|
| タイトル名 |
スパイの妻《劇場版》 |
|---|
| レビュワー |
まいかさん |
|---|
| 点数 |
8点 |
|---|
| 投稿日時 |
2022-01-12 09:07:31 |
|---|
| 変更日時 |
2022-01-12 10:34:35 |
|---|
| レビュー内容 |
|---|
ベネチアでは演出のほうが評価されましたが、この作品が優れているのはむしろ脚本だと思います。もともと黒沢清は「ジャンル映画」（要するに通俗映画）の作家を自称しているので、この作品も「サスペンス・ロマンス」の体裁で作られていますが、濱口竜介と野原位の脚本は「不可視のものを映像化する」という政治的な課題に取り組んでいます。
この作品が10年前の「金子論文」の発見に触発されたのは明らかですが、731部隊の「細菌戦」の真実はそれでもまだ全貌が闇に包まれています（映画が公開された2020年にも新資料が見つかっています）。したがって、この映画も「いまだ目に見えないもの」を描くという政治的な課題を負っています。主人公・福原優作の機密漏洩の企ては未遂に終わり、真実は闇に葬られたまま戦争が終わり、結局のところ、あのフィルムに何が映っていたのかも分からない。そういう物語なのですね。
黒沢の「ジャンル映画」としてなら７点、濱口と野原の「政治映画」としてなら９点。そのあいだを取って８点の評価にします。ただし、わたしが見た1月10日のNHK放送はおそらく「劇場版」でなく「TV版」なので、映像のテイストがいかにもNHKの歴史ドラマ風でした。「劇場版」だったら、演出に対する印象がもっと違うのかもしれません。 |
|
まいか さんの 最近のクチコミ・感想
スパイの妻《劇場版》のレビュー一覧を見る
|