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【製作年 : 1990年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
21. トラックス<TVM>(1998) 《ネタバレ》 こういった代物の場合「○○のリメイクとして考えると微妙だけど、映画単品として考えれば面白い」ってパターンもある訳ですが…… 残念ながら、映画単品として評価しても微妙な出来栄えでしたね。 全体的なクオリティは五十歩百歩なのに「地獄のデビル・トラック」(1986年)にあった「馬鹿々々しさ」「愛嬌」が失われてるというのが、何より残念。 爆発シーンも控えめになってるし、今回の籠城場所には拳銃が一つあるだけなので「人間と機械が戦ってる」感じも薄いしで、どうもテンションが上がらない。 陰鬱な作風と併せて考えるに「地獄のデビル・トラック」はアクション映画だったが、本作はホラー映画であると解釈する事も出来そうなんだけど、それにしては「一応拳銃も出てくる」「終盤には爆発シーンもある」って形なので、何か中途半端なんですよね。 元ネタとは違う魅力を出そうとしたのであれば、変に媚びるというか、元ネタにあった要素を少しだけ再現するような真似はせず、もっと「陰鬱なSFホラー映画」という方向性に振り切った作りにすべきだったと思います。 機械からのモールス信号を解読した訳でもないのに「やっと分かったぞ」「奴らが欲しいのは燃料なんだよ」って言い出す場面も不自然だったし、脚本も褒めるのが難しいんですよね。 元ネタにあった馬鹿々々しさが薄れてる分だけ「脚本の整合性」という意味ではアップしてるだろうと思ってたのに、全然そんな事は無かったというか…… 全体的に「長所は失われ、欠点はそのまま」って形に思えちゃって、非常に残念でした。 それでも、あえて良かった箇所を探すとしたら…… ロズウェル事件と絡めて、一応は「機械が暴走した理由」に説得力を与えようとしてる所。 「有害なガス」という要素で、危険度を高めてる所。 あと「防護服が勝手に動いて、殺人鬼のように襲ってくる場面」は中々感心させられたとか、そのくらいになっちゃいそう。 最後も「助けに来てくれたヘリは無人だった」=「主人公達は決して助かった訳ではない」と感じさせるバッドエンドで後味悪いし、どうも好みじゃないです。 ……とはいえ、能天気なハッピーエンドだった「地獄のデビル・トラック」とは真逆のオチなので、こちらの方が好きという方もいそうですよね。 「トラックス」の方が先に作られており、後から「地獄のデビル・トラック」が作られていたとしたら「真面目なSFホラー映画が、馬鹿映画にされてしまった」って印象になってたかも知れないですし。 やはり、こういうリメイク物は評価が難しいし、どうしても厳しい目で見ちゃうから不利だなって思わされた一品でした。[DVD(吹替)] 4点(2022-02-02 11:57:38)(良:1票) 《改行有》 22. マウス・ハント 《ネタバレ》 人間にとってネズミは害獣だけど、ネズミにとっては人間が害獣という、そんな当たり前の事に気付かせてくれる映画ですね。 圧巻なのは「釘打ち機」の場面であり、人間による何気無い大工仕事が、ネズミにとってはトンデモない災害となる事を描いていて、これには感心しちゃいました。 日常生活で見慣れたはずの「釘」が、ネズミ目線だと凄まじい殺傷兵器になっちゃうんだから、もう吃驚です。 こういう「視点や発想の切り替えによる面白さ」って、観ていて嬉しくなっちゃいますね。 ベッドや時計もあったりして、居心地が良さそうな「ネズミの寝床」の描写も好きだし、カップの取っ手を潜ったり、ピアノの鍵盤を走ったりと、家を駆け回るネズミの描写が、きちんと面白かった点も評価したいです。 ただ、ネズミの糞を食べたりとか、観ていてエグい場面もある事。 そして、終盤の展開が唐突過ぎて、流石に白けちゃった事が残念ですね。 特に後者は致命的であり (えっ……なんで主人公兄弟とネズミが仲良くなってるの?) って、全く納得出来ないまま映画が終わっちゃう訳で、置いてけぼり感が凄かったです。 弟のラーズは「糸」に拘りがあったはずなのに、最後は製糸工場からチーズ工場に変わってるのも、何かスッキリしないし…… 気になって計ってみたら、主人公兄弟が家を失い疲れ果てて眠るシーンから、僅か三分で無理矢理ハッピーエンドにしてるんですよね。 これは流石に急展開過ぎるし、説明不足でもあったと思います。 ネズミがシェフになるオチとか「レミーのおいしいレストラン」(2007年)を先取りした感じでもありますし、一見の価値はあると思いますが…… 最後の最後で、絡まった糸のようにモヤモヤが残ってしまう。 そんな一品でした。[DVD(吹替)] 6点(2021-12-08 06:34:01)《改行有》 23. ショーガール 《ネタバレ》 何処となく「イヴの総て」(1950年)や「哀愁の花びら」(1967年)を連想させる内容。 女性のショービジネスにおける若手とベテランの確執を描いており、既視感は否めないんだけど、その分だけ王道の魅力もあるって感じですね。 上記二作に比べると女優陣が露出度高めで、エロティックな要素濃い目なのも、結果的には程好い「個性」になってた気がします。 それと、主人公ノエミ(=若手)とクリスタル(=ベテラン)の関係に、何やらレズビアンな匂いが漂ってるのも、興味深いポイント。 別れのキスの場面なんて、明らかに友情を越えた愛情というか「性愛」の匂いが感じられますし。 しかもノエミが出会う男は最低な奴ばかりで、女性にだけ優しい眼差しが注がれてる作りなんですよね。 この辺りの歪さは、オタク女子が描く「美男子だらけの同性愛世界」の性別逆転バージョンって感じにも思えました。 本作に不思議な魅力を感じてしまうのって、案外この「男にとって都合の良いレズビアン世界」っぽさにあるのかも知れません。 そんなこんなで、自分としては「女優陣の性的な魅力」「レズ要素」を好意的に捉えた訳だけど、それがそのまま「下品で低俗」「あざとくて幼稚」と欠点に感じる人もいるでしょうし、評価が分かれやすい映画だと思います。 正直言って、脚本の筋運びも雑であり(女友達のモリーがノエミを許す流れが唐突、など)完成度という意味では、決して高くないですからね。 ノエミが麻薬に手を出す場面や、クリスタルを階段で突き落とす場面を妙にアッサリ描いたりとか、監督の手腕にも疑問を抱いちゃう場面が多いです。 それでも、自分としては「好き」か「嫌い」かと考えたら前者になっちゃうというか…… なんか憎めない映画なんですよね。 観客どころか、脚本家のジョー・エスターハスにすら自虐ネタにされ「アラン・スミシー・フィルム」(1998年)で笑いものにされてるのを観た時も(もっと自分の作品に愛情持ってやれよ)って思えて、寂しくなっちゃったくらい。 その他にも、色んな映画で「最低の出来」と揶揄されてるし「ショーガール」ならどれだけ馬鹿にして笑っても構わないって扱い受けてるけど、ちゃんと良い所もあると思うんですよね。 終盤、モリーを傷付けた男に復讐するノエミの姿には、スッとしたし…… 階段で突き落とされたクリスタルが、ノエミを責めようとせず「私も昔、同じ事をしたから」と淡々と語るのも、彼女が背負ってきたドラマを窺わせるものがあり、味わい深い場面でした。 ヒッチハイクで始まり、ヒッチハイクで終わる構成も、綺麗でしたね。 ノエミが出会った男の中では、この最初と最後に出会う「スーツケースを盗んだ男」が一番マシだったんじゃないかと思えちゃうのも、皮肉な魅力があって良かったです。 本作を世間が絶賛してたら(そうかぁ?)とは思うけど、まぁ反発はしないだろうし、逆に嘲笑の対象にされてたら「そこまで悪くないだろ」と庇いたくなる。 そんな距離感の、不思議な映画です。[DVD(吹替)] 6点(2021-11-25 22:29:03)(良:1票) 《改行有》 24. スクリーム2 《ネタバレ》 作中の台詞にある通り「続編はオリジナルを超えられない」を体現しちゃってるとしか思えない仕上がり。 初代より面白い続編も色々あるのは間違い無いんですけど、残念ながら本作は該当しなかった気がしますね。 一応、良い所も幾つかあるんだけど、それらは大体「1」の時点で存在してた要素だったりするので(映画オタク的な続編論議の面白さとか)目新しさが無いんですよね。 冒頭の映画館での殺人も中々ショッキングなんですが「1」の冒頭に比べると見劣りしちゃうなって、つい思っちゃいました。 それでもあえて「2独特の魅力」を探すとすれば……前作で投げっ放しだった要素を色々拾って、決着を付けている点が挙げられそうかな? 「冤罪をかけられたコットン」が、その後どうなったか描いたり、デューイとゲイルのロマンスの続きを描いたりしてるので、観ている側としては(そうそう、そこが気になってたんだよ)って、嬉しい気持ちになれるんです。 それでいて、新たに消化不良な要素を生み出すような真似はしてないし、その辺りは「1」より綺麗な作りだったと思います。 前作で描かれた「現実」に比べると「スタブ」ではシャワーシーンが追加されてるのもニヤリとしちゃったし、作中映画の「スタブ」の使い方も上手かったですね。 「この話が映画になったら、シドニー役はトリ・スペリング」という会話が前作にて行われてましたが、それが実現している辺りも面白い。 また、今回の黒幕となる「ビリーの母親」の存在は前作の時点で示唆されてたんですが、その場面を「スタブ」で再現し、自然にヒントを与える形になってるのも良かったです。 で、悪かった点はというと……やっぱり、観終わった後にスッキリしない点が挙げられそうですね。 ラストにて、主人公シドニーを救ってくれるコットンが嫌な奴なので、どうも爽快感に欠けるんです。 しかも彼がヒーローとして祭り上げられる事を示唆して終わるもんだから、折角のハッピーエンドに水を差された形。 シドニーの新しい彼氏であるデレクは良い人だったのに、犯人と疑われつつ死んでしまったって件も、後味の悪さを倍増させてた気がします。 作中にて「ショーガール」を揶揄するような台詞がありましたが、正直これも大差無い出来栄えというか…… 個人的には「ショーガール」の方が面白かったくらいなので、なんか凄く恰好悪かったですね。 やっぱり、映画の中で他の映画を否定的に語るのって、あんまり好きになれないです。[DVD(吹替)] 5点(2021-11-03 09:00:58)(良:2票) 《改行有》 25. スクリーム(1996) 《ネタバレ》 2021年に鑑賞してみると「主演はドリューバリモアかと思ったのに、冒頭で殺されて吃驚」感が当時より高まってる気がしますね。 この「電話の向こうの殺人鬼に襲われる」導入部は秀逸であり、ウェス・クレイブン初期の秀作「鮮血の美学」に通じるような、陰鬱さと絶望感があったと思います。 此度再鑑賞してみて(ここだけクオリティ高過ぎて、浮いてるなぁ……)と感じちゃったくらい、見事な仕上がりでした。 作中で論理的な手掛かりが示された訳でもない為「犯人探しのミステリー」としては成立していないんじゃないかと思えますが…… それでも「犯人は二人組」「最初に犯人かと疑われた彼氏のビリーが、本当に犯人」ってのは意外性があって、良かったですね。 この辺りは、単なるスラッシャー映画の枠に留まらない魅力を感じます。 鑑賞後に「スクリームの犯人は誰か知ってる?」と周りに語りたくなっちゃいますし、本作が公開当時ヒットしたのも、大いに納得。 冒頭から「二つのドア、どっちにいるでしょう?」というクイズを出したり「ビリーは犯人ではない」と思わせるミスリードに貢献したりと「犯人が二人いる」事に、ちゃんと意味があるのも良かったです。 作中にて「ホラー映画の法則」を茶化す場面が挟まれているのも、特長の一つ。 「ヴァージンの特権」とか「すぐ戻るって台詞だけは言わない」とか、生き残るコツについて説明する件も面白かったけど、個人的に一番ツボだったのは「殺さないで」「続編にも出たい」と訴えてた女友達キャラが、本当に殺されちゃった場面ですね。 その後、殺人鬼達も「俺達は生き残って、続編を作ってやるんだ!」と言ってたのに死んじゃうし…… 何とも皮肉で滑稽で、人死にが絡んでるのに、つい笑っちゃいました。 ホラー映画が嫌いなヴァージン少女のシドニーと、ホラー映画オタクな殺人鬼のビリーっていう主人公カップルの組み合わせも面白くって、真相を知った上で再見すると、序盤のやり取りが更に楽しめちゃう作りなのも良いですね。 ビリーは「エクソシスト」のテレビ放送版で、過激なシーンが省略されてる事に不満を示したりと、実は序盤からオタク的な一面を見せていたし、ビデオ店で働くランディに絡む場面では「主人公の彼氏」とは思えないくらいの「嫌な奴」っぷりを披露していたしで、その後の展開に自然に繋げてる辺りも上手い。 犯人の動機について「ホラー映画が原因じゃない」「両親が離婚したせい」「周りの期待がプレッシャーになったせい」とわざわざ語らせているのも、脚本家の「ホラー映画愛好家」としての譲れない一線のようなものが窺えて、面白かったです。 「怪しまれないように自分達も傷を負っておく」にしても、シドニーに止めを刺してからやるべきだろうに、勝手に自滅した犯人達が間抜け過ぎるとか、デューイとゲイルのロマンスなど、中途半端に終わった要素が多くて消化不良とか、不満点も色々あるんだけど…… まぁ、この映画の場合、作中でホラー映画を観て楽しんでる若者達同様、そういう部分にツッコミ入れつつ観るのが正しい作法なんでしょうね。 実際、誰かと一緒にコレ観た時は絶対「いや、先にシドニー殺せよ!」ってツッコんじゃいますし。 そういった諸々も計算して、意図的に「ツッコミ所」を用意した脚本だったのだとしたら、本当に見事だと思います。 あとは……「エルム街の悪夢」は1以外は最低と作中で言わせるのは、ちょっと大人げないって思えた事(ウェス・クレイヴン監督は初代「エルム街の悪夢」の監督&脚本担当) それと「13日の金曜日」でジェイソンが出てくるのは二作目からってのは間違いでは?(一作目ラストの夢のシーンでも少年ジェイソンが出てくる)って事が気になったとか、そのくらいですね。 今回、スクリーム4まで一気に再見する予定なのですが、それによって「スクリームは1が一番面白い」っていう自分の固定観念が揺らぐかどうか、今から楽しみです。[DVD(吹替)] 7点(2021-11-03 08:37:04)(良:3票) 《改行有》 26. ラストサマー2 《ネタバレ》 前作ラストが「主人公ジュリーが見た夢」で片付けられる導入部にガッカリ。 でも結果的に、そこから尻上がりで面白くなったというか…… 「序盤は面白いのに、中盤からつまらなくなる」っていう前作とは逆の「序盤は退屈で、途中から意外と面白い」って形になってるのが興味深かったですね。 クローズド・サークル物として「嵐に閉ざされた無人島」を舞台にしたのも正解だったと思います。 一応「優しいボーイフレンドと思われたウィルが、実は殺人鬼の仲間だった」というサプライズもありましたが、基本的にミステリー映画ではなく、スラッシャー映画として分かり易く舵取りしてるのも好印象。 「ミステリーなのかスラッシャーなのか分かり難く、どっち付かずな内容」という前作の不満点が、それなりに改善されてる形。 「如何にも怪しげな人物であるエステスが、ウィルに襲い掛かる」→「エステスは悪人? と思わせる」→「実はウィルが犯人の一人」って流れも面白くて、少なくとも脚本に関しては前作より洗練されてたんじゃないかと。 彼氏役であるレイが、プロポーズ用の指輪を質に入れて拳銃を買い、主人公ジュリーを救いに来るっていうのも、熱い展開で良かったです。 それと、前作でも「海に投げ入れようとした死体が、直前で蘇生する」という場面があり「犯人は、主人公達が殺したと思っていた死体」ってオチに自然と繋げていましたが、本作でもその辺は上手かったですね。 「ブラジルの首都はリオじゃないのに、何故かクイズに正解して旅行に招待される」って形で「この旅行自体が罠だった」ってオチに、きちんと繋げてる。 細部に不満やら矛盾点やらはありますが、こういう大事なとこはしっかりしている辺り、人気作としての背骨の太さのようなものを感じました。 そんな訳で、こうやって良い部分を挙げる限りでは「前作よりも面白い、正統進化版の続編」って言えそうなんですが…… 残念な事に、前作の欠点が足を引っ張ってもいるんですよね。 2単体で評価すればカッコ良い彼氏役のレイに関しても(でもコイツ、前作ラストで罪を告白せずに逃げた卑怯者なんだよな……)って事が気になって、素直に応援出来ませんでしたし。 ラストの「殺人鬼は生きていた」オチに関しても、お約束の魅力を感じる以上に(またかよ)って呆れる気持ちが強かったです。 あと、フィッシャーマンが勢い余ってウィルを殺す場面は間抜け過ぎて笑っちゃったし、前作同様「脇役を活かしきれてない」って印象は拭えなかったのも難点。 「話の掴みが上手い」「青春映画としての切なさ」などの「1には有って、2には無い魅力」も色々ありますし…… 総合的に評価すると、前作と同じくらいの面白さって感じに落ち着きそうですね。 以下は、映画の内容と直接関係無い余談。 今回再鑑賞して気付いたのですが、殺される端役として無名時代のジャック・ブラックが出演してるのも、中々興味深い符号だと思います。 それというのも「13日の金曜日」ではケヴィン・ベーコン「エルム街の悪夢」ではジョニー・デップという具合に「歴史的ホラー映画では、無名時代の大物俳優が殺されてる」っていうジンクスがあるんですよね。 本作は1ではなく2という形だし、個人的には大好きなジャック・ブラックも、上記二名ほど大物ではないかも知れませんが…… なんだかんだで「ラスト・サマー」シリーズも、歴史に残るホラー映画なんじゃないかなって、そう感じさせるエピソードでした。[DVD(吹替)] 5点(2021-10-14 07:35:36)(良:1票) 《改行有》 27. ラストサマー 《ネタバレ》 「去年の夏」に関する手紙が届く序盤までは、かなり良い感じ。 これはヒット作となったのも納得だなと思えたのですが…… 中盤以降は失速というか、どうも着地が拙かった気がしますね。 まず、ジャンルとして「犯人探しのミステリー物」とも「殺人鬼が暴れるスラッシャー物」とも言えないような、中途半端な内容だったのが痛い。 両方の魅力の良いとこ取りが出来ている訳でもないし、観ている間(……で、どっちにするの?)と、観客としてはもどかしく思えちゃうんですよね。 鑑賞後に結論を下すとすれば「スラッシャー物」って事になるんでしょうけど、それにしたって殺人鬼となるフィッシャーマンに魅力を感じなくて、ノリ切れないんです。 無関係の人間も色々殺しまくってるから「怒りに燃える復讐者」って感じもしないし「車のトランクにあった死体」が消えちゃう件とか(この殺人鬼は現実的な存在ではなく、ファンタジーで何でも出来ちゃう系なの?)と気になっちゃうのも難点。 話の主筋はシンプルで分かり易いのに、こういう細部が曖昧で分かり難いって形なのは、ちょっとチグハグでバランス悪いんじゃないかと。 あと、キャラの使い方も勿体無い感じなんですよね。 アン・ヘッシュ演じるミッシーとか「犯人候補であり、主人公カップルと三角関係に成り得る存在」なのに、途中から全然出てこなくなって戸惑いますし。 シバース姉妹の確執が伏線っぽく描かれていたのに、姉がアッサリ殺されて終わりってのも吃驚です。 ベタではありますが、姉が殺される直前に妹を庇い「逃げなさい!」と言ったりして、喧嘩しがちでも姉妹の絆は確かにあったって展開にしても良かったと思うんですよね。 魅惑的な要素が色々散りばめられていたのに、それらを活かしきれてない気がします。 無事に殺人鬼を撃退した後「命を狙われた原因に心当たりは無いか?」と問われて「いいえ」と答える展開にも、心底ガッカリ。 (こいつら結局、何も反省してねぇな!)と呆れちゃうし「比較的善人と思われた主人公カップルも、結局は嫌な奴らだった」ってオチになっちゃう訳で、凄く後味悪いんですよね。 「殺人鬼は、実は生きていた」というお約束エンド迎えるのも、好みとは言えないです。 冒頭にて述べた通り、序盤の展開というか「話の掴み」は上手いと思うし、カメラワークや音楽のチョイスなども良いので、観ていて退屈するって事は無いんですけどね。 夜の浜辺で「高校最後の夏」を楽しむ様には、青春映画としての魅力が確かにあったと思うし…… 事件から一年後、かつて抱いていた夢が嘘のように冴えない日々を送ってる仲間達と再会する流れも、切なさがあって好きです。 エンディング曲もかなり良い感じで、映画本編に対する不満を忘れさせる効果がありましたね。 商業的に成功したのは納得だし、90年代を代表する品なのは間違いないと思いますが…… 名作や傑作とは評し難い。 でも、粗削りな魅力は確かにあるという「青春映画」という以上に「若者映画」って感じの一品でした。[DVD(吹替)] 5点(2021-10-14 07:30:45)(良:1票) 《改行有》 28. 鬼教師ミセス・ティングル 《ネタバレ》 最後がハッピーエンド過ぎて納得いかない映画ってのがありますが、これもそんな一本。 主人公のワトソン達と、ティングル先生。どっちが悪いかといえば「ワトソン達」で、どっちが被害者かといえば「ティングル先生」なのに「前者は無罪放免」「後者は教師をクビになる」って結末を迎えちゃいますからね。 最後は主人公三人で、笑顔の卒業式を迎えて終わる訳だけど (……それで良いのか?) とツッコむしか無かったです。 「スクリーム」「ラストサマー」「パラサイト」と同じ脚本家(本作では監督も兼任)という事で、90年代のティーンズ映画らしい魅力が詰まってる事。 舞台の大半が「ティングル邸」に限定されている為、小さな世界の「舞台劇」めいた魅力を味わえる事など、良い点も色々あるんですけどね。 主人公ワトソンの犯行動機というか、ティングル先生と戦う主因が「ママと同じ人生は歩みたくない」っていう想いゆえなのも、非常に残酷で良い。 これ、ママさんが酷い母親って訳じゃなく、娘想いの優しいママさんだし、母娘仲も良いはずなのに、それでも尚そう思ってしまうというのが、何ともやるせないんですよね。 (たとえ夜勤で毎日大変でも、夫に逃げられようとも、娘に愛情注いで育ててる立派な母親じゃないか) と、自分としてはそう感じる訳ですが、それでも娘側の「こうはなりたくない」って想いに、説得力があるよう描かれてる。 「親のようになりたくない」「自分が思い描く理想の大人になりたい」という感情のままに行動する主人公ってのは、等身大の若者らしくて、リアルだったと思います。 それと、悪役になるティングル先生が魅力的なのも良かったですね。 そりゃあ彼女は日頃から意地悪だし、不倫もしているしで「悪い人」なんだろうけど、作中で描かれている限りでは「監禁されている被害者」な訳で、どっちかというと彼女側を応援したくなりますし。 作中で何度か言及されている「エクソシスト」の悪魔のように、巧妙に話術を駆使して窮地を脱しようとする姿は、文句無しで主人公達より恰好良かったです。 あと、不倫相手のウェンチェルコーチが、彼女との逢引では「従順な奴隷」となっちゃうのは、如何にもって感じで笑っちゃいましたけど…… 個人的には、日頃偉そうな態度のティングル先生の方が「奴隷」になっちゃう関係性の方が、ギャップがあって可愛く思えたかも。 脇役&女友達枠のジョー・リンの描写も面白くって、主人公のワトソンより華やかなルックスなのに「私は脇役じゃないわ」って劇中で言わされちゃうのが、実に皮肉が効いてましたね。 「女優の才能が無い」と言われた仕返しのように、ティングル先生を騙すのに成功するのも痛快でしたし…… 三角関係の泥沼を乗り越え、主人公ワトソンとの友情を選ぶ展開になったのも、嬉しかったです。 こういう「報われない女友達」枠が好きな自分としては、とても好みのキャラクターでした。 ただ、唯一のメイン男性キャラであるルークについては不満があるというか……正直言って、魅力を感じない存在でしたね。 そもそもの発端というか、諸悪の根源と言えるのは「答案を盗んだルーク」のはずなのに、なんか「優しい王子様」みたいな扱いを受けてて、違和感が拭えなかったです。 成績の書き換えを提案したのも彼だし、作中で一番「悪魔」と呼ぶに相応しいのはワトソンでもティングル先生でもなく、ルークじゃないかと思えました。 ……とまぁ、そんなこんなで、劇中では散々な目に遭ったティングル先生だけど、生徒のワトソンに「皮肉」の意味を教える事が出来たって意味では、少しだけ報われたのかも知れませんね。 クビになった後の彼女については一切描かれていないけど、何とか立ち直って欲しいものです。[DVD(吹替)] 6点(2021-10-08 02:16:16)(良:1票) 《改行有》 29. いとこのビニー 《ネタバレ》 記念すべき500本目のレビューだから、明るく楽しい気分になれる映画が良いなと思い、本作をチョイス。 良く考えたら作中で死者も出ているし、何もかも全てハッピーエンドって訳ではない品なのですが…… 久々の鑑賞後には(やっぱり、これを選んで良かった)と、しみじみ感じる事が出来ましたね。 そのくらい、終盤の逆転劇が痛快。 「被告人の無罪を証明する」という、裁判物ならではのカタルシスを、存分に味わう事が出来ました。 「ツナ缶の万引き」「アメリカ南部への偏見」などの要素によって、無実のはずの若者二人が殺人容疑を掛けられてしまう流れを、丁寧に描いている点も良いですね。 (そりゃあ犯人と誤解されるよ)(嫌な印象を持たれて当然だよ)って感じで説得力があるし、それでいて若者二人を嫌いにはなれないという、そのバランスが絶妙だったと思います。 他にも「ヒロインのリサは車に詳しい」「ビニーは裁判に不慣れなだけで、本当は賢い」という伏線が、序盤から張られている事にも感心しちゃうしで、作りが丁寧なんですよね。 裁判で無罪を証明する事が、そのまま真犯人の逮捕に繋がる形になってる点も、とても好み。 裁判物では「無罪は証明出来たけど、真犯人は不明のまま」ってオチの品もあったりして、モヤモヤさせられた経験があるだけに、本作は後味スッキリで気持ち良かったです。 食堂のメニューが「朝食」「昼食」「夕食」の三つしかない、という場面なんかも、妙に好きですね。 こういうさり気ないユーモアって、御洒落だなって思えます。 それと、自分が一番お気に入りなのは、煉瓦とトランプの喩え話の件。 ここって「ビニーは頭の良い人間である」と示すだけでなく「ビニーは本当に、ビルの無実を信じてる」事を描いた場面でもあるんですよね。 「お前は、無実なんだから」という一言が、凄く恰好良い。 作中において、一瞬たりとも「ビルが犯人かも知れない」と疑う場面が無い事も含め、この「被告の無実を心から信じてる弁護士」という描き方は、本当に良かったです。 弁護士にとって一番大切な事は、何よりもそこなんじゃないかと思えました。 そんな本作の難点を挙げるとすれば…… 最後の最後、マロイ判事に助けてもらう形になったのは恰好悪かったとか、精々そのくらいかな? いずれにせよ、数ある裁判映画の中でも、特にお気に入りと呼べそうな一本ですね。 何時か、1000本目のレビューを書く時が訪れた際には、この映画に負けないくらいの傑作をチョイスしたいものです。[DVD(吹替)] 8点(2021-07-09 20:39:23)(良:3票) 《改行有》 30. レッド・ブロンクス 《ネタバレ》 配給側が「ジャッキー・チェンこそが世界最大のアクションスターであると、世界中の皆に教えてみせる」という気概を持ち、並々ならぬ熱意で宣伝したという一作。 その甲斐もあり、ジャッキーの悲願であったハリウッド進出を成功させた、記念すべき作品なのですが…… 所謂「ジャッキー映画」の中では、際立った傑作というほどではないというのが、少し寂しいですね。 (他にも良い映画は一杯あるのに、これを観るまで全米はジャッキーの魅力に気付かなかったのか)って、つい思っちゃいます。 とはいえ、商業的に成功しない事には始まらないんだとばかりに「米国でウケる為のアレコレ」を映画に盛り込んでいる辺りは、結構微笑ましく、また興味深くもありましたね。 この辺りは、ジャッキーの「芸術家」としての拘りとは違った「プロフェッショナル」としての懐の広さを感じられます。 アジア人以外の俳優も多く起用し、対話の大部分を英語にしてる辺りなんかが、特に顕著。 自伝によると、ジャッキーも「できるだけ国際的な香港映画」を目指していたようで「これは香港映画である」という信念は崩さないまま、可能な限りの配慮を行ったのが窺えました。 映画の完成度は高いとは言えず(香港に恋人がいるって設定、必要だった?)とか(最後ホバークラフトを使わなきゃ黒幕を逮捕出来ないって、無理矢理過ぎない?)とか、色々ツッコミ所は多いんだけど…… 自分としては、そういった粗の数々も含めて楽しめちゃいましたね。 「アジア人の主人公が、治安の悪いブロンクスで生活している内に、美女二人と良い仲になり、車椅子の少年と友達になったりする」ってストーリー展開も、非常に好み。 「主人公はカンフーの達人である」と分かる場面を序盤に挟んであったりして、ジャッキー・チェンという存在を知らない観客に対し、丁寧な作りになっている点も良いですね。 これって、一見すると何気無い場面だけど、実は「ハリウッドで成功する為には、絶対必要な描写」だったと思いますし。 商業的な成功が、必ずしも傑作の条件という訳ではありませんが、こういう「目的の為に必要な事」をキチンと行ってる映画って、観ていて嬉しくなっちゃいます。 序盤、不良グループが好き勝手に暴れる件は陰鬱だけど、それだけにジャッキーが「お前らはクズだ!」と断言し、彼らを倒してみせる流れが痛快。 そこで悪い奴らを倒して「めでたし、めでたし」で終わらせず、彼らを改心させ友情が芽生えるって展開にした辺りも、ジャッキー映画らしい魅力があって好きですね。 欲を言えば、後半にその「和解」っぷりを活かし、彼らと共闘して巨悪を倒すような展開にしても良かったんじゃないかって思えるんですが……まぁ、それは贅沢な要望でしょうか。 終盤の、海から上陸して市街地を暴走するホバークラフトという展開に関しても、文句無しの迫力があって良いですね。 車に剣を添えて、擦れ違いざまにタイヤを切り裂くという「ホバークラフトの倒し方」も、恰好良くて好き。 本作が成功した理由としては、この場面も大きかったんじゃないかなって思えます。 つまり「ジャッキー・チェン特有のアクション」を求めていない観客でも満足出来ちゃうような「見せ場」が用意されている訳であり、それが客を呼ぶ一因になってくれたんじゃないかと。 それと、自分としてはスーパーの店主になったエレインってキャラが、凄くお気に入りなんですよね。 話の筋としては、ダニー少年の姉であるナンシーの方がヒロインっぽいんですが(エレインと結ばれて欲しいな)って、そう思えたくらい。 でも、ダニー少年も良い子なので、彼を喜ばせる為にはナンシーと結ばれた方が……とも思えるしで、そんな歪な三角関係が、妙に好きなんです。 ストーリー展開よりも「主人公周りの設定」「ヒロインや脇役」が魅力的っていう意味では、映画よりも、むしろ連続ドラマ向きの題材だったのかも知れませんね。 元々のプロットも「主人公は留学生で、スーパーマーケットで働いている」「様々な苦難を乗り越えて異国に馴染んでいき、周りの人々と友情を育んでいく」って形であり、一本で終わる映画よりも、何話も使えるドラマの方が面白くなりそうですし。 そうしたら、最終回にて香港に帰る主人公を、寂しそうに見送るダニー少年とか、向こうに恋人がいると理解しつつも諦めきれないヒロイン達とか、そんな展開に繋がったかもと考えたりするのが、何だか楽しい。 完成度も低く、粗も多いだけに、妄想で補う楽しみもあるという…… そんな一本でした。[DVD(吹替)] 7点(2021-06-10 08:04:43)《改行有》 31. ナイス・ガイ 《ネタバレ》 美女が生き埋めにされるという、陰鬱な導入部に吃驚。 ラストも「巨大な車で、敵のボス宅を滅茶苦茶にして終わり」という形であり、どうも「レッド・ブロンクス」(1995年)の二番煎じというか…… (こういうのが、ハリウッド映画らしさなんだ)という打算のようなものが感じられて、ノリ切れませんでしたね。 自分としては「ハリウッド映画」よりも「ジャッキー映画」が観たいんだよって、つい思っちゃいます。 主人公に感情移入する前に、悪党達との追いかけっこが始まってしまう(しかも、それがやたら長い)ってのも如何かと思うし、三人いるヒロインとイチャつく場面が随所にあるのも、何か妙な感じ。 この手の「ヒロインが複数いるハーレム映画」としては「プロジェクト・イーグル」(1991年)という前例もあるし、個々の要素は「ジャッキー映画らしさ」を備えているんだけど、何かそれがチグハグなんですよね。 そもそも主人公の恋人はミキであると結論が出てる訳だから「主人公は誰と結ばれるのか」とドキドキしたり、完結後の恋愛模様を想像したりする楽しみも無い訳で、ヒロインが三人いる必然性が薄かったように思えます。 必然性といえば、主人公が料理人であるって設定も、途中から有耶無耶になっちゃうんですよね。 唯一、序盤の「客の口に料理を放り投げるショー」は面白かったし、料理人設定も活かされていたけど、本当にそれくらいですし。 ジャッキーの自伝などを読んで、彼の経歴を知っていれば「若い頃、オーストラリアのレストランや建築現場で働いてた」って事で、料理人設定や、終盤の建築現場での乱闘シーンにもニヤリと出来ちゃうけど…… 知らなかった場合、鑑賞後には(で、どうして料理人設定にしたの?)って、疑問符しか残らない気がします。 そんな具合に「完成度」や「構成力」といった点で考えると、とても褒められない代物なんですが…… 「面白いか、面白くないか」で考えた場合、答えは「面白い」になっちゃうんですよね、これ。 「馬車とタクシーの衝突」とか「コーラの缶が路上に散乱し、あちこちで噴水のように中身が噴き出てる」とか、印象的な場面が随所にあって、それだけでも観る価値はあったと思います。 終盤における、無数のドアを活かしたコントも面白かったし、色んな大工道具を駆使したアクションも、流石といった感じ。 監督のサモ・ハンがチョイ役で出てくるのも嬉しいし、ジャッキー映画ではお馴染み(?)のリチャード・ノートンも、ラスボスとして良い味出してましたね。 本作のMVPには、この二人を推したいくらいです。 ……以下、映画の内容とは直接関係無い余談なのですが、そもそも「ジャッキー」という名前自体、オーストラリアの建築現場やレストランで働いてる際に、同僚から「ジャッキー」と呼ばれてたのが由来だったりするんですよね。 つまり、本作における「建築現場でのアクション」「料理人という設定」って、ジャッキー映画としては凄くオイシイはずなんです。 それだけに、前者はともかく、後者の設定を活かせてないのが勿体無い。 素材は良かったのに、味付けが拙かったという……そんな印象が残る一本でした。[DVD(吹替)] 6点(2021-05-20 15:48:07)(良:2票) 《改行有》 32. 巨大怪獣ザルコー 《ネタバレ》 変に勿体ぶったりせず、始まって早々に怪獣が登場するのが良いですね。 これはスピーディーな展開で楽しませてくれる「隠れた傑作」じゃないかと、期待も膨らんだのですが…… 残念ながら、その後の展開は非常にノンビリしたものであり、本当に「冒頭で怪獣を出しただけ」だったりしたもんだから、ズッコケちゃいました。 そもそも本作って、劇中に「モスラ」の小美人のようなキャラが出てきたり、はたまたドクター・ストレンジラブっぽいキャラまで出てきたりと、如何にもな「オタク映画」って感じなんですよね。 恐らくは監督さんも「怪獣映画は、怪獣が出てくるまで長いのが嫌だ」って考えを、常々持っていたような人なんじゃないでしょうか。 だからこそ「勿体ぶらずに怪獣を冒頭で出す」っていう定石破りをやってくれたんでしょうけど……正直、この映画で評価出来るのって、そこくらいでした。 基本的なストーリーは「闘技場」(1944年)の系譜であり、王道の魅力はあるので、決定的に話作りがダメって訳じゃないんですが……やはり、もっと「本作独自の魅力」のようなものを感じさせて欲しかったです。 唯一「ザルコーは地球上のどんな武器でも倒せない」という前置きは中々面白くて、その倒し方に期待してたのに、それに対する答えも「謎の隕石が盾であり、ザルコーの光線を盾で反射すれば勝てる」ってのは、ちょっと拍子抜け。 実際に倒す場面も、人と怪獣の合成っぷりが丸分かりなクオリティだし (なんでザルコーは足元の人間を踏み潰さずに、わざわざ光線出すの?) って疑問も湧いてきちゃうしで、全然スッキリしなかったです。 他にも「主人公に背中見せたせいで銃を奪われる警官が間抜け過ぎる」とか「エイリアンの存在を信じてるジョージが仲間になる流れは、もっと伏線を張って丁寧にやって欲しかった」とか、色々と不満点が多い映画なんですよね。 そもそも、主人公達のパートと怪獣のパートが全然繋がってなくて、主人公達がアチコチ移動してる合間に、まるでノルマをこなすかのように怪獣がミニチュア破壊する場面が挟まれるって構成なのが、根本的にダメだったと思います。 例えば、せっかく「ザルコーは主人公を狙ってる」という設定がある訳だから、主人公がテレビ局を立ち去った直後にザルコーがテレビ局を襲う流れにするだけでも「巨大な怪獣に狙われている恐怖」「追われつつも、何とか巨大な敵を倒す方法を模索する主人公」って形で緊迫感が出たと思うし、作り込みが甘かった気がしますね。 軍隊と怪獣の戦いをラジオの中継で済ませたりとか、非常に低予算な作りなので、あんまりツッコミ入れるのも野暮なんでしょうけど…… それでも本作に対しては「もっと頑張って欲しかった」って気持ちが強いです。 自分も怪獣映画好きで、映画オタクだからこそ、観ていて共感しちゃうし、その分もどかしさも湧いてくるような…… そんなタイプの映画でありました。[DVD(吹替)] 4点(2020-06-03 23:12:28)《改行有》 33. アメリカン・パイ 《ネタバレ》 冒頭、主人公のジムが自慰してる場面から始まる訳ですが、そこで脱落しちゃう人には時間を取らせなくて済むし、そこで耐えられた人には概ね楽しい時間を提供してくれるしで、とっても親切な映画ですね。 最初にインパクトのある映像を用意して、観客を惹き付けると同時に「篩に掛ける」効果もあったという訳で、上手いやり方だと思います。 仲良し四人組が「プロムまでの三週間で、童貞卒業する事」を誓うところから物語が動き出し、そこから群像劇というか、オムニバス的な魅力を持った内容となるのも良い。 コーラス部に入ったり、噂を利用したり、学校に代々伝わる「性書」に頼ったりと、それぞれのやり方で頑張る様が、観ていて楽しいんですよね。 結果的に、四人中三人が童貞卒業出来たので達成感があるし、唯一童貞のままなオズも「初体験の思い出なんかより、ずっと大切なものを手に入れた」という形で、一番幸せそうに描かれているくらいなので、観ているこっちまで嬉しくなっちゃう。 似たような青春映画としては「グローイング・アップ」(1978年)という先例がありましたが、あちらが堕胎などの重いテーマも匂わせていたのに比べると、本作は徹底的に明るく「健全なエロティック青春ドラマ」って感じに仕上げており、それが独自の魅力に繋がったんじゃないかな、と思います。 性に大らかなジムの父親に、愛嬌たっぷりなスティフラーと、脇役が魅力的な点も素晴らしい。 この手の青春映画だと、父親はとことん地味なまま終わるし、スティフラーのような「ヤリまくりの体育会系」は単なる憎まれ役で終わるってのが、お約束になっていますからね。 それだけに、本作には特別感があるし、印象にも残り易い。 後の外伝でも「ジムの父親」「スティフラーの血縁者」が名物キャラとなっているくらいだし、本作が人気シリーズになれたのは、この二人の力が大きかった気がします。 スティフラーの母親や、幼い弟もキュートな存在であり、特に前者が主人公の一人であるフィンチと結ばれる場面なんかは、凄く好きですね。 「友人の母親と結ばれる」っていうのは、男の浪漫ですし、たとえコメディタッチでも興奮を誘うものがある。 そこで流れる曲が「ミセス・ロビンソン」っていうのも、ベタだけど嬉しくなっちゃう選曲でした。 その一方で、後にジムと結ばれるミッシェルは出番が少なく、単なるヤリマン女みたいな描かれ方だったのは……ちょっと、残念かも。 本作を観た限りでは、彼女が将来的にジムと結婚する事になるだなんて、全然予測出来ない感じなんですよね。 自分は「アメリカン・パイ」シリーズは概ね好きなんだけど、初代が一番の傑作とは思えない理由としては、この「ミッシェルの扱いが中途半端」って点が挙げられそうなくらいです。 あとは「女性の裸をオカズに、女性が自慰する場面」があるんだけど、それがさも当然のように描かれてるのが気になったとか、盗撮されたナディアへのフォローが弱いとか……欠点と呼べそうなのは、それくらいかな? 皆で祝杯を挙げるラストシーンにて「人生で一番楽しいのは、今だよ」と語る台詞があるのも、今となっては興味深いですね。 実際には、映画はココで終わらず、その後の主人公達の「夏休み」「結婚式」「同騒会」も続編で描かれている訳ですし。 少なくとも、シリーズ全作を鑑賞済みの自分としては、彼らにとって「一番楽しい時間」とは「高校時代」ではなく、後に描かれた日々の方じゃないかと思えたので、興味がおありの方は、是非続編とセットで楽しまれて欲しいです。 [DVD(吹替)] 7点(2020-05-16 08:28:53)《改行有》 34. 9か月 《ネタバレ》 94年のフランス映画「愛するための第9章」を95年にアメリカでリメイクしたという、風変わりな一本。 残念ながらフランス版は未見の為、詳しい比較などは出来ないのですが…… これ単品で評価する限りでは、中々良く出来た映画だったと思います。 結婚前の優雅な「恋人時代」が冒頭に描かれている為、そんな幸せな日々を奪われてしまった男として、妊娠に戸惑う主人公にも自然と感情移入出来ちゃうんですよね。 「赤ん坊の健康の為、飼い猫は捨てた方が良い」「二人乗りのポルシェは、買い替えた方が良い」と言われてしまう場面などは、本当に主人公が可哀想になったし「父親になるのを嫌がる男」として、きちんと説得力があったと思います。 それと、本作は豪華なキャストが揃っている点も特長なのですが、中でもやはり、ロビン・ウィリアムスの存在感は凄かったですね。 もう画面に彼が出てきた途端「ヒュー・グランド主演のラブコメ」が「ロビン・ウィリアムスの映画」に変わっちゃうくらいのパワーがある。 本作の場合、主演のヒューも魅力たっぷりな俳優さんである為、ギリギリでバランスが取れていたけど…… もっと地味で華の無い主演俳優さんだったら、完全にロビン・ウィリアムスに圧倒されて、歪な映画になっていた気がしますね。 そのくらい、彼の存在は光っていたと思います。 子供を産むデメリットについて、ヒロインが色々と語った後「それでも欲しいの」「私の中で、命が生きてるのを感じるのよ」と訴える場面なんかも、女の強さというより、母の強さが感じられて、印象深い。 母親は生まれてくる子が「自分の子」だって分かるけど、父親にとってはそうじゃないという普遍的なテーマについても、さらりと触れていたりして、この辺も良かったですね。 我が子の為なら、たとえシングルマザーになっても生きていくと、早々に決意を固めたヒロインに対し、中々煮え切らない主人公の姿に、リアリティを与えていたんじゃないかと。 主人公が小児精神科医という設定に、あまり必然性を感じない事。 途中何度か出てくる「蟷螂」の姿が怖過ぎる事。 車に関しては「ファミリーカーに買い替えた」とあるけど、飼い猫はどうなったのか明かされず仕舞いな事など、欠点というか、気になる点も多いんだけど…… まぁ、決定的な短所とまでは思えなかったです。 それと、自分は男性である為、どうしてもこの主人公は優し過ぎるというか (妻に対し、妥協し過ぎ。自らを犠牲にし過ぎ) って思えたりもしたんですが、それも観終わる頃には、あまり気にならなくなっていましたね。 女性の「産む苦しむ」に比べたら、そのくらい軽いもんだろって、クライマックスの出産シーンで諭されたような感じです。 産まれたばかりの赤ん坊を抱きながら「僕らは家族だ」と言ってキスする場面も、二人が「恋人」から「夫婦」になった事を感じられて、凄く良かったですね。 「一人の男が、父親になる物語」として、しっかり楽しませて頂きました。[DVD(吹替)] 6点(2020-02-27 04:30:10)(良:1票) 《改行有》 35. フラッド 《ネタバレ》 これは…… 「途中までは面白かったのに」ってタイプの映画ですね、残念ながら。 クレジットではモーガン・フリーマンが一番上になっているけど、物語の主人公は間違い無くクリスチャン・スレーター演じるトムの方って時点で、既に歪というか、どこかバランスが狂ってる感じ。 両者を好きな自分にとっては「夢の共演」と言える映画のはずなのに、この二人が手を組む流れも雑に思えちゃって、全然興奮しなかったです。 トムに関しては凄く好きなタイプの主人公で、スレーターが演じた役柄の中でも一番じゃなかろうかと思えるくらい気に入っていただけに、途中から(何でそうなるの?)って展開になってしまったことが、本当に惜しい。 繰り返しになりますが、途中までは面白かったんです。 町が水浸しになっている光景だけで、如何にも「非日常の世界」って感じがしてワクワクしちゃったし、狭い室内でのジェットスキーを駆使したアクションなんかも、目新しくて興奮。 牢の中にまで水が押し寄せ、溺死しそうになったところを間一髪で助かる場面なんて、本当にドキドキさせられましたね。 口喧嘩ばかりしているけど、実は強い絆で結ばれていた老夫婦の存在など、脇役の魅力も光っていたと思います。 「他人様の金を命懸けで守るなんて、下らん仕事さ」と自嘲していた相棒のチャーリーが、実は裏切り者だったと明かされる流れも、程好い意外性があって好み。 じゃあ、何で「残念映画」と感じてしまったかというと…… やっぱり、主人公のトムと、モーガン・フリーマン演じるジムが手を組む流れが、無理矢理過ぎるんですよね。 せめて、もうちょっと「トムVSジムVS保安官達」という三つ巴展開を描き、終盤にてようやく緊急避難的にトムとジムが手を組むとか、そういう形にした方が良かったんじゃないでしょうか。 本作の場合「金に目が眩んだ保安官達が、敵になる」というだけでも充分にサプライズ展開だったのに、そこにプラスして「トムとジムが手を組む」っていう展開までセットで押し通しちゃったもんだから、驚きを通り越して困惑に繋がってしまった気がします。 あと「引鉄をひいても弾が出ない」って展開を繰り返しやってるのも興醒めだし、スローモーションの使い方も雑だし、終盤になると脚本だけでなく演出まで一気にレベルが下がっていたように思えるんですが…… (制作現場で、何かトラブルでもあったの?)って心配になっちゃいますね。 途中までは本当(意外な傑作に巡り会えた)(しかもクリスチャン・スレーター主演じゃん! 最高!)ってテンション上がっていただけに、終盤のグダグダっぷりが、返す返すも残念。 スレーター好きな自分としては、彼が主演というだけでも満足度は高めだったのですが…… もうちょっとだけ頑張って「文句無しの傑作」「スレーターの代表作といえばコレ」と言わせて欲しかったという、そんな口惜しさの残る一品でした。[DVD(吹替)] 6点(2020-02-26 05:37:51)《改行有》 36. ユー・ガット・メール 《ネタバレ》 去年最後に観た映画が「めぐり逢えたら」である以上、今年最初の映画には、これが相応しかろうと思い観賞。 元ネタの「桃色の店」では文通だったのをEメールに変えた事に、ちゃんと意義があったというか「Eメールでのやり取り」ならではの魅力を感じられる作りだったのが流石でしたね。 一度書きかけた文章を消す為、キーを連打しちゃう主人公の場面なんて、特に印象的。 「ペンを使って手紙を書く」という動作では出せない「キーを叩いてメールを書く」という動作だからこその面白さだったと思います。 二作続けて観賞した為か「めぐり逢えたら」同様「他に恋人がいるのに、惹かれ合ってしまう主人公とヒロイン」という設定だった事には(またかよ)と思ってゲンナリしちゃったけど…… まぁ、それに関しては(そういう設定の方が喜ぶ人もいるから)と納得するしかないんでしょうね。 「オマケ程度にクリスマス要素がある」「子供がキッカケになって二人が出会う」という共通点に関してはクスッとしちゃったし、この辺は「二作続けて観賞した」という事がプラスに働いたのか、それともマイナスに働いたのか、微妙なところです。 そんな中「プラス」と言えそうな部分としては「かつての恋人との別れ方が、ずっと円満で納得のいく形になっている」って部分が挙げられそうですね。 お互いに、他に好きな人が出来たんだと分かって双方ホッとして笑い合う場面なんて、見ているこっちまで釣られて笑顔になっちゃったくらい。 エレベーターに閉じ込められ「自分が本当に望んでいる事を悟り、別れを切り出した」というのも、説得力があって良かったです。 ヒロインがマスコミを利用し、商売敵に「悪いキツネ」というイメージを与えようとする件とか(やっぱり、この監督が描くヒロイン像って好みじゃないな)と感じる場面もあったんですが…… とにかくヒロイン演じるメグ・ライアンがキュートなものだから、不快感が尾を引かないんですよね。 主人公に「ファイト」と励まされ、シャドーボクシングを始める場面なんて、もう最高に可愛らしい。 たとえ脚本が肌に合わなかったとしても、演じる役者さん次第で、こんなにも印象が変わってくるんだなって思えるし、ラブコメの女王メグ・ライアンの凄さを、改めて感じる事が出来ました。 「よく出会うわね」「土曜の昼に、また偶然に出会わない?」って会話も印象深いし「すべて35%オフ」のフォックス書店に対抗心を抱いていたヒロインが「閉店セールの40%オフ」で、ようやく価格争いに勝利する事が出来たという顛末も、悲しい皮肉が伴っていて良かったです。 主人公がパソコンから離れた後(どうせ戻って来て、彼女のメールに返事しちゃうんだろうな)と思っていたら、本当にそうなる流れなんかも、実に微笑ましい。 二人が結ばれた後「THE END」の文字を、さながらメールで打ち込む時のように表示して終わるのも、小粋な演出でしたね。 なんだかんだ言っても、やっぱり自分はノーラ・エフロン監督の映画が、そしてトム・ハンクスとメグ・ライアンの映画が好きなんだな……と思わされた一本でした。[DVD(字幕)] 6点(2020-01-02 20:05:53)《改行有》 37. めぐり逢えたら 《ネタバレ》 さて、今年のクリスマスは何を観ようかと本棚を眺めていたところ (そういえば、これも一応クリスマス物だったな……) と思い出した為、本作を観賞。 結果的には殆ど「クリスマス要素」が無くてズッコけた訳ですが…… 観た後に幸せな気持ちになれるという意味では、非常にクリスマスらしい映画だったと思います。 なんといっても、恋のキューピット役となってくれる主人公の息子が良かったですね。 可愛らしい子供キャラを配し、ファミリー映画的な側面を備えているのは、元ネタである「めぐり逢い」(1957年)には無かった魅力。 なんせ本作の主人公カップルときたら、出会って話すと同時に映画が終了しちゃうくらいなんだし、作り手としても意図的に「二人を結び付けようとする子供が主軸の映画」として完成させたんじゃないかな、って気がします。 そんな息子くんには、同世代の彼女もいたりして、ちょっぴり憎たらしい感じだったのに…… エンパイアステートビルに一人ぼっちになった時は、心細げな顔を見せたり、パパと再会出来た時には、喜んで抱き付いたりと(なんだかんだ言っても、まだ子供なんだな)と思わせてくれた辺りが、実に可愛かったです。 個人的には、ここの「父子の再会」の場面が、映画の白眉だった気がしますね。 「めぐり逢い」(1957年)同様、やはり主人公カップルは約束の場所で会えない運命なのかなと思わせておいて、息子が置き忘れたリュックのお蔭で会う事が出来たという脚本も、非常に凝っていて素敵でした。 翻って、悪かった点はというと……これが結構多かったりもして、困っちゃいます。 まず、メグ・ライアン演じるヒロインに共感を抱けない。 主人公の住所を調べて会いに行く件とか、どう考えてもストーカーそのものだし、彼女の恋路を応援しようって気になれなかったのですよね。 作中にて彼女が昔の映画を鑑賞し「この頃は、みんな本当の愛し方を知っていたのよね」なんてウットリする場面がありましたが、二十年以上前の映画を観ている最中な自分からすると(この頃は、まだストーカー的な愛し方が肯定されていたんだなぁ……)と、皮肉気に考えちゃいました。 そもそも婚約者がいるのに「運命の出会いに憧れ、恋に恋している女性」って時点で、どうしても拒否感が出ちゃうんですよね。 彼女も浮気な自分を悔いて「許せない裏切りだと思うわ」と嘆く事になるんですが、観ているこちらとしても(ホンマやで)とツッコむしか無かったです。 トム・ハンクス演じる主人公も、ヒロインが強烈に恋い焦がれるほど魅力的には思えなかったという辺りも、辛いところ。 「ラジオ番組で話した時の声が素敵」「話す内容が素敵」というくらいで、手紙が殺到するほどの人気者になるというのも、ちょっと無理があった気がしますね。 二人とも好きな役者さんであるだけに、その辺は観ていて辛かったです。 結局「僕は君が妥協して仕方無く選んだ男には、なりたくない」と告げ、ヒロインを約束の場所へと送り出してくれた婚約者のウォルターこそが、作中で一番「いい男」だったんじゃないかと思えちゃうし、どうもスッキリしませんでした。 そんなウォルターと、主人公の恋人候補であったヴィクトリアが完全に「恋の当て馬」ポジションに収まっており、救いが描かれていなかった辺りも、残念なポイント。 上述の通り「観賞後は幸せな気持ちになれる映画」だったのですが、当て馬組にも優しい描写がもっと盛り込まれていたら、より好きになれた気がします。 ちなみに、この映画を基にしたとんねるずのコント「めぐり逢えたら スペシャル版」では、主人公の息子がラジオ番組に再び電話を掛け「パパが結婚する事になったんだ!」と嬉しそうに報告して終わるという形になっており、元ネタ以上に爽やかなハッピーエンドだったりするんですよね。 個人的には、そちらの方が好みな終わり方でした。[DVD(吹替)] 6点(2019-12-25 22:25:51)(良:1票) 《改行有》 38. パッセンジャー57 《ネタバレ》 85分という短い尺の中で、主人公が悪人退治してハッピーエンドという、非常にシンプルな映画。 年代が近い事もあってか、そこかしこに「ビバリーヒルズ・コップ」の影響が窺える作りにもなっていますよね。 特に中盤、わざと情けない男の振りをして犯人一味を騙す件なんて、ウェズリー・スナイプス的というよりは、如何にもエディ・マーフィ的な感じ。 飛行機で隣の席になった老婦人から、主人公が「誰かさん」に間違われてしまう件も、そこら辺を踏まえてのネタなんじゃないかなって思えました。 そんな訳で、遊園地でのアクションパートも「ビバリーヒルズ・コップ3」(1994年)を意識したのかなと思ったのですが…… 確認してみると、本作は1992年公開であり、これに関してはむしろ先取りしている形だったんですね。ちょっと吃驚。 果たしてジョン・ランディスは「3」を撮る前に本作を観賞済みだったのかどうか、気になるところです。 気になるといえば、脚本にも色々と粗が多くて…… 主人公も敵役も「有能な男」という設定にも拘らず、それがあんまり伝わってこなかった辺りは残念でしたね。 特に主人公は「ハイジャック対策のスペシャリスト」って設定のはずなのに、犯人との交渉にはアッサリ失敗して乗客死なせちゃっているし、これなら「偶々飛行機に乗り合わせた刑事」で、ヒロイン格のスチュワーデスから飛行機の情報を色々聞きながら事件解決するってストーリーでも、充分に成立していた気がします。 犯人側も犯人側で「主人公を撃つよりも、無能な部下を撃って殺すのを優先した結果、肝心の主人公を逃がしてしまう」なんて醜態を晒しちゃっているし、どうも二人して詰めが甘い感じ。 犯人組と妙に仲が良い描写があって、その後に絡んでくるんじゃないかと思われた金髪少年のノーマンが、放ったらかしのまま終わるとか、保安官から貰った銃を主人公がアッサリ落として使わず仕舞いとか、肩透かしな場面が多かった辺りも、ちょっと寂しかったです。 ……とはいえ、それらのアレコレも「気になる」程度で済んでしまい、決定的な失望に至らなかったのは、スピーディーな演出でグイグイ物語を動かしてくれる力強い作りゆえ、なんでしょうね。 「車で並走して飛行機に乗り移る」とか「飛行中に扉が開いて機内がパニックになる」とか、この手の映画ならお約束の描写を、きちんと盛り込んでくれる辺りも嬉しい。 友人役のトム・サイズモアに、美人スチュワーデスのエリザベス・ハーレイと、味方側と敵側、両方に魅力的な脇役が揃っていた事も、画面を引き締める効果があったと思います。 最後は主人公とヒロインが結ばれて、予定調和な結末を迎える辺りも心地良い。 「期待以上」ではないにせよ「期待通り」の満足感は得られた、良質なアクション映画でありました。[DVD(吹替)] 6点(2019-11-01 00:47:54)(良:1票) 《改行有》 39. 忠臣蔵(1990)〈TVM〉 《ネタバレ》 数ある忠臣蔵の中でも一番好きなものは何かと問われたら、本作を挙げます。 王道ではなく、かなり捻った作りとなっている為「忠臣蔵に初めて触れるなら、これが一番」なんて具合にオススメ出来ないのは残念ですが…… それでもなお「一番面白い忠臣蔵はコレだ!」と叫びたくなるような魅力があるんですよね。 もう三十年近く前の作品なのですが、今観ても斬新だし、若々しいセンスに溢れていると思います。 何せ、始まって十分も経たぬ内に「斬り付けたのは浅野の方で、吉良は被害者でしかなかった」とズバリ結論を言ってしまうのだから、恐れ入ります。 小説ならば菊池寛の「吉良上野の立場」舞台ならば井上ひさしの「イヌの仇討」という先例もありましたが、ここまで長尺の映像作品で「浅野が悪い」と断定しているとなると、寡聞にして他の例を挙げる事が出来ないくらいです。 しかも吉良側がそう主張する訳ではなく、浅野の家臣である大野が「乱心ですよ」「殿中で刀を抜けば、三百の家臣と、その家族二千が路頭に迷う。その事を弁えずして、これを乱心と言わずして何と言いますか」と主君である内匠頭を糾弾しているのだから、本当に徹底しています。 観ている側としても(これは従来の忠臣蔵とは、全く違う物語だ……)と感じる場面であり、そこからは襟を正して観賞する事が出来ました。 本作は「昼行燈と呼ばれ、平素は無能扱いされていた」という大石の側面に踏み込み、仕事中に居眠りして笑い者になったり、趣味の絵ばかり描いて妻に詰られたりする姿をコミカルに描いているのですが、その一方で「いざとなったら有能だった大石」という、シリアスな魅力を描く事にも成功しているんですよね。 特に、討ち入りを決意した後「非情な軍人」に徹して、冷静に作戦を主導していく大石の恰好良さときたら、もう堪らない。 一人が敵一人と対している時、味方二人が背後から斬り付けるようにと指示し「それは卑怯ではありませんか」と仲間に反発された際に「物見遊山ではありません、戦です。戦は必ず勝たなければならない」と諭す姿は、歴代の大石内蔵助の中でも最も凛々しく、頼もしく感じられたくらいです。 見事に吉良を討ち取った後「上手くいきましたね」と能天気に騒ぐ堀部安兵衛に対し「本当に、そう思うか?」と、自分達が死ぬ未来を予見したように呟く姿も、非常に哀愁があって、味わい深い。 ・赤穂浪士も決して一枚岩ではなく、互いに見下し合ったり憎み合ったりしている。 ・仇討ちは純粋に主君を想っての行いではなく、赤穂浪士が名を挙げて再士官する為の就職活動という側面もあった。 ・生類憐みの令をはじめとして、独断専行の多い将軍綱吉の人望の無さも事件に密接に絡んでいる。 などなど「吉良邸討ち入り事件」の動機や背景を、多方面から描いている点も良かったですね。 そんな本作の欠点は……「耐え難きを耐え、忍び難きを忍び」「話せば分かる」など、その後の天皇やら首相やらの有名な台詞を大石に吐かせ「悲劇の人物」として重ね合わせるかのような演出があったのは、ちょっと微妙に思えた事。 終盤に出てくる侍女かるの存在は、わざとらしくて浮いているように思えた事とか、そのくらいでしょうか。 とはいえ、冒頭の筑紫哲也の解説にある通り、これらの欠点すらも「平成の忠臣蔵を、当時の人々はどんな願いを込めて作ったのか」という目線で観れば、非常に興味深く、一概に「余計な要素」とも言いきれなくなってくる辺りも面白い。 自分としては「敗戦で背負い込んだ挫折感」「軍人への不信感」「若くて自由奔放な女の子に癒されたいという、中年男特有の欲望」などを感じ取った訳ですが、そういった負の感情が込められているのも、また忠臣蔵の魅力なのかなと思ったりしました。 一人討ち入りに参加せず、生き延びてしまった大野が「良い奴だった」「だから、死なせたくなかった」と、英雄でも忠臣でもない「友人」としての大石内蔵助に対する想いを語る場面も、実に素晴らしい。 ラストシーンでも「刃傷事件が起こる前の、楽しそうに笑う大石と大野の姿」が描かれており(二人は、この頃のような平和な日常を取り戻したい一心で、あんなに頑張ったんだ……)と、観客に感じさせるような終わり方になっているんですよね。 「忠誠心ではなく、奪われた日常を取り戻したい一心で行動した赤穂浪士」というのは、本当に独特だと思うし、現代に生きる自分としても、非常に共感を抱く事が出来ました。 これが「最高の忠臣蔵」であるかどうかは分かりませんが…… 「特別な忠臣蔵」である事は間違い無いんじゃないかな、と思います。 オススメの一本です。[地上波(邦画)] 9点(2019-10-12 05:59:13)《改行有》 40. パラサイト 《ネタバレ》 所謂「ボディ・スナッチャー」系の映画なのですが、舞台を高校とその周辺に絞ってティーン・ホラーとして成立させているのが上手いですね。 なんせ「盗まれた街」の映画化に限っても四回以上は行われている訳であり、どうしても陳腐な内容となりそうなところを、演者と舞台設定によって新鮮に思わせる事に成功してる。 イライジャ・ウッドとジョシュ・ハートネットの共演が拝めるのも楽しいし、冒頭に流れるオフスプリングの曲をはじめとして、今観ても「若々しいセンスの良さ」を随所に感じる事が出来る、時代を越えて愛されるタイプの映画だと思います。 ただ、自分としてはヒロイン格であるデライラに魅力を感じなかったもので……ラストで主人公ケイシーが彼女と結ばれても、全然祝福する気になれなかったのが残念でしたね。 見た目は物凄い美人なのですが、性格が「嫌な女」としか思えなかったというパターン。 寄生される前から「ガリ勉じゃ私に釣り合わない」なんて言い出す傲慢さだし、ラストにて「学園のヒーローになったケイシー」と結ばれたのも「これでようやく私に釣り合う存在になったから付き合ってあげた」と言わんばかりの態度に思えちゃうしで、どうも好きになれなかったです。 もう一人の主人公ジークと、女教師のエリザベスとの関係性は好みだったので、もっとそちらにスポットを当てた構成だったら、印象も違っていたかも。 あとは、体育館の巨大な座席が閉じる仕組みを駆使してラスボスを倒すのは痛快だけど、事前に伏線を張っておいて欲しかった(座席が閉じるシーンを見せておいて欲しかった)という事。 コーチに誘われていたのはケイシーで、メアリーベスと因縁があったのはジークの方なので「ジークがアメフトを始める」「ケイシーがメアリ―ベスを倒す」というオチの付け方は、互い違いじゃないかと思えてしまった事……と、気になるのはそれくらいでしたね。 自分の好みを言わせてもらうなら「コロッと態度を変えて言い寄って来たデライラを袖にして、ケイシーはアメフトを始める」「ジークは自らがトドメを刺したメアリ―ベスに憐れみを感じながらも、エリザベス先生と結ばれる」って着地の方が良かったんじゃないかと思えますが、実際の終わり方も、そこまで嫌いじゃなかったです。 とにかく、細かい不満点が色々あったとしても、それらを吹き飛ばすくらいに「好きな部分」が多いもんだから、観ていると気にならなくなるんですよね。 特にジークがファーロング先生を倒す場面は恰好良くて、少年時代に観た時は、本当に痺れちゃったのを憶えています。 オタク少年だった自分にとって、ジークは理想的なアウトローだったし、いじめられっ子なケイシーも等身大で感情移入出来る存在だったしで、この二人が主人公ってだけでも、もう「好きな映画」になっちゃうんです。 「僕は目にペンでも刺すかな」というファーロング先生の台詞など、細かな伏線が効いている作りなのも良い。 「貴方は優しくしてくれた。嬉しかったわ、とても」というメアリ―ベスの台詞は演技ではなく、本音だったんじゃないかと思える辺りとか、妄想の余地を与えてくれる脚本なのも良かったですね。 主人公グループの中に裏切者がいるんじゃないかと疑心暗鬼になる件は、今になってみれば「遊星からの物体X」が元ネタだって分かるけど…… 初見の際には知らなかったもので、凄くドキドキしながら観賞出来たし、元ネタを知った今観ても、ちゃんと面白かったです。 完成度は高くないし、物凄い傑作という訳じゃありませんが、色んな世代の「映画好き」に観てもらいたくなる。 そんな、オススメの一本です。[DVD(吹替)] 7点(2019-04-10 07:22:33)(良:1票) 《改行有》
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