この『座頭市 THE LAST』でも、冒頭近くに主人公・市と所帯を持つと誓った石原さとみのヒロインが、市をかばって犠牲になる。けれど彼女が刀で刺し貫かれた時、実は座頭市も“死んだ”のではないか。あるいは、そこから彼の“THE LAST(最期)”は始まっていた。そしてラスト、一度は石原さとみの手に誘われるように海の中へと歩み入っていった市だが、次の場面で、海にたどり着けずにその手前で息絶えた姿として映し出される。あるいは、この2時間以上をかけてぼくたちが見てきた映像自体が、この、海岸手前で息絶える寸前に座頭市が見た“光景”なのではないのか・・・。そう思い至る時、この作品全体に漂う奇妙な非現実感に、ぼくたちはある戦慄と深い感動をもって納得させられるのだ。
監督デビュー作『どついたるねん』で、“一度死んだ者”としての赤井英和を主人公として以来、阪本順治監督の「アクション映画」は常にこうした死者たちの“末期の眼”で見られた世界を開示、あるいは現前させることこそが〈主題〉となってきた。この『座頭市 THE LAST』はそのひとつの到達点に他ならない。・・・ひと言、大傑作。