだろう。その類は一切やらないところはさすが。 小松宅のシーンで、浅野忠信が「怖い夢だった。」と過去形の語りを始めるとカメラがゆっくりと彼の顔に寄っていく。 ほとんど回想突入のパターンなのだが、カメラは彼の背後にあるドアの曇りガラスに映る影のほうに対象を移す。 あくまで現在進行形でドラマを語る。これもまた監督にとっては倫理感みたいなものなのだろう。 これ見よがしでない実演奏の提示、三人のレイアウト、ショットの持続と照明が見事に決まったピアノシーンが美しい。 そして風があり、滝があり、カーテンの揺れがあり、森の霧がある。 直近の侯孝賢と比較してしまうのは酷だろうけれど、あの山を立ち登る濃霧を見せられた後でこの申し訳程度の霧はどうしても見劣りしてしまう。 『リアル』であれだけの霧をやっているのだから。 ドラマの性質ということもあろうが、カレンダーで年月を提示しつつも携帯電話を一切出さず、それでいて違和感をまるで感じさせないのも流石。 山麓のシークエンスでは、深津絵里はモンペ姿。ラジカセや時計印マッチや小学校のレトロ感がなんともいい味を出している。 そして監督がメロドラマと語るだけあって、ラストの浜辺で響く波音の演出が素晴らしい。[映画館(邦画)] 8点(2015-10-14 00:09:49)《改行有》

342.  フラワーズ・オブ・シャンハイ 《ネタバレ》 約十数人が集って談笑している宴席。テーブル上のランプと共にその反射を受けて食器類も艶やかに光を放っている。 そのカメラ位置でフレーム内に収まるのは四~五人であり、後景を動く女性たちの動きや話し手の移り変わりに応じてカメラは左に右にと揺蕩う。 その会食シーンでは脚本もなく実際に俳優に酒を飲ませながら撮ったというから、即興の芝居に合わせての臨機応変のカメラワークでもあろう。 その動きは緩やかで、発話者が必ずしも画面内にあるとは限らない。そこで画面には(フレーム外への)遠心的な力が呼び込まれる。 いわゆる、静的・耽美的・審美的な映像を狙うなら、もう一段カメラを引いてフィックスで撮ればよろしいが、 それは単に絵画的な求心性へと向かうだろう。 だから剣戟と屋外ロケーションと風の主題を持つ『黒衣の刺客』が動的で、こちらが静的な映像主義だとは決して云えまい。 舞台を屋内に限定して外光と風を封印し、椅子とテーブルで俳優の動きを制限し、映画のショットを四十弱に制限する。 その自ら課した制約は『百年恋歌』第二話ではサイレントにまで達し、『黒衣の刺客』では画面を薄絹で幾重にも遮りもする。 その不自由の中から、世界の深まり・拡がりが見えてくる。[DVD(字幕)] 8点(2015-10-13 23:54:19)《改行有》

343.  バクマン。 《ネタバレ》 漫画を題材として映画ならではの特性を活かすとするならば、要となるのは必然的に絵を描く行為の具体性、身体性という事になるだろう。 例えば、絵が姿を現していくキャンバスをそのまま捉えていくクルーゾーの『ピカソ』。 例えば文字を書く手と鉛筆の動きをアクションとして、表情として捉える柳町光男の『十九歳の地図』。 本作では、まず野蛮なまでに荒々しいペンの音が描き手の生々しい息吹を伝えてくる。 それだけで充分に格闘の具体的描写となっているのだから、ライバルとの格闘イメージシーンなどは逆に意味として概括してしまっているようで アクションが際立たないという転倒が起こっている。 入稿締切までのタイムリミットにも時間の具体的な提示が欲しい。 何しろ、逆光ショットの多用によってとにかく画面が暗いという印象がまず来るのだが、 学校の階段上、通路、病院のベッド際、暗い室内から見るテレビ画面内の上段と、 ヒロインの小松菜奈が特権的に光芒を放つという映画的な論拠もあるだろう。 『ゲゲゲの女房』に続いて、宮藤官九郎の漫画家像がいい。[映画館(邦画)] 6点(2015-10-10 03:55:12)《改行有》

344.  罪の余白 《ネタバレ》 梗概的には心理戦が物足りないとか捻りがないという事になるし、絵面的には表情とダイアログ中心でロケーションや美術の魅力もまるでないという事になる。 無論、捻った展開がないから、表情アップが多いから悪い映画という訳でもない。饒舌すぎる音楽ははっきりと邪魔だが。 取り調べ室のシーンを始め、仮面の表情と素の表情を1ショット内で行き来する吉本実憂。 ラストショットが象徴するように、彼女の「凝視」こそ主題ともいっても良い。 芸能事務所での面接で加藤雅也から質問を受ける吉本実憂のシーンには何やらアドリブ混じりのような緊張感が漲り、 そこには彼女の生々しい「非ドラマ的な顔の露呈」(『アンドレ・バザン』)があって迫真である。 「映像の優位」ではなく「対象の優位」として彼女の表情はそこにある。 吉本と葵わかなが、学校の廊下で触れ合わんばかりの距離で対峙する顔と顔の距離感もいい。 ラスト、共に顔面に瑕を負うことになった内野聖陽と谷村美月の表情が救いとなる。[映画館(邦画)] 5点(2015-10-09 19:43:24)《改行有》

345.  グッド・ストライプス 《ネタバレ》 奔放なようでいて少し人見知りするところのある菊池亜希子。線が細く、いかにも優柔不断な中島歩。 二人の、その辺に普通にいそうな等身大の像が目を惹きつける。 少し倦怠混じりのほどよい距離感を保って向かい合い、並び合い、語り合う二人のナチュラルで他愛ないやりとりがいい。 式場での打ち合わせシーンのなんともユーモラスでリアル感溢れる対話などは岨手由紀子の脚本ベースだろうが、 二人のキャラクターを明快に提示しつつ、アドリブ芝居のような新鮮さがあって、さりげなくも素晴らしい。 妊娠から結婚へ。お互いの家族と交わっていく中での微妙な緊張と気まずさ、安堵、新たな気づき。 それらがふとした瞬間にごく小さな表情・視線の変化の中にたち現れる様が次第にスリルを孕む。 ふとしたアクシデントで夜の用水路に落ちてしまう菊池。結構大胆なショットを引いたカメラでさらりと撮っているのも凄い。[映画館(邦画)] 7点(2015-10-05 22:22:46)《改行有》

346.  屍者の帝国 《ネタバレ》 独特の動きをした群衆が雑踏を形作る俯瞰ショットがいくつかある。ほんの数秒のカットだが、一人一人が進行方向も動作もまちまちだ。 3DCGだろうとはいえ、それに費やす手間暇は相当のものだろう。 メカニックの動きには独創的な楽しさがあり、キャラクターのデザインは統一感があってタッチは端正、そしてアクションシーンも頑張っている。 帆船内のソファに反射する外光や、浮上するノーチラス号の船体をてからせるハイライトなどの処理も細やかである。 夕陽で赤く染め上がった灯台のロングショットや、ロンドンの夜景など、時折ハッとするような背景も差し挟まれる。 そのように端正な画面は作られているが、エリアや建造物などの構造・空間がさっぱり活かせていない。 特に肝心なクライマックスは人物の位置関係も不明瞭、二手に分かれた仲間がそれぞれどの辺で何をやっているのか。 目で合図を受けて飛び出したヒロインはどういう動線で動いているのか。 作り手のほうはもちろん場面設定をしたつもりだろうが、観る側には判然としない。 場面転換の度に入る緩慢なフェードアウトも物語の流れを滞らせる。ドラマがいま一つうねっていかない。[映画館(邦画)] 5点(2015-10-04 21:35:57)《改行有》

347.  ガールズ・ステップ 《ネタバレ》 非常に不入りらしい。確かに不入りだったが。同じJKものでも 馬鹿らしさに10分で退席した『ヒロイン失格』の方は大ヒットらしい。となると援護もしたくなる。貶しどころはそれこそ山ほどあるが。 思い入れたっぷりに抱き合っている5人娘の周囲を、エキストラの大人達が横目で見ながら行き交っている。 引きのカメラでそうしたドライな視点をふと採り入れたかと思うと、今度は海辺で一人一人をクロースアップしていく。 そして、次は青い海を背景に思い思いにはしゃぐ5人のロングショットへ。 ダンスシーンのカッティングと同様、感傷過多となりそうな表情アップとキャラクターから距離を置いた引きのショットが バランスよく織り交ぜられているので、個とチームのドラマとも調和している。 海を背に石井杏奈と磯村勇斗が自転車を押す坂道の望遠の感覚なども映画の図として無視し難い。[映画館(邦画)] 6点(2015-10-02 00:16:36)《改行有》

348.  ピース オブ ケイク 《ネタバレ》 飲みの席で陽気になったりカラんだり愚痴ったり、多部未華子の飾らないキャラクターが魅力的でいい。 借金で雲隠れしていた部下に、咄嗟にレジから札束を取り出し退職金だと渡してテレ笑いする綾野剛の、人の良い表情がいい。 そんな愛すべき二人が熱海のホテルで大喧嘩する。多部が男湯に乗り込んでの修羅場なのだが、 綾野の憎めないキャラクターもあって何故か微笑ましい。 必ずあるはずの二人の再会シーンでは、そこにどのような風を吹かせるのか。 終盤はその興味だけで画面を見守る感じだが、そこではしっかりと歌が流れ、疾走する二人が風になっている。 クワズイモは青々と揺れ、今度はカメラが風になって二人の周りを流れる。 そしてキスする二人のストップモーションが爽やかに映画を〆た。 前半のヒロインのモノローグはもっと削って欲しい。[映画館(邦画)] 7点(2015-09-30 23:36:29)《改行有》

349.  キングスマン 《ネタバレ》 タロン・エガートンが鏡に映る自分自身を見つめるシーンの反復。 当初の自虐と卑屈の入り混じった眼差しから、敵地に乗り込む直前の自信と尊厳に満ちた眼差しへ。 この視線のショットが細部ながらも彼の成長を物語って感動的だ。 クライマックスでは三段四段と状況を転がし、通路を駆け回りながらのガン・アクションでもアイデアを凝らした立ち回りと動きを披露する。 さらにはソフィア・ブテラとのアクロバティックな格闘もしっかりと見せ場にするあたり、サービス精神も抜かりない。 それらアクションシーンの露骨なコンピュータ処理もご愛嬌、ショット繋ぎのシャープなテンポによってケレン味十分に仕上がっている。 仲間は決して売らない、動物は殺さない、手癖の悪さに運動神経の良さ、そういう布石をあくまで主人公の行動レベルで 序盤から律儀に配置しておく語りも丁寧かつスマートだ。 時代はもはやグラス・タイプのウェアラブル端末。本作での携帯電話は大量破壊兵器となる。そのシニカルなアイデアも良し。[映画館(字幕なし「原語」)] 8点(2015-09-30 23:30:48)《改行有》

350.  GONIN サーガ 《ネタバレ》 福島リラを土屋アンナが冷蔵庫のドアで滅多打ちする、桐谷健太や東出昌大の身体に銃弾が突き刺さる、その行為自体はバイオレントなのだが画面を通した痛覚はどうも希薄だ。映画のせいなのか、こちらが不感症なのか。 離れた場所にある拳銃を何とか手繰り寄せて反撃を、という状況も幾度か作っているが、これらも位置関係の提示が不徹底でサスペンスにならない。 監視カメラやなりすまし携帯メールを巡る駆け引きも、竹中直人の凄味で何とかスリリングに仕上がっている感じだ。 クライマックスも何やら物足りないと思っていたところで、抜かりなくスプリンクラーの雨が炸裂して一安心。『イコライザー』の後では分が悪いが。 エンディングの空撮夜景と濃紺の海が何より艶かしい、というのも少し寂しい。[映画館(邦画)] 6点(2015-09-28 23:27:04)《改行有》

351.  黒衣の刺客 《ネタバレ》 何処其処のシーンがどれそれの映画を想起させ、、といった紋切り型はあまり相応しくないだろうが、 監督本人もパンフレットで「黒澤明などの侍映画」の影響について言及しているのだから、あの霧とか突き刺さる弓矢とか山中の騎馬の撮り方は 『蜘蛛巣城』あたりの淡い影響なのかもしれない。忽那汐里は『羅生門』?呪術を使った水の流れは何やら『雨月物語』のような。 その緩やかなカメラワークと大気の流れと人物の動きは、数々の美しいロケーションそれ自体による画面の固定化(審美化)、観念化を阻んでいる。 そしてスタンダード(一部ビスタ)のフレームゆえに意識が向く画面の深度と重層性。 襲い来る剣先を紙一重のスウェイで冷静にかわし、受け流していくスー・チーの優雅な動きと寡黙な表情にも惚れ惚れする。[映画館(字幕)] 8点(2015-09-27 22:36:54)《改行有》

352.  きみはいい子 《ネタバレ》 児童虐待を始めとする前半は観るほうも胸が詰まるが、撮る方・演じる方は尚更だろう。特に尾野真千子にとっては相当つらい芝居のはずだ。 虐待シーンの撮影(月永雄太)も子役に配慮しながらも、極力モンタージュに頼る事なく空間の単一性をできる限り持続させながらフレームと音を最大限に活用して痛ましいシーンを作り上げている。  尾野母娘の暮らすマンションの廊下、抑え気味の照明で統一された教室の内側から望む窓外、高良健吾がさすビニル傘。 前半の硬質気味の白を基調とした背景と、人物とのコントラストが印象深い。 不意にフレームインして尾野を抱きしめる池脇千鶴の動き。それまでの雨音が止んで、右手から日が差しこんでくるのが繊細な光の変化でわかる。 尾野の頬から涙が一滴したたり落ちると、太陽を映し込んだ校庭の水溜りに落ちた雨滴が水面に小さな輪を広げるショットに繋げる流れも憎い。 そこでの彼女の嗚咽、ラストの高良の呼吸など、生身の身体性へのこだわりも見える。 三者三様の抱き合うスキンシップがそれぞれ情感に満ちて素晴らしい。 高良が出した「家で抱きしめられてもらうこと」という宿題の感想を子供達が教室で語り合う、子供たちの表情が本当に素晴らしい。 そして、あのラストの暗転にも唸るしかない。[映画館(邦画)] 9点(2015-09-27 20:44:45)《改行有》

353.  アントマン 《ネタバレ》 まずはどこやらのオフィスの場面。マイケル・ダグラスの登場も束の間、背景ボケボケの浅いフォーカスのバストショットが 台詞刻みで単調に繋がれる。まさかと思ったが、これが3D向け作品とは。 画面の情報が顔面アップ以外何もないから、ショットが貧弱になり、観客はテンポを鈍く感じる。これ当たり前の話である。 目玉の特撮シーン以外は大抵この調子だから、ドラマがかったるい。 「最初は嫌いだったが、だんだん好きになってきた。」これ、間違っても本人に語らせてはいけない台詞ではないのか?。 そのような心の変化は、奮闘するヒーローを人知れず見守る中で、表情変化なりで提示するのが映画だろう。 このようなツンデレヒロインなら尚の事である。ラストの、ドア向こうのキスがまるで活きてこない。 指紋認証を手際よくクリアし、扉を凍結して開錠していくリズミカルな編集。 撃ち落とされた相棒の羽が地面にハラリと落ちる。 娘の笑顔に、ランプの明かりが作った人影が手を振って応える。 そういうさりげない細部が光るだけに惜しい。[映画館(字幕なし「原語」)] 5点(2015-09-23 18:11:13)《改行有》

354.  激動の昭和史 沖縄決戦 《ネタバレ》 アメリカ施政下26年目での映画化。いわゆる沖縄返還前年の映画である。現在に至るも何ら変わらない沖縄軽視への怒りと鬱屈は如何程だったことか。 一方の映画界は斜陽化の真っ只中だ。その中での精細なリサーチ、過酷なアクションを撮る新藤兼人・岡本喜八の 苦労は並大抵ではなかったはずである。 非沖縄的な風土・キャスト・言語に対する批判は容易いが、それはやはり酷だろう。 為政者側に特化した『日本のいちばん長い日』に対する反動でもあろう、軍部(参謀本部、32軍)・沖縄県民の双方を巨視的に描く 「叙事詩的リアリズム」(山根貞男)は、今度は米国兵士側を表象の対象から外した。 その視座は、日本軍の民間人軽視の描写を甘くもしていよう。 しかし、壕を出ろという軍人に抗議する大谷直子、軍人を弱虫と詰る女学生達の痛烈な叫びはカメラに正対して発せられている。 それは、画面を見る我々日本人たちへの痛罵という事に相違ない。 『ドイツ零年』のごとき、幼い子供たちの表情。そこには「主題におけるリアリズムとは全く異なったスタイルにおけるリアリズム」がある。[ビデオ(邦画)] 7点(2015-09-23 11:32:15)《改行有》

355.  ローリング 《ネタバレ》 屋内シーンでの、自然光を主体としたギリギリの暗さが絶妙な味を出していて、そこに浮かび上がる柳英里紗の露出した肌が艶かしい。 『パンドラの匣』の時ののっぺりした夜間シーンに比べても格段に良くなっている。 シネコンにかかる凡百ご当地映画のような、方言強調や有名観光スポットアピールもなく、かといって中心街の寂れぶりをそれらしく見せつけるでもない、 街角や郊外の飾らぬ佇まいを淡々と切り取る誠実さもいい。 ありふれた郊外の雑草地のロケーションがオープニングとエンディングを飾る「審美性からは思い切り遠い映画ならではの艶やかな時空」(「映画時評」『Playback』の頁)として画面に広がっている。 元教師を演じる川瀬陽太の卑屈でありながらごこか憎めぬ風貌とナレーション。癖のある脇役俳優達もそれぞれが個性的で面白い。 正気を失った松浦祐也が電気ドリルを持って三浦貴大に迫るシーンなどにもっとアクションとしての面白さがあれば尚良かったが。 タイトルであるローリングのモチーフ、「おしぼり」のリサイクルについてももう少し即物的な描写、あるいは回転・流転の画面が欲しかった。[映画館(邦画)] 8点(2015-09-21 22:58:09)《改行有》

356.  第五福竜丸 《ネタバレ》 序盤のマグロ漁の実録シーンはハワード・ホークスの『虎鮫』には劣るものの、瑞々しい活気が画面に漲って素晴らしい。 甲板上で頭を打擲され解体されていく鮫がのたうつ生々しさは、後にベッド上でもがき苦しむ宇野重吉の姿とも重なるだろう。 被曝までの約20分間で描写される船員たちの生活ぶり・仕事ぶりが丹念でいい。 被曝の瞬間、無音の中に白い閃光が画面を覆う。その数秒後に轟音と爆風が船を襲う、という描写が迫真である。 白い灰が降る中を滑る福竜丸の合成ショットが不気味だ。 前半の動に対して、静の際立つ後半、米国側調査団と日本側医師団との問答を通訳が介す。 その事務的口調の冷徹な響き。 宇野らの柔和なキャラクターもまた、映画の抑制的なトーンを象っている。[DVD(邦画)] 7点(2015-09-21 00:08:51)《改行有》

357.  天空の蜂 《ネタバレ》 足を引きずる本木雅弘とか息子の写真とか、曰くありげな所作が出てくる度に、これからその因縁やら理由付けやらが 回想シーンとして沢山語られるのだろうなと、見ながら気が重くなる。 今さっき対策室で語られた作戦の段取りをマスコミの実況中継がそのまま繰り返すといった二重説明の氾濫も煩いばかりだが、 これは90年代劇場型犯罪の風俗史的描写でもあり、お囃子とでも受け取ればいいのだろう。 その実況中継カメラが映し出す本木の一瞬の視線を、尋問されている仲間由紀恵の横視線が受け止め、その彼女のかすかな動揺を 女性刑事が見切る。 そうした視線のドラマは割合充実していると云っていい。最後の手段を実行するためヘリに乗り込む江口とその息子、 連行される本木とそれを見送る江口の息子、彼らの間に交わされる視線はカメラに正対し真っ直ぐだ。 その視線の応答は、結部の東日本震災のシーンまでを貫く。 最後でこれまた自衛官リクルート映画か、とも思ってしまうのだが。[映画館(邦画)] 5点(2015-09-20 10:50:35)《改行有》

358.  アンフェア the end 《ネタバレ》 ノワール的ムードの冒頭シャワーシーンや、篠原涼子と佐藤浩市が静かな炎に照らされる夜の隠れ家のシーンがいい。 黒ずくめ篠原涼子の黒髪がアクションごとにスローで官能的になびくのもいい。 敵か、味方か。信用ならない人間関係がサスペンスを孕むが、 中盤の拉致、脅迫、逃走という危機脱出の一つの山場にはもっと知略が欲しい。 これでは敵側の詰めが甘すぎて間抜けに見えるばかりだ。 今どきの映画なら、逃走劇の中でもっと市中の監視カメラも強調されるべきだろう。 クライマックスの舞台をビル高層階に設定し、階段やエレベーターでの追いつ追われつのアクションにしたのは面白い。[映画館(邦画)] 4点(2015-09-20 05:09:27)《改行有》

359.  筑波海軍航空隊 《ネタバレ》 特攻に出撃しながらたまたま敵が不在であった事で生還できた柳井和臣さんをはじめ、元特攻隊員4名の方々が語る証言は それぞれ90代でありながら佇まいも語りも明晰で、やはりエリートだと思わせる。 大戦で戦死した日本軍兵士の大半が餓死・病死であったことを踏まえれば、出撃直前まで食事には困らなかったというごく少数の海軍飛行予備学生の方々は 特殊な部類ではあるに違いない。貴重な証言であることは勿論だが。 作品として凡庸なのは、その貴重な証言に対して聴き手のレベルが低いからである。 記念館関係者らしき人物の、戦争は良くない的な半知性的コメントなど、作品の質を下げるだけだろうに。 2015年のこの次節に、あくまで「責任」から眼をそらす。テレビ的で八方美人の無難なインタビュー集に堕している。 作品中盤で、戦死された吉田信さんの日記が紹介される。これが活字のキャプションをナレーションと共に流すという代物なのだ。 恐らくは、旧仮名遣いで書かれた原本では観客には解りづらいだろうとの配慮なのだろう。 全くの余計なお世話だ。それでは、単に文の意味だけを差し出したにすぎないではないか。 肉筆の字面・筆跡に込められた感情を画面に提示させてこそ映画ではないのか。 柳井さんが披露してくれた、遺書替わりのアルバム。その感動的な紙面が一方にはあるのに。[映画館(邦画)] 4点(2015-09-19 23:07:14)《改行有》

360.  進撃の巨人 ATTACK ON TITAN エンド オブ ザ ワールド 《ネタバレ》 前編ダイジェストが終わり本編に入ると、何やら強制捜査らしきシーンなのだが、暗い屋内で照明は最悪。 おまけに不必要にカットを割りまくるので見るに耐えない。 その見苦しい照明と、バランスの悪いシネスコサイズのレイアウトは最後まで続く。 三浦側と長谷川側が対峙する中盤シーンの人物配置など、かなりいい加減だろう。 世界観の謎解きはかなりつまらなく、 映画の被写体にはまるで見えぬ相貌の主人公はひたすら意味不明な喚き声を上げ続けるばかり。 クライマックスは壁面が舞台だというのに、高低の恐怖感も巨人の巨大感もまるで演出できず。 勿論、飛翔シーンの爽快感など微塵もない。 兵器自体は様々に登場するものの、弓矢もロケットランチャーも遂にアクションとしての見せ場にはならない。 大団円が夜明けならば、そこへ向けて夜明け前の時間推移を描写して欲しい、というのも高望みのようだ。 かつての『ガメラ2』にはそれがあったのに。 主人公とは違う意味で喚き、弾ける石原さとみ以外、ほとんど褒める点がない。[映画館(邦画)] 2点(2015-09-19 22:19:23)《改行有》

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