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ベニスに死す - たましろさんのレビュー
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Web www.jtnews.jp

タイトル名 ベニスに死す
レビュワー たましろさん
点数 10点
投稿日時 2003-11-09 23:55:55
変更日時 2004-02-15 23:30:56
レビュー内容
ベニスという都市空間のイメージが完璧に視覚化された映画である。複雑な道路に象徴される迷宮のイメージ、商業都市として退廃した没落のイメージ、昔、娼婦小屋が並んだことによる官能のイメージ、疫病が流行したことからくる死のイメージなど、アッシェンバッハの精神世界の退廃が、ベニスという都市と完璧に照応している。まさにベニスはデカダンスを表現するには完璧な都市空間と言えるわけだ。そして、それはベニスへと行く船と海(理性の世界から欲望の世界への移行)、ホテルとその砂浜(理性と欲望の交差する場所、外界との交流のある場所とも言える)、そしてベニスの都市部分(欲望が頂点に達する場所、アッシェンバッハがタジオを追いかけて迷い込んでいく迷宮)と、空間論を駆使して、アッシェンバッハが意識から無意識の世界へと降下していく過程が完璧に描かれている。また、アッシェンバッハがタッジオに対して投げかける視線の演技が、気持悪いほどアッシェンバッハの抑えきれない感情を描き切っている点にも注目したい。規律を重んじたアッシェンバッハがタッジオという完璧な美の前になすすべもなく死化粧(「地獄に堕ちた勇者ども」のソフィーを連想させられる、まさに完璧な深層と表層の対比である)をして死んでいく、このデカダンスそのものを視覚化したこの映画の素晴らしさは筆舌に尽くしがたいものである。
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