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101.  カッコーの巣の上で 《ネタバレ》 “One Flew Over the Cuckoo's Nest”どうやら『キチガイ病院から1人飛び出した』って意味のようです。 目がギョロギョロしたクリストファー・ロイドに常にニコニコしてるダニー・デビート。他の作品を観ていなければ、こういう人なんだと思えてしまうほどのリアルさ。決められたルーティーンで薬を飲んで、徘徊したりゲームをしたり。社会生活が困難な人たちを、一か所に集めてまとめて家畜のように管理する。そんな印象を受けてしまう。 意思疎通の難しい精神病患者たちと、患者を機械的に管理するラチェッド婦長ら看護側。患者相手にはフェアとは思えない多数決と連帯責任。詐病のマクマーフィ目線で、患者側から精神病院を観る。だけど強制入院と自由入院が混在していて、その中に刑務所から移送されたマクマーフィが居るのが不思議。自由入院のチェズウィックも電気ショック受けてるのもなんか不思議。 ワールドシリーズのテレビ観戦にバスを強奪しての釣り船ツアー。やってることはメチャクチャだけど、マクマーフィに影響されて患者たちが自分の意志でまとまっていく様子が何とも清々しい。喋れないフリをしていたチーフが、マクマーフィだけに対し喋ったときは「おぉ~~!!」ってなったわ。ってか、チーフの一挙手一投足に「おぉ~~!!」ってなってしまう。 このままマクマーフィと仲間たちで、何か凄いこと(?)を達成してしまうんじゃないか?って、方向性が解らないけど、彼らの中で何かが進展していく感じがとっても心地良い。クリスマスの翌朝の、まさに“祭りのあと”感。『あぁ、全部終わったんだな』って空気。ビリーの悲劇。ちょっとした歯車の狂いからすべてが終わってしまう重たさ。 2人で脱走しようと誘われるチーフ。かつて大きかったチーフの父親は、抑圧されて酒に溺れ、どんどん小さくなって殺された…チーフはそうは言わず、始末された。と。その話にピンときてないマクマーフィ。 かつてインディアンは広大な土地を追われ、狭い居留地に押し込められ過去がある。その後一転して、'50~'70年代には、都市移住計画という名の同化政策のもとに、居留地さえ追われることになる。移住した先は仕事もなく頼れるものもない、貧困と差別の世界。そんな時代にチーフは、見せ掛けの自由を手放し、精神病院に入ることを選んで、今に至る。 舞台は'63年とのことだけど“ロボトミー手術”なんて、あったんだなぁ。理論だけで実在しない施術だと思っていたわ。 手術によって物も言えず、体の自由を奪われたマクマーフィに、精神病院に自ら入ったチーフ自身を重ねたんだろう。病院のシステムに抗い続けたマクマーフィの精神を開放し、自分の力で自由を手に入れる。 『飛び出した』のは『1人』。だけどその1人はマクマーフィの精神であり、インディアンの精神でもある。[DVD(字幕)] 9点(2023-11-16 00:17:16)《改行有》

102.  隠し砦の三悪人 《ネタバレ》 “男勝りなお姫様”の元祖だろうか。そもそもの初登場が崖の上での仁王立ちである。 ただそっちの画より、湧き水のところで太平と又七が初めて雪姫に会うところ、こっちの画の方が黒沢監督が観せたかったんだと思う。太腿を観せてからの振り向きの構図。脚から胸、顎にかけての女性独特の美しい線とキリッとした顔。この構図一枚こそが“男勝りなお姫様”を表現する画なんだと思えた。宮崎駿監督の“男勝りなお姫様”でよく観た構図のモトは、この映画だったんだと思う。 一国のお姫様だから、その辺の女とは違い、高く綺麗な声質…なのに、男勝りなことを言う雪姫。彼女の独特な話し方は、恐らくそういう演出でしょう。上原美佐は経験不足ではあるけれど、決して実力不足ではないと思う。 一つ不思議に思ったのが、最後に本来の姫の姿の戻ったときの、画面一杯に寄った画が無いこと。落ち延びている最中のキリッとした眉の時とは違い、姫らしく眉や髪を整えた美しいお姫様の顔なのに、何故か寄って撮らない。ここは恐らく、太平と又七側から見た目線のためで、お姫様の顔を間近に観るなんて恐れ多い。という演出かもしれない。劇場の大画面で観ていたら、印象も違ったかもしれないけれど。 戦に間に合わなかった二人の百姓目線で進んでいく序盤はとてもわかり易く、展開も早い。秋月、山名、早川。聞いてるだけではこんがらがりそうだけど、砂に書いた丁寧な領地の説明。そこに放られる金塊。『七人の侍』の野武士の人数同様、解り易く胸躍る演出にグイグイ惹き付けられる。 題名にもなっている隠し砦が燃やされ、最後の抵抗をする秋月の老将らの最後はバッサリ割愛するのも、取捨選択が絶妙と言える。文句なしの前半。 ただ良くも悪くも百姓娘のその後なんかもバッサリ。というのは、少々味気なさを感じてしまった。太平と又七それぞれに金一枚づつあげれば良いのに。なんて思ったりも。いや、そういう予定調和にしない所もまた、黒澤映画の味わい深さなのかもしれない。 後半、三船の馬術の素晴らしさ、火祭りの躍動感に目を奪われつつも、『隠し砦の三悪人』という題名に少々違和感を感じてしまうのも事実。三悪人って誰のことだったんだろう? 普通に考えて太平と又七と真壁なんだろうけど、最後の雪姫・真壁・田所がズズイと寄ってくる場面を観ると、もっと別な解釈もあるような気がしてしまう。[DVD(邦画)] 7点(2023-11-12 23:47:04)《改行有》

103.  男はつらいよ 寅次郎かもめ歌 《ネタバレ》 シリーズ26作目。たまたま『学校』を観た直後。『黄色いハンカチ』以前から構想があったという夜間学校映画の、まさに試作品のような本作を観られたのは、なかなかなめぐり合わせ。 諏訪家がやっと手に入れたマイホーム。タタミ1畳分くらいの狭い庭、窓を開けると手が届きそうな隣の家、言葉を選んで褒める寅が素敵。そして「お兄ちゃんの部屋」は泣けるわ。いつまでも叔父叔母夫婦の家に頼ってないで、兄妹で独立したかまどを持とうとするさくらの考えと、義理の兄と妻の絆の強さに協力を惜しまない博。寅が悩んだ末に2万円も包んだ、嬉しい気持ちが伝わってくる。それに対しお釣りって…それは寅が怒っても仕方ない。 セブンイレブン。私も近所にセブンが出来たときのことを覚えてます。スプライトとかがデザインされたアメリカンヨーヨーが売ってましたね。店内に流れる長渕の順子。ついに寅さんが私の記憶にある時代に追いついたわ。 ちなみにキャンディーズは私が物心つく頃には解散してました。マドンナすみれは、寅のテキ屋仲間の娘。年齢の差もさることながら、仲間の娘ということもあって、最初から恋愛対象ではなく、親子のような構図です。うっかりお風呂を覗いてしまうところなんて、まさに娘と父親のあるあるネタ。 すみれの突然の朝帰り。「だって私、結婚するのその人と」まっすぐ寅の目を見るすみれに、それ以上怒れなくなって二階に上がってしまう寅。あぁ、娘を男に取られる父親の気分。今まで若いマドンナと青年の恋愛を応援する回はあっても、父親の立場でマドンナを見守る回は無かったと思います。 最後の入学願書もホロリと来ました。さくらと博はマイホームを持ち、満男は10歳になり、テキ屋仲間は死んで、その娘は結婚を考えている。'80年代に入り、寅なりに“俺もどこかからやり直さなきゃ”って思ったからなのかもしれません。 そうはいっても、あの2万円が源から借りただけってオチは、何歳になっても子供のままな寅をよく表現していました。 私は、前作が最終回でも良いと思ったくらいだから、本作はまさに『男はつらいよ・後編』のスタートです。 寅と同年代のマドンナばかりでは客層も固定されることを考えると、この路線変更はアリだと思いました。[CS・衛星(邦画)] 6点(2023-11-07 20:40:06)《改行有》

104.  ガタカ 《ネタバレ》 “Gattaca”劇中の宇宙局の名前。DNAの基本塩基の頭文字、G・A・T・Cを組み合わせた造語だそう。 核酸塩基には5番目の頭文字ウラシル (U)というのもあって、このUはDNAにはほとんど含まれず、RNAを構成(G・A・U・C)する基本塩基だそう。遺伝情報を永久保存するDNAと、一次保存するRNA…まぁあまり掘り下げてもだけど、不確定要素の話になっていきそうです。 '97年の映画だけど、登場する車が'60~'70年代くらいに作られた、当時考えられていた未来チックなデザインの車。ヘッドライトが何故か緑色。この映画公開時の時間軸の未来ではなく、'60年代くらいから観た未来の世界を、遡って表現したんだと思われる。 だから最後、リアリティある宇宙服でなく、空想科学SFの宇宙旅行らしくスーツで旅立つんでしょう。レトロフューチャー感が味わい深い。 アントンが遠泳で負けたのは、引き返すことを考えたから。そんな考えの「適正者」ばかりの世の中では、想像を超える世の中にはならないんだろうな。 エリートのヒューゴと、彼より年上の部下。彼は不適格者だろうな。だけどこの刑事の直感と執念で事件は解決する。 銀メダルで終わったジェロームの苦悩。適性者が買って当然の競技に、どうして順位を付ける必要があるのか。今思うと対戦相手は不適正者だったのかな。 生まれた瞬間にどんな病気の可能性があって、推定寿命まで伝えられる怖い未来。ビンセントにとって30歳が人生のゴール。 でも、だからこそ、どんな無茶をしても“土星のタイタンに行く”事をゴールに出来たんだろうね。帰ってくることを考える必要のない、片道切符の目標。 あまりお金掛かってないけど、ツッコミどころも探そうと思えばたくさんあるけど、人生が長いから忘れがちだけど、努力の瞬間の積み重ねが夢を叶えることを再認識させてくれる映画です。[DVD(字幕)] 7点(2023-11-05 16:31:32)《改行有》

105.  学校 《ネタバレ》 卒業間近を現在として、過去のエピソードを交えていく創り方が上手い。悪く言えばツギハギなんだけど、生徒一人ひとりを中心に時間を行き来することで、生徒と学校の関わりもきちんと観えてくる。それをもし時間軸に沿ってエピソードを紹介していったら、恐らくダラダラした展開になっていたと思う。 修(誰かのサブキャラとしてしか出てない)やチャン(ピンポンのチャイナのコーチの人だな。でも本作では悪いイメージしか持てない。)のエピソードが割愛されたようにも思うけど、生徒7人+黒井&田島先生を均等にするか、悩んだ結果のイノさんメインの映画だったんだろう。後半に向けてイノさんと仲間たち感が強く出ていた。 イノさんの田島先生への気持ちに対し、上辺だけのあまりに雑な方法で説得しようとする黒井先生に対し、酔っ払ったイノさんの、言葉一つ一つが説得力があった。『口じゃ上手く言えない気持ちを文章で伝えよう』凄い説得力のある手紙の授業。イノさんのラブレターへの返事を、言葉で説得しようとしちゃダメでしょう黒井先生。教師は絶対の存在ではなく、学校は教師が生徒に勉強を教え、教師も生徒から人生を教わる場なんだなぁって思ったわ。 イノさんの死について語り合うホームルームに、学校で過ごす時間の、何が大事だったかの多くが集約されていた気がする。社会に出たら目的のある会議とカタチだけのミーティング、あとは酒の席だからなぁ。懐かしいなぁホームルーム。答えがない時間の如何に大切な事だったか。あと給食美味しそうだった。 あ、でも奈良の起源がウリナラにはビックリしたけど、やっぱりデマでした。この時代、自虐史観とか君が代不起立とか、教育現場が可笑しな方向に舵取りしてた時代だったなぁ。[インターネット(邦画)] 6点(2023-11-04 02:06:20)《改行有》

106.  男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花 《ネタバレ》 シリーズ25作目。ここらで半分折り返しです。オープニング、華麗な身のこなしをするねずみ小僧。寅の役をスタントマン(だよね?)が演じるのは本作が初じゃないだろうか? 前作でひっそりと初の海外ロケをした寅さんシリーズ。本作はいよいよ沖縄。飛行機嫌いの虎さんも沖縄は初上陸。まだ戦争の名残りが感じられる米軍基地と、チンプンカンプンな琉球語。日本であっても異国情緒が色濃く出た作品です。 ここ最近(個人的に)低空飛行だった寅さん。もしかしたら、この辺でシリーズをお終いにする考えがあったんじゃないでしょうか?そうなるともう、寅に一番近いマドンナ・リリーに再登場願うしかなかったのかなぁ?って。本作を含めてリリー3部作と呼ばれているそうですが、前作“相合い傘 ”で、十分綺麗にまとまっていたと思えます。 リリーとは、最北の北海道で出会い、最南の沖縄県で再会するのは上手な〆方です。またTVシリーズの最終回も沖縄だったとのことで、益々最終回感を強く感じます。寅と一番相性のいいリリー。夫婦のような同棲生活をするふたり。リゾート感満載の沖縄での生活は、まさに夢のようなひと時。現実世界では消して結ばれることのない、でも相思相愛のふたりにとって、本作自体が夢物語のようなポジション、リリー前後編の番外編ポジションのように思えます。 悲しいのは、この同棲の中でも、寅は一人でふらりと遊び歩く毎日。終いには些細なことで大喧嘩してしまいます。夢の世界でさえ上手く行かないふたり。当然、現実世界で上手くいく筈もありません。 「リリー、俺と所帯持つか?」寅がこれほどしっかりと、言葉に責任を持って、真剣に告白するのって、本シリーズ初じゃないでしょうか?冗談として返すリリーが“相合い傘”のアンサーにもなってますが、このシリーズ全体の寅次郎の結末にも思えます。 旅先のバス停。爽やかでカラッとした心地よい再会が、寅とリリーにとって結ばれる以上に幸せな関係に思えてしまう。 こんなの観せられると、これでシリーズが終わりだとすると「あぁ、綺麗に終わったなぁ」って思えたことでしょう。 だけどシリーズはもう半分続きます。そして私も観続けます。 数え間違いじゃなければ、本作まで観続けてるレビュワーさん、私含め16名。さぁこれからも楽しもう![CS・衛星(邦画)] 7点(2023-11-04 00:23:52)《改行有》

107.  男はつらいよ 寅次郎春の夢 《ネタバレ》 シリーズ24作目。オープニングが寅さんにしては珍しい、太ももムチムチの健康的なお色気路線。 公開時の決まっている長期シリーズなので、想像通り色々試行錯誤、マンネリ打破、五里霧中(?)な中で、日米対決を持ち込むのも頷ける。シリーズ初のガイジン絡みの作品…と言われたら、マドンナが青いお目々の金髪さん。ってのを思い浮かべそうだけど、茶色の一張羅スーツに大きなトランク。アメリカ版フーテンの寅みたいなオジさんが出てきた。 ぶどうの一件は良いとして、タイガーからの一悶着はちょっと強引だなぁ。マドンナは香川京子。50歳近い寅次郎にとって、娘の林寛子の年齢の女性は、ハナっからマドンナ候補から除外される様になったのかな。どちらにしても2人ともマドンナとしての印象は薄い。大工の棟梁との一悶着は面白かった。 本作は寅とマドンナの話はサブ扱いで『さくらに恋するマイコさん』の話…というか、『さくらに告白するマイコさん』の話。と言うべきかも。一作目以来のマドンナ=さくら回。 大空小百合、準レギュラー格では、もう登よりも多く出てるんんじゃないかな?(※岡本茉莉は登を超える回数出てるけど、小百合はまだそこまで)。蝶々夫人の倍賞千恵子“本気の熱唱”がとても凄い。伸びのある歌声は流石の一言。 言葉の通じない日本でつらい営業周りの毎日。とらやの面々に優しくされ、ついついさくらにそんな感情を抱いてしまったんじゃないかなぁ。マイケル、さくらへの気持ちはどこまで本心だったのか。 マイケルの「I Love You」の回答として、片言英語しか喋れないさくらが、突然の告白に驚きつつも、精一杯マイコさんの気持を考えて「This Is Impossible」と伝える気遣いが温かい。[CS・衛星(邦画)] 5点(2023-11-03 23:14:22)《改行有》

108.  風と共に去りぬ 《ネタバレ》 “Gone with the Wind”『行ってしまう』を『去りぬ』とするところに、当時の人のセンスを感じます。 タイトルの『風』って何でしょうね?自然に発生するもの。人に変化をもたらすもの。恋愛。家族。結婚。離婚。死別。戦争。発展。時代…どの時代でも変わらないもの。あぁ『川の流れのように』の『川』と同じような使われ方かな?日本人にも根付いた考え方で、とても共感しやすい発想ですよね。 2:30もの序曲から始まる、雄大、壮大なタイトルと激動の時代。時代の流れに翻弄される登場人物たち。雑草のようにたくましく生き抜く主人公。世界大戦が始まる年に創られ、日本では戦後復興後に公開された本作は、戦中戦後を生き抜いた人たちに多くの共感を持って受け入れられたことでしょう。 そして美しく奥行きのあるカラー映像。今観ても美しさを損なわない完璧な構図。テレビCMなんて無い時代、ポスターと広告の数点の写真、せいぜい観た人の感想しか情報が無い中、まるで“動く絵画”のような映像を劇場の大画面で観せられるんだから、観るものの度肝を抜いたことは容易に想像出来ます。 激動の時代と一人の女性の半生。まるでNHKの大河ドラマと連続テレビ小説をミックスさせたような物語。大河も朝ドラも共に'60年代から始まっているけど、この映画の影響ってかなり大きかったんじゃないかな? 映像の美しさは文句なし。キング・オブ・カラー映画とも言える本作。私は公開から60年近く経って観た訳だけど、まず想像と全然違ったスカーレットの人物像に驚いた。何とまぁワガママで自分本意な女だろう?これじゃ朝ドラの主人公としては大不評だろう。 そして南北戦争を題材にしているのに、戦闘シーンはほぼ皆無。せっかくのスケールの大きさも、後方の負傷兵と焼けた街ばかりが目に入る。これじゃ大河としてパッとしない。今なら映像美だけの映画扱いされそうだけど、それでも、ウケた。 スカーレットの生き様に共感した、当時の女性の支持が大きかったんだと思われます。 ウーマン・リブが叫ばれるちょっと前の時代。映画の中ではもっとずっと昔の時代。誰と結婚しても好きな男のことだけを考え、子供が生まれても“オンナ”を捨てなかった女。このオンナ像は当時の女性たちに、センセーショナルに受け入れられたことでしょう。 天使のようなメラニーを男社会の世の理想とするなら、自由奔放なスカーレットは当時の声なきオンナたちの理想。 有名なポスター観てください。レットがスカーレットを抱いた構図。『美しい女を捻じ伏せるハンサムな男のラブロマンス』に見える。たくましいレットと、か細いスカーレットの肩幅の違いを強調しつつ、最後の最後まで振り回されるのはレットの方。 男社会の中『主人公には共感できないけど、映像は凄い大作映画』を隠れ蓑に、世の女性たちは、声を出さず、したたかにこの映画を支持し、自分の中のスカーレット(=オンナ)を育んでいったに違いない。[DVD(字幕)] 8点(2023-11-03 11:58:45)《改行有》

109.  風立ちぬ(1976) 《ネタバレ》 百恵ちゃんと三浦友和の共演4作目。前作『絶唱』と同じく、死に別れる運命の若い男女の物語。 原作小説からのアレンジとしては達郎も徴兵されて戦争に行くというところ。お互いに相手を思いながら、自分の死についても向き合うという環境だけど、この設定が上手に活かされたかどうか。 出征のとき、電話で節子の父に、周りに聞こえないよう受話器を抑えて、生きて帰ることを約束する達郎。一方で節子の訃報を聞き逃した達郎への優しい嘘。当時は戦場には死にに行くもの。たった今、娘を亡くし、婿になるはずの達郎も、帰るあてのない戦場に行く父の辛さ。 このタイトルから、どうしても宮崎駿の映画と比較したくなってしまうけど、観たの公開時だったから、忘れてること多いしなぁ。改めて観てからにしよう。でもどちらも太平洋戦争期に時代設定をアレンジしているね。 百恵ちゃんと言えば『赤いシリーズ』の印象が強く、本作も結核という病が2人を引き裂くところなんか、想像したまんまだ。 不治の病モノは当時の流行りだったかもしれないけど、日本の文学をアイドル主演で映画化し、若者にはとっつきにくい文化を、親しみやすく継承する試みとしてはアリだとも思う。[CS・衛星(邦画)] 4点(2023-10-24 01:14:04)《改行有》

110.  男はつらいよ 翔んでる寅次郎 《ネタバレ》 シリーズ23作目。マドンナが桃井かおりと来たら、どうしてもハンカチを連想してしまうし、2作前の武田鉄矢が出た『寅次郎わが道をゆく』を連想してしまう。もうね、1作挟んで武田→桃井ってキャストだけ決まってて創ったような、ゲスト人気でお客さん呼ぼうって、何とも安易な考えで創ったんじゃないか?って不安がよぎる。 当たらずとも遠からず。舞台は北海道。桃井演じるひとみが人生を見つめ直す一人旅。やすやすと男の車に乗ってしまい、襲われる始末。助けに入るのは健さんでなく寅さん。ここまでするなら、いっそ寅とひとみの北海道から柴又までのロードムービーで一本創ってしまうのも、セルフパロディで面白かったかも?そうするととらや一家がほとんど出てこなくなるけど。 ウエディングドレスで結婚式を飛び出して…画的なインパクトは凄いけど、それだけで終わってしまったような。 布施明もマドンナの相手役としてはどっちつかずな使い方で、何が良くてひとみと結婚したのか、何が良くなくてひとみは飛び出したのか、パンクな若者の行動を、浪花節な寅さんワールドがとりあえず相性は別にして包みこんでしまった感じ。 『布施明だし、歌でも歌うんだろうか?』と思ったら、思ったとおり歌ってたわ。観客の期待するものを観せるのも映画かもしれないけど、そのまんま過ぎる気がしたわ。 いつになく穏やかな寅の帰省は良かった。でもせっかく良い感じの家族団らんをぶち壊す満男の三重丸の作文は、なんか無理やりトラブルをねじ込んできた印象。源を折檻する御前様もちょっと違和感。 タコ社長のお見合い話は面白かったけど…あと当時の丸駒温泉は観られて良かったけど…シリーズ50作もあれば、こういう回もあるんでしょう。[CS・衛星(邦画)] 4点(2023-10-24 00:24:15)《改行有》

111.  カサブランカ 《ネタバレ》 “Casablanca”邦題まま。モロッコの大都市。当時はフランス領で、戦時中は仏が独に占領されたため、ヴィシー政権下。 学生時代、ハンフリー・ボガート(ボギー)って名前だけは結構知られていて、映画観たこともないのに、渋くてかっこいい男の代表みたい扱いだったわ。 名台詞『そんな昔のこと覚えていない』『そんな先のことは分からない』、そして『君の瞳に乾杯』は、40年以上経った日本の高校生でも知ってました。もちろん映画から直接でなく、バラエティ番組や漫画からとかだけど、それでも凄い浸透具合。 初見は割と最近。バーグマンとボガードではかなり年齢差を感じてしまったけど、ボギー当時まだ42歳か、あの渋さで私より年下か… さて劇中4回も出てくる『君の瞳に乾杯』(※私が観たDVDでは1回めは『謎の美女に乾杯だ』だった)。“Here's looking at you, kid.”は「君のような可愛い子を見つめることが出来ることに(乾杯!)」みたいなセリフですね。つまり『君に逢えた(これから先の)俺は、なんて幸せなんだろう』って意味だと思いました。1度めは出会った時。2度めはパリを旅立ち結婚しようとした時。ともに回想シーンです。 3度めは現代のカサブランカで、ラズロとの間で揺れ動くイルザに言うセリフ。自分のもとに戻ってきたイルザに言うので、復縁の意味にとれますが、リックの表情を観ていると、前2回のように笑顔はありません。自分が今後どうするべきか、頭では解っていたんだと思います。 そして4度め、別れのシーン。パリの思い出を胸に生きていく事を決めたリック。イルザの居ないカサブランカで、ずっと時が止まっていたリックが、いよいよ、この狂った世界で自分がするべき事の為に立ち上がります。 “As Time Goes By”『時が経っても』イルザに逢えた幸せは失われない。という考えに至ったんでしょうね。 プロパガンダ映画として、自分の国土を守るためとか、直接的な利益が手に入らないながら、ヨーロッパでの戦争に参加するアメリカの立場として、正義という名の美学のための参戦というのが、イングリッドの次回作『誰がために鐘は鳴る』と被る部分だわ。 ドイツ軍人の合唱「ラインの守り」を打ち消すフランス人たちの「ラ・マルセイエーズ」の大合唱。シンプルながら自国を思う気持ちを高揚させる。[DVD(字幕)] 7点(2023-10-23 23:50:20)《改行有》

112.  ガス燈(1944) 《ネタバレ》 “Gaslight”邦題まま。ガス灯の街灯は国内でも限られた場所でしか見られないけど、もっと灯がゆらゆらしてるもんだと思っていたわ。 また、相手を自分の思うままに操るために、相手の記憶や正気に疑いをもたせるような、些細な嫌がらせをする心理的虐待を、“Gaslighting”『ガスライティング』と言うそうな。この作品と、元になった同名の演劇から、'70年代に生まれた言葉だそう。公開当時はこの心理的虐待を、なんて呼んでたのかな? 映画ではポーラ側の視点となるけど、ブローチ紛失や手紙の行方など、グレゴリーのやってることが、かなりえげつない。客人を追い返し、落ち込ませ、急に外出しようと言い不安にさせ、サプライズだとホッとさせ、大喜びのところを絵が無くなったと叩き落とす。今で言う“モラハラ”だ。更に追い打ちを掛けるように家政婦に確認。この時代にここまでネチネチした“モラハラ”を題材にした映画(演劇)を創る懐の深さが凄い。 一方でグレゴリーの目的が宝石強盗(泥棒?)で、それを成すための執拗な『ガスライティング』だった。というのがこの物語の顛末だけど、アリスの姪と結婚して、宝石のある家に住むことも出来たなら、ポーラに対し、そこまで回りくどい嫌がらせをする必要があったのか疑問。消えた手紙と、元から無かった手袋の片方。出来過ぎにも思えるけど、一本のサスペンスとして上手に伏線を回収出来ていた。 ただもちろん、この映画の見どころはサスペンスの結末(オチ)ではなく、徐々に精神的に追い込まれ、弱っていくイングリッドを愛でる映画…なんて少々悪趣味な気もするけど、そっちだと思う。 最後助けを求めるグレゴリーに、立場が逆転したポーラが突然まくしたてる展開にはビックリ。「おやまぁ!」って感じ。 印象深い顔つきのナンシーが、若きジェシカおばさんだったのにも驚き。[DVD(字幕)] 6点(2023-10-23 22:42:11)《改行有》

113.  男はつらいよ 噂の寅次郎 《ネタバレ》 シリーズ22作目。寅がとらや以外の場所で家族と久しぶりの再会をするのは、今回が初じゃないだろうか? バスの中で博の父と再会するのも、いくら何でも偶然が過ぎる気がするけど、まぁマドンナ(&登)とは結構あるパターン。 今昔物語で自分の人生について考え込んでしまう寅が可愛い。人に聞いた良い話が寅が話すと別な話になるのが面白い。今回は怪談話か。思いっきり聞き入ってしまった。さくらの「あら虚無僧」で吹き出したわ。 仮病の寅が救急車で運ばれる。臨場感ある俯瞰図と困ってキョロキョロする寅がまたヒット。今回笑いのツボが私に合ってる。 大原麗子はCMなどで観るイメージ通りの大原麗子。まさに可愛い大人の女性。なのに男はつらいよの世界観から浮くことなく上手く馴染んでる。 お弁当食べて「あは…見ないで!」の色っぽさ。三角巾を結べず「寅さんあたし泣きそぉ…」のエロさ。帰ろうとして立ち上がりおばちゃん(!)に抱きしめられる躰の細さ。ぱっと見何でもないシーンなのに、これだけ伝わりやすい色気を感じさせる女優さんは他に居ないんじゃないだろうか? ついでと言っちゃアレだけど泉ピン子も当時(渡鬼以前)のイメージ通りのピン子だったわ。最初だけ登場かと思ったら、また美味しいところで出してくる。 「離婚、離れる、切れる、別れる。この手の言葉は一切使わない…」このパターンも久しぶりな気がする。シリーズ初期を彷彿とさせる丁寧な出来。マンネリも適当に創れば適当な出来になるし、しっかり創ればしっかり面白くなるんだな。 久しぶりの飃一郎。博の家で居心地悪そうな空気なのに、寅が来ると知るとパァッと明るくなるのが可愛い。 添田の後を追うよう早苗を諭し「(話は)明日聞くよ」と言いつつ旅に出る寅の不器用な優しさがとても沁みる。寅さんスタンダードな作品にして、寅さんの魅力がギュッと詰まった作品。[CS・衛星(邦画)] 7点(2023-10-17 00:25:54)(良:1票) 《改行有》

114.  ガール・ネクスト・ドア 《ネタバレ》 “The Girl Next Door”『隣の家の女の子』。“24 -TWENTY FOUR-”のキム・バウアーの子が主演と聞いたら観たくなる気持ちも解る日本劇場未公開作品。 モテない主人公の隣にスゲー可愛い子が引っ越してきた!でもってやることが破天荒!って、かなりありがちなスタート。それは良いとして、ダニエルがマシューを好きになる理由がイマイチよく解らない。個人的にはここをもっと、納得出来る理由を用意してほしかった。 実はAV女優!?良いね、マシューの価値観を根底からひっくり返す展開は面白いと思う。でもだからって即モーテルは生徒会長マシュー君の決断としては短絡的だし、過去を忘れてマシューと向き合おうとしてたダニエルったって、そもそもマシューの何に惹かれたのかが解らなくて… どう観ても悪者なケリー登場。物語はどんどん進んでいきます。もう“Next Door”である必要も無くなってます。何でしょう、CMで興味を持って観だしたドラマが、実は全然思ってたのとは違うくて、毎週どっちに向かって進んでるんだか、よく解らなくなるドラマを、ダイジェストで観てる感覚です。 マシューとダニエルの恋の行方より、ドラッグでヘロヘロ状態のスピーチと、盗まれた25,000ドルをどう穴埋めするかの話が中心になってしまい、ますますマシューの何に惹かれたのかが解らなくなります。これ設定が幼馴染なら解るよ?昔から隣りに住んでたとか。でもダニエルのセンセーショナルな登場と、急激な恋愛関係の割に、後半“友情の3脚関係”に持っていくのは、ちょっと強引な方向転換な気がしました。だからリムジンで二人が初めて結ばれても、どうにも気持ちは盛り上がりませんでした。 エリシャ・カスバートは“24”のキム役をやる前『こどもおもしろメカニック』って教育番組のレポーターをしてたそうです。 そんなキャリアの彼女が“性教育”ビデオを作る映画に出るなんて、ちょっと面白そうだけど、彼女ビデオには出てないんだよな…[DVD(字幕)] 4点(2023-10-16 23:59:47)《改行有》

115.  A.I. 《ネタバレ》 “Artificial Intelligence”『人工知能』。今さらだけどそのまんまだったんだ。 スピルバーグの代表作“E.T.”を彷彿とさせるタイトルから、相当な意気込みで制作された作品だったんじゃないだろうか? キューブリック原案の作品とのことで、もしキューブリックが監督していたなら、ブルー・フェアリーに祈るデイビッドのその後がバッサリ無かったんじゃないか?とも言われているけど、もしかしたら常人には理解不能な2000年後が描写されて、頭ん中“???”状態のエンディングになってたかも? でもスピルバーグだから、常人が納得できる『めでたし、めでたし』なエンディングを用意出来たようにも思える。 食事中急にツボに入って大笑い。モニカをママと呼び方を変えたのに、ヘンリー(父)はヘンリーのまま。自分じゃ靴紐も結べない子供。純粋に母の愛情を求めるデイビッドって、もう人間の子供じゃないですか。ちなみに私は劇場で観た時、テディが髪の毛を一房出した時、ボロ泣きしてしまいました。 髪の毛に残るモニカ記憶は、まだデイビッドに危険を感じる前の記憶。だからモニカはデイビッドに無条件に優しかったんだと思う。 神が人間を造ったように、人間がロボットを造った。 未来のロボット(スペシャリストだって)は人間を観たことがなく、かつて人間と接していた最後のロボット=デイビッドを通して、初めて人間を観る。 人類はとっくに滅んでいるけど、クローン技術で人間を作り出すことは出来るけど、彼らスペシャリストにとっては、クローンよりデイビッドの記憶こそが、貴重な人類最後の足跡だったんだろう。 スピルバーグ作品だけに、クローンのT・レックスよりヴェロキラプトルの鉤爪の化石のほうに価値を感じる博士のよう。 クローンのモニカを眠らせ、デイビッドも人間として眠り、ここで人類の歴史が終わる。 この映画がどこか物悲しい最後なのは、この先、ロボット達からは何も産まれないからかもしれない。[映画館(字幕)] 7点(2023-10-16 22:05:35)《改行有》

116.  駅馬車(1939) 《ネタバレ》 “Stagecoach”邦題まま。中学生の頃、退職する映画好きの先生が最後の授業で紹介してくれた映画。 先生が子供の頃は、映画館で一本の映画をず~~っと、それこそセリフ覚えるくらい何回も観てたんだって。入替制のない時代の話。劇場出たら再入場できないし、中で食べ物買うと高いから、おにぎり持参で朝から晩までぶっ通しで観てたんだって。私も当時、せっかく観るならと最低2周はしてたけど、昔の人は気合入ってんな~って思ったっけ。 45分の授業だから、ビデオで観せてもらえたのはインディアンとのチェイス・シーンのみ。先生はこのシーンを始めて観た時の衝撃を熱心に話してました。 当時の目で観ると、古典的な西部劇映画だなぁ。程度の感想だったけど、先生には50年経っても色褪せない作品なんだろうなぁ、って。今にして思うと、先生の駅馬車は私にとってマッドマックス2なんだろうね。今の子の目にどう映ろうと、自分が子供の頃に観た映画の興奮って、何年たっても色褪せないものだわ。 最近になって初めてきちんと観たけど、まぁ面白い。アクションは後半に集約されているんだけど、静かな前半でそれぞれの人物の背景がきちんと書き分けられていて、すごく解りやすくて、みんな魅力的。99分の映画(あれ?私のDVDは95分だぞ??)で、主要人物9人も出してるのに、詰め込み過ぎにも駆け足にも感じさせないのは上手い。 エンド・クレジットを観るとジョン・ウェインよりクレア・トレヴァーが先なんだな。 ローズバーグに進むか引きかえすかの投票は、自分も参加してる気持ちで考えてたし、飲んだくれの先生が子供を取り上げたところなんて『頼むぞ先生』って思えた。赤ん坊にリトル・コヨーテと(勝手に)名付け、まるで家族が増えたかのような喜びようも凄く共感。 チェイス・シーンで最初に“いい人”ピーコックが討たれる突然の展開感も上手い。馬車馬に轢かれるインディアン、先頭馬に飛び移るスタントは確かに迫力がある。謎の紳士ハットフィールドのモヤモヤを遺言一言で解決。 キチッと描ききったチェイス・シーンに対し、たった3発の弾で挑むリンゴの最後の決闘は映像で観せず音だけのハラハラ演出。そして最後、荒野へと掛け出す馬車のスカッと爽快感が素晴らしい。 こんな古い映画なのに、娯楽映画として完成されている。歴史的価値ではなく、1本の娯楽映画として評価したい。[DVD(字幕)] 9点(2023-10-15 09:56:53)(良:1票) 《改行有》

117.  男はつらいよ 寅次郎わが道をゆく 《ネタバレ》 シリーズ21作目。遂にUFOやっちゃったよおい。スター・ウォーズに未知との遭遇(あと猿の惑星も入ってたな)の時代。劇中2回も出てきたけどピンク・レディーのUFOが流行ってたとき。ウチにもシングルレコードあったわ。良くも悪くも悪ふざけ全開。寅さんの帽子型UFOと来た。テレビの砂嵐と臨時ニュース観て、インデペンデンス・デイがこの時代のプロットで創られてたことを地味に再認識。 前作から続き、当時の人気タレントをゲストに迎え、寅さんワールドで惚れた腫れたする本作。初期作品とは明らかに作風が変わってきたことを実感する。 武田鉄矢が出てくると、なんか寅さんって感じがしなくなる不思議。キャラが黄色いハンカチの欽也のまんま。そりゃ面白いけど、映画のアイデアとしては安直かなぁ。この留吉がほぼほぼ本筋に絡んでこない。隅っこで何かチョロチョロしてるなぁって感じ。 マドンナの奈々子がさくらの同級生。1作目でさくらが寅の事を覚えてなかったのに、奈々子が寅を覚えてたって設定。過去作のマドンナの名前を列挙するくらいしっかり尊重してる作品だけに、もう少し矛盾なく出来ただろうに…と思ってしまう。 そして奈々子もとらやにやって来て、急に泣き出したりと住人お構いなしにぶちまけて、もうこんな時間!と勝手にさっさと帰ってしまう。この落ち着きのないマドンナ設定、コレで正解だったんだろうか。雨の中のキスにも違和感。 松竹歌劇団…というものがあったのか。歌劇団って宝塚歌劇団だけじゃなかったんだ。SKDが帝国華撃団(サクラ大戦)のモトネタだったのか。勉強になるわ。 歌劇のシーンが結構長い。寅と留吉が歌劇をじーっと観てるシーンが続くのは、シリーズ的にはちょっと違和感を感じてしまう。映画の中で歌劇の魅力を伝えようって意図だろう。劇団員なんかも本物の歌劇スターなんだろう。坂東鶴八郎一座とは華やかさが違う。 ただ、SKDの魅力。木の実ナナのワイルドさ。武田鉄矢の勢い。それらを“男はつらいよ”で受け入れる。そのミキシングが、どうにも上手く絡まってるようには思えない。それぞれがそれぞれで、散らかったまま一つの作品にしてしまったかのよう。 ただ一番残念だったのは、タコ社長の「なにか面白ぇことないかなぁ、寅さんまだフラレねぇかなぁ」のセリフ。梅太郎、腹ん中でそんな腹黒いこと楽しみに思ってたのか?うっかり者だけど良い人だと思っていたのに…[CS・衛星(邦画)] 4点(2023-10-10 23:08:25)《改行有》

118.  8 Mile 《ネタバレ》 “8 Mile”デトロイト市の都市部と郊外を分ける通りの名前で、黒人の多い貧困層の内側と、白人の多い富裕層の外側とに別けられる。…札幌だと新道かな。 で、主人公ジミーは内側に住む白人。いわゆるホワイト・トラッシュです。そりゃ自然とラップも身に付くでしょう。白人からは見下され、黒人からはハンパもの扱いされる。男の世界で生きていく女みたいなモン。 「B・ラビット凄いね!(でも白人でしょ)」みたく、どんなに才能があっても、どこかで“認めてもらえない”空気があるんでしょう。SDGsの無い世界だから、MCバトルでも白人なのをガンガン責められる。そんな埋められないルーツを覆したエミネムって、やっぱ凄い。 ロックが下火になってた時代、エミネムのヒップホップは売れまくってた。けど保守的な評論家は彼のアルバムを認めなかった。「エミネムまたチャートインしてるよ!(でもラップでしょ)」みたく。 “Lose yourself ”『のめりこめ』。エミネムの自伝とも言われる本作で、如何にして彼がラップの世界で認められたかが描かれる。彼の伝説の序章。あの最後のバトルに勝って、全てを掴んだわけじゃない。あのバトルで終わったわけでなく、家族の問題も仕事も恋愛も、何も解決しないまま、これから始まっていく感じが堪らない。 あのバトルから始まり、貧困層に認められてアルバムが売れ、富裕層も興味を持ち、この映画で世界が注目し、遂には保守層も認めてロックの殿堂入りしたのは2022年の話。[DVD(字幕)] 6点(2023-10-06 20:41:02)《改行有》

119.  ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q 《ネタバレ》 いきなり14年後だと?ミサトが何でシンジに冷たいかわからない。アスカがいきなり殴り掛かる意味がわからない。レイが敵っぽいのも敵がネルフなのも意味不明。シンジがレイを助ける決断が、人類にとって裏目に出たのは、何となくわかる。 だけど、どこかでそれを説明しないと。シンジも私たちも置いてけぼり状態。 少なくとも私は、破の次回予告で観せたような“その後”が観たかった。意味不明で消化不良な終わり方をした『THE END OF EVANGELION』。制作者側も“失敗作”と思ったからこその、リビルドだったろうに、どうして“その後”を丁寧に創らずに、14年も時代をスッ飛ばした?? 14年前と言や旧作のセカンド・インパクトからエヴァ1話までの時間が経過している。観たいと思った“その後”の話は、もう“前の時代の話”ってくらいの時間が経過している。こんなのって、あるかい? オーバースペックな空飛ぶ巨大戦艦。今までは使徒という謎の敵に、通常兵器の延長線で戦いを挑む人類。エヴァだけがオーバースペックな存在だったのに。 ごちゃっと増えた新キャラたち。トウジの妹は良いとして、エヴァの名のあるサブキャラって、闇雲に増やさないと思ってたのに。 ネルフVSヴィレ。他の人類どうなった?本作観る限り全滅してるんだろうな…カシウスの槍?なにそれ?いろいろ、大丈夫ですか? この土壇場に、どうして今までやらなかった新しいことを、いっぺんに詰め込んできた?新劇ってリメイクでなくリビルドなんだよね?あともう1作で終わらすんだよね?なんかもう数作追加しそうな雰囲気が感じられて、そんな商売っ気を勝手に読み取ってうんざりしたわ。 レイの別人設定にも、カヲルとシンジの仲の良さにも、壮絶っぽい最終決戦にも、カヲルの死にも何の驚きもなかったわ。まさに『14年前に観たかったこと、14年前に終わってたであろうこと』を、今さら観せられてる気分。リビルドでどう持ってくるかに興味があったのに、放り投げられた気分。 続編に当たる『:||』 が、割とすぐに公開されていれば、本作の印象も大分変わっただろうけど、9年後だもんな。長いよ。 あまりに説明不足で、どれだけ凄い映像を観せられても気持ちが乗らないまま最後まで来てしまった。本作で良かったところと言えば、最後3人が揃って歩いていくところ。ここでやっと前作からの空白が埋まった気分。じゃあ、ここまでの約90分、何を観せられてたんだろう?って気持ち。[地上波(邦画)] 3点(2023-10-04 23:30:37)《改行有》

120.  シン・エヴァンゲリオン劇場版:|| 《ネタバレ》 新劇場版3作のレビューをすっ飛ばして、忘れる前に先に書いておこう。 前作Qからかなり年数が経っているので、おさらいをしての鑑賞が望ましいけど、9年は長すぎたと思う。Qがモヤモヤする内容だったために、少なくとも第三村の存在、ミサトの想い、戦艦の経緯は、Qの段階で知っておきたかった。それかもっと矢継早に、この:|| を観たかった。 第三村で何にでも好奇心を示すそっくりさんが可愛い。色々学んで人間らしさを身に着けたところでのお別れは悲しいが、それを乗り越えるシンジ。無気力状態から自分のやるべきことを見つけたからだろう。 ネルフとヴィレの最終決戦へと向かうが、正直ついて行けてない。置いてけぼりだ。ヴンダーを新しい槍に変えるなんてアイデア、マニアックな人は「おぉ、その手があったか!!」って思うかもしれないが、観ててサッパリだ。 真っ赤な決戦場、人型の何かがたくさん浮かんでる。エヴァ2機とエヴァモドキのものすごいスピードの戦闘。今回の巨大アヤナミは、顔だけが写実的で、髪や体はアニメと前にも増して気持ち悪い。 ゲンドウが出てきて13号機に乗って初号機と戦う。けど、どっちも同じ色で何してるかイマイチよく分からない。目が追いつかない。戦場が第3新東京市になる。エヴァが転んで建物がズレるが、なんか特撮の模型みたいだ。戦場がミサトのマンションや教室に…いや確かに、こんな親子の関係に勝った負けたはどうでもいい。 あと、エヴァのカッコイイ戦闘シーンも宗教っぽい謎もどうでもいい。そんなの女の子のサービスシーンくらいどうでもいいのが:||の本題のようだ。 ゲンドウは庵野監督であり、成長したシンジでもあり、アニメにどっぷりの成長してない大人のエヴァマニアでもある。 そして子供=シンジ=庵野監督のエヴァだろうか。エヴァの最後はこれで3回目。TV版では視聴者に伝わらず、旧劇場版でも上手く伝わらず金返せと反感を買い、自分も病んで、そして今回。劇中も失敗とリセットを繰り返しての今回だ。しかし26年も向き合って、大失敗した『まごころを、君に』と同じアプローチで、よく完結させたものだと思う。 アスカが怒っている理由。シンジに説明されないと解らなかった。好きだった。と、大人だから言える告白。こういうの、同窓会なんかであるよね。旧劇の首絞め→「気持ち悪い」から、なんて余韻のある最後だろう。 マリ。何でこのキャラが出てきたか解らなかった。当時アスカが二人に別れたとか聴いた気がする。アスカは庵野監督の憧れの女の子。旧劇では憧れの対象と、最後に自分が選んだ女性も全部アスカだったから、話の流れから「気持ち悪い」も、わかる気がする。うん気持ち悪いわ。 マリはレイやアスカのような突出したカリスマ性(キャラ人気)は持たされていない。レイもアスカもアニメらしいキャラで、クラスのアイドルや憧れの対象だけど、自分が付き合うとかは現実的じゃない。もっと近くにいる、頑張れば付き合える、自分にとって等身大のリアルな女性がマリ。語尾に『ニャッ』って付けたり、アスカを姫と呼んだり、現実のアニメ好きな女の子っぽい。リアルシンジくんの近くにもこういう子は居るはずだ。 アスカのように大人にはなれないレイ。髪だけ伸びた姿は、精神的に大人になったシンジには、もう憧れより見守りの対象に思える。カヲルは子供だった当時のシンジの憧れ、理想の自分だったのか。ホームの向こう側に、アニメのままのカヲルとレイ。 シンジとマリはアニメから現実社会へ。やっと、庵野監督が伝えたかったことが伝わる、意味のわかる終わりを観ることが出来た。 おめでとう!![映画館(邦画)] 8点(2023-10-04 23:17:27)《改行有》

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