8.ゆったりしすぎて時に作品の足を引っ張るイーストウッドの演出がこの映画には実に合っています。時代をベトナム戦争前に設定したのも古き良きゆったり感を出したかったためだと思いますがその効果は抜群で、ほのぼの感のある追跡劇が独特で楽しいです。ブッチは脱獄したものの本気で逃げるという意識は薄いようで、自由人だからとりあえず監獄から出てみましたという「暴力脱獄」のルークや「大脱走」のヒルツに近いキャラクター。大スターが演じてきたこの種の役をケビン・コスナーが期待以上に演じているのはさすがで、当時世界最高のスターだった彼でなければ出せない味を見せています。また人質となる子役も実に巧く、子役らしいイヤミっぽさが少ないのが良かったです。子役といえばわざとらしいほど天真爛漫で、相手が悪い人でも明るい笑顔を振りまいて人間性が芽生えるきっかけを作るというのが定石ですが、フィリップはとにかくしゃべらないし、ブッチから何か聞かれても優柔不断にうつむいて首を動かすだけ。本当の子供は初対面の大人相手にハキハキしゃべったり、大人との会話をリードするなんてことはないので、この描き方はなかなか良かったと思います。この子の心を開いていく過程でブッチの人間性はよく伝わるし、ブッチと過ごした数日間でフィリップが成長していく様子がクライマックスの感動へつながっており、通常とは逆のアプローチが功を奏しています。一方でレッドのキャラが中途半端だったのは残念です。ブッチとフィリップが仮想の親子関係を築くという話がメインにある一方で、その裏事情として少年時代のブッチを監獄に入れたのはレッドで、レッドは彼なりにブッチのためを思って監獄行きに手を回したという因果なエピソードがあるのに、こちらの掘り下げは不完全でした。ブッチに対してレッドは相当複雑な思いがあるはずです。少年時代の彼を監獄送りにしたために人生を歪めたのではないかという贖罪意識があるでしょうし、またその一方でいい歳してなんでまだ犯罪者やってんだという怒りもあるだろうし、人生を見出せないまま悪い道にいる彼を心配する気持ちもあるでしょう。にも関わらずブッチに対する思いがほとんど描かれておらず、大変おいしいところを完全にスルーしてしまっています。他の要素はよくできており、これをきちんと描いていれば大傑作になったかもしれないだけに残念です。 【ザ・チャンバラ】さん [DVD(吹替)] 7点(2006-11-13 03:02:01) (良:2票) |
7.夕暮れ、二人のシルエットがある家に入る。二人が家から出るときはすでに夜となっていて、二人から三人になったその姿は闇の中にほとんど紛れてしまっている。時間経過として、映画の約束としてこのような光の変化はごく当然のことなのかもしれない。しかし、イーストウッドはそれぞれの時刻の光とその中で浮き彫りになるシルエットを、審美的、叙情的な画面としてではなく、ごくさりげなく慎ましく、しかし確実に提示する。時間とそれに応じた光の推移、その物語は草原と木陰を舞台装置にしたクライマックスに結実する。■あるいは視線の物語。少年の運転する車が田舎町を移動し、男はその車を追う、両者の視線は移動するカメラを介して結ばれる。子供が運転できる出来ないといったつまらない現実との齟齬などをまるで意に介さないその見事なカッティングそして移動感。そしてお化けのマスクはその逸話以後、少年と男の二人だけの視線を固定する役割を担う。このマスクは二人だけのパーフェクトワールドを見るためのものとなるのだ。そして少年がマスクを男にかぶせてやる時、男はすべての世界から視線を奪われている。■「お話」と平行して存在する「画面」の物語、慎ましやかな時間と光と視線の物語、つまり「映画」に目を凝らすこと、謙虚に誠実に接すること。記憶違いはごめんなさいね。 【まぶぜたろう】さん [映画館(字幕)] 10点(2005-11-08 09:57:05) (良:2票) |
6.安楽の地に希望を求めて旅に出る犯罪者と人質の子供の映画。優しい心と凶暴な心の二面性を持つ主人公に共感出来るところもあり物語自体の造りの奥行きが感じられる。なんとも悲しく優しい映画であるが、もう一味欲しかったところでもある。映画から受けるメッセージ性は大分抽象化されている気がするので気付いたら終わっていたみたいな印象を受けてしまった。景色の良さが心に残る。 【たにっち】さん 6点(2003-11-22 18:24:36) (良:2票) |
5.う~ん?よう解らん!これのどこがパーフェクトワールドなのか?私には解りません。ロードムービーとして観れば確かに泣けないこともない。でも違う。泣かせたいが為にケビン・コスナーを上手く利用しているようなクリント・イーストウッドの演出がどうにも引っ掛って、素直に泣けない。クリント・イーストウッドにとってはパーフェクトかもしれないが、ケビン・コスナーからしてみたらパーフェクトとはどう考えても思えない。二人共にパーフェクトであるなら良いけど、それにやはりケビン・コスナーは悪役よりも善人、ヒーロー役の方がピンとくるし、似合う。クリント・イーストウッドにケビン・コスナーと共にアメリカを代表するスターであって、監督としても成功を収めている。そんな二人の共演ということの方が先走っている気がしなくもない。作品的にはけして悪い映画だとは思わないけど、でも何か物足りないのと違う気がする。ロードムービー的な形を加えての逃走劇として考えてみた場合、逃走劇にしては妙に落ち着きすぎている。のどかな感じが強すぎる。ロードムービーにしたいのか?逃走劇にしたいのか?欲張りな映画て気もしてしまいます。あまり比べるのも何だけど、少なくとも「明日に向って撃て!」よりは完全に落ちるし、遠く及ばない。最後に自分だけ良い所を持っていくクリント・イーストウッドとは対照的なケビン・コスナーが可愛そうです。やはりイーストウッド自身が監督している映画であるからだろうか?いずれにしても私にとってはタイトルのようにはパーフェクトとは行かず、それなりに楽しめた程度ということで6点てことで、それより高い点数は付けられませんし、クリント・イースドウッド監督作品では他にもっと良い映画が沢山、ある筈です。 【青観】さん [DVD(字幕)] 6点(2010-09-12 21:11:55) (良:1票) |
4.「明日に向かって撃て!」のニューマン演じた「ブッチ」を今回のコスナーを見て思い出した。名前が同じだからかもしれない。イーストウッドは映画に何を表現したいのだろう。彼の演じるキャラはクールで熱血漢的なイメージが多く大好きであるが、監督での彼は「ダーティハリー」のようなスーパーマンなどこの世には存在せず、あるのは幸不幸が混ざり合った現実だけだと観客に語っているかのようだ。それはあたかも悟りの境地にたどり着いていると思えなくも無い。この映画はまさに「悟りのイーストウッド・ワールド」に位置づけられるように思う。 【クルイベル】さん 6点(2004-01-15 09:44:50) (良:1票) |
3.やはり子役の演技力が光る映画。さらに、ケビンも少年を殺さないし、優し語り口で、意外にも思いやりのある人間を演じながら、少年に盗みをさせたり、少年の前で、人殺しをしようとしたり、随所で、悪態ぶりを描写し、この優しさと凶悪さの絶妙なバランスが素晴らしい。そして、その絶妙なバランスを次第に解きほぐしながら、ラストの衝撃につながる。やっと会えたはずの親の方向に走らず、倒れたケビンに向かって駆け寄る姿は、相当な印象を残す。この場面を冒頭の場面とリンクさせるアイディアも、使い古されている手法ながら、綺麗に決まっている。序盤から垣間見える適度なサスペンス色で塗り固めながら、それを極上の人間ドラマへと昇華した見事な作品。 【叫真】さん 9点(2003-06-13 18:30:30) (良:1票) |
2. イーストウッドとコスナーが初顔合わせ!…って取って付けたみたいにラストでチョロッとだけジャン!!両者がっぷり四つに組んだド迫力のアクション映画を期待してたのに~。看板に偽りは(一応)無いが、JAROに訴えたくなる衝動に駆られた苦い思い出に…6点。しっかし、「脱出」(1972・米)とかもそうだった(な、何と!ネッド・ビーティを…!!)けど、あっちのレ○プ犯ってヤツはもう老若男女見境ナシですな。イヤ全く、アメリカは「完璧な世界」どころかトンデモなく怖いところジャ~~~~~!!!と痛感。 【へちょちょ】さん 6点(2003-03-11 01:02:33) (良:1票) |
1.息子を愛したい父、父を愛したい息子、しかしその愛は常にすれちがう。父親と息子の関係を描いた映画がツボな人は涙がでる。その関係が幻想であることを知っていれば反吐がでる。蛇足だがケビン・コスナーの腹も出ている。 【河上】さん 5点(2002-02-05 15:31:49) (笑:1票) |