8.ネタバレ ディテールの積み上げで男の美学を描いた、ハードなルパン三世。2012年の「峰不二子という女」に続くルパン三世のアダルトなリブートシリーズ「LUPIN the Third」の第2弾は早撃ちのガンマン 次元大介が主役。舞台はヨーロッパの東ドロア。そこで次元は、ヤエル奥崎という謎のガンマンに早撃ちで敗れ、さらに・・・「峰不二子という女」で、キャラクターデザイン・作画監督だった小池健が本作で監督に抜擢され、演出・キャラクターデザイン・作画監督も兼任。前作にあった幻覚のような非現実的要素は一切排され、純度の高い男と男の〝技能とプライドと頭脳の闘い〟を濃厚にハードに描く作品となっている。また本作は、テレビ放映と同じ30分の前編・後編に分かれ、それぞれにOPとEDが流れる。合計で60分以下なので劇場アニメとしては短い尺だが、まったく物足りなくは無い。依頼人を目の前で殺された次元の、闘いと苦悩、まだ仲間でないルパンとの関係・・・非常に贅沢な映像とハードボイルドな描写。小池監督のモダンで渇いたキャラクターと、渋いセリフ、メカ描写もカッコ良く、SEXYなモンキーパンチ風味も効いている。TVシリーズ初期の殺るか殺られるか!騙すか騙されるか!の緊張感にあふれた、オトナの鑑賞に耐えうるルパン三世に仕上がっている。皮肉や自虐的ジョークを除いて、お笑い要素は皆無に等しく、赤い血が流れる決闘はバイオレンス度も高い。ジェームズ・ボンドがハード路線でリフレッシュしたように、本気の次元とルパンを目指したスタッフに拍手を送りたい!既に、五ェ門を主役にした『血煙の石川五ェ門』の公開が2017年2月に決まってる。それも期待大だ。
7.ネタバレ コンバット・マグナムの重い弾丸が宿敵の利き腕をぶち抜く。茫然自失の相手に対し次元大介は言う。「お前がどれだけ軽い銃を使おうが知ったこっちゃないが……俺に言わせりゃ、ロマンに欠けるな」最高かよ。と、思う。2012年に放送されたテレビシリーズ「LUPIN the Third -峰不二子という女-」は、“度肝を抜かれる”とはこのことかと思えるほど衝撃的で、凄すぎた。オープニングのモノローグからエンディングに至るまで、「え、これほんとにテレビで流していいのか?」と戸惑ってしまうくらいに。モンキー・パンチの原作に対する強烈なリスペクトを礎にした、妥協の無いエロティシズムと、香しく漂うハードボイルドと、刹那的なキャラクターたちのクレイジー感、そこから織りなされる甘美でキケンな世界観には、ルパンシリーズに限らず、これまでの殆どのアニメ作品では確実に遠慮されてきたものが、問答無用に溢れかえっていた。おおよそテレビアニメには似つかわしくない“背徳感”と“贅沢感”に圧倒された。そして、今作は、その「峰不二子という女」の流れをくんだシリーズ第2弾。待望の劇場公開作品であったが、あまりに公開規模が限定的だったことと、尺が50分少々と短すぎることで、クオリティーに懐疑的なイメージを持ってしまっていた。ようやく鑑賞に至ったわけだが、何の事はない、最高である。「峰不二子〜」程の淫靡さは必然的に無いが、“相棒”になったばかりのルパン三世と次元大介の絶妙な距離感と、それが徐々に強固なものになっていく塩梅が堪らない。敵キャラクターのビジュアルとギミックの禍々しさもすこぶる良い。そして何よりも、「次元大介」とういキャラクターが本来持ち得ている“正しいハードボイルド”が堪能できる仕上がりが素晴らしい。唯一の欠点は、上記の通り尺が短すぎるということだけだ。ラストの銭形警部登場からのまさかのシークエンスに、思わず「○○ー!?」と声を上げてしまった。おいおい、続編はまだか?この制作チームにさっさと金をやってくれ。