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361.  刑事マディガン 夜のニューヨーク市街を仰角で捉えた導入部から、夜明けの街路に立つリチャード・ウィドマーク達へと連なるアバンタイトルのムード感と、パースペクティブの活きた構図が生むリアル感。本編中のブルックリン、ブロードウェイ、コニーアイランド、イーストリバーといったロケーションの空間もまた奥行きが強調され臨場感に満ちている。雑然としながらも見事に活写された屋外ロケと、主人公宅の(不似合いな)カラフルな屋内セットとの対比も家庭不和を仄めかしており面白い。同一設定の黒澤明『野良犬』と同様、都市の情景や捜査過程の何気ないエピソードの積み重ねが素晴らしく、情報屋、ポン引き、酒場の主人らとのやり取り自体が主人公の優れた人物描写となっている。とりわけ、旧知の元ボクサーの通報による酒場の場面などは、結果的に人違いに終わり本筋には直接的に絡まないにも関わらず、ウィドマークの人間味を感じさせ非常に印象深いシークエンスだ。アクション場面自体は少ないものの、犯人役スティーヴ・イーナットがウィドマークの隙を衝き一瞬で形勢逆転するアクションや、警官に職務質問されたとたんに紙袋の陰から発砲するアクション、クライマックスの至近距離での銃撃戦など、スピード感と瞬発性がやはり見事である。[DVD(字幕)] 8点(2009-10-24 20:22:40)

362.  ブレードランナー/ディレクターズカット<最終版> 《ネタバレ》 全編を貫くのは「見る」という主題。人造人間識別機の画面に映る瞳、潰される目、眼球製造者、フクロウの目。画面の到る場所に様々な「瞳」が提示される。人間は識別機を通してしかレプリカントを判別できない(直接視覚の無力)。ハリソン・フォードがエレベーター内のショーン・ヤングに視覚では気付かない場面なども象徴的だ。これを画面上で補強するのが、闇の領域と蒸気・雨を大きく取り入れて視界を遮るノワール風照明設計である(ブラインド等の使い方も秀逸)。この映画はその盲目的人間が、目を閉じ頭を垂れたルトガー・ハウアーとの視線の切り返しを経て「開眼」(夜の闇から晴天への転換)するドラマともとれるだろう。ラストで対峙するルトガー・ハウアーの見開いた瞳は映画冒頭の「青い瞳」へと回帰し、その台詞「オリオン座の片隅で燃える宇宙船」「タンホイザー・ゲートの側で輝く星」が、映画のファーストショット(夜景と炎の俯瞰)と重なり直結していく巧妙な構成が非常に見事である。[DVD(字幕)] 8点(2009-10-11 19:56:35)

363.  96時間 序盤の平穏な生活の場面では落ち着いた固定ショットが中心。誘拐場面では、手持ちカメラの微妙な揺れが心理を表し、後半のアクション場面では鋭利なカッティングが主人公の機知・技量・意志を印象付けていく。常套的ながら、感情に沿った撮影と編集によって物語自体も明快かつエモーショナルになっている。アクション場面のせわしない編集は半面でまやかしであり、特に中盤・終盤のカーチェイスは雑で脈絡ない繋ぎ合わせによって偽のスペクタクルに堕しているが、格闘場面の編集は小手返しや手刀といった最小限の身体動作による一撃速攻技が中心の為か許容範囲に納まっている。優しさと非情さ、冷静さと荒々しさの同居した主人公のキャラクター造形と、それを小道具類の活用によって描写していく手口も鮮やかである。同様に、彼からみた娘の無邪気で幼いイメージを冒頭のVTR映像と彼女の走り方程度で簡潔に印象付ける語り口の巧さも光る。そのヒロインの幼さ=弱さの強調も、グリフィス的な「最後の瞬間の救出」のドラマが盛り上がる所以だろう。[映画館(字幕)] 8点(2009-09-22 14:01:49)

364.  BALLAD 名もなき恋のうた 水面上を移動するカメラがゆるやかに河辺の娘に寄っていく。ススキの生い茂る水辺。思わず、溝口健二『山椒大夫』の安寿を想起する。娘(新垣結衣)は髪型も安寿(香川京子)そっくりだ。『三丁目の夕日』の劇中に図らずも『雨月物語』を忍ばせた山崎貴らしい衒いのないしたたかさ。ここから、溝口的主題も浮かび上がってくる。『山椒大夫』の安寿、『近松物語』のおさんと、溝口映画の中で時代のシステムの犠牲となる女性を演じてきた香川京子が、クライマックスで自由を求め駆け出していく新垣結衣を感慨深げに見送る。そこで初めてアップとなる彼女の柔和な表情の素晴らしさ。大女優に対する敬意に満ちた感無量のショットである。小津安二郎を思わせずにはおかない記念写真の使い方も秀逸だ。全般的にショットはシネスコを上手く活かし、アップを抑制しながら長めのショットで役者の演技をじっくりと見せる撮り方で非常に好ましい。水辺での二人掛けの殺陣や、敵本陣への朝駆けから乱戦への突入、本陣内での決闘まで、いずれの擬斗シーンもカットを割らずにしっかりと草彅のアクションを撮っている点を大いに評価したい。河辺の場面で、四名を捉えていたショットを微妙なカメラのずらしで二者の会話に移行させていく巧さ。ラストで新垣が城門から画面手前まで走ってくるのを望遠の長回しで捉えたショットの長さによって、最後の銃声のショックを強調する演出。少年の一家が現代へと消える瞬間を、新垣の微妙な目の表情変化とフレーム外の音で処理する演出などなど、VFXの監督がしかるべき場面では自らの得意技に寄りかかることなく、シンプルな映画的工夫に徹する姿勢が実に好ましい。実写映画はあくまで実写的に映画を志向すれば良いのであって、別物であるアニメ原作に隷属する必要など全くない。映画の中で、少年の目が変化していく(実写ならではの)見事さ。しっかりと「成長」が描かれた映画である。[映画館(邦画)] 8点(2009-09-14 20:35:36)

365.  ラ・マルセイエーズ 平民側、宮廷側の双方からフランス革命を描く。群像劇らしく、モブシーンにおいても個々の人間それぞれに焦点を当てるかのように、クレーン移動の多用によってエキストラ一人一人を丁寧に映し出していくキャメラが素晴らしい。義勇軍のマルセイユ出発時、パリ到着時、宮殿突入前の整列場面のスケール感に満ちた長大な俯瞰ショットや、木漏れ日の中を行軍する隊列のショット等は単なるスペクタクルに留まらない人間味と悲喜の感情に溢れた名場面である。平民側の主役というべきボミエが義勇軍に志願する場面での、家族とのやりとりの淡々とした切なさ。ルノワール映画の刻印ともいえる特徴の一つ、窓を介して彼が小さく走り去っていくのを捉えた素晴らしいショットが忘れがたい。一方の国王側の描写もまた一面的になることはない。ユーモアを交えた食事場面などによって、国王・王妃らの等身大の人間性が描きこまれており魅力的である。演出、役者の好演のみならず、まさにルノワールの人間観の表出の賜物といえる。[DVD(字幕)] 8点(2009-08-14 23:15:54)

366.  アマルフィ 女神の報酬 商業映画、特に『~記念大作』の類の必然として各俳優やロケ地のサービスショットなり、タイアップなりのしがらみに満ちた「企業の映画」たらざるを得ない中、画面にはそれに甘んじきらないスタッフの自己主張が随所に感じられて頼もしい。 何よりも主流ヒット作に顕著ないわゆる「万人受けの法則」つまり感傷場面の引き伸ばしに対して極めて自制的である。 主演二人のベランダの場面から、翌朝へのドライな繋ぎ。クライマックスから後日談への唐突でぶっきら棒な暗転。背中で隠したラストの「きれいな海」等はいかにも批評的で面白い。 出自やら来歴の説明を確信的に省いた風来坊のキャラクターも実に映画的で正しい。 無言を貫く主演二人の一連の動作と視線によって興味を引かせる導入部。これが終盤に活きてくる。渋滞の喧騒の中、二人は互いの言葉を聞き取れない。二人があくまで言葉によらずアイコンタクトのみによって意志を疎通させる展開の映画性。 また、空港の場面で戸田―スリの男―織田―天海親子、といった具合に人物の出し入れを(さりげない伏線の導入を含め)的確な流れで捌いた画面連鎖の見事さ。 これら、主要人物からエキストラまで複数の人物の頻繁な出入りが一貫して画面に活力を与えており、監視カメラ画像の連鎖を含めた引き、寄りのバランス感覚も悪くない。 クライマックスで織田裕二と佐藤浩市が一瞬交錯し、すれ違うショットの画面処理も的確で、二人の相容れない行路を明確に可視化している。 結果的に、類似した主題ながら台詞過多と画面の停滞で後半失速した東宝映画『誘拐』(1997)の愚を回避している。[映画館(邦画)] 8点(2009-08-13 19:21:37)《改行有》

367.  死の接吻(1947) カーテンのライン、柱といった垂直のラインを多用して人物を狭所に配置し、夜の闇と人物の影によって黒の領域を大きくとった画面設計。そこに周囲の雑音を無音レベルまで消した録音効果が組み合わさり、息詰まるような焦燥感と切迫感が生まれている。その効果は序盤の高層ビルエレベーター内の場面、リチャード・ウィドマークがカーテンの隙間から目を光らせるレストランの場面、そのレストランの外で主人公ヴィクター・マチュアを待ち受ける黒塗り車の場面において絶大である。その異常な静けさが緊張を最高度に高めている。後半、ヴィクター・マチュアが裏切り者として狙われる側となってからの展開は特にサスペンス感に溢れ画面から目が離せない。これがデビュー作となるリチャード・ウィドマークの悪役像も強烈な印象度だ。[DVD(字幕)] 8点(2009-03-20 21:00:22)

368.  土と兵隊 冒頭で西へ進む輸送船が立てる白波とオーヴァー・ラップして、上陸後の兵士たちの突撃をカメラは側面から捉える。その行軍の模様は全編一貫して画面右手から左方向へとなるよう厳格に構図が設定されており、その反復と一貫性は行軍の、ひいては戦争というものの単調さと過酷さをあえて執拗に強調しているかのようである。戦闘場面でもやはり、側面位置からあるいは部隊後方から画面奥方向への望遠のいずれかによって組織行動を客観的に映し出し、特定個人のドラマが大きくクロースアップされることはほとんど無い。注目すべきは小火器による地道な砲撃で家屋の外壁を徐々に突き崩していく様を克明に捉えたモンタージュであり、日中戦争自体を象徴化したものととれる。一方では人間たちが行軍する足元の草花や、休憩中に空を流れる雲、廃墟をうろつく動物たちの写実的な点描が戦争行為を相対化させ、映画は無常観すら漂わす。あくまで刻苦や精励に主眼を置き、安易なヒロイズムや愛国主義とは無縁の行軍描写は『五人の斥候兵』に対するルース・ベネディクトの指摘のように「反戦」的とすらいえる。検閲制度のさなか、時局への迎合に対しぎりぎり踏みとどまる田坂監督の矜持と誠実さを示す作品である。[ビデオ(邦画)] 8点(2009-02-11 22:06:46)

369.  月世界の女 犯罪映画として始まり、科学映画へ、そして最終的にはメロドラマへと落ち着いていく奇想天外さ。設定として前半のほとんどが夜の市街、後半が月世界となり、必然的に全体としてやや暗めで硬質の画調で統一されている。月砂漠のセットでは、さらに光源や光量を相当工夫して月面の冷ややかなムードを醸す。その中で一際印象的な場面。地球を飛び出したロケットの窓から、搭乗員たちが太陽を望むシークエンスがとりわけ美しい。地球の背後から太陽が昇りはじめ、大きな光輪を作る。悪役的人物、恋敵、密航少年を含め老若男女を網羅した6名がともに太陽の直射光を享受しながら陶然とそれに見惚れている。フリッツ・ラング作品としては異質な場面のようにも思えるが、後の様々なSF映画にも登場する「光への賛歌」とも呼べる感動的なシーンがここにもあった。[DVD(字幕)] 8点(2009-01-04 22:27:04)

370.  人生模様(1952) O・ヘンリーの有名短編を原作とするオムニバス5話。各々20分弱の短編だが監督はFOXを代表する錚々たる顔ぶれである。 第一話「警官と賛美歌」:チャールズ・ロートンの傘ナイスキャッチと空振りキックは抱腹絶倒。その驚愕の反射神経ととぼけた表情のアンバランスが絶妙だ。 第二話『クラリオン・コール』:鏡像を使った演出。そしてギャング役リチャード・ウィドマークの憎々しい悪役像の魅力。 第三話『最後の一葉』:雪と強風の実感描写、ドアの開閉を契機とした場面転換が見事。美術商と画家の無言のやりとりのさりげさが良い。 第四話:『赤酋長の身代金』:子供に翻弄される誘拐犯の表情のリアクションが可笑しい。人間と熊が共演するショットのハラハラする面白さはハワード・ホークスの真骨頂。 第五話『賢者の贈り物』:主演(ファーリー・グレンジャー&ジーン・クレイン)の若夫婦が抱き合うツー・ショットの至福感。原作が豊かに膨らまされ、貴金属店の主人の粋な計らいと帰り道での募金というオリジナルエピソードが、ささやかながら情話を巧く盛り上げている。 [DVD(字幕)] 8点(2009-01-03 22:30:00)《改行有》

371.  日本列島 現代にも通じる、他国の戦争を踏み台にした「経済成長」のいかがわしさ、そして米国の実質的傀儡としての日本の姿。それは全編にわたって執拗に通奏され、強調される米軍機の暴力的な爆音として示される。 これが効果的なのは、日常場面での状況音・SEが相対的に小さく捉えられているか、あるいは部分消音されているからだ。 その不協和音が最高潮に達した時にシンクロする窓ガラスの破砕音と芦川いずみの絶叫が痛ましい。 ラスト、窓外に国会議事堂を配置した喫茶店内ではアフレコで芦川いずみらの会話だけを残し、周囲のテーブルにいる官僚たちの会話音声を確信的に一切消し去って世界を断絶させる音響演出が製作側の意図を如実に伝えている。 逆光でどす黒くつぶした国会議事堂を背景に、その闇と拮抗しながら毅然と歩く芦川いずみの姿を横移動で捉える長回しゲリラ撮影は、重々しい伊福部音楽と相俟って熊井監督の執念を示す渾身のショットだ。[DVD(邦画)] 8点(2008-01-23 22:48:28)《改行有》

372.  驚異の透明人間 サーチライトに浮かび上がる秀逸なオープニングタイトルが即座に次の脱獄場面に連携する。 この脱獄のシークエンスがカットバックを含むわずか10カット足らず、時間にして1分弱の簡潔明瞭さ。極端な短さながら、サーチライトとマシンガンによる光と影のコントラストによってその印象度は強烈である。 カラーの時代ながらモノクロの選択が功を奏している。透明化が不完全で実体が現れてしまう場面の特殊撮影もまた、モノクロ効果と馴染んで違和感がない。その特撮もわずか数カット。 その効果を最大限に活かすために全編をモノクロに統一する映画人としての矜持。 フリッツ・ラング作品の美術担当によって培われただろう、ポイントを押さえたセット・小道具類へのこだわりと創意工夫が随所で見事に活きている。[DVD(字幕)] 8点(2007-09-30 14:01:12)《改行有》

373.  野菊の墓(1981) 木下監督版との大きな違いでもあるクライマックスの花嫁行列の場面では、静と動・紅と白の対比を活かしたクロスカット効果と相俟って主題歌が一段と昂揚感を煽る。この当り、マキノ作品的な歌舞性が垣間見れる。特にロケーションに関しては時代環境的な要因からして絶対的に不利なリメイク作品だと思うが、綿摘みに遠出する場面をはじめとしてそうした制約を感じさせない開放的なロケーションと撮影が素晴らしく、尚且つカラー作品として色彩の美しさによって旧作にも負けない景観の魅力を引き出している。画面上のアクセントとして行灯や引き戸などを効果的に配置した屋内撮影や、場面転換の随所に挟まれる情景ショットも絶品だ。特に夕景の数々が素晴らしい。[DVD(邦画)] 8点(2007-09-15 21:52:23)

374.  ロッキー・ザ・ファイナル 監督シルヴェスター・スタローンによる直近3作のアクションシーンは1ショットに拘ることなく、忙しないほどのモンタージュ加工によって作り上げられる。 旧作で、寝起きから生卵一気飲みまでを捉えた一連の長回しや、持続的なウェイトリフティングとプッシュアップ、歩道から美術館の階段上までを主人公のロードワークと共に駆け上がる見事なステディカム移動撮影といった、1ショットが含み持った感動は今作には見られず、ことごとく細かいアクション繋ぎによって編集されている。 主人公の生理と同調しつつ、主人公に伴走しながら階段を登りきるカメラワークの持続があってこそ観る者により高揚をもたらすはずなのだが、テーマ曲の尺とリズムを偏重した結果か、勿体ないカットの割り方と云わざるを得ない。 一見、意匠的には旧作を踏襲しているように見えながら、過度に分解された1ショットの運動の充実度は薄い。 一方で、イエスの肖像で始まる第一作に回帰し、その表象として画面を彩る個々の光は印象的だ。 スケートリンク跡地で、主人公の両肩に輝くヘッドライトは五作目で語られる「Angel」だろうか。 スタローンはジェラルディン・ヒューズの玄関先に「光あれ」と電燈をつけ、彼は逆にこの光に照らされ、エキシビション・マッチの決意を固める。 そして、最後の花道を振り返る彼を照らすスポットライトの光がひときわ美しい。 [映画館(字幕)] 8点(2007-04-22 01:12:05)《改行有》

375.  ストロベリーショートケイクス ルームメイトの二人が夜の屋上で会話している。二人のコミュニケーションのずれが遠景を横移動する上下線の電車灯の動きで明快に示されている。位置関係からタイミングまで絶妙だ。池脇千鶴がベランダのブランコから消灯する東京タワーに向かって語りかける場面の的確なタイミングも然り。ハムスターを埋葬している岩瀬塔子の背景の鉄道高架を走る電車に反射する夕陽の光線などなど、奥の情景にある機械的な光の運動に手前のドラマをあくまで自然に組み合わせていく緻密さ、芸の細かさは見事といってよい。発車寸前の電車デッキ内でのやりとりも臨場感に満ちて素晴らしい。各々個性的な携帯電話着信音や、各人各様の置き時計の機械音など、音の感覚も鋭敏かつ繊細である。[映画館(邦画)] 8点(2006-11-05 22:22:28)

376.  シムソンズ 《ネタバレ》 勉強のみならず、カーリングでも0点しか取れないと森下愛子にからかわれる加藤ローサが憮然として おかずをつまむと、それは0の形をした地元・北見産のオニオンフライだったというような視覚的なギャグの用法の数々。 真っ直ぐな一本道などのロケーションと競技リンクのライン、そしてそれらをヒロインらの素直なキャラクターとシンクロ させる清新な画面作り。 初歩のぎこちないプレーぶりから、錬度をあげていく様を丁寧にショットで積み重ねていく描写の誠実ぶり。 誉めるべき箇所が多々あるだけに、やはりラストの未練がましい引き伸ばしが勿体ない。[映画館(邦画)] 7点(2018-02-28 22:29:08)《改行有》

377.  キングスマン: ゴールデン・サークル 《ネタバレ》 ストーリーの中に、水中に潜る・高所に登るなど舞台の高度差を組み入れてストーリーを構築するところが前作にも通ずる巧さ。 前作のスカイダイビングに相当するのが、今作でのゴンドラの滑落といった具合だろう。 上昇ー下降の動線を踏まえながら物語を作っているのがわかる。 冒頭の潜水や下水管の移動は、中盤の水攻めを通して前作との繋がりも強調する。 蘇生装置のギミックは、種明かしの説明だけでなく、実際に活用するシーンをつくって反復してみせることで より説得力を付与する。これも的確な処理だ。 追跡装置を女性に仕込むのに躊躇う主人公は後ろ手で装置を隠す。 その後ろ手は、クライマックスの宿敵との格闘で今度はフェアに戦う為の所作として昇華される という具合に、様々な反復のテクニックも充実している。勿論、輪投げやゴンドラなどのサークルのモチーフの変奏も。 それとこのシリーズでは、世界の危機なるものが、身体的な疾患の形で具体的に提示されるのもいい。[映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2018-02-24 16:01:23)《改行有》

378.  羊の木 《ネタバレ》 バンドの練習場を覗いていたり、暗闇の中から現れたり、松田龍平はことごとく唐突に登場する。 飛び蹴りや車での轢殺もフレーム外からの突然の闖入であり、そうした神出鬼没ぶりも 彼のキャラクターの特異ぶりを際立たせる。 突然降り出すにわか雨、病院での雨垂れの陰影はいかにも芦澤明子らしい造形だ。[映画館(邦画)] 7点(2018-02-18 15:40:28)《改行有》

379.  スリー・ビルボード 《ネタバレ》 三枚の広告看板を見下ろす高台にあるブランコ。 一方が腰掛け、一方が立って対話することで、画面に高低差が活かされ、共に並んで腰かけることで 二者の距離が縮まり、心が通い合うのを演出できる。 頑ななフランシス・マクドーマンドが、ウディ・ハレルソンやサム・ロックウェルといっとき心を通わすのも この遊具を介してだ。 敵対し、あるいはギクシャクした関係の者たちは斜めに向かい合って座ったり、背中を向け合って座るという関係にある中、 マクドーマンドとサム・ロックウェルが運転席と助手席に並びあって座るラストは苦味を含みつつも後味がいい。 ハードボイルドのヒロインの家の庭先にある二台のブランコという小道具が、彼女のキャラクターや背景について 様々な想像の余地を与えてもくれるのだ。[映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2018-02-03 23:24:25)《改行有》

380.  伊藤くん A to E 《ネタバレ》 木村文乃がそれぞれ正対して聞き取りしていく四人の女性との切り返しショット。 これが、終盤の彼女の「彼女たちは私なのだ」という科白にも絡むのだろう。 長回しを効果的に使い、美術と人物の配置をよく考えながら、時に突き放し、 時にはキャラクターの心の動揺に不安定にシンクロしつつショットを作っている。 ラスト近くの木村と岡田の対話ではその中に陽光を的確に採り入れる芸当なども見せてくれる。 ヒロインの涙の芝居に対しては、そこであえてカメラを引いてくれれば言うこと無しなのだが。 浴槽の中を潤し満たしていく水道の流水音が、彼女の生命力を表すように響き渡る、といった演出もなかなかいい。[映画館(邦画)] 7点(2018-01-17 22:17:10)《改行有》

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