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Web www.jtnews.jp

プロフィール
コメント数 31
性別 男性
自己紹介 基本的に(よほど確証のある時以外は)「酷評」はしません。
(というより、できません)

多くの方が了解されていると思いますが、単なる誤解や無知に基づく「酷評」には、冷笑や憫笑以外の価値はないからです。
 
自らの無知や無能を棚に上げ、貧困なスキーマ(人生経験によって形成される思考の枠組み)を振り回して「これは駄作だ!」などと得意がるようなミットモナイことだけは決してしないように、自戒しております。

せめて「この作品の良さは、私には理解できないないけれど…」くらいの謙虚さは忘れずにおきたいものです。

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評価順12
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1.  街の灯(1931) 物心ついた折から、何度繰り返し観たことか…。本作を超えるものには、未だ出会っていません。よって、私にとって10点は、これ1本のみ!10点(2004-02-29 11:02:51)(良:1票)

2.  アメリカン・ビューティー 《ネタバレ》 これを観て、登場人物の心理がまったく理解できない、あるいは本作は自分にとってまったくの別世界だと思うことのできる人は幸いでしょう(決して皮肉ではなくて)。大人も子供も、「自分は自由ではない」「自らの願望は満たされていない」と強迫神経症的に思い込みながら、生の充足感を求めて、平凡な人生を唾棄しつつ、欲望の赴くままに行動しようとするものの、どこまでいっても満たされない――まさにニヒリズムの極地。唯一、満ち足りた表情を見せているのが、ゲイのカップルと、死ぬ直前・直後のK・スペイシーのみという逆説。決してアメリカだけではない、日本も含めてある程度の経済的富裕を成し遂げた(=次なる目標を喪失した)社会に共通する問題であるといえるでしょう。もちろん、安直な解決策などあろうはずがない。たとえば、隣家の父親のごとく、秩序と道徳を体現しようとすればするほど(常に「自分は大佐だ」と言い募らなければならないように)逆に卑小で滑稽な存在にしかなりません(まさに昨今のナショナリズム親父を連想させます 苦笑)。せいぜいが、「サイコ」少年のように、市場価値のあるアイテム(ドラッグ密売)を身につけて不透明な世の中を巧みに生き抜いていくべし、という精神論くらいでしょうか。スペイシーが、回りまわってようやく身の丈に合った「家族との一体感」という幸福に逢着した途端、この世から消されてしまう悲劇。銃殺される前後に彼の見せた、満ち足りた柔和な笑顔、涅槃の境地にあるかのごとき安らかな死に顔には、胸を締めつけられ、涙を抑えることができません…。自由な世界、物質的に満ち足りた社会に住む人間特有の焦燥感・不遇感を、巧みな誇張と滑稽さをまじえて鋭く描いた名作であると思います。 9点(2004-04-12 09:10:10)(良:6票) 《改行有》

3.  仁義なき戦い 太平洋戦争での敗北⇒既成の価値観の崩壊⇒社会の混乱、という時代背景における血みどろの人間関係。「仁義なき」ということを裏返せば、旧来の価値基準に代わって、カネや暴力といった即物的なものが新たな尺度になったということ。また、明治期の自由民権運動が博徒と無縁ではなかったのと同様、形式的な国家権力を補完する形でヤクザ組織をはじめとするインプリシットな権力が存在するということも、社会史の常識。本シリーズでも、警察と持ちつ持たれつのヤクザ組織が、時代の変化の中で、社会との共存=経済ヤクザ化を図ったり、あるいは逆に一段と凶暴化・地下化する様子が描かれます。必ずしもリアルだとは思いませんが、生の過剰さがぎゅっと凝縮されて、ある種の爽快感すら感じます(笑)。菅原文太の存在感は、この1作目が一番ではないでしょうか。9点(2004-03-28 13:32:13)

4.  ゴッドファーザー PART Ⅱ 冒頭の葬送曲が発する重厚さ、感傷的ムードに、いきなりやられました。デ・ニーロの役作りも、M・ブランドの例の雰囲気には届かない気がするものの、十分の出来でしょう。あえて注文をするならば、ビトー=デニーロ時代における、イタリア系移民の不遇感に関する描写が少し弱いと思いましたが…。3部作のうちでは、やはりこれが一番でしょうかね。9点(2004-03-28 12:55:07)

5.  時計じかけのオレンジ 「個人の自由」vs「社会による管理」という図式は、M・フーコーの「パノプティコン」やチャップリンの『モダンタイムス』、オーウェルの『1984』などを列挙するまでもなく、それこそ腐るほど繰り返し論じられてきたこと。もっとさかのぼれば、厳格な戒律が形式化したユダヤ教に対して内面の「愛」を主張したキリスト教や、あるいは、行動規範の形骸化したカトリックに対して信仰を機軸としてこれを批判したプロテスタントのごとく――果たして個人が人間たりうるのは、外部からの規範によるものなのか、はたまた内面の自律なのか、という有史以来の大問題に直結します。犯罪をテーマに考えても、本作で描かれている通り両極に収斂します。すなわち、外部からの「治療」を施してまでも犯罪を根絶すべきという立場と、犯罪を犯すことは個人の自由の範疇であり個々の良心の問題であるという立場と(ちなみに、精神障害者に対する「ロボトミー」は前者の変奏でしょう)。いうまでもなく、近代立憲主義の立場からは、公権力による強制は外面的行為にのみ限定されるべきであり(令状に基づく身体拘束や、刑の執行など)、内面への介入は断じて許されてはならない、という結論に達します。犯罪を取り締まる(=外部的行為への規制)ことはOKだけれども、内面にまで踏み込んで権力の指向する方向へ心を操作することは厳禁だと(矯正刑は最低限度にとどめる)。人間性は、善と悪の間を揺れ動くもの。善は悪の裏返しであり、悪がなければ善もありえない。根っからの悪人などいないし、完全無欠の善人も存在しない。醜い悪を憎悪するからこそ、崇高な善を希求する。しかし、その一方で、あからさまな善に唾しながら、悪の背徳に魅せられる――人間というものの複雑さを改めて考えさせられます。もっとも、成人後の私自身は、万引き程度の悪すらできない小心者ですけど。(笑)9点(2004-03-07 10:22:36)(笑:1票) (良:1票)

6.  モロッコ ディートリッヒの圧倒的な存在感に脱帽。もちろん、『嘆きの天使』や『上海特急』でも、彼女の枕詞たる「退廃的美」は存分に味わえます。が、本作冒頭のバーにおける登場場面ほど、このフレーズが完璧にマッチするシーンはないのではないでしょうか。美しいとか色気があるとか、そんな次元の話ではない。あらゆる形容詞を超越した容姿には、ただただ唖然、呆然。で、その立ち居振る舞いに圧倒されているうちに、あまり上手くない歌が始まり、そこでふと我に返るのでした。(歌の巧拙は個人的好みによる。上手くはないけど味わいはあります)9点(2004-02-29 17:04:45)

7.  素晴らしき哉、人生!(1946) 《ネタバレ》 幸福を培養するものは「フェイス・トゥ・フェイス」の関係であるということを、家族や地域などの濃密な人間関係を舞台にして描いてあります。ニヒリスティックな個人主義でもない、いけいけドンドンのナショナリズムでもない、個人と国家の中間にある具体的対人関係を等閑にしては、幸福の実感など夢のまた夢――。個人主義の極たる守銭奴のポッターはいうまでもなく、国民的英雄たる撃墜王の弟でさえ、決して幸福を実感させる描写とはなっていません(単なる主人公の引き立て役)。100%完全に孤独の人間など、この世にはいない(生まれてくること自体、独力ではないのですから)。いかなる人も、生かし、生かされ、自立し、依存し。自らを取り巻く重層的な人間関係の束(それは時としてウザイものだけど)から生じる瑣末な人生の断片にしか、天使は降臨しない(幸福は宿らない)のでしょう。そして、いかにツラい現実があろうと、そこから目をそむけることなく、冷静に受け止め、肯定する姿勢こそが、幸福の第一歩であるのでしょう。9点(2004-02-27 23:54:56)

8.  雨に唄えば ジーン・ケリーを観るだけで元気づけられる、という人は結構多いのではないでしょうか。全身から醸し出される、底抜けの明るさ。マヌケとスケベが紙一重の、爽やかな笑顔。一見軽薄な言動の裏にある、誠実さと思いやり。深刻な現実がアホらしくなるような、シンプルで軽快なノリ。しかも、本作では、これまた愛すべきキャラであるD・オコナーが、これら要素をさらに一段とパワーアップ。『巴里のアメリカ人』同様、終盤で展開される「いかにもミュージカル」的な長いダンスシーンは、個人的には苦手。が、それを割り引いても、何度も繰り返し観てしまいます。で、観終わった後には、「気分がスカッとした!」という陳腐な言葉が、恥ずかしげもなくついつい口をついて出てきてしまう、そんな愛すべき作品です。9点(2004-02-22 14:56:19)(良:1票)

9.  或る夜の出来事 高貴な身分の女性と無頼な新聞記者による逢瀬といえば、一般的には『ローマの休日』でしょう。言うまでもなく、キャラの違いで、こちらの方が、より庶民的(?)です。が、しかし、男女の言動や細部の描写は、こちらも勝るとも劣らず、実に上品なんですね。会話の内容は古典的な意味で「粋」だし、しょーもないラブシーンなんかがあれば興醒めにもなりましょうが、当然そんなものはない。こういう具合に、現実と虚構の皮膜(その膜は薄いようでいて限りなく厚いけれど)を感じさせてくれる映画は、何度観てもいいものですね。9点(2004-02-17 23:09:28)(良:1票)

10.  道(1954) エロス的関係(=取替えのきかない人間関係)は相互に依存しあうもの、という基本を、見事に描いてあります。個人的な話で恐縮ですが、私の祖父は寝たきりでした。排泄から食事まで祖母に委ねきっている様を横目で見ていた少年時代、彼の無力さに対する同情プラス若干の軽蔑、彼女の尽力に対する感嘆プラス半ば呆れた感情、それら複雑な思いを抱いていました。が、彼の死後、彼女が語ったのは――「私は、あの人の世話をすることで、あの人に頼っていたんだよね」。祖父は祖母に生かされていたのではない、祖母もまた祖父によって生かされていたのでした。ザンパノに言われるがまま、どこまでも健気についていこうとしたジェルソミーナ。しかし、それは、彼女が一方的に依存していたわけではない。ザンパノもまた、彼女に依存していたのである。ラストシーン、そのことを思い知らされたザンパノ…。9点(2004-02-11 10:00:28)(良:8票)

11.  お熱いのがお好き 男をとことんコケにしているにもかかわらず、爽やかさと心地よさを感じさせる作品です。バンドのマネージャーもマフィアのボスも成金オヤジもホテルのポーターも、どいつもこいつもチビでマヌケ。まともな男は1人たりとも出てきません。T・カーティスとJ・レモンも、さえないバンドマンから女装に切り替わった途端、女でいるのが嬉しくて仕方ないといわんばかりに、嬉々としてはじけています(レモンはちょいとハシャギすぎ。笑)。公民権運動やアファーマティヴ・アクション、クォータ制度など、民族的・性的差別解消が最重要社会問題となりつつあった製作時の風潮は、その後、逆差別問題など、当初の目的から逸脱して、イデオロギー化・硬直化していきます。わが国でも、知的レベルの低いフェミニストが、いかにも女性の代表であるかのような大きな顔をして拙劣な言動を繰り返し、逆に女性一般から反感を買っていったのも、そうした流れの支流のひとつです(すいません、言い過ぎました。笑)。そうした下らないイデオロギーとは無縁のすがすがしさ。下品にならないギリギリの地点で立ち止まり、上品に仕立て上げてしまうワイルダーの手腕には、毎度のことながら、ただただ脱帽。8点(2004-05-16 18:11:39)

12.  パットン大戦車軍団 合理性・柔軟性を欠いた精神主義と形式・規律主義とによって軍を差配する主人公に対して、たとえば司馬遼太郎翁であれば、それこそボロクソにけなすことことでしょう(笑)。当時は、兵器のハイテク化や軍人の専門化という「構造改革」が進んでいく、まさに転換期。二言目には戦記からの引用を並べたて、往年の威光をかざす老将は、周囲に疎まれながら、時には嘲笑の対象とさえなるわけですが、これはパットンだけではなく、当時の多くの軍においてみられた光景です。まだ戦争が白兵戦至上主義・戦艦巨砲主義のもとに行われた時代においては、名将と称される人々は、たとえば乃木大将が当代随一の漢文の素養に恵まれていたように、文学や歴史に通じていることは当然であり、総合的教養人ともいうべき大人物でありました。そういえば、海軍畑から英国宰相に上り詰めたチャーチルも、かの大著『ローマ帝国衰亡史』を常に座右に置き、主要部分を諳んじていたといわれています。もちろん、軍事部門に限らず、リーダーの専門化・官僚化・小人物化は、政治・経済をはじめ、あらゆる分野に共通する傾向でありますが。パットンの場合、頭の中が戦史・戦術でいっぱいというところは軍の脱総合化・専門化に符合しますが、ハイテク化と現代化には到底ついていけなかったところが、当時の「転換期」を表しています。ほぼ風化してしまった古戦場に足を運び、まるで往時を思い出すかのように表情を緩めるパットン老将の演技は、そうした時代の趨勢を実感する者の寂しさを体現し、本作中でも出色の名場面。8点(2004-05-16 17:13:40)(良:3票)

13.  サンセット大通り どれほど不気味なシーンであろうと、いかに残酷な場面であろうと、常に諧謔を感じさせるところは、「さすがはB・ワイルダー!」と唸らされます。たとえば、大晦日の夜の2人だけのダンスシーンや、私のおかげでパラマウントが成り立っていると大見得を切る場面など、老いた大女優に悲哀をおぼえつつも、何ともいえないおかしみを感じてしまいます(さすがにラストはちょいとやりすぎだと思いましたが…苦笑)。また、いまさらいうまでもないことですが、キャストの豪華さにも注目。セシル・B・デミルは撮影現場で張り切っているし、シュトロハイムは「元監督」「元旦那」とそのまんまの配置だし、キートンは例の仏頂面でブリッジをやっているし。枝葉の部分でも楽しめる作品です。8点(2004-05-04 22:47:15)

14.  郵便配達は二度ベルを鳴らす(1942) 《ネタバレ》 【STING大好き】さんも仰せの通り、一般には、ネオレアリズモの先駆的作品とされていますが…確かに、オールロケという形式や中・下層大衆的日常生活の描写という点ではそうなのでしょうけれども…しかし、不倫はともかく、そこから偽装殺人に飛んでいってしまうあたりの心理は、イタリア同時期の他作と違い、どうにも共感を覚えづらいんですよね…。ただし、夫殺し以降の細部の描写にはリアリティが宿っており、いちいち心に引っかかるものがあります。入り乱れる愛憎と殺人の秘匿状況とが織りなす不安定な心理・言動・表情は、分かりやすくも卑俗にならず、巧みに描かれてあります。特に、ジーノがふと呟いた台詞――「想像していたのとは違う…」――に、思わず膝を打った男性諸氏は少なくないのでは?8点(2004-05-03 15:42:35)

15.  東京物語 《ネタバレ》 主要人物が、喜怒哀楽を強く押し出すことなく奥にぐっと噛みしめようとする様が、逆に感情の奥深さを感じさせます。特に、笠の枯れた佇まい。逆算すると、当時の実年齢は50歳前後のはずなのに、枯淡の境地にあるかのような立ち居振る舞い、台詞。特筆すべきは、ラスト近くで近所の婦人と会話するシーンの、笠の「背中」です。妻を失い、表にこそ出さずに気丈にふるまっているものの、内心にある寂寥感を、見事に背中だけで表現しています。笠の隣にいつも寄り添っていた妻は、もうそこにはいない。わずか数十秒のこのシーンだけで、この点数を計上してもいいくらいです。8点(2004-04-17 16:32:11)

16.  オール・ザ・キングスメン(1949) 《ネタバレ》 ヒトラーなどに代表されるように、大衆煽動の基本といえば、敵を明確にした勧善懲悪的な主張を、誰にでもわかるシンプルな論理構成で仕立て、喜怒哀楽を表に出しながら、言葉はもちろんイメージなどビジュアル面でも訴える形で、何度も何度も繰り返す、というものです。そこに、庶民性をからませれば、なおよし。そして、政治で問われるべきは、手段や動機よりも結果(有権者の要求実現)だとする近代政治の大原則。さらには、一度でも権力の旨みを味わった人々は、たとえ「悪」と分かってはいても、権力の中心・周辺から容易に離れようとはしないという現実。それらをあわせて考えると、本作では、まさに政治の基本というものが忠実に描かれているといえるでしょう。この時期に、このような作品がアカデミー作品賞に輝いているという事実は誠に興味深い。第二次大戦中から戦後にかけて、ファシズム批判や研究が政界や学会を席巻したわけですが(現在でこそファシズムは民主主義の中から出現するものであるということが常識中の常識となっているものの)、当時はファシズムと共産主義とが(ともに民主主義の亜種であるにもかかわらず)全体主義という観点から、民主主義の対立項として同一視される風潮もありました。赤狩りもあった時代背景を考えると、本作=反ファシズム=反全体主義=反共=素晴らしい作品、という評価だったのでしょうか?(誰か知っている方、教えてください)それはともかく、本作で描かれる表面的な政治的汚職や全体主義政治批判が、すべてデモクラシーそのものに対する懐疑に直結するという事実は、決して看過されるべきではないでしょう。8点(2004-04-04 09:44:39)(良:1票)

17.  イヴの総て 《ネタバレ》 ベティ・デイビスを初めて観たのは『痴人の愛』における鬼気迫る(という陳腐な表現がピッタリな)役作りでした。その印象が強烈に残っていただけに、今回のキャラはちょいと違うのでは…と先入観を持っていましたが…いやはや完璧にハマっていました。彼女の「眼の力」には、毎度のことながらゾッとさせられます(良い意味で)。射るようでもない、心を透かし見るようでもない、強烈な圧力をこちらに与えてくる「眼の力」は、今回も健在です。イヴについては、最初の登場場面から「こういう女って、同性から一番嫌われるタイプだよな~」と思いながら観ていました。(一見)かわいらしく、(一見)謙虚で、(一見)気が利いて、(一見)薄幸な感じで…まさにマーゴが言ったように、「鼻につく」んですよね、この手の人は。パーティの席上、マーゴがささいなことで癇癪を起こし、会がお開きになる場面がありますが、そんな時ですら自らを売り込むことを忘れないシーンでは、少なくない人が「うわー、ヤな女!」との思いを共有したことでしょう。その後、巧妙な立ち回りによって成り上がっていくプロセスでは、女性の持つイヤな側面をこれでもかと見せられます(これが男だとただのマヌケにみえるから不思議なもの)。逆にいえば、その演技たるや天晴哉、ということです。現代の三文メロドラマのように、愛憎劇やら恩讐やらをこねくり回した小賢しい筋立てよりも、こういうシンプルでストレートな創りの方が胸にきますね。たとえば、「平日午後1時半」的にドロドロしすぎたものだと、単なるギャグにしかならないわけで…。8点(2004-03-22 09:00:51)

18.  カリガリ博士 夢、幻想、狂気、影といった、いかにもドイツ表現主義らしい道具仕立てが嬉しい。「前衛」というと現在ではとうの昔に死語ですが、建物の形やデザインをはじめ、画面の各所に、古き良き時代の「前衛」の瑞々しい開花を見て取ることができます。表現主義と根っこでつながっているフロイト精神分析をあわせて考えると、オチにも時代性を感じますねえ。それにしても、カリガリ博士の形相ときたら…全編を貫く不気味さや恐怖をさらに一段と増します。あの顔にして喜怒哀楽が豊かというのは、ほとんど反則でしょう。8点(2004-03-08 14:57:06)

19.  戦場よさらば 《ネタバレ》 「公益」(=戦争勝利)と「私益」(=恋愛成就)の齟齬、とまとめてしまうとありふれたテーマになってしまいます。が、通俗的な戦争恋愛モノと違って、G・クーパーが相手のもとに走る過程が明瞭に描かれていないところが演出の妙味だと感じました。これが逆に、「おまえが好きだ、おまえに会いたいんだ、今すぐ軍を抜け出すぞ!」的に惚れたはれたを露骨に表してしまうと、少しも美しくない。静かに、物憂げな表情で、しかし力強い瞳で「脱出」を決意し、悲運の再会をも冷静な態度で受けとめ、そしてラストでは優しく抱擁し、永遠の別れを甘受する。心理・行動描写の抑制が、逆に、その心の陰影・襞を強く感じさせます。もちろん、製作時間(70分程度)の制約下では演出は最低限度に抑えられてしまいますが、では時間が長ければよかったのかというと決してそんなことはない。増やされた時間で演出が過剰になり心理が饒舌に語られてしまうとすれば、それこそまさに本末転倒というほかありません。8点(2004-03-08 09:05:30)(良:1票)

20.  群衆(1941) 《ネタバレ》 実に簡潔かつ要領を得た邦題です。特段何らかの信念に基づくわけでもなく、その時々の世論やムードに流されて衝動的に行動する人々。マスコミによって捏造された偶像(=G・クーパー)を求めて、全国各地から大した思慮もないままに勢いだけで集まってくる様は、まさに「群衆」です。抽象的イメージに容易に扇動されてしまう「群衆」。クーパーに心酔する彼らの合言葉は「隣人愛」であり、一見具体的な活動目標にみえるものの、その言葉に酔いしれるだけでは単なる抽象的なお題目にすぎない。クーパーを貶めるようなちょっとした揺さぶりによって、いとも簡単に愛から憎悪へと態度を豹変させる「隣人愛」。「群衆」的行動の底の浅さが、悲しくも滑稽に描かれます。現代においても、一部の市民運動のごとく、こうした皮相な「群衆」は掃いて捨てるほど存在するでしょう。「群衆」は極めて現代的な概念であり、近代以前には存在しえなかった。「群衆」を巧みに利用した上で成立するのが「独裁」であることは、もはや常識以前のこと。では、そんな「群衆」に救いはないのでしょうか。決してそうではありません。本作のラストで、スタンウィックがクーパーに愛をうちあける行為に象徴されるように、また、最後までクーパーを信頼してくれたのが隣人愛を現実に実行した人たちであったように、抽象的題目や想像上の人間関係ではない、地に足のついた具体的な人間関係こそが、信頼や愛情・友情を育むということでしょう。そこにこそ、現代にまで続く「群衆」的世の中に対する答えがあると思います。8点(2004-03-07 00:47:21)

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