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プロフィール
コメント数 901
性別 男性
年齢 42歳
自己紹介 最近になってまた映画を観る習慣が出来ました。
前はほとんど観なかった邦画をたくさん観るようになり
新しい映画ライフが充実しています。

昔ほど数はこなせませんが
趣味と生活のバランスをうまく保ちながら
なるべくたくさんの映画を観て、
なるべく読み応えのあるレビューを続けていきたいと思います。

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【製作年 : 2010年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
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1.  リップヴァンウィンクルの花嫁 《ネタバレ》 どこから書けばよいのか。なんだか楽しかったことは覚えている。おそらくそれは、COCCOさん演じる、里中真白が出てきたあたりからだろう。長い映画の中、彼女の存在に目を奪われ続けた作品だった。  意思薄弱、と言って過言ではない皆川七海がネットを介して男と出会うところから物語は始まる。ネットで出会いを求める、と言うのが作中唯一の彼女の自発的な欲求の発露による行動だったかもしれない。それ以外は全て知らず、分からず、流されるだけの存在だった。物語を文字通り誘導するのは綾野剛さん演じる安室という一人の男。「なんでも屋」である彼は時に結婚式の出席者を演じ、時に良き相談者・理解者となり、時にこっそりと人を陥れもする。彼は作中の登場人物でありながらもさながら舞台裏の黒子のように、マリオネットの繰り手のように、七海を操り続ける。どういう目的かはわからないが、彼はランバラルの友人として七海に近づき、彼女にとって唯一の信頼できる人になっていった。彼にとっては彼女は金づるだったのか、暇つぶしのおもちゃだったのか、どうなのだろう。第三者から見れば安室の存在が七海にとって良さそうとはとても思えないのだが、七海は安室に全幅の信頼を置き、おかげで救われたと思っている。こういう場合、自分が七海の家族や友人だとしたら安室をどういう風に扱っていくべき何でしょうね。  徹底して七海がコロコロと転がされるのを眺める映画でした。上述したように、安室と七海の操り劇、といったふう。操られた七海が色々な場面をどのように転がっていくのかをただただ見ていた。そしてそれが1番艶々と輝いていたのが真白と過ごしていた時間だったと思う。真白の奔放な笑顔・声には本当に惹きつけられた。一度は雑踏で見失い、しかし屋敷で再会できたときの喜びは七海と同じくらい共有できた気がします。私も、リップヴァンウィンクルとつながってみたいと思いました。  安室の置き場所が定まらず映画としてどう評価するべきかが難しいのですが、ただ間違いなく言えるのは、自分の好きなものが全力で輝く姿を見ることは、とても心が喜ぶということ。映画を評価する言葉としては不適切かも知れませんが、それらがスクリーンに映し出されている間はそれだけで幸せでした。coccoとクラゲ、反則です。  あと真白の幸せの捉え方が響いた。 「この世界は幸せであふれている」 「私の幸せの限界はありんこより早くて」 「人の優しさや真心がそのままだと怖いから、だからお金で買うんだ」  それで10点はやりすぎかな。個人的評価です。あしからず。[インターネット(邦画)] 10点(2022-09-29 14:33:35)《改行有》

2.  子宮に沈める 《ネタバレ》 まずはじめに言っておくと、これは10点です。それくらい物語に入り込み、おそらく製作者の狙うように感じさせられました。心情的には本当に疲弊したし、鬱な気分にさせられて0点どころかマイナス100点くらい付けたい気持ちですが、それがこの映画の狙いというなら、見事に思惑にハマったなというのが正直な感想です。 映画にも色々あって、それぞれに目的があると思います。感動させたい映画。泣かせたい映画。驚かせたい映画。怖がらせたい映画。笑わせたい映画など。この映画は、観る人を鬱にさせたい映画。その意味ではこれ以上ないくらい最高の作品です。 本当に目を背けたくなる気持ち。実際何度か背けたし、何なら一時停止して意を決してから続きを再生したことも数回。 とにかく幸ちゃんが良い子すぎて。健気に母親を待ち、弟の面倒を見て、訳が分からない中でも命を食いつないで、その結果があれなんて。もう言葉が無い。何とかして粉ミルクを作るシーン、缶詰を包丁で開けようとするシーン、マヨネーズの容器がすっからかんになるまで吸い尽くすシーン。動かなくなった弟を何とか起こそうとするシーン。どれも衝撃的でショッキングすぎた。こんな子がまだどこかにいるのかもしれないと思うと、何とかできないのかと胸が張り裂けそうになる。 ただ、母親の気持ちもわかってしまう。さすがにあそこまでのネグレクトはあり得ないけど、それは自分が誰かに頼れる状況があって、全くの閉鎖空間では無いある程度のオープンスペースに身を置けてるおかげなんだろう。夫は行方をくらませてしまった。実家はないのかな。そんな中で幼児二人とずっと閉じ込められてる状態ならおかしくもなってしまうというのは、理解できた。これは、ここまでの状況ではなくても、短期的にでもこのような状態に身を置いたことがある人ならわかると思う。辛い。知らない人はやってみてください。ひたすら子供のペースに合わせ、なだめ、すかし、ご飯を与え、お風呂に入れ、トイレの世話をし、寝かせ、だと思ったら起きてきて、自分は寝れない。それが二人。 なかなか文章では伝えきれない所もありますが、世の母親の方々、本当にお疲れ様です。 人には全く勧められないし、一ミリも楽しい映画ではなかったが、最高でした。[インターネット(邦画)] 10点(2022-05-13 00:51:27)《改行有》

3.  湯を沸かすほどの熱い愛 《ネタバレ》 双葉、安澄、鮎子。奇しくも全員が母親に捨てられた子たち。タイトルからラブストーリーなのかなと思って見始めましたが、この映画はそんな彼女たちのきずなや生き方を描いた物語。 安澄のイジメに始まり、おかあちゃんの病気、父親の発見とその連れ子との共同生活、銭湯の再開、旅での出会いなどなど・・・見終わってみて、ほんの2時間くらいの映画にここまで色んな出来事があったのかと驚くほどたくさんのエッセンスが凝縮され、それでいて時間を忘れるほど話に見入ってしまいました。 4つものシーンで泣いてしまいました。制服を取り返した安澄がお母ちゃんと抱き合うところ、鮎子の朝食のしゃぶしゃぶでの言葉、君江さんの「何故手話を?」に対して安澄が返した言葉、そして双葉の「死にたくないよ」 特に心打たれたのは、絞り出すように話す鮎子の「これからは一生懸命働きます。だから、できればでいいから、ここにいさせてください」「でもママのこともまだ好きでもいいですか?」という台詞だった。これを言えば本当の子供でもない自分はここを追い出されるかもしれない、などとたくさん悩んだであろう心の葛藤が見ているほうにも刺さるように伝わりました。 さらに安澄と君江の、「なぜ手話を?」「母が、いつかきっと役に立つ時が来るから」「勉強しときなさいって」というシーンにはやられた。こんないい話、反則だ。 文字で書くとなんだか単調になってしまうが、改めて見直すと鮎子や安澄、君江の感情がやはりひしひしと伝わってくる。迫真の演技だと思う。演技なんて言うとかえって失礼ではないかと思うほどに。単調になってしまうのは多分に自分の文章の拙さゆえもありますが。 そして最後、9点くらいかなぁと思っていた自分の点数が、あのラストによって10点になってしまいました。賛否ありそうですが、逆にそれでこそ映画!って締め方で良かったと思います。 双葉、ここにあり。 ですね。[インターネット(邦画)] 10点(2022-02-04 22:26:22)(良:2票) 《改行有》

4.  火口のふたり 《ネタバレ》 『ここは退屈迎えに来て』でほんのちょい役だったにもかかわらず瀧内公美さんが強く印象に残りました。それをprime videoで鑑賞しておそらく瀧内さんつながりで「あなたへのおすすめ」で出てきたのがこの『火口のふたり』。概要を見ると瀧内さんが主演と言うことでさっそく観てみることにしました。 上述のように、別の作品で印象に残っていて「綺麗な人だなー」と思っていた人がここまで体を張った役をやっているとは思っていなくて、もう自分もいい歳ですがちょっといいなと思っている女性のあんなシーンを見てしまったらドキドキしてしまいます。 昔付き合っていたふたりが賢ちゃん(=柄本祐さん)が故郷の秋田へ戻ってきたことをきっかけに、昔の関係に戻っていく物語。流れを見る限りでは、瀧内さん演じる直子は元々そういうつもりで賢ちゃんに接近していたように見えました。賢ちゃんははじめだいぶ自制しようとしていましたが、直子に詰め寄られてキスされてからはもう直子にズブズブ状態に。そんなつもりではなかったはずなのに、ある一線からはもうその女性にのめり込んでしまう心情はすごくよくわかる。すごく純粋で、変な言い方ですが、「真っ当な」人々からしてみれば体の関係で始まり体の関係でつながるこの二人のような恋愛は邪道なのかもしれません。しかし、ふたりが心でつながっているのがわかれば経過はさして問題でもないような気もしてきました。体の言い分ではじまる恋愛も、全然捨てたもんじゃないな、と。そういえば、男はバツイチで女は一応結婚前なので、不貞関係にはならないのかな。 個人的に、瀧内公美さんの声のトーンや話し方、ときおり見せる幼い態度がとてつもなくツボでした。可愛い。あの声で「なに?」とか「うん」とか言われるだけでゾクゾクします。お肉屋に入る前の会話が下ネタなんですが、前の晩痛めた賢ちゃんの下半身に対して、「今日使えそう?」「やった♪」という様子が可愛すぎて。あのくらいの年齢の女性が無邪気に、でも性に対して開放的にはしゃいでいる様子は何とも言えずエロティックでした。 こういう恋愛ができる時間ってすごく貴重で、大事にしないといけないんだなとつくづく思いました。作中の直子が自分と賢ちゃんのいとこ関係を引き合いに出しながらのセリフで、「私たちみたいにいとこで関係を持ってる人や、兄弟や親子でやってる人だってほかにもたくさんいると思う」というのが印象的でした。ドラマや映画の話って作り物で、だから現実と比べればとても奇抜なものだという先入観がありますが、現実に生きている人間一人ひとりのドラマも、この映画に負けないくらい奇抜で驚くようなことはいっぱいあるんだろうなと改めて思いました。 現実は富士山の大噴火ではなく感染病の蔓延に苦しんでいます。比べるわけではないですが、火山灰よりももっと大規模に影響をもたらす感染病がはびこる中、この映画のようにいびつでも前向きになる出来事があれば、と思います。 【追記】 何となく映画のタイプ的に満点をつけるのが憚られるような気がしてはじめは9点を付けていたのですが、もう一度鑑賞して、二人のやりとりや関係が心に刺さって感情移入のようなものが抑えられなくなってしまったので、10点を付けることにしました。主に瀧内さんの演技に対してですが、本当に魅力的で、印象的な演技でした。[インターネット(邦画)] 10点(2021-05-11 02:11:44)《改行有》

5.  小さな命が呼ぶとき 《ネタバレ》 この親の愛情の深さに、ただただ頭が下がる思いでした。おそらく普通なら医者に余命宣告をされた時点で、残りの時間をできるだけ子どもと過ごすという選択をする人が大半だと思います。それは実際にストーンヒル博士も言ってたことだし、無理からぬことだろうと。しかし、このジョンはあくまでポンペ病を治すんだという頑強な意志でもって、あらゆる局面に立ち向かっていきます。子どもを助けるためなら何でもするという思いが、画面越しにも伝わってくるようでした。 とても偏屈で頑固で、プライドも高く人の言うこともほとんど聞かない性格のストーンヒル博士は、その性格上色々な人と衝突します。周囲と足並みを合わせることなどを嫌い、意地とも取れるような頑固さを持つストーンヒルですが、"小さな命が呼ぶとき"だけはそんなプライドや意地を捨て去り、子どものための選択をしてくれます。あくまで子どもを救うことを優先するジョンには方向性の違いから裏切られ、自分の試薬も選ばれなかったという屈辱の状態で、しかしポンペ病の子どもたちのために最善と思える方法を選んだストーンヒル博士は、とても格好良かったです。 「おまえのためじゃない、子どもたちのためだ」という捨て台詞はかなりキマってました。 実話を基にした映画というだけあって、物語で起こる出来事の一つ一つが現実的で同時に冷酷で、、、身に詰まされました。ただ娘を助けたいという一念で動き出したジョンが、募金・製薬会社との交渉・研究チームのマネジメントなど直接的に子どもたちを救うことと関係ないことをしなければならない葛藤に疲れ果て、苦しむシーンなどは本当に現実的で、それだけに心を打ちます。 私たちが普段飲んでいる薬も、色々な過程を経て今私たちの手元にあるんだということを考えさせられました。その全部が全部このような美しい話だったとは言いません。そこには大なり小なり利権絡みで機械的に産み出された薬もあるでしょうし、「人を救う」という目的からは外れたきっかけで出来た薬と言うのも世の中にはたくさんあるでしょう。しかし、この映画のように「誰かを助けたい」という思いが詰まった薬と言うのも世の中にはあるんではないか。そうしたことに思いを馳せた上で、感謝して使わせてもらおう。鑑賞後そんな気持ちになる映画でした。[DVD(字幕)] 10点(2011-02-24 13:15:13)《改行有》

6.  孤高のメス 《ネタバレ》 こういう映画を作らせたら邦画は本当に感動させてくれる。それを再認識できた今作です。映画の中で当麻先生(=堤真一さん)はものすごく変わり者の医師として出ていますが、もし自分や家族が病と向き合ったとき、医療に関わらない一般人のほとんどはこんな先生こそ望んでいるんですよね。理想像であるがゆえに現実と乖離し、「孤高」である。的を得たタイトルだと思いました。 鑑賞前は物語の主人公の先生はもっと変人的で、人に何を言われてもやり方を変えない孤立型の役を想像していたのですが、役中の当麻先生は紳士的で仕事にまっすぐで、自分のこだわりより周囲との人間関係を大事にする、とても尊敬できる人柄でした。スタッフに言われてしぶしぶ都はるみを諦めたシーンも、本当に子どもがおもちゃを取り上げられたみたいな反応で、彼を薄ら怖い陰険な先生と思っていた周囲のイメージがそこで消えていくのが分かりました。本当にこんな先生がいてくれればと心の底から思います。 生体肝移植までの人間関係の流れも、そこまでの荷物がラストにズンッとくるような衝撃で、響きました。実際の医療現場でここまで医師と患者が深く立ち入ることはないとは思いますが、医師の患者を助けたいと努める姿勢、レシピエント患者の家族の不安・心配、ドナー患者の母親の葛藤、この三点には素直に感動し、現実もこうであって欲しいと切に願いました。 場面場面で語られる映画が多い昨今、この映画はストーリー全体のつながりという点でとてもレベルが高く、逆にどこが特筆して良かったと言うことがなかなか難しい作品と感じました。その上で上述のようにレビューさせていただきましたが、また観ていない方には是非ともオススメしたい作品です☆[DVD(邦画)] 10点(2011-01-05 16:02:59)(良:2票) 《改行有》

7.  天気の子 《ネタバレ》 余談ですが、直前まで『秋刀魚の味』という1962年製作の古い映画を観ていたので、改めて映像や文化の違いに驚かされます。 かなり有名な映画で老若男女問わず観られる内容、そして物議を醸しそうなそのストーリーに様々な意見があることはとりあえず脇におきます。その上で、良かった。 私は穂高と同じく愛する人のためなら天気なんてどうなってもいいと思う側の人間ですが、一方で自分が何の関係もない第三者であれば、人一人の犠牲で済むなら雨を止ませて欲しいと思う人間でもあります。そしてそれは多分穂高も同じだろう。彼も、自分と陽菜の世界さえ守られれば他はどうでもいいという人間なので。同じ人間でも立場によって取る手段が変わってくる。そういうもんだ、そう思った。 ラスト、元々世界なんて狂ってるんだから穂高のせいじゃないと須賀さんに励まされるも、陽菜の祈る姿を見て、やはり世界を変えたのは自分たちだ、確かに自分たちのしたことによって今の自分たちがあるんだと確認した穂高。 そう思いたい気持ちもわかるが、私なら須賀さん理論に乗っかるなぁ。天気なんてどうしようもないものの責任なんて取りたくない。 話題作だからというわけではないが、数回見直したこの映画。今回で少し、整理できた気がします。[インターネット(邦画)] 9点(2022-11-13 13:19:57)《改行有》

8.  あん 《ネタバレ》  見終わって、感想を考えるんだがなかなか適切な言葉が思い浮かばない。静かだが鮮烈な印象を残す映画だった。特に印象に残ったのはふたつ、どちらも徳江さんのシーンだが、まずはその手紙の一節; 「この世にあるものはすべて言葉を持っていると私は信じています」 ひたすら小豆の声を聴きあんを作る徳江さんの自然観に溢れるひとこと。隔離病棟に置かれた、という故もあるのだろうか、人も含め、あらゆる事象と関わりを持とうとし、そしてそれらを優しく慈しむ。全てが慈愛の時間だった。 あとは千太郎が施設を訪ねて出された塩昆布について、「これ、どうやって作るんですか」に対する徳江さんの、 「教えなーい」 は笑った。あんな無邪気で、爛漫で、意地悪で、愛らしいシーンがあるだろうか。笑えるのに泣けてくる、心からそう感じる一幕だった。  私は「らい病」というものにほとんど知識がありません。そのためどら春のオーナーや世間の人の排斥感は正直ピンとこない。でもそれでいいと思っている。いや勉強しろよ、というまこと正論なツッコミが聞こえてきそうですが、実際自分の身の回りでそういうケースがあって必要と感じたら学ぶ、でいいのかなと思っている。私はそれほど交友関係もないですが、誰かと人間関係を築く場合は基本的に自己責任だと考えている。その人がどこに住んでようがどんな見た目だろうが、その人が好きなら好きで、嫌いなら嫌い。それだけだ。その理由に病気や身体的特徴を述べたことはない。ましてや介護のようにその人の生活全般に関わらなければならないような関係ならまだわかるが。この映画のように「らい病だから」で避けられる感覚がピンとこないのはそのためだろう。こういう「ピンとこない」という感覚を私は大事にしたいと思う。無知ゆえなのかもしれませんが。それごと受け入れたい。[インターネット(邦画)] 9点(2022-10-17 22:34:51)(良:1票) 《改行有》

9.  ようこそ映画音響の世界へ 《ネタバレ》 ドキュメンタリーの形をとっての「映画音響」をテーマとしての映画であったが、大変見応えのある映画だった。蓄音機から始まる「音」への映画のアプローチがものすごく興味深い。映画界、特に音響の分野を目指している若者はこの映画を見るべきだと思う。素人の私からして、映画音響の考え方に取り憑かれるような内容だ。 本当の初期の頃には映画館に本物のオーケストラが張り付き演奏し、セリフもその場で役者が当てるような形で行われていた。そこから徐々に声の録音、効果音の作成、それらの編集と目まぐるしく出来ることが増え技術が進歩し、今に至る。 音や声の作成と同じく、それを出力する手段も同時に進歩していく。スクリーンの裏に一つしかなかったモノスピーカーが両サイドに一つずつ配置されるステレオスピーカーになり、やがて館内を360°カバーする5.1chサウンドとなり。 正直私は音に対してこれまでそこまで真摯に向き合ってはこなかった。聞きやすいか聞き取りにくいか、強いて言えばそれくらいの判断基準しか持ち合わせてこなかった。私も作中に出てきた映画製作会社の幹部たちと同様、「音」に対してそこまで真剣に考えたことがなくどちらかと言うと軽視してきた人間ということだろう。だが、ここまでの音響世界での足跡とその軌跡を見るにあたって、当たり前に自分たちが楽しんできたあの音たちは当たり前ではなかったんだと思えるようになった。10分程度の長さの音を作るために数週間を要する。それはひょっとしたら、映画にとって音と双璧をなす映像よりも時間のかかる緻密な作業が必要なのかも知れない。 単に効果音と言っても、動物の声などを組み合わせた効果音や、道具を駆使して自分たちで音を創り出すフォーリー、風などの環境音など、そこにも様々な分野があることを知った。ジェット機の音にライオンや猿の声が入っていたなんて、本当に驚きだ。 そう言ったことを知っていき、驚く反面、技術の進歩に伴ってリアルな音、というのが軽視されていないかということが心配になってきた。個人的な見方だけど、観客へのインパクトを重視するあまり、またどんな音でも工夫や時間次第で創り出せる今の技術下では、実際の音よりもインパクトや驚きを演出するため加工しているのではないか、と。そうなってくると少し違うような気もしてくる。上述したジェット機の音にしても、「本物は意外と大したことなかった」と、それ以外の音を加えて編集して客にこれはジェット機だと聴かせているが、それが正解なのかどうかは個人的に疑問が残る。R2D2などの機械のしゃべりや、非現実の事象の音に対してその音を作るために様々な工夫はあって良いと思うが、実際存在するものを「インパクトが足りない」と違う音で演出するのには違和感を覚えた。あくまで個人的な見方です。あしからず。 しかしそれはそれとして、音に対する考え方、その姿勢にとても感銘を受けたことは間違いない。 私は今年40歳だが、産まれてからここまで世界の技術革新と共に歩んできた、そういう時代とともに育ってきたという自負があります。物心ついた時には小さなブラウン管、ファミコン、ワープロやフロッピーだったのが、今や60インチ近くの有機ELテレビ、PS5やスマホゲーム、テラバイトの容量を持つPCなどを個人で所有するような時代となった。 同じように音の世界の技術革新に触れ、それを飽くことなく追いかけて形にし続けてきた先人たちに素直にリスペクトの念を抱かざるを得ない。素晴らしいドキュメンタリーでした。[インターネット(字幕)] 9点(2022-09-07 01:33:48)《改行有》

10.  君と100回目の恋 《ネタバレ》 恋愛映画としては正直よくあるものだなーという印象を受けました。が、ラストの歌と「このレコード、食べちゃっていいからね」が最後の最後でこの作品を深く、彩りのあるものにしてくれたと感じました。 まずは歌。個人的な好みですが、歌詞で聴かせる歌というのが大好きです。時かけの実写版みたいだなぁとなんとなく二番煎じ感で見ていたのですが、陸のノートで葵海を何度も死なせてしまっているのがわかった時、時間を戻せるレコードがあるのに陸の母は早くに亡くなっていることに気づいた時、そして葵海はやはり助からないという結末を迎えた時、とっくに二番煎じ感は無くなっていました。そういったストーリーを全て含んだ上でのラストのあの歌の歌詞は反則です。少し若者向けにラブコメ感やご都合主義がありましたがあえて深くは突っ込みますまい。ひとつのヒューマンドラマとして楽しめました。 そして「このレコード、食べちゃっていいからね」。最初このレコードもチョコレートで出来ていると分からなかったのですが、そのセリフでそうなんだと。かつて陸がやったチョコレートレコードのオマージュなのですが、亡くなった最愛の人からのメッセージなんて針で擦り切れるまで何度も何度も聞きたい、まして食べてしまうなんて出来るわけがない。そんなものをチョコレートで作るなんて、すごく残酷で、でもはっきり毅然とした「前を向け」というメッセージなんだなと思いました。 思えば今の世の中ってこれと全く真逆だと感じます。昔からある卒業アルバムや現像された写真などはいざ知らず、今は身の回りには途方もない容量の記録媒体やクラウドサービス、SNSなどが溢れ返り、人々は少しでも気になるものはすぐ写真や動画に撮りそれを保存し、誰かと共有する。きっと探せばかなり古いメールや写真のデータなどみなさん結構あるんではないでしょうか。 私たちはそういうものを保存して、所有して、なんだか財産が増えたような気になって安心する傾向があるように感じます。別にそれ自体が悪いことだとは思いません。そういう私もすぐ何かを写真で撮ったりするタイプなので。ですがこの映画はそうではなく、次々現れる出来事や人との出会いを、何十年も保管できるハードディスクに保存しておしまいにするのではなく、すぐ消えるチョコレートだと思って今すぐ全力で楽しみなさいと言っているように感じました。 本当にそんな意図で作られた映画かはわかりませんが、私はそんな意味で捉えて楽しむことができました。もし製作された監督さんなどの意図と違っていましたらすみません。あしからずご了承のほど。[インターネット(邦画)] 9点(2022-07-04 21:58:39)《改行有》

11.  七つの会議 《ネタバレ》 全く予備知識がない状態で鑑賞してなんだか池井戸作品みたいだと思っていたら、池井戸作品でした(笑) はじめはノルマや会議偏重の会社気質を皮肉ったコメディテイストの映画なのかと思ってみていたらオリラジの藤森が出てきたりドーナツの無銭飲食とか、なんだかちょっとしたいちオフィスのいざこざを見せられて終わるのかと思いきや、いつの間にか八角さんを探る話になり、いつの間にかネジの話になり、いつの間にか大規模リコールを隠す大会社の隠蔽体質の話になっていました。 個人的にエンドクレジットでの八角さんの語りは最高でした。あんな粋なエンドクレジットならずっと見ていられる。いわく、このようなデータ偽装や隠蔽の問題が起きるのは、「会社の常識>世間の常識」「サムライ文化から来ている藩(会社)を守ろうとする日本人のDNA」が問題であってだからこういう問題は無くならない、というもの。語りに引き込まれました。実際、転職という文化があまり浸透せず、仕事を辞める(変える)人を、だから長続きしないやつ、とかこのくらいで辞めるな、とかいかにひとところで長く続けるかが美徳みたいなところが日本にはありますしね。私は全然組織に心酔するような会社人間ではありませんが、それでもやはり一つのことを続けること自体は大事だと思っています。それを周りにも求めたり、人の命より金、誰かの人生より会社、となってしまったらこの話のようになるんでしょうか。 家、車、家具、家電など、いまほとんどの人はお店やネットで売ってる顔も知らない誰かが作ったものを購入して、それに囲まれて生活しています。この映画のように本来リコール対象のものがきちんと発表されずに今家の中にあるのかも…なんて考えてしまったりして。でも資本主義の社会で生きるってことはそういうこととは切り離せないんだろうとかも思ったりして。森の中で仙人のように生活したりするなら別ですけどね。 野村萬斎さんのおかげで話に引き込まれ、とても楽しめ、また考えることができました。とても良い、オススメの作品です!![インターネット(邦画)] 9点(2022-01-09 00:22:49)《改行有》

12.  42~世界を変えた男~ 《ネタバレ》 いま当然となっているものでも昔はそうでなかった。あるいは何らかの歴史の上に成り立っている「いま」であった。そういうことを知ることができる映画でした。 自分が日本人だからか、それとも今の時代に生きているからなのか。黒人差別と言われてもピンとこないというのが正直なところです。まあ日本人にしてみれば白人も黒人もどちらも「外人」であってその感覚そのものに隔たりはありませんから。あえて「外人」と書きましたが日本人もある意味「外人」に対して偏見を持っていて、無意識もしくは無条件にそういう感覚を持っているという意味では黒人差別と通じるものがあるのかもしれません。 さて舞台は第2次世界大戦直後のアメリカ野球界。当時は野球選手と言えば全員白人というのが当たり前で、黒人選手など一人もいなかった。黒人は野球選手としてどころか社会から排斥されて不当な扱いばかり受けていた時代。黒人というだけで飛行機は無理やりキャンセルして白人に渡され、トイレやシャワー、その他公共施設も白人と同じものを使うことは許されなかった。そんな中で野球選手としてBranch Ricky(=Harrison Fordさん)に見いだされ、史上初めての黒人選手Jacky Robinsonが誕生するというお話。 万人に見せる映画なので一見きれいなドラマに仕上がっていますが、「実話に基づく」とはいえここで描かれた以上のこともたくさんあったんでしょうねえ。シンシナティとの試合で、純粋に野球が好きそうな白人の子供が、その父親がロビンソンを口汚く野次っているのを見て自分もそうすべきなのかなと逡巡した挙句、「この黒人やろう!出ていけ!」と野次を始めたのはショッキングでした。自分が日本人で、今の時代に生きているからその異常性がわかりますが、なんて悲しいことなんでしょうか。逆にいまのこの日本の社会の中で自分たちがそういうことをしていないか、子供たちにそんな差別意識の伝達をしていないのか、改めて思いをはせてみる良い機会となりました。 ただ上述のように万人向けの作りになっていたため、本当の黒人差別のひどさを知ることができたかというと少々物足りなかったか。例えばこれをその時代に生きた黒人の人に見てもらって、「これで当時の差別のひどさが十分伝わりますか」と聞けばおそらく不十分と言われるような気がする。少し鑑賞者のレートをあげてもよいからもっと踏み込んでほしかった。これを観た人全てが、黒人を卑下するあの言葉を使うことを心から忌避してしまう、そんな映画を。実際にこれを観た黒人の人の意見も聞いてみたいと思いました。[インターネット(字幕)] 9点(2021-09-07 15:10:19)《改行有》

13.  劇場版ファイナルファンタジーXIV 光のお父さん 《ネタバレ》 かなり面白かったです!大杉漣さん演じるドラマverも観ていたので入り込みやすかったことも手伝って、すぐに世界観にハマれました。自分はあまり人とコミュニケーションを取るのが得意ではないタイプなので、いまいちこういうチャットで仲間を作るネットゲームというものの良さがよくわかりません。ゲームならリアルの友達とその場で盛り上がるやつか、それこそ一人でRPGをするかくらいなものです。ですが、そんな私でもこれを観ると少しやってみたくなりますね。 突然仕事を辞め、昔から距離があって理解し難かった父親とゲームを通して絆を作ろうという「光のお父さん計画」。息子は息子であることを隠しながら父親をゲーム内でサポートします。はじめは経験者である息子が父親のアドバイザーとして常に側で支えてあげる役割を果たしていたが、現実の仕事に悩む息子を、そうとは知らない父親が逆に支えてあげたり。父親は父親で相手が息子とは知らず家庭に対して父親がどう考えているかをゲームを通して知ってしまったり。決して一方的ではなく、相互に絆を作っていく過程が見ていてとても良かったですね。 どの話も良かったのですが、特にお茶漬けのエピソードと、娘の彼氏のお笑いライブを見に行くシーンはなんだかジーンときました。 最後、病院を抜け出した父親をネット内で見つけた時、もう息子はそこで自分が息子だとばらし病院に戻るよう説得するのかと思いました。「なんでそうしない!?」と心で叫ぶ自分もいて。ゲームどころじゃないだろうと。しかし、「ツインタニア」という敵に対して、ただのゲームの敵として以上の価値を見出している父親を止めることはできず、そのままバトルへ。正直バトル中はずっと「そんなこと親子でしてる場合じゃないだろう…」とイライラのような感情も沸いてきましたが、バトル勝利後の父親の語った想い、そしてようやくきちんと「息子」と出会い、約束を果たせたことに感動しました。結果オーライといったところですが、探して心配しまくった奥さんと娘は気が気じゃなかったでしょうね。 とても良かった。自信を持って人に勧められる映画です。[インターネット(邦画)] 9点(2021-08-13 02:48:13)《改行有》

14.  コンテイジョン 《ネタバレ》 2回目の鑑賞です。初めて観た時はもう10年近く前で、まさかその時はこんなに現実とリンクした映画になるなんて夢にも思わなかった。 映画の感染症はもちろんコロナではないし症状も違いますが、未知のウィルスに対する人々の恐怖や、対処の仕方がとてもリアルだった。専門家批判が起きたりWHOが何かに忖度して情報隠しをしてるんじゃないかとか、いくつかはコロナで実際にあったことと全く一緒で、Rノート係数の話など、映画がかなり入念に作り込まれたものなんだということを変に実感しました。作り込みで唯一気になったのは、感染が広がって咳き込む人を見て危ないと思うのに映画の中では医療関係者以外ほとんどマスクを付けないこと。まあこれは今だから言えることでお国柄の問題もあるかもですが。 感染症の、いわゆるパンデミックって、おそらく人がそれこそ機械のように完全に統制されたコントロール下で動くことができれば簡単に収まるんでしょうね。その考えの下で映画でも現実でも共通して思うことは、やっぱり人の心なんて完全に制御なんてできないんだなということ。自分のでもコントロールしきれてないのに、ましてや他人の行動なんて制御出来るわけがない。感染症を止めるためにまさに粉骨砕身で働いていたチーヴァー博士も、家族を助けたい一心で妻に内部情報をリークして公開情報より一足先に避難させようとする。そこにあるのは、「感染を止めたい、しかし家族を危険に晒させたくもない」といういたって真っ当な人間の考え方。人間がまともであればあるほど感染は止められないというジレンマを見た気がした。ワクチンにしても、理路整然と人々に順番に支給されるわけではない。奪い合いがあり、譲り合いがあり、騙し合いがある。形は違えど、今のコロナとそう変わらない状況に心がざわざわしながら鑑賞しました。 DAY1の描写はただただ見事。最後の最後で感染源・経路が明かされることで視聴者は感嘆しつつスッキリできましたが、これも今となっては現実に対する皮肉のようになってしまって映画の出来に対してではないモヤモヤを抱えながらのエンドクレジットとなりました。[インターネット(字幕)] 9点(2021-07-26 00:32:52)(良:1票) 《改行有》

15.  RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語 《ネタバレ》 以前にも一度観たはずなのですが、ただただ感動してしまった。ジーンとさせようとしてるなーって何となく感じてるんですけどね。分かっててもジーンとしてしまう。それはもう仕方ない(笑) 一流企業に勤めセカセカと働くことに何の疑問も持たず生きてきて、それが友人の死と家族の状況の変化を受け一大決心をする49歳のおじさんの話。こんな歳のおじさんだからこそ魅力的な話の展開になっています。仕事仕事で家族も蔑ろにしていたら気持ちにも余裕がなかったのが、夢だったバタ電の運転士になってからはまるで憑き物が落ちたよう。家族ともゆったりとしかし誠実に向き合い、運転士の仕事にもまっすぐに取り組む。「仕事?楽しいよ。恥ずかしいくらいにな。」縁側で娘とスイカを頬張りながらこう答える父はなんだかとても格好良い。また中井貴一さんっていうのもぴったり合っていたので良かったんでしょう。あの歳でも精悍な佇まいで、地元の人にも愛されそうだ。 多少古い映画ですが、こんな田舎の牧歌的な地方電車ですら、時代の変遷も感じてしまった。少し遅れてくる乗客のために電車を待たせたり、乗客の荷物を運んであげて電車を止めてしまったら、失礼ながらこんな田舎の電車でもやはりあのくらい怒られるんですね。それにSNSも。当たり前ですが、なんだか昭和的に寛容に許されてきたことはもう許されなくなってきてるんだなーと感じてしまった。実生活でもそれはすごく実感することが多いですが、この時代・このロケーションですでにそうなっていたことに、いささかショックを受けました。そしてやはりこれは映画なので、中井貴一さん演じる筒井さんは地元の方の応援のおかげで事なきを得るんですが、実際は筒井さんと同程度の人が現実にいたとしてもああはならないだろうなとも思ってしまう。冒頭に書いたように分かってはいるんですが、そこはうまくいきすぎですよね。 ある程度それまでに稼いでいたり、奥さんが今バリバリ働いているから父親がこんな自由にできるんだろうとは思いますが、それを差し引いてもこの昔の夢を再度追いかける行動力や、仕事に真摯に向き合う姿勢は見習いたいと思いました。色々立ち帰るところを思い出せた映画となりました。[インターネット(邦画)] 9点(2021-07-17 01:35:05)《改行有》

16.  メランコリック 《ネタバレ》 思っていたよりずっと良い映画でした。 そして松本くんを演じていた磯崎義知さん。彼が抜群に良かったので印象に残りました。髪の毛マッキンキンでいかにもまともに仕事とかできなそうな彼ですが、人当たりはとても良くて、言葉は不器用ながらも周りのことをちゃんと考えて気遣いができる、好青年でした。鍋岡くんが殺しの仕事についてどんなに無知でどんなに使えない人だとわかっても彼は常に鍋岡くんを「和彦さん」と呼び敬意を忘れず接していました。最後、撃たれて怪我をした松本くんを必死になって助けたくなるのもわかります。プロフィールを見ると磯崎さんは武道の心得もあるとかで、作中のアクションも素人目からも動きが違うと思いました。いろんな要素が輝いている俳優さんという印象でした。これから注目したい。 舞台は銭湯。通常は普通の銭湯として営業してるそこは、深夜には殺し屋の殺人スペースとして借り出されている、というなんだか面白そうな設定。他だと、中身が設定についてきていない映画とかもあるんですが、これは設定と中身の雰囲気もバッチリ合っていました。松本くんと和彦くんが「黒い仕事」を終えた後に二人で肩を並べて銭湯の湯に浸かってる様はなんだかほっこりします。ロケーション、良いですよね。 そして、和彦くんの最後のナレーションが心に響きました。すごく共感できる、いい言葉でした。自分のための備忘録的に、ここに文面を起こしておきます。 「人生には何度か、一生これが続けばいいのにって思う瞬間がある。何もかもが完璧で、幸福で、この瞬間のために俺は生きてきたんだ。そう思える瞬間が、本当に何度か。そして僕たちはまさしく、その瞬間のためだけに生きてるんだと思う。その、何度か訪れる瞬間のためだけに。それで充分。うん、それで充分だと思う。」[インターネット(邦画)] 9点(2021-06-25 22:07:12)(良:2票) 《改行有》

17.  最強のふたり 《ネタバレ》 金持ち、貧乏、障害者、健常者。世間ではそういった要素ごとにバリア(障壁)があることが普通で、「人類みな平等」と世間では謳われているものの現実はそう言葉通りにいくわけではない。が、この二人の関係は見ていて心地良い。介護者と被介護者という関係でありながらお互いに気を使ってるようなところがなく、良くも悪くも明け透けに振る舞う。周りが聞いていてヒヤヒヤするような発言も二人の間ではストレートに届き、それを見ていた周囲も段々二人の相互理解を理解していく。そんな感じでした。 なぜこの二人はここまで「つながった」のでしょうか。それだけが最後までわからなかった。ドリスがフィリップのプライベートを垣間見たり、一緒に夜の散歩に出たり、段々と関係を積み重ねていって親密になっていったのはわかるんですが、「これ!」っていう出来事はなかったように思う。実話に基づいているということで、本当に映画で見たエピソードしかなかったのかもしれないし、実はもっと何かあったのかもしれない。車ぶっ飛ばして捕まったら「病院に急いでるんだよ!」はなんだか笑ってしまいましたが。でもあれ実際あったらたまったもんじゃないですね笑 結局フィリップが求めていたものはただ自分の世話をしていうことを聞いてくれる介護者ではなく、嫌がってるのに無理矢理文通相手と電話させたり、オーケストラを呼ぶような誕生日会でアースウィンドファイアーで踊り出すような「友人」だったんですね。ドリスの後に入った介護者の人が気の毒なくらい塩対応されてましたが、結局そういうことなんですよね。 世の中には肉体的・経済的・人間的な差が必ずあり、人と人は決して「平等」たりえないなと改めて思いましたが、人と人が「対等」になることは充分できるんじゃないか、そう思わせてくれた作品でした。[インターネット(字幕)] 9点(2021-06-14 22:17:04)(良:3票) 《改行有》

18.  孤狼の血 《ネタバレ》 原作既読です。読んだのは映画の後ですが。映画でイメージを作ってから本に入っていくことができました。その上で映画のほうのレビューをしていきますが、原作と比べるとだいぶ大上さんの悪さが誇張されてますね。原作では取調べ中に女とヤったりしないし、ビデオ押収できないからって放火とかしないし。やりかねないキャラといえばそうなのですが、「そこまでやる?」っていうのをことさら強調してる感じはありました。特に、取り調べてる女とヤるっていうのはちょっと不快感。女にだらしないという描写は原作にも無かったので、そこは蛇足というか単に大上さんを汚く描きたかっただけで、警官としてしかしヤクザと繋がりを持って制御するダークヒーロー的に立ち回る大上さんのイメージとはズレていたと感じました。 しかし新米刑事の日岡が大上との出会いからだんだん逞しくなっていく過程は見ていて面白かったしなんだか頼もしく思えた。映画の最初と最後では日岡役の松坂桃李さんの目付きも全然違い、大上の意志を受け継いだようでした。まあそれでも大上のキャラの強さにはまだ届きませんが。日岡が次作でどのように変わっているかが見所になりそうですね。大上のコピーのようになっているか、はたまた違う変貌を遂げるのか。楽しみです。 広島弁のヤクザ語、とでも言うのか、あのしゃべりでしかも嗄れてたりしたら聞き取るまで少し慣れが必要ですね。そういう意味でちょっとついていくのが大変な時がありました。全然話の筋とは関係ないですが、なんだか大学で一緒だった後輩の広島弁がひさしぶりに聞きたくなりました。[インターネット(邦画)] 9点(2021-06-12 14:36:30)(良:2票) 《改行有》

19.  グッド・ネイバー 《ネタバレ》 こういうミスリード系は宣伝の仕方、作り方からしてイラっとしますね。何がミスリードって、この映画のタイトル画面にグレイニーさんの顔とその真横にデカデカと「このジジイ、かなりヤバい」の文字。あらすじを読んでも「記録映像を撮ってたらイカれた老人が不可解な行動を取り始めて・・・」みたいな内容。製作したアメリカでもこういうテイストで宣伝したんでしょうか。それとも日本の配給会社の勝手な宣伝方法??内容は全く違う、イカれていたのは初めっから最後までずっと若者たちのほう。老人も確かに言葉が悪かったり近所の人に悪態をついたりして決して人当たりの良い人ではなかったですが、再生回数欲しさに「実験」と称して自分たちの暇つぶし・犯罪を正当化するこいつらよりはよっぽど良い。 そういうストーリーって宣伝はできなかったのか!?どんでん返しがしたいがためにわざわざこういう宣伝の仕方にしたのか!?理解ができない。とても不快感を覚える宣伝方法でした。 内容も不快感を覚えましたがそれはきちんと一つの作品として観ることができました。面白かった。近所で変人と呼ばれる老人の生活を見て、さらに見るだけでは飽き足らずいくつかの仕掛けをしてその反応も記録しようとするショーンとイーサンの二人の若者。老人の行動は彼らには奇異に見えるが実はその行動の裏にはこういう背景があったのだ・・・と視聴者には一つ一つ紐解かれてゆく。特に最後のベルの物語には泣きそうになります。イーサンが不意に鳴らしてしまっただけのあのベルの音に、「呼ばれた」、と思ってしまったんですね。ただのイタズラ好きの不法侵入の悪ガキの仕業とも知らずに・・・。 そしてラスト、法廷にて。日本でいうところのまさに「少年法」ですよね。「大人ならこうなる、裁判官個人の心証としてはこれくらいの罪になるがあいにく法がそれを許さない。未成年で初犯という事情を鑑み、〇〇という判決にする」とまあこういう感じ。○○にはかなり軽い罪が入ることはまだ映画を観ていない人が読んでも想像に難くない。 スマホやネットその周辺機器が普及し、多少お金をかければこの映画のようなことは比較的容易に出来るようになってしまった昨今。全ての犯罪をひっくるめて低年齢化してきたから「少年法改正を」などというつもりはありませんが、ことネット関連の犯罪に関してはその匿名性・陰湿性・加害者側の未熟性が強く出るものだと感じます。特に最後の加害者側の未熟性は別に未成年に限った話ではなく、そこそこの年齢がいった大人や老人でも同様にあること。思ったことは、いわゆる「ネット犯罪」というものにもっとスポットライトを当て、その匿名性を透明性に変える必要があるということ。まともな人はfacebook等で普通に実名出して生活していますからね。こんな不快で陰湿な事件が世の中から一つでも減ることを願います。映画としてはとても良かった。[インターネット(字幕)] 9点(2021-06-06 16:57:08)《改行有》

20.  今日も嫌がらせ弁当 《ネタバレ》 底抜けに幸せになる映画ですね。それはやはり底抜けに明るく振る舞う篠原涼子さん演じる母の存在が大きい。夜10時をかなり過ぎてからの鑑賞だったにもかかわらず、ほとんど眠さも感じずどんどん見入ってしまいました。ちょこちょこフェイントのエンドロール入れたりとか、本当なら自分はそういう遊びを効かせた映画は好きなほうではないんですが、この映画では何の抵抗もなくそんな遊びまで純粋に楽しめました。そもそもが子供にキャラ弁作りまくるという遊び満載のコンセプトのおかげでしょうか、演出までが丸ごと楽しめる内容となっていました。 キャラバンを作ることを「遊び」とは言ったものの、キャラ弁。。。いや、めっちゃ大変ですよね。キャラ弁ではないですが、自分もビーズアートをしていたことがあり、夜8時から始めたのに気づいたら外が明るくなっていたことがあります。特に最初のころは夢中なくせに手慣れていないもんだから、気づいたらすごい時間経ってるんですよね。 自分にも子供がいて、ちょうど作中のように「パパと結婚するー」とか「ずっといっしょー」とか今でこそ言ってくれてますが、じきに双葉ちゃんみたいにろくに喋ってくれなくなるんでしょうか。そうすっとオレもキャラ弁か!?などと自分とも重ねながら楽しんでみていました。 八丈島、めっちゃ行ってみたいですねー!!冒頭、島の説明もしっかり入れてくれて、八丈島の観光PRムービーとしても大成功だったと思います。キャラ弁というだけなら八丈島じゃなくてもできた映画だろうに(原作があるのか?)、しっかり八丈島にも魅せられてしまいました。 主役ではないですが、母と次女をつなぐ長女はずっとファインプレーでしたね。母の心情も理解しつつ、常に妹の拠り所であり続ける、理想の姉だと思います。彼女いなくてはこの話も成立しなかったでしょう。隠れた名プレイヤーでした。逆に、佐藤隆太さんの父と息子の話はそんなにいらなかったかな。弁当捨てて、ケンカして、仲直りするまでがちょっと無理矢理な感じもしました。 ですが全編を通し、スッキリと爽やかな気分で見られるお話。これから誰かに聞かれたらオススメしたい映画です。心の洗浄をしたい方にぜひ。[インターネット(邦画)] 9点(2021-05-07 00:59:30)《改行有》

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