10.ネタバレ 不妊治療しながら高校生を誘惑して子種を仕込もうとする人妻。その裏に、子供のできないことを嫁のせいにして執拗に責める姑の存在。いい年してコスプレイヤーなんてイタイ女だなと思いきや、やりきれない現実を見せられるとそこから目を背けたくなるのもわかる気はする。閉塞感たっぷりの団地に住む男女高校生が、級友のハメ撮り写真をばら撒く姿にはゾッとする。自分がそこから抜け出せそうにない鬱憤を他人を貶めることで癒しているのだが、友達面して酷い裏切りだ。カースト制度や封建制度でもないんだから、中高年ならともかく高校生なら自分次第で何とでもなるだろうに。主人公は一応高校生の卓巳だろうが、群像劇かと思わせるようなところも。後半、永山絢斗と田畑智子の出番が急に減って視点が変わるので、軸がフラついた印象を受けてしまう。それがまた一つの味にはなってはいるけど。場面場面は惹かれるのだが、全体となると少し食いたりなさは残る。テーマは生に関する根源的、普遍的なもの。生きていく苦しさに、生まれてきた意味を問う泥沼にはまった人達。原田美枝子演じる母が、そのヒントを与えてくれる。吉野弘の詩「I was born」に出てくる蜻蛉の姿が重なった。田畑智子が大胆なベッドシーンを演じていてビックリ。そういうものとはまったく無縁なイメージだったので、脱ぐとは思っていなかった。絶対死なないと思っていたアニメの主人公が早々に死んだくらいに意外。良い悪いは別にして、男の監督なら田畑智子をこの役にキャスティングしようとは思いつかないのでは。今、女性監督では西川美和とタナダユキに注目している。