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プロフィール
コメント数 614
性別 男性
自己紹介  洋画は字幕版も吹き替え版も両方観た上で感想を書くようにしています。
 ネタバレが多い為、未見映画の情報集めには役立てないかも知れませんが……
 自分と好みが合う人がいたら、点数などを基準に映画選びの参考にしてもらえたら嬉しいです。

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【製作年 : 1990年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
評価順123456
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81.  ブッチャー・ボーイ 《ネタバレ》  冒頭、大人になった主人公が子供時代の過ちを振り返る形式で映画は進んでいく訳ですが「僕とジョーの友情に首を突っ込んだ夫人が悪い」って、全然反省していない辺りが凄い。  この主人公、殺人の被害者となった夫人以外にも、他所者を「田舎っぺ」「ブタより醜い」と見下していたりして、とかく感情移入を拒む存在なのですよね。  そんな彼に呆れかえっていたはずなのに、観ている内に段々と感情移入させてしまうのだから、作り手の上手さを感じます。  父母を失うだけでなく「血の兄弟」「唯一で最高の友ジョー」と語り、大切にしていた親友からも絶交されてしまう主人公。  そんな彼は八つ当たりのように凶行に至る訳ですが、それが完全な狂気によるものとは思えず、一応主人公なりに理屈は通っているなと納得させられてしまうのだから、これはもう恐ろしい映画です。  少年愛嗜好があると思しき神父に、性的悪戯を受けそうになるシーンでは、逆襲してみせた彼にスカッとさせられたし「ジョーにウソを言わせた」事が何よりも許せないと怒るシーンでは、ついつい彼に肩入れしてしまう。  そんな具合に、巧みに感情移入させた上で主人公に「人殺し」をさせてしまう訳だから、観ているこちらまで罪悪感を抱いてしまうのですよね。  「エイリアンの侵略」「原爆による世界の終わり」「父母の美しい思い出を否定する現実」など、彼が殺人を犯したキッカケを大量に用意してみせて、その凶行に説得力を持たせているのも上手い。  上手いんだけど……それによって「殺人犯になるまでを疑似体験出来る映画」という形になっている訳だから、後味の悪さは折り紙付きです。  上述の通り、主人公には反省の色が全く窺えません。  ラストにおいても「もう悪党ではないで賞」を取ったから釈放された、としか感じていないのです。  「トラブルは、もう結構」という独白からするに、今後彼が犯罪に手を染める可能性は低いと思われます。  それでも、彼は許されるのだろうか、自分が殺した夫人に対して「悪い事をした」「可哀想だ」と考えたりする事は無いのだろうか、と非常に悲しい気持ちに襲われましたね。  聖母マリアが彼に渡した花、スノードロップの花言葉は「希望」そして「慰め」。  果たして彼に「希望」を与えるべきなのか、彼を「慰め」るのが正しい事なのか、と観る者に考えさせてくれる。  様々な意味で、問題作と呼ぶに相応しい一品でありました。[ビデオ(字幕)] 6点(2018-01-11 08:25:15)(良:1票) 《改行有》

82.  悪魔を憐れむ歌 《ネタバレ》  「真実の行方」や「オーロラの彼方へ」の監督さんが、こんな映画を撮ったのか?  と考えれば戸惑うけれど「ブラックサイト」と同じ監督と考えれば納得してしまうという、そんな内容の一品ですね。  悪趣味、バッドエンド、騙しの演出など、自分の苦手な要素が一杯詰まっているのに、それでも面白く観賞出来てしまったのだから困り物。  それだけ作り手の力量が確かなのだろうな、と思えるし「狡い」と不快感を覚える一方で「観客に対してフェアであろうという最低限の配慮はある」と認めざるをえない感じです。  例えば「猫からの目線で悪魔が主人公を見つめているカット」が中盤に存在している以上「猫に憑依したお蔭で悪魔は助かりました」というラストについても「そんなのありかよ!」とはツッコめないんですよね。  でもって「死にそうになった時の話だって、最初に言ったはずだ」と言われてしまえば「まぁ、確かにそうだけどさぁ……」と渋々認めざるをえないという。  「真実の行方」もバッドエンドだし「オーロラの彼方へ」もラストはサプライズがあったけど、その二作ほどは面白く感じなかったせいか「狡いよなぁ」とボヤきたくなっちゃいますね、本作の場合は。  中盤にて、歌を効果的に用いて「次から次に、色んな人達に憑依する悪魔の恐ろしさ」を描く件は、凄く不気味で良かったし、主人公の相棒と上司、どちらに悪魔が憑りついているのかと疑心暗鬼に追い込まれる終盤のやり取りも良かったしで、褒めるべき点は幾らでもあるのですが、如何せん結末が酷いと思うので、どうにも評価が難しい。  主人公に残された唯一の希望として、甥っ子が生き延びているのに、ご丁寧に悪魔に「あの甥っ子も殺してやる」とまで言わせているし……うん、やっぱり悪趣味です。  もしかしたら、悪魔を自らに憑依させて相打ちになるラストでは、有名過ぎる「エクソシスト」を連想するので、そこにもう一捻り加える必要性を感じたのかも知れませんね。  とはいえ、そもそも基本的なストーリーラインが「ペンタグラム」そのままな訳だから、あんまり気にしないで相打ちエンドでも良かったんじゃないかなぁ、と思えるのですが、どうなんでしょう。  世の中には勧善懲悪の物語が溢れているのだし、偶には悪が勝っても良いのかも知れませんが、自分としては受け入れ難い映画でありました。[DVD(吹替)] 5点(2017-12-29 15:23:55)《改行有》

83.  刑事ジョー/ママにお手あげ 《ネタバレ》  劇中にて、ママが見せる幼少期のジョーの写真が「ロッキー」で飾られていた写真と同じであるというだけでも、何だか憎めなくなってしまう映画。  実際、自分が大のスタローン贔屓である事を差し引いても、結構面白いと思うんですよね、この作品。  思っていた以上に「刑事物」としての要素が濃いし、母子によるバディムービーとして、きちんと成立している。  ちょっと年増なヒロインの警部補さんもキュートで、彼女と主人公との恋の行方についても、素直に応援する事が出来ました。  オムツ云々の件は(そこまでやらなくても……)と感じるし「母親を撃ったの」が最後のオチというのは弱いと思いますが、それも御愛嬌。  なんていうか(映画に点数を付けるなら、ここはマイナスポイントだな)と思う箇所ではあるんですが(ここの場面は苦手だ)(この映画のココが嫌いだ)とまでは思わないラインに留めているという、非常に自分好みな作りなんです。  だから安心して観られるし、短所は受け流して、長所だけを受け止めるような形で、楽しむ事が出来る。  真面目な熱血漢なのに、恋愛に不器用で、ママに対してはとことん弱いという主人公ジョーのキャラクターも、非常に魅力的。  普段は素っ気無くても「プレゼントがある」と聞かされると、子供っぽく喜ぶ辺りなど、ママが溺愛するのも納得な愛嬌があるんですよね。  「愛から逃げる事」が貴方の欠点だと諭されるシーンでの、寂し気にママを見つめる表情なんかも、凄く好き。  アクション部分でもなく、コメディ部分でもなく、ここの真面目な母子の対話シーンこそが、本作の白眉であったように思えます。  ちょっとボケ気味かと思われたママが、実は驚異的な記憶力の持ち主だったと判明する件も気持ち良いし「お大事に」という台詞の使い方も上手い。  序盤と終盤、銃を撃った後の仕草が母子でそっくりであった点なんかも好きですね。  上述の通り「(その犯人は)母親を撃ったの」というオチに関しては、少し弱いと思っているのですが、それでもジョーの「おや、まぁ……でも、気持ちは分からんでもないよ」と言わんばかりの、複雑な笑顔を見せられちゃうと、何だかそれだけで(まぁ、良いか)と納得し、満足してしまう。  ダメな子ほど可愛い、なんて言葉に倣い「ダメな映画かも知れないけど、自分は好き」と主張したくなるような、そんな一品でありました。[地上波(吹替)] 8点(2017-12-27 19:55:55)《改行有》

84.  コンゴ 《ネタバレ》  こういった冒険物は好きなジャンルなので、楽しく観賞する事が出来ました。  なんといってもマスコット……いやさヒロインとさえ呼べそうなエイミーの存在が魅力的でしたね。  手話をするゴリラというだけでなく、特殊な機械の音声によって、人間の言葉を話せるようになっているという設定が、可愛さに拍車を掛けています。  飼い主の男性に甘えて、抱っこされたり、くすぐったりされるのが好きな性格。  そして、彼に人間の女性が近付いたら、すぐにヤキモチを妬いちゃうような辺りも、何とも愛らしい。  人間の言葉を憶えてしまったがゆえに、同じゴリラからは忌避されてしまった際に浮かべる表情なども、切なさを感じられて良かったです。  欠点としては、そんなエイミーとの別れのシーンが、やや唐突に思えてしまった事。  そして、敵となる「番人」達が小柄なゆえか、恐怖感や緊迫感が伝わってこなかった事が挙げられそう。  また、本作は「エイミーを故郷のコンゴに帰してあげる」のを目的とした男性の他にも「現地で遭難した元恋人の男性を救出する事」を目的とした女性主人公も存在しているのですが、そちらには感情移入出来なかった点も残念。  何せ彼女の上司が、絵に描いたように嫌な奴であり、実の息子の安否よりも「レーザー兵器の材料となる特殊なダイヤモンド」の入手を優先する性格だったりするもんだから、作中で彼女のモチベーションが上がらないのと同じように、観ているこちらとしても、応援する気持ちが薄れちゃうんですよね。  本来の目的である「元恋人の救出」に関しても、冒頭の映像で死んだ事が示唆されており、案の定、終盤にて死体を発見する展開なので「あぁ、やっぱり……」としか思えない。  それらの要素は「最後の最後で、上司の命令を無視する爽快感を与える為」「実は死んでいたという落胆を与えない為」なのでしょうけど、やはりスッキリしないものが残りました。  飛行機からパラシュートを付けてダイブしたり、急流の河をボートで下ったり、キャンプしてテントで眠ったり、登山したりと「冒険旅行」のツボを押さえた作りであった事は、素直に嬉しかったですね。  月夜にボートを漕ぐシーンなんかも、幻想的な美しさを味わえて、お気に入り。  命の危機が感じられない作りである事に関しても、裏を返せば「安心して、驚いたり緊張したりせずに楽しめる」という長所に成り得るんじゃないか、とも思えてくる。  そんな憎めない一品でありました。[DVD(吹替)] 6点(2017-11-26 19:18:51)(良:1票) 《改行有》

85.  アップルゲイツ 《ネタバレ》  巨大カマキリ一家が人間に成り済まし、原子力発電所を破壊しようと画策するという、実にトンデモない映画。  とはいえ「昆虫と人類との戦い」を描いたアクション映画ではない、というのがポイントですね。  環境破壊によって住処の森を奪われ、復讐を果たす為、人間社会に潜入したはずの一家が、段々と「人間の毒」に当てられていく。  その様が皮肉たっぷりに描かれている、ブラックユーモア満載の映画なんです。  クレジットカード、酒、麻薬、同性愛、不倫と、昆虫だった頃には考えられない悪徳の類に没頭していく家族の姿が、妙にリアルで、目が離せない。  買い物中毒になってしまう奥さんの姿は、特に恐ろしくて「これは実生活で反面教師にしないとダメだ……」なんて、自らに言い聞かせちゃったくらいです。  「繭」にされた人間というビジュアルも、中々忘れ難いインパクトがありましたし、人間の姿から虫の姿へと変身する特撮も、適度にグロテスク。  虫が潰されて体液が飛び散る描写とか、目を背けたくなる場面も多いんですけど、全編がコメディタッチなせいか、不愉快というほどじゃないバランスなのも嬉しかったですね。  娘が人間の青年と交尾するシーン、それによって産み落とした卵を踏み潰されるシーンなんかも、本当に恐ろしくて、悲しくなっちゃいました。  一家の正体が露見し、さながら魔女狩りのように追い詰められていく場面では、バッドエンドも覚悟しましたが、何とか一家は無事に助かり「我々と人間は共存出来る」という結末に着地してくれた為、後味も良かったですね。  「娘とレズ関係になっていた恋人は、どうなったの?」とか「クライマックスの昆虫同士の戦いが、アッサリ決着付き過ぎ」とか、気になる点や不満点もありますけど、全体的には好印象。  意外な掘り出し物でありました。[ビデオ(字幕)] 6点(2017-11-24 00:46:40)《改行有》

86.  48時間PART2/帰って来たふたり 《ネタバレ》  映画単品としての出来栄えは、結構良かったと思うんです。  でも「続編で、こういう事はやって欲しくない」と思えるような部分が多く、それが引っ掛かって、素直に楽しめないんですよね。  まず、主人公であるジャックとレジーが再び喧嘩してストーリーが始まっている時点で幻滅。  バディムービーである以上「喧嘩」→「和解」という流れにするのが無難ではあるんですが、それにしても本作は無理矢理感が否めなかったです。  何せ「実は前作にて、レジーはジャックの給料を盗んでいたのだ」なんていう、嬉しくない後付けが喧嘩の一因ですからね。  これには流石に(じゃあ前作のラストで、あんなに仲良くなっていたのは何だったんだよ)(レジーは盗みを働いておいて、しれっと友達面してジャックと別れたのか)とツッコんじゃいます。  「48時間」で積み上げたものをリセットするだけでなく、マイナスまで付け足されたように思え、どうにも居心地が悪い。  唯一、本作の敵であるアイスマンが「前作でレジーが盗んだ大金の持ち主だった」と判明する件には感心させられたのですが、精々それくらいでしたね。  目立たないとはいえ、前作からの同僚で何くれとなく協力してくれていたキーホーが黒幕というのも(えぇ……)という感じで、ひたすら困惑。  「これこれこういう理由で悪の道に走った」「元々悪人で、警官になったのは偽装工作の為」などの背景が一切語られず「善人のはずの同僚が黒幕だよ。驚いた?」というだけの仕掛けでしかないので、ちょっと褒めるのは難しいです。  そんな事をすればダレてしまうかも知れませんが、やはり最低限の義務として「アイスマンの背景」については語っておいて欲しかったところ。  そんな具合にストーリー面については不満も多いのですが、個々のアクションなどは(流石ウォルター・ヒル監督)と思わせるものがあり、良かったです。  ポルノ映画のスクリーンを破ってバイクが飛び出す(しかも飛び出す度に女優が喘ぐ)シーンは馬鹿々々しいけど笑っちゃったし、クライマックスの銃撃戦も、色々と派手なアクションを交えて盛り上げてくれています。  序盤にてジャックが撃たれるも「防弾チョッキのお蔭で助かる」という伏線があったものだから、当然レジーも防弾チョッキを着ていて助かるのだろうと思ったら「本当に生身のレジーを撃った」ってオチだったのも、驚かされましたね。  ラストにて、撃たれたレジーが仕返しとばかりにジャックのライターを盗み「これでおあいこ」と両者が笑い合う形で終わり、五十万ドルも無事に確保出来てと、ハッピーエンドな点も嬉しい。  評価が難しいのですが、とりあえず一定の面白さは感じられたし「観ておいて良かったな」と思えた一本でした。[DVD(吹替)] 6点(2017-10-07 05:20:10)(良:1票) 《改行有》

87.  アナコンダ 《ネタバレ》  こういった川下りを疑似体験出来る映画、好きですね。  「アフリカの女王」みたいなロマンス物も良し、本作のようなモンスターパニック物も良し、という感じ。  出発シーンにて、上空からグルリと回って船を映し出す件なんて、荘厳な音楽も合わさり「実際に船旅をしても味わえない程の高揚感」を与えてくれるように思えます。  しかしまぁ、映画冒頭の説明文「獲物を呑み込むだけでは満足出来ず、捕った獲物をわざわざ吐き出して、また新たな獲物に襲い掛かる」が伏線だったと判明するシーンには、もう吃驚。  ジョン・ヴォイト演じる悪役のサローンが、大蛇に吐き出された後、死にかけの体であるにも拘らずウインクしてみせるのだから、忘れ難いインパクトがありました。  サローンに関しては「殺す相手の目は見るな」「見ると亡霊が付き纏うぞ」などの台詞も恰好良く、悪党には悪党の魅力があるのだと教えてくれた気がしますね。  もしかしたら生きていて、2で再登場する事も有り得るのではないか? と思えただけに、1にしか出て来ないのが残念です。  その他、あえて不満を述べるとすれば、贔屓の俳優であるオーウェン・ウィルソンが、散々な役どころだったという事くらいでしょうか。  一応、最後は川に落ちた恋人を救った末に殺されているけど、主要人物の中で一番情けないキャラクターだったように思えます。  物語の欠点と呼べるような類ではありませんが、彼のファンとしては寂しかったですね。  ダニー・トレホが冒頭でアッサリ死んじゃうのも、ちょっと勿体無い。  でも、その分他のキャラクターには見せ場が用意されており、バランスは良かったです。  ヒロインの恋人役であるケイルが、昏睡状態の身体を押してサローンを倒してみせたり、気弱で嫌味なだけの男かと思われたウエストリッジが、意外な活躍を見せたりと、気持ち良いサプライズ感を味わえました。  最後も、派手な爆発オチで大蛇を倒してくれるし「実は、まだ生きていた」なオチも交えて、二重に盛り上げてくれるしで、大いに満足。  当初の目的通り「霧の民」と遭遇するのに成功した事も、ハッピーエンド感を強めてくれましたね。  細かいツッコミどころはあるかも知れないけど、観賞後は、そんなの気にならなくなる。  楽しい映画でした。[DVD(吹替)] 7点(2017-08-22 07:28:32)(良:2票) 《改行有》

88.  ディープ・ブルー(1999) 《ネタバレ》  以前観た時は何の疑いも無く、トーマス・ジェーン演じるカーターが主人公だと思っていたし、特に奇抜な内容だったという印象も残っていなかったのですが、改めて観賞してみると、色々と遊び心満載の映画でしたね。  まず、序盤は明らかに、サミュエル・L・ジャクソン演じるラッセルを主人公として扱っています。  俳優さんがビッグネームであるというだけに留まらず「海に浮かぶアルカトラズ」な研究施設に彼が訪れ、色々と説明してもらったり、人物を紹介してもらったりするという流れですからね。  観客の目線とラッセルの目線とが、自然に重なり合い、彼に感情移入してしまう形。  だから、中盤にて彼が食い殺されるシーンはショッキングだし(こりゃあ誰が生き残るか分からないぞ……)と思わせる効果もあるしで、非常に計算された構成であったと思います。  それも、ただ「予想を裏切る」「お約束の展開とは逆にする」という天邪鬼な作りというだけじゃなくて、ちゃんと観客が納得して、受け入れられるように作ってあるのが凄いですね。  上述のラッセル死亡シーンにおいても、事前に「水際は危険だ」と警告させているので、不意打ちの衝撃はあっても(こりゃあ反則だよ)という不快感には繋がらない。  カーターの存在にしたって、ルックスや性格を考えれば彼が一番主人公に相応しいし、何より劇中でもラッセルより先に登場しているので「実は彼こそが主人公だった」と後半に判明しても、自然と納得出来ちゃう訳です。  それは「一緒にビールを飲む」という生存フラグを立てつつ死んじゃったヒロインも然り。  「遺言ビデオを撮影する」という死亡フラグを立てつつ生き残った黒人コックも然り、ですね。  前者には「嫌な女だ」と思わせるような場面があったし、そもそも彼女が事態の元凶だったりする訳だから、死んでもそこまで衝撃は受けないし、逆に黒人コックは観客に「こいつは良い奴だ。生き残って欲しいな」と思わせる描写が色々あったからこそ、生存を素直に喜べるという形。    今の自分のように、伏線だの何だのアレコレ考えながら観て(おっ、このナンバープレートは「JAWS/ジョーズ」のパロディだな)とニヤリとしちゃうような映画オタクでも、昔の自分のように(男前さんだから、きっとこの人が主人公だろう)と直感的に考えるような初心な人であっても、等しく楽しめるように作られているのだから、これは凄い事だと思います。  ちゃんと中盤に爆発シーンという山場を用意しているし、サメが人を食い殺すシーンも間隔を開け過ぎず、それぞれ工夫して演出しているしで、シンプルな娯楽映画としてもレベルが高い。  敵となるサメが求めていたものが「自由」だったと判明するシーンも、情感が込められていて、良かったですね。  お約束の爆発と共にラスボスを倒した後「サメは本当に三匹だけか?」と、わざわざ確認して「生き残りに襲われるエンド」の可能性を摘み取ってくれる辺りなんかも、実に心憎い。  昔観た時とは、受ける印象が全く違ったけれど、それでも面白かったという本作品。  「期待外れ」でも「期待通り」でもない、不思議な満足感を味わう事が出来ました。[DVD(吹替)] 7点(2017-08-18 06:41:39)《改行有》

89.  プロゴルファー織部金次郎 《ネタバレ》  正直、武田鉄矢という人は苦手だったりもするのですが、これはスッキリした娯楽作品として、素直に楽しむ事が出来ました。  極道やら賭け事やらの要素が詰め込まれ、あと一歩で陰鬱な路線に傾きそうなところを、きちんと踏み止まり、明るく仕上げている。  基本的には人情噺なのですが、主人公がトーナメントを勝ち抜いていく爽快感も描かれている為、スポーツ物としての魅力も備わっていましたね。  ゴルフの知識が無くても分かるよう、ヒロインの桜子さんを通じて専門用語について解説したり、修造親分を通じて「ゴルフが上手くなる方法」を教えてみせたりと、初心者にも経験者にも配慮した作りとなっている事にも感心。  バックスピンの描写が大袈裟なのも、映画的なハッタリとしては有りだと思うし「行け、行け! 池?」などの駄洒落が散りばめられているのも、微笑ましくて良かったです。  不満点としては、主人公の娘達が最後に登場せず、ちょっと扱いが中途半端に思えた事でしょうか。  終盤は修造親分の死にスポットを当てていた為、そちらに専念した形なのでしょうけど「父さんはお酒ばかり飲んで、ゴルフの練習しないから、一生試合に勝てない」という言葉を覆す活躍をしてみせた訳だから、それに対する娘達の反応も知りたかったところです。  それと、狸の食べ物を主人公が横取りしたシーンは、ちゃんと謝る描写も欲しかったですね。  些細な事ですが、そういう描写が有るか無しかによって、主人公に対する好感度が大きく変わってくるように思えます。    ラストホールにて、修造親分の幻影が現れる件は感動的であり、涙腺が緩みかけたのですが、一度で終わらせずにその後何度も出てくるもんだから、ちょっとやり過ぎに感じられたのも残念。  基本的には好きな描写ですし、良かったと思うのですが、一度きりの登場でビシッと締めてくれた方が、より好みだったかも。    特筆すべきは、何といってもエンディング曲の素晴らしさですね。  「いつか観た映画みたいに」って、ゴルフとは全然関係無い歌詞だったりもする訳ですが、そんなの吹き飛ばしちゃうような力がある。  良い映画と、凄く良い曲、両方を満喫させてもらいました。[DVD(邦画)] 6点(2017-05-29 20:35:00)《改行有》

90.  羊たちの沈没 《ネタバレ》  この手のパロディ映画の中では、結構良く出来た品じゃないかなと思います。  笑いが下品過ぎなくて、観ていて不快になるシーンが皆無というだけでも安心させられるものがありましたね。  他のパロディ映画では、放屁だの嘔吐だのといった下ネタが多かったり、視覚的にキツい場面が頻出したりする事も珍しくないだけに(おぉ、意外と上品だな……)と感心させられたという形。  元ネタの作品を露骨に馬鹿にする笑いが皆無だったのも良かったと思います。  細かい不満点やら、目に付いた欠点やらを論ったらキリが無いだろうけど、それでも幾つかクスっとさせられる場面はあったし「腕時計」や「電話ボックス」の件なんかは、感心させられるものがありました。  「犯人は、アルフレッド・ヒッチコック……に変装した別人」というオチも、実に馬鹿々々しくて、憎めない。  ちょっと疲れている時とか、映画なんて単なる娯楽だろうと再確認したい時には、丁度良い一本かと。[DVD(吹替)] 6点(2017-03-20 06:01:04)《改行有》

91.  白い嵐 《ネタバレ》  海洋学校を舞台とした青春ドラマ、嵐による遭難、船長の責任を問う裁判と、大まかに分けて三つのパートで構成されている本作。  何やら詰め込み過ぎな印象も受けますが、配分としては「青春ドラマ」が主である為、落ち付いて観賞出来ましたね。  確認してみたところ、映画が始まって九十分以上経過してから、ようやく嵐に遭遇し、残り三十分程で完結する形となっており、作り手としてもメインに据えたのは「嵐に遭遇する前の日々」である事が伝わってきます。  自分としては、海洋学校のパートは楽しかったし、嵐のパートも迫力や悲壮感があって良かったと思うのですが、ラストの裁判に関しては、ちょっと納得いかないものがありましたね。  無言で鐘を鳴らすというメッセージ、生徒側の弁護、船長の毅然とした態度など、きちんと見せ場は用意されているのですが、結論が「免許取り消しは保留された」「だが、船長が海へ戻る日は来るだろうか?」なんていう、実に曖昧な代物だったので、どうにも反応に困ってしまいます。  ハッピーエンドの爽快感も無いし、バッドエンドの重く沈む気持ちも味わえないし、何だか観ているこちらの心も宙ぶらりん。  この辺りは、実話ネタならではの歯痒さでしょうか。  その他、意地悪な見方かも知れませんが「自分が米国人だったら、もっと感情移入出来たかもなぁ……」と感じさせる描写も多かったですね。  宇宙開発やら冷戦やらについてのラジオ放送が、劇中で頻繁に流れる演出なのは、作中の時代背景を伝えるという以上に、米国人のノスタルジーに訴える効果を狙っていそう。  それと、イルカを殺した件をあんなにも重大事のように扱う辺りも(確かに可哀想だ)と思う一方で(外国の人達って、本当にイルカが好きだよな)なんて考えが浮かんだりもして、ちょっと作中人物に距離を感じてしまった気がします。  前述の冷戦やら何やらの放送にて「アメリカの正義」を主張されていたせいか、途中で「キューバの魔の手から、毅然とした態度で少年達を守るアメリカの船長」なんて場面がある事にも、少々鼻白むものがありましたね。  序盤にて「船からの飛び込み」という適度な山場を用意し、観客を映画の世界に招き入れる巧みさなんかは、流石リドリー・スコット監督という感じだし、あんまり褒められた事じゃないだろう「飲酒」「買春」などのパートを爽やかに描いて「これも少年達の成長に繋がる、青春の一ページ」と感じさせてくれる辺りは、良かったと思います。  タイトルに反し、嵐に出会う前の、主人公達が生き生きとした姿を見せてくれる場面の方が面白く感じられた一品でした。[DVD(吹替)] 6点(2017-03-01 04:30:27)(良:1票) 《改行有》

92.  ディスクロージャー 《ネタバレ》  主人公が窮地を脱するのが「間違い電話の録音」「盗み聞き」などの偶然によるイベント頼みである事。  「自分を陥れようとした悪女に証拠を突き付けて、見苦しい言い逃れをする相手に勝利する痛快さ」を二度続けて描いている事。  上記が難点となっているのですが、それを差し引いても面白い映画でしたね。  何といっても、配役が絶妙。  マイケル・ダグラスは如何にも好色そうで、周りから「セクハラしたんじゃない?」と疑われてしまうのも納得だし、それだけに彼が「家族」を選んで誘惑に打ち勝つ姿が光って見えました。  デミ・ムーアの方も性的魅力に満ちていて、中身は「嫌な女」なのに、観ていて全く不快に思えないから不思議。  本作の主人公からすれば紛れもない悪女な訳だけど、本人なりに「男性社会で苦労して出世してきた」という矜持のようなものはあったんだろうな……と感じさせる辺りが、役者さんの上手さなのでしょうね。  そもそも会社側が隠蔽工作の為、主人公をクビにしようと画策していた訳だし、彼女の誘惑は「彼と再び関係を結んで弱みを握り、仲間に引き込んで守ってあげる」のが目的という、歪んだ愛情表現だったのかも知れないと考える事も可能だと思います。  作中のあちこちにて「女性が世に出て働くようになった事を警戒する男性」が描かれているのも、特徴の一つですね。  「その内に精子を提供する者だけが少数残されて、残りの男は滅ぼされる」なんて際どいジョークが飛び出すのだから、当時の世相なども窺えるようで、興味深い。  女性が働いて出世するのが当たり前になった現代すると、何だか滑稽にも感じられるのですが、それでも当人達にとっては深刻な問題だったのだろうな、と思えます。  男性側の目線で描かれた作品であり、偏った世界観となってしまいそうな中で「最終的な勝者となったのは、副社長に就任した女性」となっている辺りも、上手いバランスだったかと。  結局、主人公の出世は叶わずに「Friend」の正体が明かされるというオチについては(まぁ、そんなものか)という程度で、さほど感銘を受けなかったのですが、その後に「家族からのメール」で〆る構成には、唸らされましたね。  思えば事前に「どんなに悪い噂を立てられても、子供達は父親の無実を信じている」という伏線が張られていた為「パパ、早く帰ってきて」というメッセージと、手描きのイラストの威力が倍増しているという形。  出世する喜びなどではなく、家族と一緒にいられる幸せを感じて笑う主人公の姿が、実に恰好良かったです。  「セクハラ問題」「会社内の権力闘争」と、ドロドロした内容が続いていただけに、気持ちの良いハッピーエンドでした。[DVD(字幕)] 6点(2017-02-12 12:52:52)(良:1票) 《改行有》

93.  ドラゴンハート 《ネタバレ》  王道のファンタジー映画として、綺麗に纏まっていますね。  何よりもドラゴンに存在感があって、彼が動き、喋り、飛ぶ姿を見ているだけでも楽しい。  ただ、主人公の設定が「凄腕のドラゴンハンター」というわりに、全然凄みが感じられないというか、ハッキリ言うなら強く見えないせいで、今一つ没頭出来なかったように思えます。  血生臭い発想ですが、彼がドレイコと出会う前の段階「凄腕のハンターとして各地のドラゴンを狩りまくる」話の方が面白くなるんじゃないか、なんてついつい考えてしまいました。  ストーリーの流れとしては「ドレイコと組んで村人相手に詐欺行為を働くほどに堕落していた主人公が、本物の騎士になる」という形でカタルシスを生み出そうとしているのは分かるのですが、その「詐欺行為」のパートが非常に楽しそうで、あんまり悪事を働いているようには見えなかった辺りも残念。  最後にドレイコが死ぬ自己犠牲展開になるのも、事前に「死んだら星座になりたい」と語られた通り、星座になってハッピーエンドというのが分かり切っており、完全に予定調和の内であるように思えて、ノリ切れませんでしたね。  この辺りは「王道の魅力」と褒める事も「先が読める退屈な内容」と貶す事も出来そうな、難しい部分。  そもそもドレイコが「心臓を分け与えて瀕死の王子を救う」理由が「善行を積めば死後に星座になれるから」というのだから、本作は非常に宗教的な話なのでしょうね。  その辺りが、信仰心の薄い自分の心には響かなかったのかも。  視覚的には十分に楽しめるし、キャラクター造形なども悪くない。  ハッピーエンドなので後味も良い。  色々と魅力的な要素は揃っているだけに、肌に合わない事が勿体無く思えた映画でした。[DVD(字幕)] 5点(2017-01-30 07:05:06)(良:1票) 《改行有》

94.  忠臣蔵外伝 四谷怪談 《ネタバレ》  「赤穂浪士になれなかった男」の物語として、興味深く観賞する事が出来ました。  深作監督の忠臣蔵といえば「赤穂城断絶」という前例がありますが、あちらが予想以上に真っ当な作りだったのに比べると、こちらはもう「全力で好き勝手やらしてもらいました」という雰囲気が漂っていて、痛快なものがありましたね。  手首は斬り飛ばすわ、生首は斬り落とすわで、そこまでやるかと呆れつつも笑ってしまうような感じ。  当初は「俺達の手で時代を変えるのだ」と熱く語っていた若者達が、浪人として困窮する内に現実的な思考に染まってしまい「時代の方が俺達を変えちまった」と嘆くようになったりと、青春ドラマとしての側面まで備えているのだから、本当に贅沢な映画なのだと思います。  とはいえ、基本的なジャンルとしては「怪談」になる訳であり、そこの描写がキチっとしている辺りが、お見事。  あれもこれもと詰め込んだ闇鍋状態なのに、芯がブレていないというか、観ていて落ち着かない気持ちになる事も無く、エログロ濃い目の味付けなのに、不思議と尾を引かないんですよね。  お岩さんが超常的な力で討ち入りに助太刀するというのは、ちょっとやり過ぎ感もありましたが、中盤くらいで「やり過ぎ」な演出の数々にも慣れてしまうので、違和感という程には至らず。  どちらかというと「顔の白塗り」演出の方が良く分からなくて(死相を映像的に分かり易く表現したのか? あるいは悪人であるという証?)と軽く混乱させられましたね。  あれに関しては、もう少し説明が欲しかったところです。  人の良い親父さん風の津川内蔵助に関しては、実に魅力的で、好感触。  1990年版の「忠臣蔵」と同じように「本当は討ち入りをしたくない」という立場であるのも、自分としては嬉しいポイントでした。  自らが義士として称えられる未来を予見し、伊右衛門には「可哀想な男だ」と同情する姿からは、歴史に名を残した男としての、凄みのようなものが漂っていたと思います。  とにかくパワーを感じさせる一品で、高岡お岩さんの巨乳を拝んだり、琵琶の音色に聞き惚れたりするだけでも楽しめるのですが、上述のように「やり過ぎ」に感じられる場面も多々あり、そこを受け入れられるかどうかでも、評価が変わってきそう。  例えば、主人公の伊右衛門は、金策の為に辻斬りを行ってしまった事が負い目となり、赤穂浪士ではなくなる訳だけど「堀部安兵衛だって同じ事をしたのに、あちらだけが義士として英雄視されるのか」というやるせなさを伴った展開である為「義士としての赤穂浪士の偶像を否定する」描写だとしても、ちょっと理不尽で、納得いかないものがあったりするんです。  また、清水一学が伊右衛門のフトモモを撫で回す件などは、同性愛描写には免疫があるはずの自分でも(気色悪いなぁ……)と思うものがあり「フトモモの奥にある何かまで触っている」と気付いてしまった時には、流石に後悔。  最後は綺麗なお岩さんに戻って、伊右衛門と和解し、夫婦仲睦まじく幽霊となって終わりというのも、急展開過ぎるというか、主人公に都合が良過ぎるようにも思えましたね。  それら全てをひっくるめて、この映画特有の味であり、全てが好みである人にとっては、もう凄まじい傑作に感じられそうな……そんな作品でありました。[DVD(邦画)] 7点(2017-01-16 21:06:11)《改行有》

95.  夢(1990) 《ネタバレ》  夢だから仕方ないのかも知れませんが、何とも抽象的な内容。  冒頭の「狐の嫁入りを目撃してしまった少年」の話からして、尻切れ蜻蛉に終わってしまうものだから、観ているこちらとしては落胆し、観賞意欲を削がれてしまったのですよね。  「結局、狐には許してもらえたの?」「無事に家に帰れたの?」  という疑問が頭で渦巻いている内に、もう画面では次の話が始まっていたという形。  この先、どんなに面白い話が始まったとしても、また唐突に終わるんじゃないかという懸念が尾を引いてしまい、最後まで映画の世界に入り込めなかった気がします。  そんなオムニバス八編の中で、特に印象深かったものを挙げるなら、トンネルの話と、ゴッホの話になるでしょうか。  前者に関しては「足音」の怖さを感じる一方で、青白いメイクをした部下の亡霊が姿を見せた途端「いや、これ監督も笑わせようとしてやっているよね?」と思えてしまい、そのチグハグな空気がシュールで、奇妙に面白かったです。  後者に関しては、絵の世界に入り込む演出が視覚的にも楽しいし、画面作りに拘る黒澤監督が、ゴッホの口を通して「講義」を聞かせてくれているようでもあり、興味深いものがありました。  全体の構成について考えてみると、当初は童話のような雰囲気で「本当に、こんな夢を見たのかも知れないな」と思わせるものがあったのに、後半から妙に説教臭いというか、観客に対するメッセージ性が強まった内容となっていたのが、ちょっと残念でしたね。  「本当に、こんな夢を見たの?」と懐疑的になってしまい、それこそ映画という「夢」から「現実」に引き戻されたような感覚がありました。  所々ハッとさせられる場面もあったのですが、総じて退屈に感じてしまった時間の方が長く「こんな夢なら、早く醒めて欲しいな……」と思ってしまった以上、どうやら自分の肌には合わない夢であったようです。[DVD(邦画)] 3点(2016-10-24 20:34:44)《改行有》

96.  3人のエンジェル 《ネタバレ》 「男が遊びで女装するのは女装趣味」 「女性への変身願望が高じてチン切り手術をするのが性転換者」 「ファッションにこだわってハデに着飾るゲイがドラッグ・クイーン」 「人生を楽しめない女装坊やは、ドレスを着ただけのガキよ」  という作中の台詞が、とても興味深い。  第三者からすると、ついつい「ゲイ」と一括りにしてしまいそうな中にも、様々なタイプがいて、それぞれ拘りを持って生きている事が窺えましたね。  本作はキャスティングだけでも「この人達が女装するなんて、それだけで面白いに決まってるじゃん!」と予見させるものがあり、この辺りは元ネタであろう「プリシラ」よりも上手かったように思えます。  作中にて、ウェズリー・スナイプス演じるノグジーマを、か弱い女性と思って絡んでくる男共には(なんて命知らずなんだ……)と逆に心配になってしまうし、案の定あっさり撃退されちゃう姿には(当たり前だろ!)とツッコミつつも、笑いを抑え切れなかったです。  パトリック・スウェイジ演じるヴィーダが勢い良くドアを蹴り開けて、夫婦喧嘩に乱入し、妻を殴る暴力夫を殴り飛ばして家から追い出す展開なんかも、実に痛快。  この辺りは、彼らがアクション映画で活躍する姿を知っているからこその面白さなのでしょうけど、初見の人でも「えっ、こんなに強かったんだ!」という衝撃を味わえて、楽しめるのではないかなと思えます。  ちょっと気になったのが「メル・ギブソンのお尻はキュートだわ」という台詞。  「ハート・オブ・ウーマン」(2000年)でも彼は「可愛いお尻ちゃん」と評されていたのですが、あれはこの作品を踏まえてのネタだったのか、それとも米国ではメル・ギブソンのお尻がキュートというのは共通認識なのか? と、そんな疑問が浮かんできて、若干集中が乱れてしまいましたね。  また、作中のドラッグ・クィーンが三人とも「喉ボトケ」が無ければ女性と見紛うような美貌という扱いなのも、戸惑うものがありました。  女装コンテストで地区優勝しているのだから、作中世界の認識では美女と分かっていても(どう見ても男じゃん……)とノリ切れない感じ。  今となっては(それも一種のギャグなんだ)と納得出来ますが、初見では違和感の方が大きかったです。  キャットウーマンやワンダーウーマンといった、有名なアメコミヒロインの名前が出てくるのはテンションが上がりましたし、終盤にて描かれるボビー・レイとボビー・リーの恋模様なんかも、実に微笑ましくて良かったですね。  心を通わせ合った女性と別れる事になったヴィーダが「愛してるわ」と言われて「私もよ」と返すのではなく「あなたに愛されて、本当に幸せだわ」と応えるのも、何だか凄く切ない。  もしも、ヴィーダが同性愛者ではなく異性愛者に生まれていたら、二人は「親友」ではなく「恋人」という関係になれたのではないかなと、ついつい考えてしまいました。  仲間から「自分の性を隠すために女装してる」と指摘され、ショックを受けていたヴィーダ。  そんな彼女が、男でも女でもない「天使」だと言われ、嬉しそうな笑顔になる姿には、本当に爽やかな気分を味わえましたね。  ラストにて、ハリウッドの女装コンテストに優勝してジュリー・ニューマーに祝福されるのも、ヴィーダの方が良かったんじゃないかと思えたのですが、この辺りは「第三の天使」とも言うべきチチの成長を示す為、仕方ないところなのでしょうか。  涙を流すような感動とも一味違う、笑顔になれるタイプの感動を味わえる。  そんな、魅惑的な映画でありました。[DVD(字幕)] 7点(2016-10-05 08:55:48)(良:1票) 《改行有》

97.  バウンス ko GALS 《ネタバレ》  中盤におけるヤクザとコギャルとの問答シーンの緊迫感は凄いですね。  結果的には意気投合して「見逃してもらった」形となる訳だけど、殺されるなり殴られるなりしても全くおかしくない雰囲気だっただけに、息が詰まるような思いがしました。  今となっては古臭くなっているかも知れませんが、当時における「コギャル」の生態を描いた品としても、凄く貴重。  コギャル当人に言わせれば「私ら、こんなんじゃないし」という答えが返ってくるかも知れませんが、年代も性別も異なる自分の目線からすると、極めてリアルに描かれているように思えます。  援助交際を行っているグループの中でも、すぐに身体を許す子は「サセ子」と呼ばれて見下されてしまう辺りなんかも、非常に興味深い。  こういった場合、第三者の目線からは「コギャル」と、ついつい一括りにしてしまいがちだけど、彼女達の中にも差別やら区別やらが存在するんだなぁ……と、しみじみ感じました。 「別に自分達が特別な訳じゃない」 「常識ある大人が少なくなったんです」  などの台詞によって「援助交際とは、そもそも大人側の需要が存在しなければ子供側の供給も存在しない」という真理を突いてみせるのも、実に上手いですね。  男性であるヤクザ目線でも、女性であるコギャル目線でも、互いの言い分に一定の説得力があるというか、観ていて肩入れ出来るような感じに仕上げているのは、監督さんの力量なのだと思われます。  こういった世代差や性別を越えた「対話」を扱う際に、どちらか片方を貶める事なく描いてみせるのは、中々出来ない事かと。  「どうして子供が売春なんてするんだ?」という観客の疑問に対し「子供の内は捕まっても罪が軽いから、悪い事をするなら今の内。二十歳になったら悪い事は止める」と語る少女を作中に登場させて、一つの答えを示している辺りなんかも、色々と考えさせられましたね。  それまで大人の「欲望」を利用して金稼ぎしていた少女達が、終盤にて大人の「善意」によって救われる構造なども、面白かったと思います。  ただ、自分としては最後の最後で、妙に綺麗にまとめてみせたというか、ちょっと終盤の展開だけ映画の中で浮いているようにも感じられて、そこは残念。  あの終わり方だからこそ、青春映画としての魅力も強まっているのかも知れませんが、もう少し苦みを含んだハッピーエンドでも良かったかも知れませんね。  それまでの展開がリアルであっただけに、爽やか過ぎて非現実的に思えてしまいました。  エンドロールの最後に流れる笑い声が、凄く怖かったりもしたのだけど、あれの演出意図も気になるところ。  大人目線による「子供の得体の知れない不気味さ」を表したにしては、劇中でその「不気味な子供」を好意に近い目線で描いている訳だし、どうも不可解。  全体的にクオリティは高いのですが、最後まで謎や違和感も残るという、後味爽やかとは言い難い映画でありました。 [DVD(邦画)] 6点(2016-08-10 10:11:46)(良:1票) 《改行有》

98.  あげまん 《ネタバレ》  伊丹監督は作中にて、自らの妻である宮本信子を「良い女だ」「美人だ」と褒めさせる事が多いのですが、本作は「妻を賛美する為に撮った」という側面が、最も強い映画なのではないでしょうか。 「やりたい事、全部やってごらんなさいよ」  「ダメだって、良いじゃないの」「一文無しになったって良いじゃないの」 「貴方くらい、私が養ってあげるわよ」  これらの台詞って、きっと監督が奥さんに言ってもらいたかった事、あるいは実際に言われたり感じ取ったりしたメッセージなんじゃないかと思えて、微笑ましかったですね。 「人間にとって、人間を自由にするくらい面白い事はない」  という台詞もまた、映画監督である自らの価値観を示した一言だったのかと思えたりして、興味深い。  映画全体としては、主人公が売春したと誤解されてしまう件と、次期首相候補の政治家と対決する件、二つのクライマックスが終盤に立て続けに起きる形になっている辺りが、やや忙しない印象を受けましたね。  全編に亘って「伊丹節」とも呼べそうな、独特の楽しい雰囲気が漂っているのは間違いないのですが、肝心の山場に差し掛かっても、どうにも気持ちが盛り上がらない。  主役の男女二組が復縁するハッピーエンドに関しても、ちょっとオチが弱かったみたいで (えっ、これで終わり?)  と拍子抜けしてしまったのが残念です。  それでも、タイトルとなっている「あげまん」の説得力というか (こんな女性が傍にいてくれたら、自分も色々と成功出来るんじゃないかな……)  と感じさせるだけの魅力を、主人公がしっかり備えている辺りは、お見事でしたね。  個人的好みとしては、序盤における「恋人探しの香港&ヨーロッパ旅行」の件が、妙に楽しそうに思えたもので、そちらを主題とした映画も観てみたかったところです。[DVD(邦画)] 5点(2016-08-07 16:02:37)《改行有》

99.  うつしみ 《ネタバレ》  間違えてメイキングビデオの方を再生してしまったかと、思わず確認してしまいましたね。  そのくらい型破りというか、メタフィクションな作りでした。  扱っているテーマがテーマなせいか「物凄く凝って作られたマニア向けAV」という印象もあったりする本作。  さながら「走る」という行為に性的昂奮を覚える人達の為に作られたかのようでしたね。  主演の二人を追いかける際に、ドアを開けるカメラマンの手が映り込む演出や、クライマックスにおける農薬散布のような「血しぶき」表現など、少々やりすぎではないかと思える部分も幾つか。  画面が「手ブレ」の状態になってしまう事が多いのも、それが苦手な自分としてはキツかったです。  けれど、それ以上に力強いメッセージ性には、大いに背中を押されるものがありました。  実に分かりやすくて恥ずかしい表現となってしまいますが「観た後に自分も走り出したくなる映画」だなぁ、と。  途中、二人が勢い余って家屋の窓を突き破ってしまう件などは「あれ? もしかしてコレって脚本通りじゃなくて、アクシデント?」と思わせるような迫力があり、好きな場面。  一方で「コーヒーカップが云々」「花瓶が云々」というメッセージに関しては、それ単独ならば詩的で良い言葉だと思うのですが、ちょっとオシャレ過ぎて、映画のメインであるはずの二人には似合っていないようにも感じてしまいましたね。  そのミスマッチ感こそが良い、と捉える事も出来そうですが、自分としてはもっと飾らずに突き抜けて欲しかったです。  とはいえ、考え付いた「良い要素」を、何でもかんでも詰め込んでしまうのが監督さんの魅力なのでしょうから、そこは譲れない部分なのかも知れません。  女性にとって走る事は現実、男性にとって走る事はロマン。  終盤にて、そんな両者の違いを描いておきながら、二人が別れるでもなく、ちゃんと結ばれる事で終わる形だったのは、とても好みでした。  この二人、当初は女性側が男性側に片想いしていて、必死にアプローチして追いかける展開だったのに、終盤にて関係性が逆転する辺りなんかも興味深い。  「愛のむきだし」や「地獄でなぜ悪い」など、好きな品々が多い園子温監督作品。  観賞後は、また一つ、好きと呼べそうな映画が増えてくれて、嬉しかったです。[DVD(邦画)] 6点(2016-06-29 18:46:14)《改行有》

100.  ワイルド・ワイルド・ウエスト 《ネタバレ》  スチームパンクな世界観は好みだし、真面目に作った馬鹿映画という雰囲気も決して嫌いではないのですが、今一つノリ切れず。  背景の書き割りが物凄くわざとらしい辺りなんかは、恐らく意図的な演出なのでしょうけど(普通に撮って欲しかったなぁ……)と、つい思ってしまいましたね。  女装ネタが二回続くのも食傷気味でしたし、黒人差別問題やら虐殺やらの陰鬱なネタと陽気な作風とのギャップも気になります。  何よりの問題は、折角ケネス・ブラナーが印象的なラスボスを演じてくれていたのに、彼を倒すシーンが呆気無さ過ぎた点でしょうか。  そういった基礎的な部分をキチッと仕上げてこそ、ふざけた部分の魅力も引き立つと思っているので、クライマックスの消化不良感は、実に残念。  けれど、本作独自の魅力も幾つかあって、どうにも憎めない映画でもあるのですよね。  特に巨大な蜘蛛型ロボットのインパクトは凄まじく、西部劇風の荒野を雄大な機械が闊歩していく様は、実に素晴らしい。  自動追跡首切りマシーンの原理が「磁石」という馬鹿々々しさも良かったし、それらを倒す方法が「二つを衝突させて自爆させる事」という辺りにも、王道な面白さを感じられます。  主人公コンビが二人揃ってヒロインに振られてしまい、憮然とした表情のまま、シンクロした動作で帽子を被ってみせる場面なんかも良かったですね。  紆余曲折はあったけれど、最後の最後で二人は息の合ったパートナー同士になれたのだな、という事が伝わって来て、ほのぼのとさせられました。[DVD(吹替)] 5点(2016-06-24 22:29:46)《改行有》

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