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タイトル名 |
真夜中の虹 |
レビュワー |
鱗歌さん |
点数 |
8点 |
投稿日時 |
2025-04-30 16:50:47 |
変更日時 |
2025-05-01 09:51:40 |
レビュー内容 |
カウリスマキ作品の登場人物って、ただ「何だかツイてない人」としてそこに存在していて、この映画で描かれるまでの前半生、ってものを感じさせないですね。改めて語るまでもなく、きっと今までもこんな感じの人生だったんだろう、と。「以下同文」的な人生。 この作品の主人公も、まーロクな目にあわない、ツイてない。たぶん、ツイてないことに、自分でも気が付いていないんでしょう。 クルマを出した途端にガレージが崩壊して危機一髪、なんてのは、これはツイてたと言ってよいのかどうか。普通ならそもそも、こんな危機一髪に出喰わすこともまず無いのだけど。 女性と知り合っていい関係になってみたら、実は子持ちだった、というのは、これはどうですかね? ツイてる・ツイてない、一概には言えませんけれど、とにかく色々なことが起こるのです。70分余りという短い作品とは思えぬ盛り沢山の濃さ。 で、刑務所で知り合った男とともに脱獄して、一緒に銀行強盗やっちまって・・・という展開。ギャング映画か、はたまたヤクザ映画か。皮肉のきいたユーモアが作品にまぶされているとは言え、一応はこれ、深刻なお話なのでした。 強盗で金をかっぱらって車に飛び乗ろうとすると、案の定、お金の一部を落としてしまう。脚本通りなのか、本当にミスって落としたのか、そんなことはもうどうでも良くって、この人たちならきっとお金を落とすだろう、と妙に納得してしまう。で、そんなに慌てているにも関わらず、クルマはすぐにエンジンがかからない。やっぱりなあ、と。 なんとか国外逃亡の船に乗り込もうか、というところで映画は終わり、一応はハッピーエンド風だけど、もちろんこの先に幸せが待ち受けていると期待できるほど、現実は甘くない。甘くないけど、でもまあ、希望を胸に新たな親子三人が揃って、、、ということで、少し暖かい気持ちに。 ところで、例によってと言うか、他の作品でも引用されているチャイコフスキーの悲愴交響曲(『愛しのタチアナ』とか『浮き雲』とか)がここでも引用されていますが、それ以外に、ショスタコーヴィチも引用されていて(偽造パスポートを受け取ろうとする場面)、これがまさかの交響曲第9番(第2楽章ですね)。あの陽気そうな曲が、切り出し方によってはこんなシーンにマッチする、、、とは言えこの選曲、いったいどういう発想なんだか。。。 |
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