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1. ラースと、その彼女
《ネタバレ》 これほど優しさに包まれた、心温まる映画を久しぶり見た。
心優しい性格だが母親と早くに死別し男しかいない家庭環境で育ったためか女性とうまく接することができない、いわば内向的で根暗な青年の主人公ラースは、リアルドールのビアンカを恋人にすることで少しながらも外向的になっていく。そんなラースの心理描写や、リアルドールを連れる彼の姿に心配しながらも、彼の優しい人柄のためにビアンカを生きてるものとして接しようとする兄夫婦をはじめとした町の人々、そしてラースと彼の抱える問題を解決しようとする医師との交流を描いたのがこの映画だ。
前半部分はコメディ要素が強い仕上がりとなっており、内向的なラースを心配していた兄夫婦が、彼の僅かな変化に最初は喜ぶもののリアルドールを見て絶句し戸惑う様子やラースとビアンカのデートシーン等、面白おかしい描写が多々見られる。しかし後半はラースの抱える精神的問題や心情の変化、そして恋人であるビアンカとの訣別の過程を主に描いていて、そこに感動的なシーンも多く挿入され、非常に見ごたえのあるものとなっていた印象がある。特にリアルドールであるビアンカが町のさまざまな施設に赴く場面は、非現実的でおかしさのあるものながらも心温まるもので、見ていて非常に心地よかった。
そしてこの映画の魅力を最も引き出しているのが、ラースを演じたライアン・ゴズリングの演技力である。彼の演技は奇妙ながらも優しげなラースの魅力を十二分に発揮しており、とても前年に彼の演じた生徒と関係を持つふしだらな教師と同じ人物とは思えなかった。そのライアン・ゴズリングの真に迫る演技があったからこそラースに過分なほど感情移入が出来、ラースが悩んだり泣いたりする場面でも大いに感動させられる。それほど素晴らしい演技を見せたにもかかわらず、その年のアカデミー賞にノミネートされなかったという事実が未だに信じられないくらいである。[DVD(字幕)] 9点(2011-02-22 07:34:01)(良:1票) 《改行有》
2. ぼくのエリ 200歳の少女
《ネタバレ》 まず思ったのが、カメラワークを駆使して巧みにヴァンパイアの超人性を表しており、そこに感心した。そして中盤でエリの付き人である中年男性の自己犠牲的な末路を描くことで、オスカーが数十年後に辿るであろうその行く末も暗示していたことにも唸った。しかしながらヴァンパイアなのに鏡に写っていたり(確かヴァンパイアは鏡にその姿が写らなかったはず)と、突っ込みどころも少々目に付き、残虐なシーンの過剰な演出(特にいじめられっこたちが惨殺されるシーンはスカッとするとともに気分が悪くなった)にも多少見ていて気が滅入り、あまり後味がいいものではなく、その点が残念だった。
それにしても同じスウェーデン映画の「子供たちの城」や「ペレ」を見たときも思ったけど、スウェーデンのいじめってのはこんなにえげつないものなのかと思った。あれが演出過多でなくリアルなものだったら、スウェーデンのいじめられっこがあまりに可哀そうだ…。[映画館(字幕)] 6点(2010-08-26 22:14:48)《改行有》
3. パンズ・ラビリンス
《ネタバレ》 前半の第一の試練をクリアするまでの展開は良かったと思う。しかし後半の展開には非常にガッカリ。特に第二の試練で、化け物がすぐそばにいるにもかかわらず余裕ぶっこいてテーブルに並ぶ料理のひとつをつまみ食いするシーンはあまりにひどい。あんなクリーチャーが陣取る食卓には普通近づきすらしねえだろ、と。ラストの展開もご都合主義過ぎて心底ガッカリした。映像や作品の空気は悪くないだけに、脚本のひどさが残念でならない。[CS・衛星(字幕)] 2点(2010-08-13 10:38:46)(良:1票)
4. 12人の怒れる男(2007)
《ネタバレ》 アカデミー外国語映画賞にノミネートされたということで、アカデミー賞の季節に借りて見たのが最初だけど、そのときの感想は「なぜノミネートされたのだろうか?」だった。
多くの方が言ってるように、陪審員がいちいち自分のこと語りすぎで終始グダグダだし、挿入部として描かれる少年の回想もワンパターンで芸がなく、何より監督演じる陪審員がおいしいところ持っていきすぎで、そのナルチシズムが気持ち悪い。
この映画にウルガやシベリアの理髪師を手掛けたミハルコフ監督の面影はなく、彼の才能は枯れてしまったのだろうかと、見終わった後に少し悲しくなった。[DVD(字幕)] 2点(2010-08-01 06:52:43)《改行有》
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