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461.  帰郷(1978) 《ネタバレ》 チャップリンの『独裁者』の演説がカメラに正対してのもの(つまり映画を見る観客も含めた聴衆に対してのメッセージ)であるのに対して、ジョン・ボイトのスピーチを映し出すカメラはあくまで語りかけられる海兵隊志願の若者達と、語りかける彼の横顔とが中心となる。 同時に、そこでは無言のブルース・ダーンが軍服を脱ぎ捨て海辺に入水するシーンが対比的にクロスカッティングされ、 その慎ましい寸断によってスピーチは抑制的でより深みのある響きを獲得する。 同時にそこでは波打ち際という古典メロドラマ的モチーフが印象的に補強される。 そのスピーチもこう締めくくる。「there's a choice to be made here.」 これら品のある演出によって、そのメッセージ性も押し付けがましくなることなく心に響く。 全編に流れる歌曲は逆に少し雄弁だが。[DVD(字幕なし「原語」)] 7点(2015-11-29 23:25:20)《改行有》

462.   《ネタバレ》 今井監督初のカラー作品だが、監督本人が語るように色彩を殊更に誇示するような画面にはしていない。 村祭りの場面などは華やかな人工色が彩るが、あくまで霞ヶ浦の水面や青空、木々の緑など自然物の色彩を鮮やかに映し出している。 とりわけ、大きな帆を張った帆曳船の出漁シーンの情景描写は素晴らしい。 米というタイトルながら、中心となるのは土地がないため半農半漁によって生活する零細農民達であり、その為にここで描写されるのは 米作と湖上労働である。 物語ではなく、農村の四季と労働に重点を置いて点描していくスタイルによって、今現在ではもはや見ることも出来ない様々な農機具や 機織り機などが活躍しており、それが情趣を伝えるだけでなく貴重な映像記録ともなっている。 出演俳優たちの語る方言もまたいい味を出している。[DVD(邦画)] 7点(2015-11-23 23:57:33)《改行有》

463.  キプールの記憶 《ネタバレ》 朝方、非常事態宣言下にある無人のイスラエルの街。陽の光の滲む地平線から姿を現すヘリ。 土地の空気を的確に掬い取るレナート・ベルタの撮影がやはり素晴らしい。 本物の雨なので雨滴は画面に映らないが、雨の質感と湿潤の感覚ははっきりと伝わってくる。 ヘリからの圧巻の空撮がある。戦車が残した無数の轍がぬかるみとなって緑の平原に延々と広がっている。 冒頭の絵の具塗りたくりにも相通ずる、緑と茶の網目状模様とその堆積が、戦乱の激しさとともに歴史をも意識させる。 あるいは、数人がかりで負傷者を運ぼうとするがなかなか捗らない様。そのもどかしい時間の重みこそ アモス・ギタイの伝えんとするものだ。[DVD(字幕)] 7点(2015-11-18 23:56:11)《改行有》

464.  ミルドレッド・ピアース 《ネタバレ》 睦み合うザカリー・スコットとアン・ブライスを目撃するジョーン・クロフォード。 二人の表情には影が落ちていて判然としないが、そのシルエットの造型がどこか狂気じみた凄味すら放ち、息を呑ませる。 そういった撮影所的な影の投影技法が随所で光る。 人気のない海沿いの夜のレストラン内は波を反映して光が妖しく揺れている。 冒頭でジャック・カースンが惑うらせん階段や、母娘の決裂シーンで、二人の関係性を暗示する階段。 偏光による微かな歪つさを伴って画面に共存する邪な者の鏡像。 同時に遠い波音やグラスの破砕音、銃声の音響も要所で画面を引き締める。 その中で、特権的な照明を受けてクロフォードのアップは格別に美しく撮られており、印象深い。 主演女優賞は本人の芝居だけに依るのではなく、アーネスト・ホーラーの撮影の賜物だろう。[CS・衛星(字幕)] 7点(2015-11-17 23:48:40)《改行有》

465.  リトルプリンス 星の王子さまと私 《ネタバレ》 直線と四角形を中心に構成される、グレーを基調とした無機質な街。そこでは、生垣の緑までもが立方体である。 そこに越してきた少女が隣の老人宅を訪ねると、カラフルな円形のパラシュートが彼女を優しく包み込むシーンがまずは感動的だ。 『星の王子さま』の登場、そして少女の冒険が始まるとともに、放物線や円のイメージがさらに広がっていく。 原作パートはその挿絵のイメージを活かしたストップモーションアニメだが、これが何とも味わい深い。 風に揺れる草葉の動きが一本一本細やかに表現されていて、その手作り風の温もり感覚がCGパートとの対比でより際立っている。 大人の街のダークなムードやビッグアイズなどはティム・バートン風の趣だ。 少女が操縦桿を握る紅の翼が夜の街を飛ぶ。サン=テグジュペリのあの『夜間飛行』の世界がそこにある。[試写会(吹替)] 7点(2015-11-12 23:32:57)《改行有》

466.  自由への闘い 《ネタバレ》 屋根伝いの危険なスタントあり、操車場の高架から列車へ飛び乗るスタントあり。 アクションの演出も頑張っているし、空爆シーンは予算の都合らしく音響だけでの表現だが、 それでも十二分に空襲の恐怖感を伝えている。 ルノワールその人を思わせる相貌のチャールズ・ロートンの演説と身振りはヒトラーとは真逆で穏やかで淡々とし、 語る彼の姿よりも、それに聞き入る人々の表情に多くのショットを割いている。 その中で、彼を万感の想いで見つめるモーリン・オハラが一際美しい。 中でもルノワールらしいのが、映画の中盤、彼女とロートンがガラス戸を挟んで見つめるシーンだ。 屋内と屋外の空間処理の巧さもさることながら、彼女への想いをうまく伝えられない彼の気弱でシャイな姿が何ともいじらしい。 その彼が、ラストで彼を引っ立てようとするドイツ兵士の手を毅然と払い、胸を張って校舎を歩み出て行く。 映画前半の臆病を吹っ切った彼がみせる、さりげないが意思的で尊厳に満ちた身振りの数々が感動させる。[DVD(字幕なし「原語」)] 7点(2015-11-01 23:55:06)《改行有》

467.  ニュールンベルグ裁判 《ネタバレ》 検察側の人物を背後からカメラが正面に回り込んで映していくと、リチャード・ウィドマークである。 これはケレンを表現するカメラだ。 弁護士役マクシミリアン・シェルの長い熱弁を、法廷内の様子を見回すように旋回しながら収めたロングテイクは、 カンペ無しというアリバイを誇示しながら、彼の長広舌を印象付けるカメラといったところか。 そのカット尻で、彼と被告席のバート・ランカスターの二人をピタリと構図に収めるのなどは、 スター俳優達が別撮りではなく紛れもなく共演しているとアピールするカメラワークでもあろう。 これが、物語も佳境となるランカスターの弁論あたりまで続くとさすがに鼻についてくる。例によって旋回したカメラは彼を真正面に置くと 上昇して、決め台詞直前でいきなり高速ズームで彼を大写しにする。 金さんの桜吹雪や、水戸黄門の印籠じゃないんだから。 途端に映画自体が段取り臭く、様式的・誘導的で、押し付けがましいものとなってしまう。 様々な小道具を介しての場面繋ぎなど、細やかな工夫も随所に凝らされているし、 大戦の犠牲者として登場する二人の女優のキャスティングもいいのだが。[DVD(字幕なし「原語」)] 7点(2015-10-21 22:37:44)《改行有》

468.  わたしに会うまでの1600キロ 《ネタバレ》 山上から誤って片方の靴を落としてしまったヒロインは、もう一足の靴も潔く放り投げる。 それを実際にシェリル・ストレイドが行ったかどうかはまったく問題でなく、何よりも映画の要請として投げる。 『ダラス・バイヤーズクラブ』は主人公が病に冒されつつも行動的に世界各地を飛び回る、何ともフットワークの軽い映画に思えたが、 こちらはフラッシュバックを交えながらの地道な歩行の映画だ。 出発の朝、荷物を詰め込んだバックパックを何とか背負おうと悶絶格闘するヒロイン。 その重みの感覚、テント設営の不慣れな手つき、旅と共に身体じゅうに出来た傷や痣などの描写が実に丹念である。 劇中で、森で出会った子供が歌いだす。その清らかな歌声が不思議に沁み入る。[映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2015-10-18 18:06:36)《改行有》

469.  ジョン・ウィック 《ネタバレ》 結末部一歩手前を巻頭に持ってくるのも、キアヌ・リーヴスの顔半分に影を落として二面化する照明設計もノワールスタイルの証。 全般に照度を落とした心象情景の中、主として人工の光が彼の相貌を染める。 摩天楼の夜景空撮に稲光、白銀に輝く雨の反射にネオンサインと、光と影を意識してドラマに組み込んでいる。 雨の波止場で決着を付けた彼が画面手前に歩み来ると同時に、その顔面を次第にシルエット化させて死を仄めかす。 そこで冒頭のショットへと回帰するが、瀕死の彼を生に呼び戻すのは亡き妻の声と、彼女を映した携帯端末の光であると。 打撃系と関節系を組み合わせた連続技のアクションを出来うる限り持続的な引きのフィクスショットで撮る。 桟敷部分からの垂直落下を、多人数掛けの銃撃とそのリアクションをワンショットで収める。 そうした意欲的なアクション演出も随所に光る。[映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2015-10-17 22:06:38)《改行有》

470.  グッド・ストライプス 《ネタバレ》 奔放なようでいて少し人見知りするところのある菊池亜希子。線が細く、いかにも優柔不断な中島歩。 二人の、その辺に普通にいそうな等身大の像が目を惹きつける。 少し倦怠混じりのほどよい距離感を保って向かい合い、並び合い、語り合う二人のナチュラルで他愛ないやりとりがいい。 式場での打ち合わせシーンのなんともユーモラスでリアル感溢れる対話などは岨手由紀子の脚本ベースだろうが、 二人のキャラクターを明快に提示しつつ、アドリブ芝居のような新鮮さがあって、さりげなくも素晴らしい。 妊娠から結婚へ。お互いの家族と交わっていく中での微妙な緊張と気まずさ、安堵、新たな気づき。 それらがふとした瞬間にごく小さな表情・視線の変化の中にたち現れる様が次第にスリルを孕む。 ふとしたアクシデントで夜の用水路に落ちてしまう菊池。結構大胆なショットを引いたカメラでさらりと撮っているのも凄い。[映画館(邦画)] 7点(2015-10-05 22:22:46)《改行有》

471.  第五福竜丸 《ネタバレ》 序盤のマグロ漁の実録シーンはハワード・ホークスの『虎鮫』には劣るものの、瑞々しい活気が画面に漲って素晴らしい。 甲板上で頭を打擲され解体されていく鮫がのたうつ生々しさは、後にベッド上でもがき苦しむ宇野重吉の姿とも重なるだろう。 被曝までの約20分間で描写される船員たちの生活ぶり・仕事ぶりが丹念でいい。 被曝の瞬間、無音の中に白い閃光が画面を覆う。その数秒後に轟音と爆風が船を襲う、という描写が迫真である。 白い灰が降る中を滑る福竜丸の合成ショットが不気味だ。 前半の動に対して、静の際立つ後半、米国側調査団と日本側医師団との問答を通訳が介す。 その事務的口調の冷徹な響き。 宇野らの柔和なキャラクターもまた、映画の抑制的なトーンを象っている。[DVD(邦画)] 7点(2015-09-20 23:58:34)《改行有》

472.  ボーイ・ソプラノ ただひとつの歌声 《ネタバレ》 この種のドラマでは、演奏後の大喝采や敵対していた少年との和解や教師たちとの別れのシーンをオーケストレーションで盛り上げて ベタ&ウェットに演出するパターンを和洋問わずさんざん見せられてきたが、本作はその点、物足りなさを感じてしまうくらい淡白でドライだ。 子供たちは安手の仲直りの段取りなど踏まないし、ドラマチックな別離のハグも握手もない。 演奏会を前に皆で一致団結して頑張りましょう的な安手のチームワークもない。 その簡潔な視線と短い台詞のやりとりの中に真情を込める節度あるディレクションがよろしい。 ここでは少年と大人たちとの関係が重視されており、大人への成長が一つの主題となっている。 少年期のみの音域というのもドラマのポイントで、発表会大成功の単純なサクセスストーリーに終わらないのも脚本の妙だ。 次のシーンの音や音楽を先行させて前のシーンに被せる、いわゆる音のズリ上げを用いた繋ぎが多用されていているのだが、 対話の中に合唱が重なってしまって煩わしい部分もある。やりすぎは良くない。[映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2015-09-13 20:20:09)《改行有》

473.  ジュラシック・ワールド 《ネタバレ》 言語的で非運動的で簡便性が特徴である携帯電話はやはり映画的な小道具ではない。サスペンスを基調とする映画なら尚更で、 この映画の作り手もそこを理解していて、早々に子どもたちの携帯電話を無効にしてしまうなど、気が利いている。 孤立状態も割とあっさりなのだが。 枝葉や車輌など対象物の合間から、メインの恐竜を部分的に小出しに見せていく手管。昼間の擬態や、夜の闇の中で赤いレーザーサイトの交錯の中に シルエットを浮かび上がらせるといった、立体性を意識したモンスターの見せ方の工夫が楽しい。同じくモブシーンの混乱ぶりとスケールも気合が入っている。 もっと、人間視点の仰角構図で恐竜の迫力を見せて欲しかったが。 ヒロインについては、見せ方次第でもっと魅力を出せたはずなのが勿体無い。 滝の上で身支度して一念発起するシーンは、スカートの裾をたくし上げるとかの衣替えでもっと大胆にギャップを提示して欲しい。 後半、銃を打ぶっ放しタンクトップ姿で疾走する彼女はとてもいいが、逆光のショットなどで不美人に見えてしまうのは撮影側の問題である。[映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2015-09-11 00:00:10)《改行有》

474.  ピース オブ ケイク 《ネタバレ》 飲みの席で陽気になったりカラんだり愚痴ったり、多部未華子の飾らないキャラクターが魅力的でいい。 借金で雲隠れしていた部下に、咄嗟にレジから札束を取り出し退職金だと渡してテレ笑いする綾野剛の、人の良い表情がいい。 そんな愛すべき二人が熱海のホテルで大喧嘩する。多部が男湯に乗り込んでの修羅場なのだが、 綾野の憎めないキャラクターもあって何故か微笑ましい。 必ずあるはずの二人の再会シーンでは、そこにどのような風を吹かせるのか。 終盤はその興味だけで画面を見守る感じだが、そこではしっかりと歌が流れ、疾走する二人が風になっている。 クワズイモは青々と揺れ、今度はカメラが風になって二人の周りを流れる。 そしてキスする二人のストップモーションが爽やかに映画を〆た。 前半のヒロインのモノローグはもっと削って欲しい。[映画館(邦画)] 7点(2015-09-08 22:10:13)《改行有》

475.  ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション 《ネタバレ》 中空での宙吊りアクションといえば、『グランドキャニオンの対決』や『007リビングデイライツ』がある。 いずれも実景ロングショットでのスタントマンによるアクションと、スクリーンプロセスによる俳優らのミドルショットで構成される アクションシーンだが、そのショット繋ぎの巧さも相まって非常にサスペンスフルで迫真のシーンだ。 それらの「アクション」を踏まえていうなら、『ローグネイション』の宙吊りショットにあるのはスター映画の醍醐味であり、アクション映画の それではない。 巻頭の拘束部屋やオペラ舞台裏での格闘にしても、階段を下るカーチェイスにしてもアクションの段取りと設計はあるようだが、 その繋ぎが悪いのか画角が悪いのか、折角の俳優のアクションが映えないのが勿体無い。 クライマックスのマンホールへの滑り込みなども、トム・クルーズ自身は華麗な身体アクションを体現しているはずなのにそれを 効果的に撮れていない印象を受ける。 拘束具にキーが届かずに悪戦苦闘したり、水中行動での不手際や、バンク走行で膝を擦ったりという ハプニング的なアクションの採り入れ方はよいのだが。 トム・クルーズとサイモン・ペッグらとの信頼関係に関する部分は明らかに台詞が多い。 貸し借りがどうとか、彼を必ず救うだとかを言葉で表明してから行動というのはNGだろう。 有言実行は現実なら励行すべきだが、映画ではやるべきではない。 マイケル・マンを見習うべきである。[映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2015-09-06 00:21:39)《改行有》

476.  暁の追跡 《ネタバレ》 杉葉子と鎌倉に海水浴に来た池部良が遠い爆音にふと空を見上げると、航空機が一機飛んでいる。 彼女に「思い出す?」と問われる彼は何を思うのか。 また、転職の相談をする証券会社勤務の戦友がビルの屋上で「南方を思い出すな、あの雲は」という台詞をふと漏らす。 雑然と賑わう鎌倉や新橋、兜町などのロケーション撮影の中、それらの細部に「戦後5年」を垣間見せる。 南方戦線を含む過酷な戦場を体験した池部良を意識しての新藤脚本だろうか。 縦の構図を多用したロケ撮影による生々しい街の表情が主役でもある。 これも日本版ネオリアリズモといえる。 路線沿いの活気ある繁華街とは対照的な月島地区、クライマックスの深川地区などの発展途上地域の模様など、都市論の提示でもあろう。 夜明け前の時間経過を追いつつ展開するラストの緊迫した銃撃戦も素晴らしい。[DVD(邦画)] 7点(2015-08-27 23:57:41)《改行有》

477.  バケモノの子 《ネタバレ》 師匠と弟子二人並んでの、一風変わった型稽古の情景モンタージュが前半の山だ。 少年がひたすら模倣することによって次第に上達していく様が、 ロングショット主体でレイアウトされた動きの変化の中から表れてくる。 そこには二者の動きが次第にシンクロしていくアクション映画、舞踊映画の快感があり、 アニメーションによる誇張(スピード・タイミング)の醍醐味がある。 キャラクターにはあえて影をつけない平板な絵柄を採用し、その分 部屋の内外を駆け回っての喧嘩や、卵かけご飯の食事など アニメーションならではの動きの楽しさを充実させ、 一方で人物の表情のアップでは瞳の潤いを細やかに揺らす繊細な演出を施し、息吹を与える。 モブシーンの動画を含め、特に前半はよく頑張っている。 今回のクレジットでは細田単独の脚本だが、台詞が削り切れていないのは児童向けを意識したためか。 ラストでの回想シーンも少し親切すぎる。 トレードマーク的な青空と白い入道雲は決めのカットにはしっかりと登場していてそれなりに印象的だが。[映画館(邦画)] 7点(2015-07-18 16:18:26)《改行有》

478.  ボヴァリー夫人(1933) 《ネタバレ》 本来ならば190分の作品が無残にも半分以上切られてしまっているのだから、 現在残されているバージョンで物語を追おうとすることには無理がある。 特に前半部の欠損が多いのか、いきなり場面が結婚後に飛んでいたりと展開の 慌ただしい事この上なく、混乱すら来たしてしまう程だが、それは少なくともルノワールの非ではない。 逆に物語を放棄する分、それぞれのルノワール的画面の映画性をより良く味わえるだろう。 確かにヴァランティーヌ・テシエは薹が立った印象でヒロインとしての魅力には欠けるのだが、 終盤の病床シーンの芝居などは圧巻だ。 家禽の行き交う田園風景の風情や、並木道を進む馬車の縦移動の緩やかな運動感もいい。 屋内シーンでもぬかりなく窓を解放しドアを開閉し、外の世界の広がりを豊かに画面に取り入れる。 パンフォーカスによって二間の部屋の奥、その又先にある屋外空間の事物・空気まで意識を伸ばしている。 『市民ケーン』(1941)に先駆ける、この意欲的な世界把握。傑出と云っていいだろう。[DVD(字幕)] 7点(2015-07-13 16:55:07)《改行有》

479.  ボクサー(1977) 《ネタバレ》 『あしたのジョー』と『ロッキー』を折衷したような定番物語に 自らのルーツである演劇的な空間も採り入れつつ、 木場等の下町的ロケーションも意欲的に活用する。 当時の現役・元現役プロボクサーの記録映像的な趣向もあれば、 試合シーンに風音を響かせて心象化する実験的試みもある。 (成功しているとは云い難いが) そのごった煮で雑然とした印象が、魅力といえば魅力か。 当時のハングリースポーツ、ボクシングの泥臭さと哀調が強調されていて 独特の風情がある。 清水健太郎のファイトシーンも頑張っている。[DVD(邦画)] 7点(2015-07-09 23:59:29)《改行有》

480.  ガンファイターの最後 《ネタバレ》 撃つ者と撃たれる者が縦構図の中におさまり、 撃つ瞬間と撃たれる瞬間、双方のアクションが 同一画面の中に展開する。 ガンアクションの醍醐味溢れる秀逸なショットに痺れる。 落下スタントを織り交ぜた冒頭の暗い納屋での対決や、 リチャード・ウィドマークが部屋に飛び込みざま 手前に滑り込みながらドアの背後の若者を銃撃する、 レナ・ホーンの部屋での対決などだ。 物語自体は時代の反映もあってか陰鬱でアクションシーン自体も少ないが、 そうした瞬発力の高い銃撃ショットが強烈な印象を残す。 乱打、乱射を細分化したカッティングで見せる昨今のアクションフィルムとは 比較にならないシンプルなワンショットの何と活劇的なことか。 「列車の到着」で幕を開け、緩やかな列車の出発で幕を閉じる。 その夜の深い黒がよく映える。[DVD(字幕なし「原語」)] 7点(2015-07-08 15:10:13)《改行有》

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